3期は久美子にとって「特別じゃない人生」に向かう 物語だった――『響け!ユーフォニアム3』北宇治カルテット(黒沢ともよさん×朝井彩加さん×豊田萌絵さん×安済知佳さん)インタビュー|最後まで『ユーフォ』ならではの音楽とエンタメを楽しんでほしい【連載第6回】
ミドリのセリフが、この作品全体のテーマだった
――最終回の第十三回に関して、内容のネタバレがない範囲で、アフレコを終えたときの心境を伺えますか?
豊田:気持ち的には、第十二回で最終回みたいなところがありました。
朝井:そうだね。
黒沢:うんうん。
安済:音響監督の鶴岡(陽太)さんも仰っていましたが、(第十二回までで)走り切った感がありました。
――では第十三回は、長いエピローグのような感覚ですか?
黒沢:う~ん、エピローグでもないんですけどね。観てくださっている皆さんが待ちに待っているであろうシーンが(第十三回には)詰め込まれていて。逆に私たちのアフレコとしては、すごく穏やかだったというか。
安済:うん、穏やかだったね。3期のアフレコが始まる前は、「終わった後はどんな感じになるんだろう。10年間ずっと身体のどこかにいた麗奈がいなくなって、片身を失った気分になるのかな」とか思っていたんです。でも、今のところは何もなくて(笑)。
黒沢&朝井&豊田:あはは(笑)。
安済:まだ実感が湧いてないのかな。
朝井:実感が湧くのは、最終回の放送後とかだと思う。
豊田:うんうん。
黒沢:きっとそうだね。
朝井:そういえば、安済さんは最終回のスタジオにティッシュを箱で持ってきていて。「なんで箱?」って訊いたら、「泣くと思って」と言っていたんですが、誰も泣きませんでした(笑)。
安済:そう、誰も泣いていないんですよ! 第十二回でも持って行ったんですけど、そのときの方が減っていました。
黒沢:お世話になりました(笑)。
安済:やっぱり、十二回が最終回のような気持ちだったんでしょうね。でも十三回は、家でリハV(アフレコ用の映像)をチェックしているときは、涙がやばかったんです。
黒沢&朝井&豊田:うんうん。
――でも、本番では泣かなかったのですか?
朝井:リハVに音楽も入っていたんですけど、音楽がすごく良いんですよ。
豊田:分かる~。
黒沢:めっちゃ泣いた。
安済:なので、絶対に本番でも泣くと思ったんですよね。
朝井:ただアフレコのときは、穏やかな心持ちになっていたこともあって、泣く感じではなかったんですよね。
あとは最終回のとき、石原監督が一人一人に、キャラクターのイラストとメッセージを書いたポストカードをプレゼントして下さって。それがすごく印象的でした。
豊田:カードには、それぞれのキャラクターのセリフが書かれていて。私がいただいたカードには、(第十一回の)ミドリちゃんの「今の毎日は、(未来への)種まきみたいなもの」というセリフが書いてあったんです。そのセリフについて監督にうかがったら、「このミドリのセリフが、この作品全体のテーマだった。これは未来への種まきの話だ」と仰っていて。すごく納得しました。
黒沢:すごい。
朝井:私がいただいたカードには、葉月のセリフと、監督のお言葉が書かれていたんですが、「物語は葉月で動き始めました」と書いてあって。
黒沢&安済&豊田:え?
朝井:同じクラスの久美子に声をかけ、ミドリにも声をかけ、3人で吹奏楽部をのぞきに行ったじゃん。
黒沢:あ、そうだ!
朝井:一番最初に、何気にすごい大活躍をしていたんですよ。
安済:エモいね。
豊田:葉月がいなかったら、お話が始まっていなかったんだ。
最後まで『ユーフォ』ならではの音楽とエンタメを楽しんでほしい
――最後に、最終回の放送を楽しみにしている皆さんに向けてメッセージをお願いします。
安済:たぶん、最初から『響け!ユーフォニアム』をご覧になってくださっているファンの方々は、私たちと同じく、やっと最後まで見届けられるという嬉しい気持ちと、終わっちゃう寂しさという二つの感情がマーブルみたいに混ざったまま、放送を楽しみにしてくださっていると思うんです。
この最後を、どのような形で皆さんに受け取っていただけるのか楽しみです。それに、最終回とはいえ、私たちもまだ全然実感が湧いていないですし、きっとまた何か『響け!ユーフォニアム』と共に楽しい時間を過ごせる日が来ると思いますので。そちらに向けて、これからも愛して、応援していただけたら嬉しいです。
豊田:私も、まだ最終回という実感は全然湧いていないんですが、その理由の一つは、久美子たちの未来はこの先も繋がっていて、終わりじゃないと感じているからだと思います。こんな風に、高校1年生から3年生までを演じさせていただける機会って、本当に貴重で。リアルの時間も過ぎていく中、私たちも一緒に成長して収録できたので、時が止まった先のことが想像できないんです。逆に、このまま成長して大学生になって、何かを学んでいる姿の方がイメージできます。
最終回を観て、寂しいとか、悲しいといった気持ちになっちゃう人もいるかもしれませんが、今、私が言ったような気持ちになってくれる人も多いはず。なので、あまり「ユーフォロス」を怖がらず(笑)、安心して最終回まで楽しんで欲しいです。
朝井:たしかに、第十三回は最終回なんですが、これまで感じてきた、いろいろな感情が綺麗に昇華されて、すごく納得できる最終回になっているというか。綺麗な余韻が残って、音楽の演奏会を観終えたような感覚になると思います。
私は、10年くらい前、『響け!ユーフォニアム』が始まった頃からずっと、「いろいろな人に響いたら嬉しい」と言ってきたんですが、ここまでの月日を重ねる中で、『響け!ユーフォニアム』は、本当にたくさんの人に届いて、響き渡っていきました。
最終回を迎えた後も、さらに多くの人に響いて広がって行く作品だと思っているので、私は、寂しさ以上に未来へのワクワクをすごく感じています。これからも引き続き応援していただいて、ぜひ後世にまで伝えていって欲しいです。
黒沢:萌絵ちゃんも言っていましたが、こんな風にしっかりと1年生から3年生まで演じさせてもらえる作品はなかなか無いので、こうやって3年生まで走り切ることができて、すごくすごく幸せだったなと思います。それに、麗奈と久美子の恋愛……じゃないですけど(笑)。関係性?
朝井:もう恋愛だよ(笑)
豊田&安済:うんうん(笑)。
黒沢:じゃあ、「恋愛」で(笑)。まあ、2人の関係性も私としては、1年生のときには、こんな風に終わるとは想像もつかなかった結末に辿り着いた感じがあって。「しびれるー!」と思いました。これまでもそうでしたが、この3期では、石原監督、鶴岡さん、(音楽の)松田(彬人)さん、(シリーズ構成の)花田(十輝)さん、4人のエンタメと渋さのバランスが特にすごく良くて。渋い展開から最後は綺麗にエンタメとして昇華できたなと感じました。皆さんにも、ぜひ最後まで『ユーフォ』ならではの音楽とエンタメを楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
[取材&文・丸本大輔]
作品概要
あらすじ
キャスト
(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会