スポーツ作品に通ずる熱量! あまりの長セリフに鍛えられた実践的訓練ーー『シャングリラ・フロンティア』内田雄馬さん、日笠陽子さん、小市眞琴さんインタビュー
「週刊少年マガジン」にて連載中の『シャングリラ・フロンティア』。毎週日曜、MBS/TBS系全国28局ネットにて放送中です!
フルダイブ型のVRゲームが普及している世界で、“クソゲー”のクリアに情熱を燃やす主人公・陽務楽郎は、ある日、総プレイヤー数3000万人の“神ゲー”『シャングリラ・フロンティア』の世界に! 最強の“クソゲーハンター”・サンラクによる“ゲーム×ファンタジー”冒険譚が描かれています。
今回は、サンラク/陽務楽郎役・内田雄馬さん、アーサー・ペンシルゴン/天音永遠役・日笠陽子さん、オイカッツォ/魚臣慧役・小市眞琴さんにインタビュー! 後編では、なにかとハードなエピソードだらけのアフレコや、3人の芝居に対する想いをたっぷりお話いただきました。
ひとりで3役こなした(?)、夜襲のリュカオーン戦!
ーーここまでサンラクは数々の戦いを経験しました。話が進むに連れて彼の成長や変化は感じられましたか?
サンラク/陽務楽郎役・内田雄馬さん(以下、内田):成長と言うよりも、むしろ、もともと持っていたものをフルに生かしつつ、未知の力を徐々に引き出しているような気がします。夜襲のリュカオーン戦、墓守のウェザエモン戦で見せてくれたように、今後も、さらにいろいろな引き出しを見せてくれるので期待してほしいです。
ーーどんな強敵にも楽しんで戦いを挑む姿が印象的です。
内田:多種多様なクソゲーを攻略する中で培った経験を「シャンフロ」というなんでも表現できる神ゲーで活かしていますよね。まさにサンラクの真価が発揮されるゲームです。
ーー前半はサンラクのひとり旅だったからこそ演じる上では大変だったのでは?
内田:そうですね。夜襲のリュカオーン戦なんかは本当にひとりっきりでしたから。
アーサー・ペンシルゴン/天音永遠役・日笠陽子さん(以下、日笠):かわいそうだった〜。
内田:モノローグとアクションを入れて、そこからONのセリフ(※)も言って。しかも、ナレーションと思ったら、急にモノローグを始めないといけないこともありました。あのときはひとりで3役こなしている気分でしたね(笑)。
※「ON」:この場合の「ON」は演じるキャラクターが映像に映し出されている状態。反対の「OFF」は演じるキャラクターが映像外にいる状態。
ーーあぁ。それは『シャンフロ』ならではかもしれませんね。
内田:『シャンフロ』はスポーツみたいな作品です。それくらいみんなの熱量が高いと感じています。
オイカッツォ/魚臣慧役・小市眞琴さん(以下、小市):たしかに。私も出演する前はあんなに汗を掻くとは思っていなかったです。
ーー個人的に、第7話の実践的訓練の長セリフが印象的です。
内田:あそこはまさにスポーツでした。原作を読んだときはモンスターや攻略情報が補足のような形で載っていたので、普通に自分のペースで楽しんでいたんですけど、台本を見たら全て自分のセリフとして文字起こしがされていて……(笑)。
ーー想定外だったんですね(笑)。
内田:しかも、1カットの中にセリフがブワッと溢れていたので、どこをどうやって組み立てていくべきか悩みました。最初に読んだ時は半泣き状態でしたね(笑)。これは、とにかく頑張らねばと。
日笠:頑張るしかないもんね。
小市:リハーサルは何回くらいリピートしましたか?
内田:2回くらいかな。台本はしっかりと読み込むけど、リハVのチェックは一回確認するだけ。
小市:えぇ!?
内田:わからないところがあったら再確認するくらいかな。声優デビューしてからずっとそうしてるんだよね。
ーーなにか理由が?
