この記事をかいた人
- タイラ
- 99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えない間「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行いライターに。
ーーあのさんや幾田りらさんのお芝居を映像で見て、いかがでしたか?
内山:素晴らしいなと思いました。まず、キャラクターにぴったりという点で完璧なキャスティングだなと。おふたりの声質が活きたキャラクターですよね。
前章・後章を通してキャラクターの日常だけじゃなくて、より幼い時期の声で演じたり、激しく自分の感情を表現したりするシーンもある。日常・非日常どちらのシーンも見事に表現なさっているので素晴らしいなと思います。
ーー内山さんから見ても、非の打ち所のないクオリティになっていると。本作品は群像劇的な構造にもなっており、キャラクターが多数登場しますが内山さんが気になるキャラクターはどのキャラクターでしょうか?
内山:まあ、中川ひろし(CV:諏訪部順一)になってしまいますよね。原作を読んでいても大変気になるキャラクターですし、諏訪部さんの声がついて、さらに強力になったこともあります。
キャッチーで愛されるキャラクターだし、物語の本筋にもしっかりと関わってくるんですよね。原作を読み返していると、ひろし意外とやるなと。
おんたん(中川凰蘭)に対して、実はとても重要なことを言っている。目の前の大切な人を守るという教えがあったことで、おんたんの気持ちが固まって、門出たちとの関係性もまた変わっていくので、「ひろしが世界の命運を握っているのでは?」とも思えます。コミカルなだけではなく重要な鍵を握っている。
ーーその他に、内山さんが視聴者のみなさんに見逃さないようにして欲しいポイントはありますか?
内山:原作を読み終わった後に「……ということは?」って思って、もう一度読みたくなるんですよね。それは今回の映画も同じです。物語に驚くべき仕掛けがあるので、2周目が楽しい作品だと思います。お話の構造や時系列に注目してほしいです。
ーー小比類巻がメインとなる見どころとしては、入野自由さん演じる大葉圭太とのシーンもありますね。収録はいかがでしたか?
内山:小比類巻は、大葉とは意見が異なる立場にあります。そのシーンでは、小比類巻が選んだ道の先の、成熟した姿を表現しなければいけないと思いましたし、物語的にもとても盛り上がるシーンだったので、迫力を出したいなと思いました。
ーー冒頭で、作品の構造・構想のお話がありましたが、好きなところや、刺さった部分はどこでしょう。
内山:いろんな正義がぶつかり合っているというか。読者や観客の方々は門出やおんたん目線になると思うんですが、他の登場人物たちにも、それぞれの社会や事情があることがだんだんわかっていくので、結局みんなそれぞれが大変なんだな〜と。画的にもお話的にも、ハードな部分も出てくるじゃないですか。
ーー後半は特にそうですね。
内山:はい。何が正義で、何が悪なのか。全体の構造を見た時に凄く悩みますよね。
途中、ある事態が起きたときにどうしてこんなことになってしまったんだろうと思って。それぞれが信じる正義や行動原理は理解できるのですが、そのすべてが組み合わさった時に、世界は思わぬ方向に進んでいくという。
ーーお話を聞いていて思ったんですが、内山さんは普段から、物語や作品を「構造」で分析されているんですか?
内山:確かに、そうですね。なんかこうクセになるというか、職業的にもそうなりがちかもしれません。
ーー役を演じる上で必要な目線なんですかね。
内山:このキャラクターはこの作品の中で、こういう役割を担うキャラクターなんだなとか、単純に正義と悪の悪役側だなとか。悪役は悪役なりの正義があって、こういう型なんだろうなと考えていくことも多いですね。
ーーでは、構造的に考えると、門出やおんたんが居て、国家があって、小比類巻はどこに位置しているんでしょうか?
