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中村健治監督が『劇場版モノノ怪』に込めたメッセージ【インタビュー】

『劇場版モノノ怪 唐傘』中村健治監督インタビュー|TVシリーズから指揮する中村監督が劇場版に込めたメッセージとは?

「声優さんの素晴らしさを絢爛豪華に聞かせたい」という野望

ーー今作のキャスティングについてもお聞かせください。

中村:キャスティングのポイントは、上手な人です(笑)。僕は声優さんの力を信じていて、批判ではありませんが、映画になると、突然プロの声優さんを使わなくなる作品ってあるじゃないですか。個人的には「何でだろう?」と感じていて。かつて俳優さんをキャスティングすることで、芝居に奥行きを出そうとした時代がありました。でも、声優さんはとても上手なので、クリエイティブな理由で変える必要があるとは思えないんです。

個人的には、上手な声優さんたちが実力を存分に発揮できる舞台を作りたいという想いがあります。だからこそ、「敢えて難しい作品にしてやろう」という考えも生まれるのですが、それを声優さんたちは軽くクリアしていくんですよ。今回も、本当に感動しました。別に挑んでいるわけではなく、「声優さんの素晴らしさを絢爛豪華に聞かせたい」という密かな野望があったんです。

ーー監督の仰る通り、お芝居の素晴らしさも十分堪能できました。

中村:すごかったですよね。キャストのみなさんには、台本に加えて、海外でいうところのストーリーバイブルみたいな、「このキャラクターはこういう人です」など、あらゆることを解説した資料を作って、アフレコ前にお渡ししました。それを読んでいただいているので、みなさんのお芝居がとにかく仕上がっていて。当日はあまり説明が要らなかったです。普段はアフレコ前に前説するんですけど、それが長いというクレームがずっとありまして……。そこで今回は事前に資料を作ってみたのですが、かなり上手くいきましたね。また、台本に反映できるようにコンテのト書きを現場のスタッフだけではなく、音楽を作られる方やキャストの方などに手紙のような形で大量に渡していて、「それと資料で理解してください」という流れでした。「作品を如何に共有するか」については、かなりエネルギーを使った気がします。

ーー先日、神谷さんに見せていただいた台本が電話帳くらいの厚さになっていたのもその一環ですね。

中村:そういうことです。原作ものであれば、原作に答えがありますけど、オリジナルだと何が何だかわからないですし、ヘタをすると過去作が足かせになってしまい、勘違いが起こってしまう可能性もあります。「ここは同じで、ここは変わっています」ということをしっかり説明する必要があると思うんです。

監督が神谷浩史さんに「劇場版の薬売りは2号ライダーです」と伝えた理由

ーー神谷さんは監督から「劇場版の薬売りは2号ライダーです」という説明があったとお話されていました。

中村:それに関しては、「TV版と劇場版の薬売りは別人」というシンプルな理由です。性格も違うし、芝居も違うので、「自由にやってください」という意味でお伝えしました。

ーー神谷さんは、その言葉ですぐに監督の意図を理解されたようでした。

中村:何人かの方にオーディションを受けていただいたのですが、その中に神谷さんもいらっしゃいまして。オーディションの音声を録るために色々と説明したら、すごく反応が良かったんです。「2号ライダーです」と言った時も「なるほど!」という感じで、「すぐに受け入れちゃうんだなあ」と(笑)。神谷さんは意外にお話好きな方のようで、色々と尋ねられたので、僕も話していたら長くなってしまって。半ば打ち合わせのようになっていました。

ーー神谷さんは、中村監督の作品に出演するのは初めてだったこともあり、その日のスケジュールを全て空けて収録に臨んだと。

中村:そうらしいですね(笑)。今作で初めてご一緒するみなさんが「とうとう中村監督の現場に……」という感じだったので、「一体どういうウワサが飛び交っているんだ!?」と思いました(笑)。ただ、複数の台詞を同時に重ねることが多いため、一人づつ別々に収録をお願いするカットが多く時間がかかることは有名だったようです。例えば、通常の30分のTVシリーズでは、本線を2〜3周するのに対して、僕の作品では何十回も行うイメージです。

ーー1日空けたのに、意外に早く終わったとも仰っていました。

中村:今回はほとんど1人が2人くらいでの個別収録だったので、スムーズに感じたのかもしれませんね。ディレクションに関しても、ほとんど何も言っていないんじゃないかな。加えて、先ほども言った通り、神谷さんが想像以上に仕上げてくださっていたんです。色々なアイデアを神谷さんが既に試していて、「どちらが良いですか?」という状態だったので、「こっちが良いです」と言ったくらいで。投げかけられる質問も的確で、深いけど具体的というか。「そこを訊くんだ!?」と思うこともあって、安心できました。「何で今まで一緒にやっていなかったんだろう?」と思うほど、神谷さんに魅了されましたね。やはり存在感が強く、どうしても作品のセンターにいる声優さんなので、なかなか脇役でご一緒することはできなかったからなのかなと。

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