「『黒執事』を一生の仕事 とする」という覚悟ができた――春アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』セバスチャン・ミカエリス役 小野大輔さんインタビュー|新シリーズでの新たなセバスチャンの演技とは
P4メンバーはそれぞれ個が立った美少年たち。演者の熱演によってまとまったグループに
――新キャラクターのレドモンド、ブルーアー、グリーンヒル、バイオレットのP4メンバーの印象は?
小野:マンガで読んでいる時は、「美少年4人組出てきたな。」と思いました。
そして声が付くことによって、それぞれの個が立っていて、ものすごく濃密なキャラクターになりました。エグいくらいの個性です。
一番如実に出ていたのはレドモンドです。彼の血筋的なバックボーンがあって、マンガを読んでいる時はシンプルに納得していましたが、渡部(俊樹)くんのお芝居を聞いて衝撃と感動を受けました。
後で尋ねてみたら、渡部くんは『黒執事』がめちゃめちゃ好きで、マンガもアニメも見ていたそうです。そこで「なるほど。原作愛があるからだ」と。真綾ちゃんから「渡部くんっていつもあんなお芝居なのかな?」と尋ねられて、「さすがにあのお芝居一本でやっていないと思うよ」と返答したら、「でも、ずっとあのしゃべり方ですよ」というやり取りがあって。そこで渡部くんの事務所のボイスサンプルを聞いてみたら、すごくストレートなナレーションが入っていたので、「ほら!真綾ちゃん、やっぱり違うよ!いつもあんなしゃべり方じゃないんだよ」って(笑)。
原作を読んでいるなら深くうなずけるようなキャラクター造形をしていて感動したし、彼がピーキーな(トガッた)お芝居をしているところに、他の3人もピーキーなお芝居でバランスを取っているんです。それぞれが意識しているところがあると思いますが、みんながピーキーなことをすると、普通ならそれぞれ全然違う方向に行くと思うんです。
でもそれがP4という一つのグループのまとまりにつながっているし、全員が個性を目一杯表現し切っているからこそ、4つの柱が立っていて、その4本柱がピンと張った上に、すごく壮大な建物が立っている感覚がありました。
――他のメンバーについてはいかがですか?
小野:バイオレット役の橘(龍丸)くんは、こっちが驚くほどの小さい声でしゃべっていて。そのアプローチは演者なら怖いんですよ。ともすれば聞こえないし、「何を表現しているの?」となってしまう危険性もあるんですが、しっかり芯を持ったまま、低いトーンでささやくようなしゃべり方をしているのが見事だなと。
一番いろいろな引き出しを持っているであろう武内(駿輔)くんがまっすぐに豪胆なグリーンヒルを演じていますが、彼の声の一番いいところを使っているから、ものすごく響いてきて。
もう一人のブルーアーは冷静沈着に見えて、実は熱い男というのを榎木(淳弥)くんがどちらにも振れるような、ひょうひょうと自由な立ち位置でお芝居していて。彼の第一声から「冷静なだけじゃないね、君」というのが出ているのが本当に見事だなと。
今の若手って達者だなと思ったのと、『黒執事』が好きでずっと追いかけてくれる方も納得ができるお芝居を、四者四様でしているなと思いました。
「『黒執事』を一生の仕事とする」という覚悟ができた
――実際に映像をご覧になった感想をお聞かせください。
小野:今回監督を担当される岡田堅二朗さんは中途半端な仕事は絶対にできないという矜持を感じます。 作品の美学を守ってくださるスタッフさんがいるなら好きにできるなと思うくらい、映像が完璧でした。想像通りだし、予想を超えていて、見事です。並々ならぬ熱意を感じます。
ちなみに音響監督も今回から(明田川)仁さんが担当されることになって、仁さんは最初、「俺が『黒執事』やってもいいのかな」と言っていましたが、僕にとっては仁さんで良かったと思いました。僕のことも真綾ちゃんのこともよく知ってくださっているし、これから新しいシリーズをやることになって、役者は否が応でも緊張するし、気負うんです。そんな中でも仁さんが「お、いい感じ。OK」と言ってくださることが、どれだけ心の支えになることか。やっぱり一人ではモノ作りはできないなと改めて思いました。
あとこの『寄宿学校編』 は、ギャグシーンが結構多いんです。仁さんはギャグが得意なので、「仁さんが録ってくれるなら、これくらいふざけられるな」という安心感があるし、みんなもノリノリでやっていて。新しい『黒執事』として、すべてがいい方向に向かっているなと思えて、ありがたかったです。
――原作はまだ続いていて、この「寄宿学校編」以降はスケールも大きくなって、さらにおもしろくなっていくので、叶うなら原作のすべてをアニメでも見てみたいです。
小野:僕もそう思いました。例えばファントムハイヴ家の使用人のそれぞれのバックボーンを描くなんて思わなかったですから。それはファンにとってはご褒美で、「知りたかったことを全部描いてくれるんだ」って。『黒執事』ですから絶対にファンの期待を裏切りません。
枢先生がその矜持で描いてくださるなら、僕らアニメのキャスト、スタッフ陣も絶対に期待に応えたいと思っているし、僕もずっとセバスチャンで居続けなければいけないな、ブレがあってはいけないなと思いました。『寄宿学校編』を演じることで、「『黒執事』を一生の仕事とする」という覚悟ができました。
――最後に、皆さんへメッセージをお願いします。
小野:ずっと『黒執事』を愛してくださっている皆さん、お待たせしました。そしてこのシリーズから『黒執事』に触れる方は、ようこそ!『黒執事』の世界へ。
15年という長い年月を重ねてきて、僕たちも大切に育んできましたが、この『寄宿学校編』はある種、王道であるし、ここまで紡いできたものが一度終わって、これから新しく進んでいく、『黒執事』にとっては再出発的なシリーズでもあります。
これまで応援してくださっているファンの方々はもちろん、新しく見てくれる方も臆せずに楽しんでいただきたいです。格式高い世界観だと思われるかもしれませんが、実は敷居が低くて、誰でも楽しめるエンターテインメントです。これからも枢先生が描き続ける限り、僕もセバスチャンを演じ続けたいと思っていますので、末永く応援よろしくお願いします。
作品概要
あらすじ
名門貴族ファントムハイヴ家の執事セバスチャン・ミカエリスは13歳の主人シエル・ファントムハイヴとともに“女王の番犬”として裏社会の汚れ仕事を請け負っていた。
ある日、シエルの元に女王から、英国屈指の名門寄宿学校・ウェストン校に通う親族・デリックほか複数人の生徒が音信不通になっているという手紙が届く。
かくしてセバスチャンとシエルは、事件を調査するためにウェストン校に潜入する。事件の真相とは…?
キャスト
(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler