『なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?』千葉翔也さん×市ノ瀬加那さん×白石晴香さんインタビュー|声優陣が語るカイとリンネの不思議な関係性、そして収録の裏話も!
『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』『神は遊戯に飢えている。』の細音啓先生の作品のひとつ、『なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?』のTVアニメが2024年7月よりいよいよ放送開始!
アニメイトタイムズではその放送直前のタイミングで、カイ役・千葉翔也さん&リンネ役・市ノ瀬加那さん&ジャンヌ役・白石晴香さんへのインタビューの機会を得られました。
今回は6月16日(日)に実施された第1話先行上映会の感想や放送が近づく現在の心境、それぞれのキャラクターの魅力やアフレコ時のエピソードを中心にお話を伺っています。
第1話でのカイとジャンヌのデートシーンの収録や、カイとリンネの関係性についての話題は必読ですので、ぜひ視聴前にチェックしてみてはいかがでしょうか!
カイとジャンヌの買物デートシーンでは、ジャンヌの狙わないあざとさに注目
――まずは直前に行われた先行上映会の感想、並びに放送が近づいている今の心境からお聞かせください。
カイ役・千葉翔也さん(以下、千葉):以前「AnimeJapan 2024」のイベントで原作を読んだことがあるか尋ねてみたところ、その時は未読の状態で楽しみにしている方が多かったんです。だから今日は第1話だけの上映とはいえ、どんな雰囲気なのか楽しみでした。結果としてたくさんの方が来場してくださり、僕たちのトークも楽しんでくれた様子だったので嬉しかったです。
改めて完成した第1話を見て、カイってちゃんと主人公をやっているキャラクターだと思いました。シチュエーションは急に戦いに巻き込まれた形なのですが、それまでにしっかり人類にとっての驚異と対峙する準備をしていて、実戦でその成果を発揮できている。複雑な状況に困惑しつつも、自分らしさを失わないヒーロー的な立ち位置だなと。
また、カイのような主人公を演じる機会が中々無かったので、「カイ頑張れ!」と応援したくなりました。物語の構造としてもロジックで戦いつつ本人の意思の強さやトレーニングの積み重ねがしっかりと描かれているので、視聴者としても気持ちが良いです。
リンネ役・市ノ瀬加那さん(以下、市ノ瀬):来てくださったみなさんの表情で楽しんで頂けたのが伝わりましたし、お客さんが私達の話一つ一つに笑ってくれたり、頷いてくれたりしてとても話しやすい雰囲気でした。
この作品の躍動感は劇場でぜひ観て欲しかったのでたくさんの方に来ていただけて嬉しかったです。
ジャンヌ役・白石晴香さん(以下、白石):上映会の後に千葉さんが「みなさん楽しんでいただけましたか?」と尋ねたのですが、とても温かいリアクションをいただけたので嬉しかったです。私たちとしても第1話を見て放送への期待が高まりました。物語に入り込むにはピッタリな第1話になっていますので、みなさんにも最後まで楽しんでほしいです。
――台本やシナリオ、原作などで初めて本作に触れた際の印象も教えてください。
千葉:オーディションのお話をいただいてからしっかり原作を読ませていただきました。怒涛の展開が続くのですが置いていかれることはなく、設定や世界観と物語の展開がリンクしていく気持ち良さ、テンポの良さが魅力的でした。
個人的にもファンタジー作品や異世界、異種族との関りが題材の作品は好きですし、そんな好みの要素を持ちつつこの作品特有の個性が散りばめられているのが素敵だと思いました。
市ノ瀬:初めて「なぜ僕」に触れたのはオーディションの話を頂いた時だったんですが、ファンタジーの面白さがギュッと詰まった作品だと思いました。
それに役割や使命感がそれぞれのキャラクターにありますし、戦闘シーンの迫力、敵種族の禍々しさや神秘的な雰囲気、数々の謎、どれをとっても見応えがありました。この混沌とした世界で未来を切り開いていこうとするカイたちがとても眩しくみえましたね。
白石:私もオーディション時にチェックしたのですが、千葉さんが言うように展開が激しくはあるものの、カイと読者の感覚が近いまま物語が進んでいきます。彼の心情やこれまでの状況が丁寧に描かれているので、読んでいる内に自分が作品世界に入り込んだかのような感覚を抱き、この作品がアニメになったらまた楽しいだろうなと感じました。
登場人物ひとりひとりが各種族の立場からの考え方を持っていて、時に敵対することがありつつも、そんな彼らとカイの向き合い方がまた新鮮なんです。周囲を引っ張っていくタイプではないけれど、端々に頼りがいを感じます。物語が進むにつれてカイの魅力が増して楽しくなりますし、そんな彼についていきたくなりますね。
千葉:絶望させすぎない塩梅がいいんです。あまりにキツイ状況だと読者も辛くなってきますが、カイの強さもあって丁度いい感覚でスリルやプレッシャーを楽しめます。
後は小説を全て映像化するのは難しいことですが、個人的には台本のまとめ方が凄いなと思っていて。インサートする回想やナレーション、モノローグで必要な情報をしっかり拾っていて原作へのリスペクトを感じました。
――ご自身の演じるキャラクターの印象はいかがでしょうか?
