「最終楽章」にふさわしい、息もつかせぬ展開を毎週テレビの前で見守ってほしい――『響け!ユーフォニアム3』黒沢ともよさん×安済知佳さん×石谷春貴さんインタビュー|久美子、麗奈、秀一の関係性は、まるで「大福」!?【連載第1回】
3人の関係性は、まるで「大福」のよう!?
――昨年劇場で上映された『特別編 響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』では、先輩の3年生たちが部活を引退した後、部長、ドラムメジャー、副部長の幹部職に就任した3人の姿が描かれました。今作では、3人もついに最上級生となっていますが、1年生のときから演じてきたキャラクターの成長や変化については、どのように意識していますか?
安済:この質問は、たぶん私から話すのが良いと思うのですが、麗奈に関しては何にも変わらないです(笑)。
黒沢:あはは、変わらない(笑)。
石谷:そうだね(笑)。
安済:この子は1年生のときからずっと「高坂麗奈」。3年生になっても全然ブレないし、今回も本当に「高坂麗奈」らしさが全面に出てるなと思います。そのことに驚いたし、安心もしました。
黒沢:麗奈は、滝(昇)先生への愛が煮詰まっている(笑)。久美子への愛もそうだけど。
安済:音楽、久美子、滝先生、すべてへの愛が積み重ねられて煮詰まっているよね。
――頭の中はその三つで占められている?
安済:そうなんですよね。なので、部活動や音楽から離れているときの麗奈がどんな風に過ごしているのか、今でも本当に謎です。
黒沢:ご飯の味とかちゃんと分かっているのかな(笑)。
安済:え、そこまで?(笑)
――吹奏楽をするマシーンみたいな話になっていますね(笑)。
石谷:でも、麗奈は音楽に対して真っ直ぐなので、いつも最初に道を切り開いてくれるんですよね。そのときにどうしてもこぼれ落ちてしまう部全体の雰囲気みたいなところを秀一と久美子が拾い上げている。3人の関係性って、ちょっと「大福」みたいだなと僕は思っていて。
――「大福」ですか?
石谷:真ん中のあんこが麗奈で、それを包んでいる皮が久美子。その外にある最後の薄皮や粉みたいなところを秀一が担っている(笑)。僕は『アンサンブルコンテスト』のときから、そういうイメージを持っています。
――では、秀一の成長や変化を感じる部分はありますか? 個人的に1年生の頃は、後に副部長を務めるようなタイプには見えなかったのですが。
石谷:見えなかったですよね(笑)。秀一が副部長に選ばれたのは、久美子との関係性もあったからだと思います。本当の仲間内だけで(幹部を)やると、身内の中で決まることが部活全体の決定にもなってしまうじゃないですか。なので、久美子と関わっていながら、ある程度は外からも見られる人間が必要ということで、秀一がちょうど良いポジションだったのかなって。
成長という意味では、秀一たちだけでなく(演じている)僕たち自身、1年生の頃から積み重ねて来たものもあるのですが、『アンサンブルコンテスト』のアフレコで、最初に音響監督の鶴岡(陽太)さんに、「今回から頭身が少し上がるので、芝居の頭身も上げて大丈夫です」と言われたんです。そこで、チューニングできた感じはありました。
黒沢:秀一はわりと大人になったんじゃない?
石谷:そうかもね。『誓いのフィナーレ』までは、仲の良い(瀧川)ちかおと絡んでいるシーンとか友達同士のシーンも描かれていたんです。でも今回は、より部全体のお話が描かれている感じなので、秀一も中間管理職として頑張っている場面の方が多いかもしれません(笑)。
「部活は楽しくなきゃ」という気持ちはポリシーとしてある
――では、久美子の成長に関して、黒沢さんは、どのように感じていますか?
