お酒やバーの雰囲気はもちろん、人間ドラマも楽しめるアニメ――『バーテンダー 神のグラス』寺島拓篤さん×南條愛乃さんインタビュー｜主人公・佐々倉溜はまさにカクテルのような“味わい深い”キャラクター

城アラキ先生（原作）＆長友健篩先生（作画）による漫画『バーテンダー』。本作のTVアニメ『バーテンダー 神のグラス』が2024年4月3日（水）24:00よりテレビ東京にて放送開始、Lemino、U-NEXT、アニメタイムズ、アニメ放題にて先行配信、ほか各配信プラットホームにて順次配信となります。

本作の主人公・佐々倉溜（ささくら りゅう）は、「神のグラス」と呼ばれる腕を持ち、ある事情でフランスから日本に帰国してきたバーテンダー。そんな彼が作るカクテルが、様々な悩みや事情を抱えた客の心を解きほぐしていく、温かな人間模様を描いた作品です。

アニメイトタイムズでは放送を記念し、キャストインタビューを実施！

佐々倉役の寺島拓篤さんと、佐々倉を自身が務めるホテルのカウンターバーへスカウトしに来た来島美和（くるしま みわ）を演じる南條愛乃さんの対談をお届けします。

原作を読んでいると登場人物だけでなく自分も癒される作品。主人公・溜の第一印象は「変な人」!?

――原作を読んだり、演じてみて感じた、作品の印象や魅力をお聞かせください。

佐々倉溜役・寺島拓篤さん（以下、寺島）：原作を読んだ際、想像以上のお酒の情報量やお酒にまつわる人間ドラマなどに惹かれ、面白さを確信しました。

アニメ化するにあたってシリーズ構成も変わっていることで、作品の味わいが違ってくるので、初見の方だけではなく、原作を読んでいる方も新しい視点で楽しんでいただけると思います。

来島美和役・南條愛乃さん（以下、南條）：バーという場所に、ちょっと疲れていたり、悩んでいたり、弱っている気持ちの人たちが立ち寄って、佐々倉さんや他のバーテンダーの方が作るお酒によって、癒されたり、堅くなった心が解かれたりしていく過程や会話を見て、読んでいる私も癒されました。そしてアニメに美和として出演させていただくことで、更に癒されそうだなと。

寺島：「頑張るぞ」じゃないんだ。

南條：「頑張るぞ」はもちろんなんですが、癒されそうだなと思いました。

――演じられている溜と美和の印象を教えてください。

寺島：佐々倉の第一印象は「変な人だな」と思いました（笑）。バーにいる時と、それ以外の場所での雰囲気が真逆なくらい違っていて、外にいる時はオープンな雰囲気に見えて実はクローズドな人で、バーにいる時はクローズドな雰囲気に見えるけれどオープンだったり、謎の懐を持っている人で。

その人物観も二つの味が楽しめたり、物語が進んでいくともっと深いところまで人間性が見えてきて、最初はどういう人なのかつかめなかったのが段々味わい深くなっていくところに、作品のテーマであるお酒と通じるところがあって、主人公にピッタリな、おもしろい人だなと思いました。

南條：アニメの第1話で、佐々倉さんがスマホに着信があった時に出方がわからなかったのには驚きました。

寺島：なかなか衝撃的だよね。

南條：画面には「横にスワイプして応答」と表示されているのに。美和がスワイプの仕方を教えてあげたんですが、衝撃的なシーンであり、楽しいシーンでした。その印象とバーにいる時のギャップがすごいなと思いました（笑）。

　
私が演じる美和は、原作では最初の頃、一人で奮闘していましたが、アニメでは最初から仕事のパートナーとして（樋口）由香利ちゃんがいてくれるので、原作ではおてんばでアクティブだった美和が、アニメではハツラツとした部分は由香利ちゃんに譲りつつ、先輩らしくふるまっていて。

ですが、いい意味で子供っぽい一面とか真っすぐな部分は変わらず持っていると思ったので、ホテルマンとしてビシっとしたところもありつつ、美和が本来持っている元気な一面や子供っぽい一面が、特におじいちゃんといる時や佐々倉さんと仲良くなっていった時に、にじんで見えたらいいなと思って演じていました。

