『ウルトラマンアーク』メイン監督・辻本貴則さんインタビュー|偽りなきウルトラマン愛で紡ぐ<夢の架け橋>。第4話以降は監督陣も想像力を解き放つ!?
ウルトラアイから着想を得たアークアイソードの演出
ーー想像力から生まれたウルトラマンアークのデザインを決めるうえでは、どのような話し合いがあったのでしょうか?
辻本:デザインを担当してくださった後藤(正行)さんとの打ち合わせ前に、「辻本さんの好きなウルトラマンをオーダーしてください」と言われて、「あっ、割と自由なんだ」と(笑)。
僕は原点や昭和2期のウルトラマンが好きなので、シンプルな方向でいきたかったんです。加えて、前作の『ブレーザー』のデザインはかなり奇抜な方向だったから、一度シンプルに戻すのも良いと思ったので、後藤さんに「シンプルなウルトラマンを見せてください」と強くお願いしました。そうしたら、体はすごくシンプルになったんですけど、お顔はしっかりと後藤イズムに溢れていました。
ーー後藤イズム(笑)。
辻本:頭にふたつ穴があいてるのは、完全に後藤イズムですよね。なんとなく(初代)マンの顔なんだけど、目は(ウルトラ)セブンですし。同じ顔のシルエットで、マンの目をした別のバージョンもデザインしてもらったんですけど、やはりセブンの目が格好良いなと思い、最終的には今の状態に落ち着きました。
ーー目のデザインによって、アークアイソードを出現させる演出がばっちりハマっているなと。
辻本:最近のウルトラマンは武器を使うじゃないですか。「もし武器を出す予定があるなら、第1話から出してもらえれば、僕の方でドドーンとカッコ良く演出しますよ」と雑談で話したら、アークアイソードのデザインが上がってきたんですよ。「うわっ、エラいのきたな」と(笑)。
一同:(笑)
辻本:どうやって使おうかと悩んでいたら、「覗くポーズが欲しい」と言われたので、だったらもう剣の召喚のポーズをウルトラアイのように目の前で構えて出せば、遊び心もあって面白いなと思ったんです。
ーーそこで繋げたんですね。
辻本:そうです。それなら「シュワッチ」じゃなくて「デュワ!」って言わせようとか。眼鏡の部分が先に出て、その後に剣先がズバーッと出れば、気持ちいいリズムになってケレン味も出そうだな、とか思ったりしました。次に「必殺技はどうしましょう」という話になったので、こうなったらもう一度、ウルトラアイ演出にこだわろう、と思いまして(笑)。
ちょうど目の上にキューブがハマるところがあるので、エメリウム光線みたいにビームが出るというアイデアが浮かんだんです。武器は剣なのに、必殺技はビームというアンバランスさも良いんじゃないかと。
ーー強化演出として、アーマー(鎧)を採用した理由は何だったのでしょうか?
辻本:アーマーに関しても、さまざまなご意見がありました。「タイプチェンジをやりませんか」とオーダーもあるわけです。。
タイプチェンジするためには、ウルトラマンのスーツを沢山作る必要があるので、それって結構大変なんですよ。「そうなると、新規怪獣が減りますよ」と言われて、「それはやだ……絶対やだ!」と(笑)。
ーー(笑)。前作の『ウルトラマンブレーザー』は、新規怪獣の多さも話題になっていました。
辻本:そうなんですよ。昨年の製作発表会であれだけの数の新規怪獣を並べていたのに、「前より減ったじゃん」と思われるのは……。あの流れは潰したくなかったので、新規怪獣の数をキープしつつ、要望に応えるにはどうすればいいのかを岡本プロデューサーと考えました。アーマーなら、素体のウルトラマンに被せることでバリエーションも作れて、フィギュアを沢山出せる。そんな両者の思いが、アーマーという落とし所だったわけです。
ーー作品として出来上がったものを見ると、全てが最初から計算されていたかのようです。
辻本:“そういうこと”にしておきますか(笑)。
一同:(笑)
辻本:ただ、実際の経緯は別として、みなさんプロですから。最終的にはきっちり辻褄を合わせて、仰っていただいたように「最初から考えていた」と思えるような作りにしたつもりです。
『帰ってきたウルトラマン』のオマージュに込めた想い
ーーこれも気になっていたのですが、ロゴやアイキャッチは『帰ってきたウルトラマン』のオマージュになっていますよね。
辻本:ウルトラマンシリーズはこれだけ歴史があって、フォーマットも確立されているので、自然と過去の要素に寄せる部分が出ます。例えば、『ウルトラQ』のタイトルが捻じれる演出や、ウルトラ怪獣の影絵は、他の作品でも見られますよね。ウルトラマンシリーズは過去の要素を引き継ぐということを、昭和の時代からずっとやり続けているんですよ。
そんな中で、『ウルトラQ』と『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』の要素はいつも引き継がれているけど、それ以降の『帰ってきたウルトラマン』だったり『ウルトラマンA(エース)』だったり、その要素を引き継いでいる作品ってあまり無いんですよ。
ーー確かに言われてみれば……。
辻本:「昭和2期も立派なウルトラマンだ」と思った時に、“あのキラキラ”をやりたいと思いまして。
ーー『帰ってきたウルトラマン』のOPなどで見られる万華鏡のようなエフェクトですね。
辻本:当然CG合成でも再現できるんですけど、アナログ方式でキラキラしたビーズやスパンコールを回転台の上に置いて、それに照明を当てて撮影した方があの味が出ると僕は信じていたので、スタッフに「当時のやり方で再現したい」と伝えたんです。
ーーそれはすごい!
辻本:実際にアナログ方式で撮影してみると、やはり手応えがあるんですよ。「俺が見たかったのはこれだ!」と。自分の好きなウルトラマンシリーズのビジュアル、表現を突き詰めた結果、「ロゴはどうします?」と聞かれたとき、迷うことなく「『帰ってきたウルトラマン』で!」と答えていました(笑)。
ーー(笑)。インスピレーションとして、真っ先に浮かんだ作品が『帰ってきたウルトラマン』だったと。
辻本:そういうことですね。気付いたら『帰ってきたウルトラマン』のビジュアルイメージがベースになっていて。もちろん『ウルトラマンA(エース)』も『ウルトラマンタロウ』も好きですけど、ビジュアルイメージとしては、『帰ってきたウルトラマン』が好きだったと制作過程で判明していった感じですね。
ウルトラマンアークのポーズも、『帰ってきたウルトラマン』のオマージュになります。スーツの着合わせの際、「好きなウルトラマンは?」と聞かれて、『帰ってきたウルトラマン』と答えたら、スーツアクターさんがすぐにやってくれて。そのポーズを見ると、もう嬉しくてニヤけてしまうんですよ、「俺が好きなのはそれだ!」と。全体を通して、好きなものに対しては偽らず、そのまま作品に反映していきました。