デクの信念を肯定したい。“見え方の違い”がキーとなった第6期、そして第7期へーー『僕のヒーローアカデミア(第7期)』緑谷出久役・山下大輝さんインタビュー
見え方の違いが複雑な物語展開を生み出す
ーーそして後半、1年A組の絆に感動した人も多かったのではないかなと思います。
山下:やっぱり1年A組のみんなの物語なんですよね。話はどんどん大きくなっているけど、彼らの成長の物語、最高のヒーローになるまでの物語という主軸は一切ブレていないんです。デクだって、すごく大きく遠い存在になったかのように見えましたが、最後は「これが『ヒロアカ』なんだ」っていう安心感があって。そんな雰囲気で締めくくられたからこそ、ここからがスタートなんだなと感じました。
ーー“黒いヒーロー”となって、すべてをひとりで抱えて戦うデクをご覧になっていかがでしたか?
山下:僕自身、演じているキャラクターの考えを理解して、誰よりも肯定していきたいと思っています。だからこそ第6期の後半はすごく主観的にデクのことを見ていたんですけど、そのうえであの時の彼の選択は最善だったなと。孤独で闇を抱えているように映っていたから敵(ヴィラン)のようにも見えたかもしれません。でも僕としては全てを自分が引き受けるんだ、という強い覚悟を感じました。
ここも見え方の違いなんですよね。彼としてもあれが一番の選択だと信じていたんですけど、周りのみんなはそうしてほしくないから、互いの考えが絡み合い、複雑な話になって。もはやひとつの想いが呪いともいえるくらいになっていました。
ーーひとりで戦っていたこともあり、相当役に入り込んでいたのでは?
山下:孤独な戦いでした。オールマイト、エンデヴァー、ホークス、ベストジーニストとチームアップこそしていたものの、情報の共有をするだけで、結局はひとりで戦っていましたから。
そのきっかけはレディ・ナガンでしたが、彼女が僅かな希望を掴もうとしたところでオール・フォー・ワンのあの所業。そこでデクのスイッチが入ってしまったんですよね。そこからオール・フォー・ワンしか見えなくなりましたし、追い打ちをかけるように、デクが大事にしていた「次は君だ」の言葉。本当に容赦ないですよね。客観的に見て、どこまで追い詰めるんだと思いました。
ーーレディ・ナガン戦は大きなきっかけになりましたね。
山下:あの戦いをきっかけに、自分はそういう運命にあるんだ、と思わされてしまって。そして、その運命に友達を巻き込まないためにひとりでの戦いを選んだんです。それくらい彼の覚悟は太くて曲げられないものでした。後半、曲げられてしまいましたけど、それくらいしないと揺らがないんだと改めて思いましたね。
ーー暴走しているように見えましたが、デクはデクで、己の信じる道を突き進んだわけですよね。
山下:そうですね。あのときは誰の目も見ていないようなセリフに聞こえたそうですが、僕はひとりで戦う覚悟で喋っていたので「あのときのデクは独りよがりでわがままだった」と言われるまでは周りからの見え方に気付かなくて。その話を聞いて、周りからはそう見えていたんだなと面白く思いました。
ーーマスクを被っていたから表情を読み取りづらかったというのも関係していそうですね。
山下:あれは物理的に“見ない”ように、“聞こえない”ようにしていたんですよ。見てしまうと自分が揺らいでしまうことをわかっているからですね。そうならないよう、ただ一点を見据えていたと考えると、改めて強い決意だったんだなと思います。
ーーでは演じるうえでは表情を想像しながら?
山下:そうですね。とにかく1点だけを見つめてひた走る一生懸命な子として演じました。