寺島：来島さんはシンプルに素敵な女性だなと思いました。かわいげもあるし、仕事もできるし、誰とでも分け隔てなく接することができて、「こんな人、なかなかいないよ」と。ただ、佐々倉がどう思っているのかはわかりませんけど（笑）。

南條：そういう恋愛っぽい話も出てくるのかなと思っていたんですが、特にないんですよね（笑）。

寺島：この先あるかもしれないけど。この二人だけではなく、いろいろな人間ドラマに分散させて描いているのがこの作品のおもしろいところだなと思いました。

「自分からお客様にぐいっと行かない」のがバーテンダー・佐々倉溜の在り方

――演じる時に意識した点や、監督から演じる際のアドバイスやディレクションがあった場合は合わせて教えてください。

寺島：「落ち着かせるように」とすごく言われたので、最初は不安でした。自分でもやったことがないくらい（声を）落としていたので、「これ大丈夫かな？　届いているかな？」って。

南條：新鮮だった。

寺島：金城ユリ役の白石涼子さんに「寺島くん、しゃべってた？」と言われたくらい落としていたので、どう仕上がるのかドキドキしていたんですが、アニメを見たら、マイクの力でちゃんと拾っていたので安心しました（笑）。そんな中でどう表現するか、お酒の知識や解説と、お客様の状況に合わせた語りを届けられるか、毎回四苦八苦しながら家で練習していました。

自分的にはもっと伝えたい、声を張りたいところもありましたが、自分からお客様にぐいっと行かないのがバーテンダー・佐々倉溜の在り方なんだなと理解できるまで、最初のうちは戸惑いました。

――佐々倉はバーでは常に丁寧なしゃべり方ですが、外出先で美和と話している時など、普通の青年っぽいしゃべり方になる時もあって。

寺島：バーの中で会う人と外で会う人という線引きが佐々倉の中にしっかりあると思うんです。来島さんとはバーでも外でも会うようになってしまったので、彼の中で自然と壁が崩れているんでしょうね。ホテル・カーディナルに勧誘してくる来島さんや由香利ちゃん、その他のホテル・カーディナルの面々と他のお客様とでは少し対応が変わっているなと感じながらやっていました。

南條：最初に持っていた美和のイメージはハツラツとしていて、真っすぐで、腹が立った時など感情がストレートに出る女の子という感じでしたが、アニメでは由香利ちゃんが最初からいてくれることで、ストレートに感情を出す担当は由香利ちゃんで、美和はしっかりしたほうという捉え方になりました。

　
第1話のアフレコに臨んだ時、「もっと落ち着いて」というディレクションをいただいたので、私が最初に抱いていた美和のイメージよりも、ちょっとお姉さん寄りに演じたほうがいいのかなと。また、「朝10時からの収録で、こんなに声を張らない現場があるんだな」と不思議に思ったりして（笑）。なので私も最初の頃は同じく、「声がちゃんと乗っているのかな？」と心配があったりしました（笑）。

朝10時なのに、収録が終わったら一杯飲みに行きたいような雰囲気で録れたのも新鮮で楽しかったです。

寺島：最初は原作寄りの来島さんをやっていた感じだよね。

南條：そう。なので「抑えて」とか「落ち着いて」とよく言われたし、由香利との差をどうつけるのか悩みました。そういえば、佐々倉さんも最初の登場シーンはもう少し元気で、アニメっぽい感じでアプローチされていたから、「そっちの方向で行くんだ」と私も乗っかっていった部分もありましたが、その後のディレクションで一掃されましたね（笑）。

寺島：結果、由香利だけ（テンションを）上げて。

南條：あの中で上げる晴ちゃん（由香利役・白石晴香さん）も大変だったと思う。

寺島：「私が引っ張るのか！」という感覚だよね。

――美和は仕事に打ち込んでいる時とは違って、プライベートやおじいちゃんといる時はやわらかい感じで。

南條：根っからまじめというキャラクターではなく、まだ成長過程の子供のような一面もたまに見えるとかわいらしくなるかなと思って演じていました。