新しい『シンカリオン』とは何なのかをもう一度ゼロからやってみよう――『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』ジェイアール東日本企画 鈴木寿広チーフプロデューサーインタビュー
ジェイアール東日本企画・小学館集英社プロダクション・タカラトミーの3社が原案となる、『シンカリオン』シリーズの最新作、TVアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』。
2024年4月7日(日)に初回放送を控える本作は、これまでの『シンカリオン』シリーズとは主人公の年齢や設定、ロゴなどが大きく一新されていることに注目が集まっています。
そこで、『シンカリオン』シリーズのチーフプロデューサーを務めるジェイアール東日本企画の鈴木寿広チーフプロデューサーに、これまでのイメージを一新した『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』について、ロゴや設定から気になるコラボの可能性など第1話の放送に向けて様々なお話を伺いました。
変わるものと変わらないもの、『シンカリオン』の根幹にあるものは何なのか?
ぜひインタビューをお楽しみください!
新しい『シンカリオン』とはをもう一度ゼロからやってみる
――『シンカリオンZ』の放送終了から少し間が空いて、第3期となる『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』が発表されました。本作の制作が決まった経緯を教えてください。
鈴木寿広さん(以下、鈴木):逆質問で恐縮ですが、いち視聴者として『シンカリオンZ』が終わった時に次があるとしたらどうなると思われましたか?
――ファン目線で恐縮ですが、『シンカリオンZ』終了時に第3期の予告が無かったので、いつかシリーズを再開してくれたら良いなとは思っていました。ただ、新幹線が変形して戦うというコンセプト故に登場させられるシンカリオンの種類にも限界がありそうだし、そもそも登場キャラクターも多いので、このまま『シンカリオンZZ(ダブルゼータ)』みたいにして続けていくのは難しいかなとどこかで思っていました。
鈴木:まあ、間違ってはいない意見ですね(笑)。
経緯というほどではないのですが、もともと『シンカリオン』という作品は長くやっていこうと思って始めているものなので、無事に第2期が終わって、じゃあ次は第3期というのは我々の中では普通の流れでした。
ただ、新幹線という実在の乗り物を扱う関係でリアルな世界を描いていく必要があるので、当然ですがロケハンなどの準備が必要だったりして、なかなか継続的にやり続けることが難しいタイトルでもあります。そういった準備を整える期間を踏まえると第3期となる『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』はこのタイミングになった感じですね。
その意味では、我々としては『シンカリオン』という作品を未来永劫やっていくものだと思って始めていたので、自然な流れで第3期に向けて準備が始まったのかなと思います。
――なるほど。この『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』が発表されて、個人的に驚いたのがロゴがスタイリッシュなデザインに一新されていたことです。また、設定も前作までの「新幹線超進化研究所」ではなく「超進化鉄道開発機構(通称ERDA)」という新しい組織に変わっています。これまでの続きというよりは「リブート」のような受け止め方をした方が良いのでしょうか?
鈴木:リブートということは「もう一回ゼロから作り直す」みたいなことですよね。その意味でいくと、そうだと言えると思います。
先ほどの話に戻ってしまうかもしれませんが「リアルな世界を描いていく必要がある」という『シンカリオン』が守らないといけない要素があるので、当然ですがそれを守っていくと『シンカリオンZ』の続きで制作をした場合キャラクターも年齢が上がってしまうんですよ。そこを追いかけていくのもどうなんだという話もあるし、やはり新しい『シンカリオン』というものを見せていかないといけないかなと思いました。
『シンカリオン』らしさやポリシーはちゃんと残しながら、新しい『シンカリオン』とは何なのかをもう一度ゼロからやってみようとすると、
そうするとロゴも変わるよね、設定もこう変わっていくよね、という流れです。
あと、プラレールという玩具があるのも大きいです。もともとはプラレールで遊ぶ未就学児や小学校低学年向けのアニメだったかもしれませんが、幅広い層に見てもらえるアニメにしていきたいという想いもあったので、思い切って今回は設定を変えてみようとなりましたね。
――これまでの主人公は小学生でしたが、今作では年齢が一気に上がって中学二年生になったのもそういう想いがあったからですか?
鈴木:そうですね。ターゲットを広げるという話で言うと、物語に関しても色々と深く描いていきたいという想いもありました。
中学生って子どもから大人に移り変わるタイミングというか、色々と視野や考え方、悩み事みたいな人間として新しい側面が出てくる世代だと思うので、物語を深く描ける要素もあって中学生にしています。
――過去の『シンカリオン』シリーズでは成長して年齢が上がるにつれてシンカリオンに乗れる適合率が下がってしまう設定があったと思いますが、そのあたりは気にせずに新設定・新シリーズとして楽しんだ方が良いのでしょうか?
鈴木:適合率の部分で言うと、確かにそう思われるかもしれません。『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』では「適性値」という設定に変わっていますが、そこはもう見ていただくしかないと思います。
――気になりますね……。作品情報が発表された時から主人公の「大成(おおなり)」という名字が気になっていました。誕生日も鉄道博物館の開館日でもある10月14日ということは、やはり埼玉新都市交通伊奈線(ニューシャトル)の鉄道博物館駅の旧駅名である大成駅やその住所にかけた名前だったりするのでしょうか?
※編集部注:鉄道博物館の住所は「埼玉県さいたま市大宮区大成町3丁目47番」
鈴木:キャラクターの名前を作る時ってとても楽しいんですよ。色々な駅名や用語を積極的に採用して名前を作るというのは今までもやってきています。
もともとは第1期の時から、そういうところから親子の対話が広がったら良いよねと思って始めているんです。そこは『シンカリオン』のお決まり事のひとつになっているので、第3期から電車と関係ない名前を付けてしまうのもおかしいかなと思って今回も過去に倣って名前を付けました。
やはり主人公の名前をどう付けるかというのは難しいじゃないですか。第1期の「速杉(はやすぎ)ハヤト」がすごく出来すぎていたので、何かそういうのがないかなと声に出して検討していた時に「大成タイセイ」という名前がハマったので決定しました。
鉄道博物館がある地域の名前を持ってきたというのは、表面的には分かりづらいと思いますし、気付く人も少ないかもしれません。ただ、例えば鉄博(鉄道博物館)に行った時にもしやと思うとか、そこから親子の会話になれば良いよねという想いはあります。
――まさにそこに引っかかって「大成? もしかして……?」と思っていたので、鈴木さんの狙い通りでした。
鈴木:(笑)。
――差し支えなければ、他にどんな名前の候補があったのか教えていただけますか?
鈴木:もう忘れてしまいましたけど、かなりたくさんの候補がありました。ただ、良いと思う名前って意見が割れるんですよ。最終的にはこの「大成タイセイ」という名前の勢いやノリみたいなもので決まりました。
――「大成」という漢字の字面かもしれませんが、タイセイという名前と組み合わさると正に主人公っぽい名前だと思いました。
鈴木:「大成タイセイ」という名前は、ありそうでない名前ですよね。