「菫子を通して、自分を奮起させる機会を得ることができるんじゃないかなって」『怪異と乙女と神隠し』緒川菫子役・ファイルーズあいさんインタビュー｜菫子と向き合ったことで得たもの、感じたこと。

心の中の悪魔「まさしく怪異かも」

──今後さまざまなキャラクターが登場すると思いますが、ファイルーズさんが注目しているキャラクターはいますか？

ファイルーズ：畦目先生（CV.堀江由衣）ですかね。畦目先生は序盤に登場しますが、今後もいろいろとあるので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

──本作の全体的な収録を通して、ご自身のお芝居に対する気づきや発見などはありましたか？

ファイルーズ：変化ではないのですが、菫子を見て初心を思い出しました。自分でこういうことを言ってはいけないかもしれませんが、今すごくお仕事をいただけることができて、お仕事をもらうたびに、自分が必要とされているんだと実感ができてすごく嬉しいんです。どんなに忙しくなっても、忙しくなりたくて頑張ってきていたので、本当に本当に、いま人生を生きてる！って感じがしています。

ただ、本当に疲れが溜まってくると、自分の心に余裕がなくなって「どうしたら質の良い台本チェックができるかな」ではなくて、「どうしたらこの数をこなせるか」っていう考えに及んでしまう瞬間があるんですね。

でも菫子を見ていると初心を思い出すことができて。さきほど話した独白のシーンにしかり、今まさに菫子のような葛藤を抱えて、夢を追い続けるか、夢を諦めて就職をするかという瀬戸際で悩んでいる人たちもたくさんいる中で、自分は本当に恵まれているんだと菫子を通して改めて実感しました。自分を見つめ直す良い機会になりましたね。

──胸に染みるお話です。でもやはり、ファイルーズさんも心に余裕がなくなってしまうことがあるんですね。

ファイルーズ：あります、あります。人間ですもの。

──そういう時ってどうやって気分を切り替えてるんですか？

ファイルーズ：マインドフルネスです（笑）。

──へえ！　瞑想ですか？

ファイルーズ：そうです！　最初は「目をつぶって深呼吸をして、この怒りが収まるなら世話ねぇわ！」なんて疑心暗鬼だったんですけども（笑）、いざやってみたら仏のような気持ちになりました！　これももしかしたら怪異かもしれませんね。むしろ怒っているときにこそ心の中に悪魔がいて、あの「！」の標識が立っているのかもしれません。心の中の悪魔って、自分自身が強くなって、自分で倒すしかないじゃないですか。

──その通りですね。

ファイルーズ：だったら、私がここで不機嫌でいても良いことなんてひとつもないしって。例えば私が誰かの悪口を言って、その時は共感を得られて「嫌だよね、私も嫌いだよ」ってなったとしても、何も良いことってないじゃないですか。その一瞬が気持ちが良いだけで、しかも自分の評価が下がるだけ。だったら、心の中の悪魔を自分で鎮める。それが私なりのマインドフルネスです。あくまで私なりの、ですけども。

──俄然興味が湧いてきました！

ファイルーズ：今は瞑想のアプリもあるので、結構気軽にできますよ！　1日2分でも5分でもリフレッシュになりますね。それでも全部が全部できているわけではなくて。心の中の悪魔に負けることもあります。その時は日記です！

──ひたすら気持ちを書いていくわけですね。

ファイルーズ：文字を書くって大事な気がします。菫子もそうですし。コーピングって言うみたいですね。すぐに文字化するところは菫子に似ているかもしれません。

──それこそファイルーズさんは本に出てくる知らない単語や読み方をメモされていたと。

ファイルーズ：そうなんです。小説が好きでよく読んでいて、そこに出てきた知らない漢字を書いていました。

声優を目指している方…もし良かったら今日から、日常や本の中で目にした知らない単語・読み方がわからなかった単語をぜひメモに残してみてください🙏🏻✨

この前のインスタライブでもお話ししましたが、わたしが声優養成所に入る前から独学でやっていた勉強で、これは本当にやって良かったです→ pic.twitter.com/CBeiiqHY3e
— ファイルーズあい｜Fairouz Ai (@fairouzzzzzz) July 9, 2023

──すごく良い方法だなって。真似したいと思いつつも、最近は電子書籍でそのまま調べてしまうことが多くて、それでそのままメモし忘れてしまって……ということが。

ファイルーズ：あ、それはいい方法がありますよ！　私も電子書籍で読むことが多いんですけど、携帯内の辞書で調べたら、そのままスクショを撮っておくんです。で、そのスクショのフォルダに入ったものをあとでメモしています。私もその場ですぐにはメモができていなかったので、スクショを撮って帰宅してからノートに取っていました。

