Netflix映画『Ultraman: Rising(ウルトラマン: ライジング)』サトウ・ケン役・山田裕貴さんインタビュー|役を通じて辿る追憶とヒーローの存在意義。<変わりたい>と思っていた時期に出会うべくして出会った作品
2024年6月14日(金)より、Netflix映画『Ultraman: Rising(ウルトラマン: ライジング)』が全世界独占配信開始となります。
親子、家族をテーマに、新たなウルトラマンの物語が描かれる今作。野球界のスーパースターであり、ウルトラマンでもある主人公・サトウ・ケンは、あるきっかけから赤ちゃん怪獣・エミの世話を任されることになり……。
アニメイトタイムズでは、今作でサトウ・ケンを演じた山田裕貴さんへのインタビューを実施。独自の視点から作品の魅力を語っていただいたほか、ヒーローに対する思い入れや向き合い方についても、たっぷりとお話しいただきました。
ウルトラマンと過ごした幼少期の思い出
ーーまずは、山田さんとウルトラマンの思い出について教えていただけますか。
サトウ・ケン役・山田裕貴さん(以下、山田):小さい頃に『ウルトラセブン』を観たんですけど、メガネ(ウルトラアイ)を掛けて変身するという設定が印象に残っています。それから、『ウルトラマンティガ』『ウルトラマンダイナ』『ウルトラマンガイア』も好きでした。『ウルトラマンティガ』はV6さんが主題歌を担当されていましたよね。今でも井ノ原さんに直接お会いすると、歌いたくなります。
ーー歌いたくなるんですか!?
山田:自分でもこの衝動は何なんだろうと思っています……。以前、井ノ原さんの前で口ずさんでみたら、「知ってくれてるの!?」って。本編に出演されていたのは、長野博さんですけど(笑)。あとは『ウルトラマンゼアス』も、母親と一緒に映画館に観に行った記憶があります。
ーーウルトラマンと一緒に育ってきたんですね。そういう意味では、今作への出演もかなり嬉しい出来事だったのでは?
山田:そうですね。戦隊を1年間やって、映画ではライダーにも変身して、最近ではゴジラとも戦ったので。「次はウルトラマンだ!」と思っていたわけではないですけど、段々制覇していると思うと嬉しくなりました。
ーー山田さんがウルトラマンというヒーローに感じた魅力についてもお聞きしたいです。
山田:(腕をクロスさせて)やはり必殺技のポーズですね。あとは、カラータイマーじゃないでしょうか。今作のカラータイマーは、サトウ・ケンの精神状態を現したものですが、ウルトラマンと言えば「3分しか戦えない」という設定が頭に浮かびます。子供の頃の僕は、「カップラーメン作っている間に、終わっちゃうじゃん!」と言っていました(笑)。
サトウ・ケンという”人間“に強く共感した
ーー親子の絆や子育てが軸となる今作の物語については、どのように感じられましたか?
山田:サトウ・ケンという人間や劇中で描かれる父と子の関係に対して、自分自身と似たものを感じたんです。僕も子供時代、プロ野球選手だった父に対して、自分の思いを上手く伝えられないことがありました。サトウ・ケンの姿に、父との関係を重ねてしまう瞬間が沢山あったんです。「分かる。そういうふうに悩むよな」「誰も味方がいないように感じるよな」って。
ーーサトウ・ケンという人物の在り方に共感したんですね。
山田:ただ、僕は父にハッキリと思っていることを言えない性格だったので、表現の仕方は違うなと思います。別に仲が悪いわけではなくて、僕は喋らなくなるタイプだったんですよ。大人になってから「もっと喋っておけば良かった」と思うこともありました。
サトウ・ケンは思っていることをハッキリぶつけて、「もっと気にしてほしい」という感情をストレートに表しているんだと思います。
ーーサトウ・ケンが野球選手とウルトラマンを両立させながら、育児に励むシーンは特に印象的でした。
山田:僕はもともと心理学者か保育士になりたかったくらい、子どもが好きなんです。でも、好きという感情だけでは乗り越えられないほど、育児って大変なんだろうなと。怪獣の子供を育てようとするサトウ・ケンの行動は素晴らしいと思いますが、その一方で難しい選択をしたなと思いました。
ウルトラマンはウルトラマンというだけで大変ですし、スーパースターという肩書きも、ある意味職業みたいなものだと思うんです。僕は自分の仕事だけで精一杯なので、それに加えてウルトラマンもやっていたら、「多分全てが上手くいってないだろうな……」と(笑)。何役もこなしているサトウ・ケンに対しては、強いリスペクトがあります。
ーー中盤では、モンタージュで彼の奮闘ぶりが描かれていましたね。
山田:実際には、描かれている以上の苦労があったんじゃないでしょうか。あそこだけで作品を一本作ることができると思います。あとは、成績が落ちていく選手を使い続けるシムラ監督の「とにかく選手を信じる」という采配にも脱帽しました(笑)。
ーー(笑)。今作は、ウルトラマンというヒーローの描き方もかなり独特だと感じました。
山田:人間味に溢れていて良いですよね。あまり前のめりに怪獣を倒そうとしていないというか。実際にぶっ飛ばしてはいるけど、「なぁ話聞けよ!」みたいな。過去のシリーズにウルトラマンと宇宙人がちゃぶ台で話し合うエピソード(『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」)があると聞いて、一度話し合おうというスタンスがとても素敵だなと思いました。
個人的には、「ウルトラマンだって完璧じゃない」という描き方もすごく好きでした。今の世の中は、憧れることで他者を神格化しすぎて、間違いがおきたときに一斉に非難してしまうじゃないですか。今作はサトウ・ケンの成長物語でもあるので、ウルトラマンになっているときも、人間であることを忘れないようにしたいと思いました。
ーーその他にサトウ・ケンを演じるうえで、大切にしたことはありますか?
山田:先ほども言った通り、この役には共感できる部分が多くて、自分自身を追憶する感覚というか、それくらい彼の気持ちに理解できないものがなかったんです。ただ、練習用にいただいた映像には、海外の俳優さんの声が入っているので、そのテンションに合わせるようにしましたね。
一方で、これは僕のヤンチャさだと思うんですけど、どうしても「僕の思うサトウ・ケンがあって良い」と思ってしまうんです。英語と日本語では音の伝わり方も違うので、「日本語ではこう伝えた方が良いな」と思う部分は大切にしながら、声を当てていきました。
ーーアフレコ自体は何度も経験されていると思いますが、吹き替えのお仕事は初めてと伺っています。
山田:国内作品では無音の映像に声を入れていくわけですが、今回は海外の俳優さんのセリフが入った状態で、日本語の台本を見ながら演じる必要があったんです。初めての経験だったので、練習しているときに「今のはどこのセリフ?」とパニックになっていました。「これはヤバい」と思って、友達の木村昴くんにアドバイスをもらったんです。
まずは、海外の俳優さんがどういうテンションでセリフを言っているのかを把握する。次に体のどこで息をしているのか、どうリアクションしているのかを見る。それらを秒数と一緒に台本に書いて、ようやくセリフを当てるという流れで練習していきました。他作品の撮影もしながら、しばらくは台本と格闘する毎日でしたね。