黒沢:久美子に関しては、2年生が3年生になったから、ここがこう明確に変わった、みたいなことはあまり感じません。でも、いろいろな人に関わるシーンを描いてもらえる役ではあるので、話す相手に年下が増えていった結果、先輩っぽく見えているところはあるかなくらいの印象です。
本人の中には、ずっと(田中)あすか先輩の亡霊がいるから(笑)。たぶん「私、ちゃんと上級生になれているのかな? どうなのかな?」みたいな感覚があるのかなと思います。
――1年生のときに、いろいろな意味で存在感の大きい、スーパーな先輩と出会った影響がまだ残っているのですね。
石谷:**久美子って変わっていない部分も多い気がするから、やっぱり2人(麗奈と久美子)は「類友」だなって思って見てる(笑)。
安済:え~そうかな。
石谷:そうじゃないと惹かれ合わないでしょ。
黒沢:でも、「変わらなきゃ」って思っているのに変われない人と、「変わりたくない」って思っている人だから、そこは明確に違う気もするよね。
安済:たしかに。
石谷:それもありつつ、変わらないイメージかな。
安済:でも、後輩に対しての言葉の掛け具合で「久美子、大人だな~」って感じる場面が、今回いっぱいあるんですよ。
黒沢:判で押したような対応だったりもするけどね(笑)。
安済:でも前はそれができなかったじゃない? 一個一個に「あ、あ、」って戸惑った反応になっていたのに、今回はちゃんと先輩になってるなって。
石谷:部長として大勢の前で話すときとかは緊張しているんですが、後輩と1対1とかの少人数になったときの話し方とかは、すごく先輩だって感じますね。
安済:久美子と麗奈が一緒にいるところに後輩が来たとき、麗奈の「久美子に任せとけば良い感」がすごいんですよ。「おはよう」しか言わない(笑)。
石谷:全然喋らないよね(笑)。
黒沢:挨拶したら、「はい、私は失礼しまーす」みたいな感じ(笑)。
――演奏面のリーダーであるドラムメジャーの麗奈としては、部全体の演奏のレベルを上げることに集中している感じなのでしょうか?
安済:それが自分の仕事だと強く意識していることもあって、これまで以上に熱のこもった音楽への姿勢をみんなに見せつけています(笑)。
―― 一方の久美子は、部長としての自分の役割については、どのように考えていると思いますか?
黒沢:中学時代の辛い思い出もあるので、「部活は楽しくなきゃ」という気持ちはポリシーとしてあると思うんです。でも、実力主義でやりたい麗奈にほだされているというか、自分も「全国で金を取りたい」と思ってしまったという刻印みたいなものが胸に押されているから……。
石谷:違うことをやろうとしたら痛くなるの?
安済:焼き印がだんだんズキズキしててくるんだ(笑)。
黒沢:もうほぼゾンビになっているけれど、ふとした瞬間に人間としての感情が戻るみたいな感じで、ふと「部活は楽しくなきゃ!」って気持ちになるんですよね。でも、「実力主義で全国を目指すと決めたのだから」という気持ちもある。「部長」という焼き印も押されているから(笑)。
安済:いろいろと押されているね。
石谷:「あすか先輩」っていう刻印も押されているし。
黒沢:そうそう。久美子がこれまでに出会ってきた「この人はすごい」と思う人の性質が、本人の人間性とは違っているんですよね。なので、本人の性質とは違うけれど、「きっとこれが良いんだ」と思っているものを武器として携えているというか。本人は炎属性なのに、氷の魔法で戦おうとしているみたいな(笑)。そういう感じもあって、ちょっと部長として、がんじがらめになっていたりもするのかなって思います。
――3期スタート時点での、久美子と麗奈の関係性についてはどのように捉えていますか?
黒沢:夫婦です。
安済:自他ともに認める夫婦ですね。
黒沢:新婚って感じ。
――熟年夫婦ではなく、新婚なのですね。
黒沢:3期の収録が始まる前は、熟年夫婦みたいなカップルだと思っていました。でもアフレコが進んできて、「あれはまだ新婚だったのでは?」と思い始めている私がいます(笑)。
安済:分かる分かる。
石谷:ここからスタートしていく感じね。
黒沢:そうそう。「結婚ってゴールじゃなかったんだ」みたいな。
安済:それくらい、3期でもいろいろある感じです。
――では、まだファンが見たことない2人の関係性が描かれていくわけですね。
黒沢:見たことないというか、見たくなかったというか……。
安済:見たかったものもあると思うんですけど。私は「これが青春か」って思いました(笑)。