千葉:原作を読んでいる時はいわゆる普通の青年を思い描いていたのですが、アフレコで色々なディレクションをいただいて、感情の出し方が淡々としている方向性に定まっていきました。意外に感じたのですが、完成した映像を見てみるとバランスが良いといいますか、こういう人物でないとこの世界は生き残れないことが伝わってきました。カイは第1印象と演じてみた手応えが違うキャラクターでしたね。
――カイは改変された後、唯一と言えるブレがないキャラクターでもありますよね。
千葉:普通は戸惑いを表に出して破滅的になってもおかしくないのですが、人類が負けてしまったやるせなさや、知っている人たちが元の世界より辛い現実を生きていて複雑な感情を抱いています。だから、静かで落ち着いたように見える彼も心の中で様々な思考が渦巻いている感覚で演じました。
一見変な奴だと思われるかもしれないのですが、とにかく一生懸命なので、その実直さに惹かれて色々なキャラクターから信頼を得ていくんだろうなとも思っています。
――白石さんはジャンヌの印象はいかがでしょうか?
白石:とにかくギャップですよね。改変前の世界では、カイの幼馴染で一緒にいると等身大で凄く可愛いんです。年相応な可愛らしさもありますし、それが後々響いてくるところもあります。
改変後の世界では、お父さんに認められたい想いと自分が人類を守らなきゃいけないという想いがより強くなっているので、男装して五種族大戦を終わらせるため戦うことになります。本当にカッコいいですし、リーダーに相応しい人だと思います。
ただ指揮を取るだけじゃなくて、自ら前線に立って「みんなの命を私に預けてくれないか」と言うほどの覚悟がある。その生き様には憧れますね。可愛さとカッコよさの両方が彼女の魅力だと思ったので、そのギャップをより際立たせるようなお芝居を心がけました。
――アフレコでのディレクションだったり、印象に残ったエピソードはありますか?
千葉:お話の核心に触れる部分より、ジャンヌの「むー!」っていう台詞みたいなキャラクターらしさにこだわっている印象があります。
白石:第1話のカイとジャンヌのお買い物シーンは、幼馴染とは言え男女でのお出かけなので、ちょっとドキドキする展開じゃないですか。そこで「狙わないあざとさがほしい」と言われまして。私はあざとさとは程遠い人間なのでめちゃくちゃ難しかったです。
一同:(笑)。
――「狙わないあざとさ」を狙って出す……矛盾してるように思えますね(笑)。
白石:そうなんです! ですがいつもお世話になっている音響監督の明田川仁さんから「頑張ってあざとさをやってみなさい!」と言われたので、頑張るしかありませんでした(笑)。
ジャンヌのあざとさは本当に無意識かつ無自覚なものなので、それを表現すること自体の難易度が高くて。私たちや周りのキャラクターからすると「なんて可愛いんだ」と思わせないといけないのですが、それをジャンヌはわざとやっているわけではないんです。
何回もリテイクして完成したのが第1話のデートシーンになっていますので、あのジャンヌの可愛さの裏にはこんなエピソードがあったことを知っていただけたらと思います!
――千葉さんはカイを演じる上でなにかディレクションはあったのでしょうか?
千葉:リンネに対して相槌を打つシーンで、「口説いているように聞こえる」って言われたことを覚えています。
白石:あったね! カイはたまに、女性キャラクターたちへ意図せずキュンとさせるようなことをするのですが、それって語尾を変えないからだと思っていて。
千葉:常にフラットなんですよね。第2話でリンネに同行を拒否されて「どうして?」と言う場面だったと思います。これはカイというキャラクター全体へのディレクションだったのですが、「ぶっきらぼうではなく、優しさがある」という方向性になっていまして。淡白なんだけど優しさがあると言いますか。
淡白すぎると突き放しているような冷たさが出てしまうので優しくするのですが、それが女性キャラクター相手だと異性として意識しているように聞こえてしまいかねない。なので、相手が男性だろうと女性だろうとフラットに優しさを作るようにしています。
また、「もっと焦っていい」というディレクションもありましたね。でも焦り過ぎると情けなさが出るのでやり過ぎはダメで、実際に走って逃げている時の息遣いなどはリテイクもありました。
白石:収録時に後ろから見ていて、カイは感情の波が少ないからこそ、その中で相手との距離感を表現するのが難しそうだなと思っていました。ですが千葉さんが巧みにそれを表現しているので、作中でもそれを感じられる場面が多々あるんじゃないかと。
千葉:この作品って意外と会話劇なんだよね。
白石:そうそう。戦闘シーンとかストーリーがトントンとテンポよく進んでいくのでそういう印象は受けないかもしれないのですが、実際に掛け合いをやっていると会話の重要性を凄く感じます。
市ノ瀬:ナレーションなどがほとんどない分、登場人物が会話の中でこの世界の事を話してくれます。それがとても自然なんですよね。
重要な情報やワードがとても多いのでどのシーンも見逃せないですね。
千葉:アシュラン役の山下誠一郎さんやサキ役の鈴代紗弓さんは共演も多いのですが、キャラメイクがすんなりいってたよね。キャスティングの段階でイメージとばっちり合っていたんだなと思いました。
白石:原作の細音先生も最初から収録現場に来てくださって、第1話のアフレコが終わった段階でキャストひとりひとりに感想を伝えてくださったんです。そこでイメージ通りだったと言ってもらえたことで、責任と共に「この子と一緒に歩んでいける」という想いが芽生えて嬉しかったです!