内田:結構前にディレクターさんに「一度、V(映像)を見ないで来い」と言われたことがあるんです。
というのも、練習しすぎて、自分のプランを崩せなかったり、視野が狭まってディレクションを汲み取れなくなったりしたんですね。なので、セリフの尺や、収録をする上で外せない情報をしっかりチェックしたらそれ以降は掛け合いを大事にしながら本番に挑むことが多いです。
ーー 一度演じてみて、掛け合ってみてから考えるんですね。
内田:そうですね。現場に行ってみないとわからないことはたくさんありますから。実際、芝居中に気持ちが変わることもあるので、そこで合わせています。だからこそ実践的訓練は難しかったんです。画も変わらないですし、ボールド(※)も切れていなかったので(※)。
※ボールド:アフレコ中の映像に映し出される、キャラクターが喋るタイミングの目印となるもの。
※ボールドが切れる:ボールドが途切れて息をするタイミング。
日笠:ボールドが切れてないと尺が分かりづらいんだよね。
内田:そうですね。ボールドが切れていればセリフの呼吸位置がわかります。そうすると、セリフの尺感はもちろん、このセリフのどこを立てたいのかとか、伝えたい意図を解釈する1つになってわかりやすいんです。
小市:そもそもサンラクというキャラクターは被り物をしているから、セリフを口パクに合わせなくていいんですよ。だからこそ自由に演じられますが、その分、大変なところもありますよね。
内田:そうなんだよね。口が動かないということは表情が1つなくなるということなので悩みました。
日笠・小市:うんうん。
内田:あと『シャンフロ』は情報量も多いですから。それこそペン(シルゴン)は説明も多いですし。
日笠:説明キャラだけど、サンラクと違って口パクがあるから。でも私、カタカナが苦手なんです。あとボールドの話がありましたけど、私はボールドが合わない場合の怖いときと、怖くないときの差が激しくて。
内田:なんでですか?(笑)
日笠:なんでだろう? 作品やキャラクターによったり、作品によってはボールドをしっかり守ってほしいと言われることがあるからかもしれない。『シャンフロ』に関しては守りに入ることが多いと思う。
内田:これは声優が一度は経験することというか……。ボールドは尺の決まりを示すものですが、そこに合わせることに必死になってしまって芝居が硬いものになってしまったりする時があるんですよね。
なので、ちゃんとその尺に入れ込む形のアプローチと、尺からはみ出してもお芝居で生まれた気持ちを優先して作るアプローチのどちらもの可能性を考えていく必要があると自分としては思っています。
ーー『シャンフロ』はどちらですか?
内田:いいアプローチがあれば、尺に囚われない芝居を優先してくださることが多いです。
割と芝居優先なので自由に演じさせてもらっています。画の関係で尺は守ってほしいと言われることはありますが。
日笠:ふたりはアドリブが多いけど、ペンシルゴンは冷静に喋るタイプだから守っていました。でも一回無茶振りがあって。
内田:あそこかな?
日笠:ONのセリフでは早く喋って、OFFのセリフはゆっくり喋る、を繰り返してほしいと言われたことがあって。正直、「簡単に言ってくれるな〜」と思いました(笑)。
内田:見ていて、難しいなと思いました(笑)。
日笠:『シャンフロ』の場合、私はタイム(※)を見ず、カット(※)で動くようにしていて。(台本を手にして)実際、セリフが書いてあるカット部分の下に線を入れています。台本を書く人によっては全てのカット部分に線が入っていたりするんですけど、『シャンフロ』はト書き(※)までしか書いていなくて。
※タイム:タイムコードの略。画面に映し出される経過時間。
※カット:区切られた場面のこと。
※ト書き:場面の説明やキャラクターの状態を台本に記したもの。
内田:難しい話になりましたね(笑)。オイカッツォはセリフが早くて大変そうですね。
小市:カッツォに関しては、絵との兼ね合いで、口パクを合わせてほしいと言われることが多かったです。逆にゆっくり目で喋ることもあって、その差は大変でした。
日笠:カッツォでゆっくり喋るのは大変そう。サンラクはモノローグならなんとかなりそうだけど。
小市:かっこいいときはゆっくりでもいけるんですけど、「ワー!」としているときにゆっくり喋るのは難しいですね。
ーーテンポを合わせるのが難しそうですね。
内田:それも仕事です(笑)。僕らは決められた尺の中で芝居を組み立てて、且つ、整合性を取らないといけないんです。
ーー整合性ですか?
内田:基本的に早口のキャラクターでも、尺がゆっくりペースのお話だとそれに合わせて喋らないといけないことがあります。でも、理由なくゆっくり喋ってしまうと聞いている人が違和感を感じてしまう可能性があります。そこで整合性を取るために、どんな演技をもっていくか考える必要があるんです。これはどの作品でもそうですね。毎度、必ず決まった尺があるわけではないですから。
日笠:技術職と言われるのはそういうところだよね。全体的に早く聞こえるようにするために、セリフの頭だけ早くして、中はゆっくり、最後はまた早くする。そういう技術を使うときもあります。
内田:間を作るときもありますよね。
小市:大事なところは立てて、あとはゆっくり喋るとか。
日笠:そうそう。
ーーそれらは台本を読んで判断するんですか?
内田:僕はVを見ながらですね。台本を読んでいるときは自分の感覚、テンポで読んで、Vを見ながらズレを修正していく流れです。
日笠:自律神経が乱れるんですよ〜(笑)。
内田:それは働き過ぎです!
一同:(笑)
日笠:でも楽しいよね。
内田:そうですね。この仕事はいっぱい考えることがあって楽しいです。