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『ヤマト3199』福井晴敏×ヤマトナオミチインタビュー

『ヤマトよ永遠に REBEL3199』福井晴敏総監督×ヤマトナオミチ監督インタビュー|主人公・古代進が背負う作品に圧し掛かる重み。物語に込められた現実世界とのリンクとは?

古代進と森雪の関係性は「恋愛よりも家族」

ーー今作から新たに登場するキャラクターについてもお聞かせください。北野誠也は原作には登場していない人物ですね。

ヤマト:今は謎の男ですが、これから徐々に出番が増えていきます。これまでのシリーズも同様でしたが、福井さんの脚本は単純なキャラクターを描かないんです。そこにどんなドラマが組み込まれているかは、ぜひ今後を楽しみにしていただければと。

福井:顔の傷跡や片腕が義手になっていますが、その辺りが後々大きな意味を持ってくると思います。

ーー古川慎さん演じるアルフォンは、古代進や森雪にどう関わってくるキャラクターなのでしょうか?

福井:先日、古代役の小野大輔さんとお話した際、アルフォンを“間男”だと言っていました。この言葉が全てを表していて、古代と雪の間に入ってくるような男性キャラクターという立ち位置です。それで揺らぐようなふたりではないですが、ただ3人の人間関係が描かれるだけでなく、政治的なことも絡んできて、物語の中心になっていきます。

ーーそんなアルフォンと関わることで、古代と森雪の関係も変わっていきそうですね。

福井:今回のエピソードでは、古代が決意を固めてプロポーズしようとした矢先に、雪と引き裂かれてしまいます。今作における古代と雪の関係性は、既に恋愛ではなく家族なんですよ。後はそれを形としてどうするかというところで、配属先が地球と土星という遠距離状態になってしまい身を固められなかった。ただ、ふたりとも気持ち自体はもう固まっているんです。この作品をご覧になる年代の方は家族を持っている方も多いはずなので、愛する者同士が引き裂かれてしまう恋愛よりも、家族が引き裂かれてしまった時にどうするのか、という点に重きを置きました。

年始にあった災害で、正月の一番楽しい時期に家族を失ってしまった方々たちがいるじゃないですか。今作のメインコピーである「もう一緒には生きられない」は、その人たちのことを考え、このテーマとしっかり向き合うべきという我々の決意が込められているんです。

いつどうなるかわからない苦しみや危機感と並走しながら生きていかなければならない時代ですし、今作における古代と雪の物語はそれを象徴するようなものになっていくと思います。

ヤマト:一緒に制作に打ち込んでいるので、ほとんど同じ意見です。やはり原作が作られた当時はブームみたいなものがあって、恋愛要素を抽出したところはあったと思います。でも、今回の作品ではそれ以外の部分も見せたかった。ファンの方々の中には、子供や孫がいる方もいらっしゃると思います。そういう人たちと向き合う時に、誰もがそれぞれの人生を生きているということを描きたかった。表面をなぞるだけでなく、人生を感じさせるものにしておかないと心が動かないと思うので、今作ではしっかり描いています。

ーーそんな作品の主軸を担う古代進は、作品を重ねるに連れて背負うものが増えていますよね。

福井:自分が『ヤマトよ永遠に』を最初に見たのは小学5年生くらいでした。その時と比べると、人生の重みが4〜5トンくらいに増えている気がしていて、みんなそれを背負いながら、生きていると思います。その重さや複雑性、一筋縄ではいかない部分がそのまま作品にも圧し掛かかっていて、古代というキャラクターはそれを一身に背負っている。

特に今の世代は30年前くらいに教えられたことと逆のことをしなきゃいけないこともあって、子供の頃に教わった常識とは違う常識で生きていく必要があるわけです。これからAIなどが進歩して、自分たちのやることが減ったとしても、「人間に残される仕事ってなんだろう?」と。

これまでの世界では「よく分からないことは止めておこう」で済んでいましたが、今はそれを活用しないと色々なものが回っていかない。例えば、地球の人口に関しても、少し前は「増え過ぎてて大変だ」と話していたはずなのに、今は減ってしまって、その対策がわからなくなっている。みんなが思い描いていた未来とは違うところに進んでいるという感覚があります。同じように古代進という人間は、「イスカンダルから帰ってきて、地球はこうやって復興していく」と想像していたら、事態は彼の考えとは逆の方向に行ってしまった。そうでなければ生き残れなかったので仕方ないことではあるものの、子供の頃に持っていた希望や約束、そういうものが全部裏切られてしまったんです。「そんな現実をどう生きていくのか」「突然愛する人を奪われてしまった状況から、どう立ち直っていくのか」という部分は、多くの人が共感できるポイントだと思いますし、今後の彼の物語のテーマでもあります。