──個人的にめちゃくちゃ学びになっております……！

ファイルーズ：いや、それこそ私自身『怪異と乙女と神隠し』の話を通して、自分を見つめ直すことができているので、良い刺激をいただいています。

──それにしても、文字を書くのって本当に大切ですね。

ファイルーズ：そう思います。でも文字を書くのがうまいわけではないですし、漢字もよく間違えるんです（苦笑）。でも自分の手で書いた文字ってあとから読むと面白くて。丁寧に書いている日は「時間に余裕があったんだな」と思うし、なぐり書きの日は余裕がなかったことが分かるし。文字に感情が表れているんですよね。オーディションがうまくいかなくて泣きながら書いた日は、文字が滲んでいますし……文字には魂がこもるので、私はデジタルよりも、手で書くことをおすすめしたいです。

──それこそ、さきほどの句読点による間の取り方や行間を読むような表現方法、豊富な語彙力はそういうところからもきているんだろうなと……。

ファイルーズ：わあ、ありがとうございます。でも本当に、菫子のように初心を大切にしたいと思っています。

──ところで、小説が好きというお話がありましたが、ファイルーズさんが人生を変えられた小説はありますか？

ファイルーズ：人生を変えたとはまた違うかもしれませんが、『カイジ「命より重い！」お金の話』『カイジ「勝つべくして勝つ! 」働き方の話』の2冊！　めちゃくちゃ面白いです！　本当にめちゃくちゃ良いです。

あと『極道放浪記』（浅田次郎）が好きでした。昔同じバイト先だったおじさんに勧められたんです。「あいちゃん、こういうの好きそうだから絶対に読んだほうがいいよ」って。面白かったです。

それと貴志祐介さんの『悪の教典』、『黒い家』もめちゃくちゃ良かったし、特に『黒い家』は怖かった。小説であんなに怖かったのは初めてでした。『悪の教典』は先に映画を見ていたので、映像が頭に入っていたのですが、『黒い家』は背筋が凍りました。活字でそんな気持ちになるとは思っていなかったので、私の中で革命的な本でしたね。

──『黒い家』、私も読んでいて怖かったです。あっという間に時間になってしまったので、最後に、放送を楽しみにされている方にお一言いただけたら嬉しいです。

ファイルーズ：オカルト好きな方はもちろん、今夢を追い続けて葛藤している方、現実と理想のギャップに心がついてこない方、いろいろな方に見ていただきたいなと思っています。菫子を通して、自分を奮起させる機会を得ることができるんじゃないかなと。

また、実際に伝承のある妖怪から噂噺まで、幅広くいろいろな怪異が登場します。気になったエピソードがあれば、調べてみて、オカルト沼にハマっていただけたらと思っています！

[インタビュー・文／逆井マリ]

TVアニメ『怪異と乙女と神隠し』作品情報

2024年4月10日（水）より放送・配信開始

AT-X　4月10日より　毎週水曜　22：30～

【リピート放送】毎週（金）10：30～／毎週（火）16：30～
TOKYO MX　4月10日より　毎週水曜　24：00～
BS日テレ　4月10日より　毎週水曜　24：00～
カンテレ　4月11日より　毎週木曜　26：55～

dアニメストア　U-NEXT　アニメ放題　4月10日（水）より毎週水曜23:30～
ほか、各サイトにて配信

※放送開始日・放送時間は変更となる場合がございます。予めご了承ください。

メインスタッフ

原作：ぬじま　「怪異と乙女と神隠し」（小学館「やわらかスピリッツ」連載中）
監督・シリーズ構成・脚本：望月智充
キャラクターデザイン・総作画監督：谷拓也
プロップデザイン：秋篠Denforword日和
美術監督：榊󠄀枝利行
色彩設計：一瀬美代子
撮影監督：斉藤朋美
編集：宇都宮正記
音響監督：郷文裕貴
音響効果：出雲範子
音響制作：dugout
オープニング主題歌：「ハザードシンボル」　歌：遊遊
エンディング主題歌：「朱く染めて心臓」　歌：大渕野々花
音楽：小西香葉・近藤由紀夫
音楽制作：フライングドッグ
アニメーション制作：ゼロジー
製作：「怪異と乙女と神隠し」製作委員会