映画
中村健治監督が『劇場版モノノ怪』に込めたメッセージ【インタビュー】

『劇場版モノノ怪 唐傘』中村健治監督インタビュー|TVシリーズから指揮する中村監督が劇場版に込めたメッセージとは?

黒沢ともよさんと悠木碧さんは「今一番上手いと思っている声優」

ーー物語の中心となるアサ役の黒沢ともよさんとカメ役の悠木碧さんのお芝居にも心を打たれました。

中村:「今回の主役は女性ふたりです」と音響監督の長崎(行男)さんに伝えたら、「今一番上手いと思っている声優をキャスティングします」と言っていて。それが黒沢さんと悠木さんだったんです。ただ、「長崎さんはそう言いますけど、一応オーディションはしましょう」という話になり、実際にお芝居を聞いてみたら、選ばざるをえないくらいの夢の共演でした。

アフレコされている姿も素晴らしくて、味わい深いお芝居というか、役に入り込んでいるんだなと。おふたりのことを言い現わすには僕の語彙では足りないですね。アフレコも本当に楽しかったです。おふたり……いやこの作品に関わってくださった声優さんすべてに感謝しています。

ーーキャスティングが豪華過ぎて、これを一緒にやるのは不可能だろうなと思いました。

中村:そうですね。ただ、上手な人が集まるほど、収録自体はスムーズに進むんですよ。恐らく一緒にやったとしても、すぐに終わったんじゃないでしょうか。収録の人数が多いと、他の役者さんに気を遣われることもあって、ひとりひとりの質問の時間が取りづらくなりますが、今回はみなさんとやり取りできました。そこは別録りの良さだと思います。

ーー音響全体の臨場感や迫力もすごいですね。

中村:実は制作の初期段階から、「映画館に映画を観に行く理由って何だろう?」と悩んでいたんです。自分自身も様々な配信サービスと契約していて、もはや家で映画を観るという体験が日常になっています。でも、自分は劇場で流す映画を作っているわけで、「映画館に観に行こう」と思ってもらえる理由を考えなくてはいけない。

そこで考えたのは、今作は映画というより、サーカスやプロレスのような期間限定の催しを各都市で興行するものなんだと。ライブのような生々しい臨場感を感じていただくためには、「音、環境でしょ!」という結論に至って。映画館には高い音響機材があって、そこからすごい音圧が来る。しかもその音はチューニングされていて、我々が計算すればある程度正確に、最適な音の回り方までコントロールできます。そういう音の雰囲気から映画館で鑑賞するメリットを感じていただこうかなと。

みなさんを『モノノ怪』の世界観に閉じ込めるつもりで、力を入れてチューニングさせていただきました。長崎さんには最初からその話をしていたので、こちらの意向に合った手練れのスタッフを集めてくださって。さらに僕だけではなく、現場からの提案も大量にいただいたので、なかなか作れないものが出来上がったかなと。もっとチームの練度を上げていけば、より面白いこともできそうですが、初の試みとしては良い感じになったと思っています。

制作を通して、アニメが“総合芸術”であることを実感

ーー改めて、劇場版の見どころのご紹介をお願いします。

中村:全部ですね。アニメーションは総合芸術であり、総合エンタメだと今回でしみじみ感じました。例えば美術や背景ひとつとっても、「よくぞここまで」と思いますし、作画スタッフも頑張ってくれましたし、役者さんも良い芝居をしてくださって。映像の情報量というか、普通の作品の2倍以上のカット数と音のシャワーを浴びていただきたいです。

加えて、カット割り自体が速いんですけど、絵も滑らかなはずなので、そういうところにも注目していただけたらなと。背景はほぼ3Dですが、浮世絵は3Dではないので、奥行きはあるけど、あまり奥行きを感じさせないという矛盾したことも意識的にやっています。「映像自体が誤謬している」という部分にも注目していただけると嬉しいです。

ーー私のような中年以上の、特にアニメ好きではない人に薦めたい作品に出会えました。

中村:実は、今おっしゃられたことをすごく気にしていまして。自分がTVシリーズでやった『モノノ怪』は好事家(こうずか)が愛でるタイプのマニアックな作品だったと思います。それを簡単にしたり、力を抜いたりするわけではなく、もっと間口を広げて、色々な人が観られる作品にしたかったんです。

一見カジュアルなようでいて、分かる人には分かるけど、それでいて「薬売りの活躍を見られればいい」という人でも楽しめるような。色々なレイヤー(階層)を用意しているので、「アニメ好きではない人にも薦めたい」と言っていただけて、とても嬉しいです。「エンタメに振っている」という声も上がりそうではありますが(笑)、それこそが狙いであり、世界中の人に愛される『モノノ怪』になるための出発点なので、できれば応援してください。

ーー最後に、劇場版を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

中村:お待たせし過ぎてすいません……。クラウドファンディングやSNSなど、様々な方に支持していただいて、YouTubeの予告映像もたくさんの方に視聴いただいて、本当にありがとうございます。みなさんの熱が現場にも伝わって、制作している数年間、僕らの力になっていました。時間はかかってしまいましたが、みなさんに楽しんでいただける作品になったと思うので、試しに劇場で観てみてください。観終わった後にX等で感想をつぶやいていただけたら、僕らも勉強になりますので、ぜひよろしくお願いします!

[インタビュー・撮影/永井和幸]

『劇場版モノノ怪 唐傘』作品情報

2024年7月26日(金)全国公開!

あらすじ

大奥とは、男子禁制の“女の園”であり、重要な官僚機構でもある特別な場所。

この地に、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が足を踏み入れる。

キャリアアップを図る才色兼備のアサ、憧れの大奥に居場所を求めるカメ。

正反対の二人は初日から、集団に染まるための“儀式”に参加させられる。

御年寄の歌山(小山茉美)は、大奥の繁栄と永続を第一に考え女中たちをまとめあげるが、

無表情な顔の裏に何かを隠している。そんな中、少しずつ、彼女たちを覆っていく“何か”。

ついに決定的な悲劇が起こり、薬売り(神谷浩史)はモノノ怪を追って大奥の中心まで進むが、モノノ怪を斬り祓うことができる退魔の剣は「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、封印を解き抜くことが叶わない。

薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、退魔と救済の儀が始まる──。

キャスト

薬売り:神谷浩史
アサ:黒沢ともよ
カメ:悠木碧
北川:花澤香菜
歌山:小山茉美
大友ボタン:戸松遥
時田フキ:日笠陽子
淡島:甲斐田裕子
麦谷:ゆかな
三郎丸:梶裕貴
平基:福山潤
坂下:細見大輔
天子:入野自由
溝呂木北斗:津田健次郎

スタッフ

監督:中村健治
キャラクターデザイン:永田狐子
アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一
美術設定:上遠野洋一
美術監督:倉本章 斎藤陽子
色彩設計:辻口田邦夫
ビジュアルディレクター:泉津井陽一
3D監督:白井賢一
編集:西山茂
音響監督:長崎行男
音楽:岩﨑琢
プロデューサー:佐藤公章 須藤雄樹
企画プロデュース:山本幸治
配給:ツインエンジン ギグリーボックス
制作:ツインエンジンEOTA
主題歌:「Love Sick」アイナ・ジ・エンド

『劇場版モノノ怪 唐傘』公式サイト
『劇場版モノノ怪 唐傘』公式X(旧Twitter)
『劇場版モノノ怪 唐傘』アニメイト特設ページ

『劇場版モノノ怪』公開記念フェア

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