内山:どこなんでしょうね〜、第3勢力という言い方も違うしな。勢力が色々ありすぎますよね。
日本政府の中での思惑のぶつかり合いも描かれているし、小さい人間関係を出発点に、国家や世界全体に広がっていくダイナミックさが魅力的だなと思います。
ーー作品のテーマや、作品から内山さんが受け取ったメッセージとしては「正義のぶつかり合い」と。
内山:はい。あと、SF的展開もとても面白いので、そこもひとつのテーマかなと。
ーー内山さんはかなりの映画好きだとお聞きしているのですが、SFがやっぱりお好きなんですか?
内山:そこも刺さったポイントです。でも、フィクションや映画をジャンルで選ぶことはあまりないんです。SFは気になるテーマが多いですけどね。
ーーその他の浅野いにお先生の作品には触れていますか?
内山:『ソラニン』と短編をいくつか読んだかと思います。
ーー浅野先生の世界観はお好きですか?
内山:漫画でしかできないことを追求なさっているのが凄いですよね。『デデデデ』は高校生たちの日常生活の表現がまず魅力的だけど、そこに非日常が訪れる。どちらの要素も非常に面白いので、強力な漫画だなと思いました。
ーー非日常の中での、日常が本作の特徴ですが、内山さんが彼女たちと同じような状況になった際、どのような行動を取ると思いますか?
内山:えー! どうするのかな〜。東京から出るのか出ないのかという話しをするシーンがあるじゃないですか。東京は危ないって言われても、明日の仕事があるしな〜って思っちゃうかも(笑)。
非日常を目の前にしているのに、そうは言ってもな……という感覚は凄く分かりますね。僕も、目の前の日常を優先しちゃいそうだなと思うし、逃げたほうがいいんじゃね? ってなれるのかな。
それはもしかすると、強引に日常を続けることで、安心を得ようとしているのかもしれないですね。
ーーそれはキャラクターたちも同じ気持ちなのかもしれません。現在は、実際に、非日常的なことが立て続けに起きて、社会もエンターテイメント業界も変化があったと思います。内山さん自身の心境やお仕事のあり方にも変化がありましたか?
内山:もちろんコロナ禍で、アフレコの仕方は変わりましたよね。そこから、社会を元通りに戻そうという流れになり、この業界もそれに合わせてまた変わりつつあります。
コロナ禍による巣ごもり生活も影響したのか、どんどん加速度的により多くの方々が日本のアニメを楽しむようになりましたよね。
ーーたくさんのサブスクリプションサービスが普及しましたね。
内山:世間により届きやすい状況になっているんじゃないかと。配信のおかげで世界にも届きやすくなりました。これは、10年前などと比較しても明らかだと思います。
海外のイベントに参加すると、目の前のお客さんを見て「声優の仕事って東京にいないといけないし、都内のスタジオをただめぐる日々なのに、ちゃんと世界に届いているんだな」と思えるし、日本での放送からあまり時間を置かずに海外へ届けられるようになったのは、アニメ業界にとって良いことだと思います。
『デデデデ』も日本のお客さんだけではなく、世界中に届けばいいなと思っています。
ーー最後に、原作を知っている方、原作を知らない方に向けて最後にメッセージを一言ずつお願いできればと思います。
内山:知ってる方は絶対に見たほうがいいですよ!(笑)。あの原作に色がついて、声がついて、そのまま動き出したような映像なので、期待を裏切られることは無いですし、違うメディアになっているからこその感動や楽しさがあるので、絶対に見たほうがいいと思います。
原作を知らない方は、どちらから入っても大丈夫です。原作を読んでからでもいいですし、何も知らない状態で見ても、ついていけないなんてことはないです。
どんな触れ方をしても絶対に面白い作品なので、なんでもありです。 ぜひ、劇場に足を運んでみてください。
[インタビュー/タイラ 写真/MoA]
99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えなかったので、「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行い、ライターに舵をきりました。面白いコンテンツを発掘して、壁に向かってプレゼンするか記事にしています。アニメ、お笑い、音楽、格闘ゲーム、読書など余暇を楽しませてくれるエンタメや可愛い女の子の絵が好きです。なんでもやります!