TVアニメ『天穂のサクナヒメ』吉原正行さん(監督)×相馬紹二さん(ラインプロデューサー)インタビュー|キャラクター設定にかけた労力は通常の3倍!? 制作陣が目指したアニメならではの“サクナヒメの物語”
『天穂のサクナヒメ』は「お仕事シリーズ」の新たな形
ーーゲームは様々な要素を内包するが故に、コンテンツの理解に時間がかかるジャンルだと思います。視聴者も『天穂のサクナヒメ』というコンテンツに対する理解度に差があると思いますが、そういった部分へのバランス取りはどのように行っていますか?
吉原: 原作の面白さを支える知識を捨てるわけではなく、必要以上には入れすぎないことで、初見の人にも『天穂のサクナヒメ』という全13話の物語を、1つのアニメーション作品として楽しめることを最重要としています。
ーー原作をそのまま再現するというより、アニメーションという形により適した姿で物語を表現することを優先したということですね。
吉原:そうですね。ゲーム内で描かれたそれぞれのシーンについて、30分のストーリーの流れから、重要性を再検討する必要があります。全体を貫く物語の流れが途切れてしまうなら、全体像の見やすさを優先したいなと。
ーーでは、原作ファンにとってのアニメ版の見どころはどんな部分だと考えていますか?
相馬:物語のまとめ方や、深堀りの部分を楽しんでもらえればと思います。これは脚本の力も大きい部分ですが、サクナ以外のサブキャラクターたちにも個別の物語があり、それが上手くメインストーリーに織り込まれているんです。原作以上に深堀りされている部分もあるので、そこは原作ファンのみなさんにとっての見どころになるかと思います。
ーーえーでるわいすさんとの連携は、どういった部分で行われていたのでしょうか。
吉原:なんらかの変更を行う場合、必ずえーでるわいすさんにチェックをいただき、了承を受けたうえで反映しています。そういったやり取りは、初期段階からずっと繰り返し続けていますね。
ーー方言や古い言い回しの表現も作品の持ち味だと思います。そういった部分も、えーでるわいすさんの監修が入っているのでしょうか。
吉原:セリフを新規に用意する場面も多いのですが、全てえーでるわいすさんに確認いただいています。あの表現を完璧に把握して書けるのは原作者さんだけですから。アフレコ現場にも来ていただいて、雰囲気合わせはかなり細かくやっていただきました。
ーー個人的に気になっていたのですが、3Dゲームのキャラクターは手描きする前提で作られていませんよね。アニメーションで動かすには、苦労があったのではないでしょうか?
吉原:最初に言ってしまうと、ある一定の領域において、3Dアニメーションには絶対に勝てません。衣服の複雑な柄をそのまま作画するのは不可能ですし、完全再現はどうやっても難しいんです。
そこで、今回はキャラクター設定に通常の3倍の労力を使うことにしました。例えばサクナヒメなら、最大サイズで描く場合、ミドルショットの場合、ロングショットの場合で、それぞれ柄のデザインを変えているんですよ。要するに設定を最初から3種類作っているわけです。
ーーそもそも場面によってデザインを変えることで、後から発生する労力を減らしたわけですか。
吉原:リスクマネジメントの側面もあります。確かに苦労はありましたけど、これを事前に設定しておかなかったら確実に問題が噴出していたと思っています。
ーー多岐に渡るお話をありがとうございます。最後に、アニメから入る人と、原作からのファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
相馬:えーでるわいすさんにも深く監修いただき、守るべき部分はしっかり表現していますので、ゲームを既に遊ばれている方にとっても、安心して観ていただける内容になっていると思います。
一方で、原作を全く知らなくとも楽しめるように作られていて、ストーリーも王道なものなので、どの年齢層で見ても楽しめる作品だと思います。それぞれの面白さが相互補完するような構成になっているので、ぜひ両方を楽しんでもらえればと。
吉原:ゲームをやられた方は、膨大な情報量をどうやって整理して繋げたのかという部分を確認しつつ観ていただけたら、それはそれで面白いんじゃないかと思います。少しだけ変えている部分もあるので、そこもお楽しみに。アニメから入る人は、「お仕事シリーズ」の新しいスタイルとしても観られると思います。それらと同じく、いつも通りの感覚で観ていただければ、しっかりと楽しめる内容になっているはずです。
[インタビュー/蒼之スギウラ 撮影/胃の上心臓]
『天穂のサクナヒメ』作品情報
あらすじ
古来よりこの地では神々の住む頂の世と人間の住む麓の世、二つの世があると信じられている――。
頂の世に住まう上級神かつ駄女神のサクナヒメは、
武神と豊穣神の間に産まれながら、両親が蓄えた穀を潰しぐうたらな生活を送っていた…
そんな中ある日、ひょんなことから
神々の都を追放され、鬼たちが巣喰う孤島・ヒノエ島へ!?
明日の食糧もままならない不毛の大地で、土を耕し米を育てて鬼退治へ。
神の世に迷い込んだ人間たちと、ひよっこ豊穣神の、もみ殻舞い散る集団生活が始まる‼
キャスト
(C)えーでるわいす/「天穂のサクナヒメ」製作委員会