ーー映像面では、艦隊戦や戦闘シーンも見どころになると思います。制作でこだわっている部分をお教えください。

ヤマト:この作品の戦闘シーンは、艦隊だけがメインではなく、機動甲冑やコスモタイガーのような戦闘機も登場しています。普通は一度作ったパターンも使っていかないとスタッフの負担が多くなってしまうのですが、それが効かないくらい毎回趣向を変えているんです。

今回の第一章で言えば、デザリアムですね。原作に登場した名機をかなり再現しています。次章については、新たな表現をひとつひとつ組み立てているところです。そういった部分も楽しむポイントのひとつにしていただけると嬉しいですね。

福井:実を言うと、地上侵攻を表現するのは、これまでの作品では避けていました。原作では金田伊功さんというスーパーアニメーターが、ご本人にしか描けない表現で仕上げていた部分だったんです。ただ、そこと正面衝突しても仕方ないので、今回は逆に正攻法をコンセプトにしています。

ーー『宇宙戦艦ヤマト』というタイトルは知っていても、作品の内容までは知らない若い世代もまだまだ多いように思います。最後に、そういった世代へこの作品を通して伝えたいことをお聞かせください。

福井:今みなさんが住んでいる世界やそこで抱えている悩み、それと同じものをこんなにも描いている作品は他にないんじゃないでしょうか。キャラクターたちに感情移入しつつ、彼らの行動や言動を自分のことのように感じられたなら、「自分の外から自分を見ることができた」ということなんです。自分の人生を考え、外側から客観視できる。そういった映画が本来もっている機能を体験できる作品だと思っています。

リメイクシリーズも作品を重ねてきましたが、今回は冒頭に丁寧なあらすじ動画を入れました。そちらをご覧になっていただければ、これまでの作品に込められた想いが全て分かるようになっています。「アニメでこういう表現ができるのか」という驚きがあると思いますので、試しに観ていただけると嬉しいです。

ヤマト:昔の『宇宙戦艦ヤマト』は、日本アニメ史でも重要な作品で、当時の出来事とシンクロして作られてきた作品群だと思います。それらをリメイクシリーズでは客観視して、もう一度再現しながら、ひとつひとつ丁寧に組み立ててきました。自分の抱える不安を別の方向から見られる体験になると思いますので、そういった日々の悩みを一緒に解決するきっかけになればと思います。

制作はこれからも続きますが、今の現場でアニメーションの制作を続けていくのは本当に難しい。現場の人間を維持していくためには、やはりみなさんの応援が重要ですので、引き続き付いて来てくださるとありがたいです!

[インタビュー・撮影/胃の上心臓]

『ヤマトよ永遠に REBEL3199』作品情報

ヤマトよ永遠に REBEL3199 第一章 黒の侵略

あらすじ

時に西暦2207年。あのガミラス本星とイスカンダル星が消滅した事件から二年 ――。突如、太陽系に謎の巨大物体〈グランドリバース 〉が出現した。地球防衛軍の善戦虚しく、幾重もの防衛網を易々と突破した〈グランドリバース 〉は 、悠然と地球の新首都へと降下したのである。音も無く出現する降下兵の群れ。上陸する多脚戦車。瞬く間に首都は制圧されてゆく。もはや地球には抗う術はないのか ――。そのとき旧ヤマト艦隊クルーに極秘指令が下った。「ヤマトへ集結せよ!!」そこに聞こえてくる謎の歌声。「帰ってきた」と呟く謎の男。果たして侵略者の驚くべき正体とは!?人類の命運を賭けて、いま未踏の時空へと宇宙戦艦ヤマトの航海が始まる 。

キャスト

古代 進:小野大輔
森 雪:桑島法子
真田志郎:大塚芳忠
島 大介:鈴村健一
土門竜介:畠中祐
徳川太助:岡本信彦
板東平次:羽多野渉
京塚みやこ:村中知
坂本 茂:伊東健人
キャロライン雷電:森永千才
北野哲也:木島隆一
南部康雄:赤羽根健治
太田健二郎:千葉優輝
相原義一:國分和人
藤堂早紀:高垣彩陽
芹沢虎鉄:玄田哲章
藤堂平九郎:小島敏彦
北野誠也:鳥海浩輔
揚羽 武:上村祐翔
南部康造:松本忍
島 次郎:古屋亜南
アルフォン:古川慎
イジドール:堀江瞬
ランベル:江口拓也

(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会
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