お互いの凄いと思うところは「爆発力」「役として普通にそこに立っていること」高田将司さん×浅井宏輔さんインタビュー|一度夢や目標に到達したお二人が次に目指すものとは?【スーツアクターという仕事:連載 第3回】
高田さんの凄さは「役として普通にそこに立っている」こと
──名乗りや必殺技の印象的なポーズなどはどうやって作られていくのでしょうか?
高田:名乗りは難しいと自分が分からなくなっちゃうので、なるべく簡単に分かりやすくして。竹内さん(竹内康博さん)は誰も出来ないような名乗りをしようとしたりするのですが。「見栄えの良さ」はどんどん意識していますかね。
この前、10年前に演じた名乗りを見たら、「うわあ、やっべえ(小声)」って思いました(笑)。初めて戦隊のレギュラーをやらせていただいたとき、一番最初にスーツを着て撮影するときに他のレギュラーが名乗りを決めて来ていて、(自分は)決めてくるのを知らなくて、その場で考えた思い出がありますね。
浅井:名乗りにしても必殺技にしても、監督やアクション監督からのオーダーがあるので、スーツアクターだけで決めるというものでもなかったりします。
──スタッフと相談して決めていくんですね。
浅井:初めて戦隊のレギュラーのとき、自分はキャラクターショーから始めたので、TVのキャラクターを演じるとなったときに、子供たちのヒーローになるので、一挙一動気にしないとなと思ったりしました。
最初、レッドじゃない横にいるキャラなら、『超電子バイオマン』のブルースリーみたいな低い体勢のポーズをやりたい!と思ったんです。ブルースリーを演じた喜多川2tomさんの家に相談しに行きました。武器とモチーフを意識しながらポーズを3ポーズくらいに収めるのに、めちゃくちゃ悩んで喜多川さんにも案を頂いて。戦隊の伝統的なものがあるので、アクション監督やベテランのカメラマンと相談して決めましたね。
──映像で見ると、名乗りや必殺技の後ろで爆発する「ナパーム爆破」はすごい火力ですよね。撮影現場ではどれくらい熱いんですか? 慣れたりするんでしょうか?
高田:めちゃくちゃ熱は感じるんですが、お面をしていると音はそこまで感じないですね。
浅井:距離と量によったりしますね。正しいかはわからないですが、冬に寒い部屋で石油ストーブをつけたときに、最初にボッて出るじゃないですか。あれぐらいの感じじゃないですかね。
高田:なるほどね(笑)。距離によっても感じる熱さが違ったりしますね。
──高田さんは素顔で出演することも増えました。芝居に対する意識で違うことはありますか?
高田:お面をしていても(中ではちゃんと)演技しているので、基本は変わらないのですが……ちゃんと声もそのまま乗るので滑舌が悪かったら絶対ダメだなと、そこは気をつけています。ちゃんと聞き取れるように喋りつつ、お芝居をするので、お面をしているときより気を付けている事が1個増えているという感じです。
──高田さんは「警察官 朝田刑輔役」でのご出演も増えていますよね!
高田:『ドンブラ』(暴太郎戦隊ドンブラザーズ)のときに浅井くんに「警察官役で今後も出るかもしれない」って言ったら、浅井くんに「名前付けてもらいましょうよ!」って言われたので、脚本家の香村純子さんに聞いてもらったんです。そこから朝田刑輔となりましたね。
浅井:気がついたら台本に名前が載っていて笑いました。
高田:二人の雑談から決まっていきましたね。
──シアターGロッソなどヒーローショーでもご活躍のお二人ですが、TVシリーズとヒーローショーで違いはありますか?
高田:アクション自体は多分変わらないんじゃないかな。今回ヒーローショーでセンターのキャラクターを演じていて思うのが、僕がきっかけでアクションや照明、音響が決まることが多いので、ショーの方がきっかけはハッキリしたほうがいいのかなと思ったんです。自然体でお芝居しようとは思ってはいるのですが、「撮影だと目線くらい」なところを、「ショーなら首から」みたいな、体を使う意識はしていますね。
浅井:ヒーローショーからこの世界に入ったので、昔は違いがあると思っていたんです。今はないというか、自分としての演じ方はショーだからと言って誇張するとかそういうことではないんだなってことには気づきました。高田さんが自然にやっていることは、それは普通のことなんですよ。でもその「普通」がわからなかった。
高田:ああ、なるほど。
浅井:TVのヒーローを演じているスーツアクターの方々は気持ちで芝居をしているんですよね。時代もあると思うんですが、ヒーローショーから入ると、気持ちよりも「TVのヒーローを演じなきゃ」とか誇張したりとか形から入るんですよ。でも、気持ちで立つっていうことが、普通なんだなと思うようになりましたね。
気持ちで立っているんで、普通に人で居る……そこがやっぱり高田さんすごいんですよ。
あとTVは自分が喋りますが、ショーは声や音を当ててもらうのも違いですね。
──ヒーローショーを行う施設や場所でも違いがあるんでしょうか?
浅井:屋内のシアターGロッソと青空の下でやるショーでも違うんですよ。僕個人の意見ですが、Gロッソは舞台なので普通にいることが多分正解だと思うんです。青空の下でやるショーだとちょっと動いた方が良いのかもしれないですね。好みにもよると思うんですけど。
──シアターGロッソはワイヤーアクションなどの演出が出来るヒーローショー専用の施設ですよね。
高田:ワイヤーは「失敗しないように」しか(笑)。
高田:「足引っかかりませんように」しか思っていないです。もう本当に(笑)。
浅井:生ものですもんね、映像と違って。
高田:舞台なので、ワイヤーは失敗しちゃうとバレちゃうじゃないですか(笑)。スーツアクターの都合だけじゃなく、補助や音響、みんなで作っているので、失敗しないようには心がけていますね。
──安全への配慮も大事ですよね!改めて、お互いの凄いところを教えてください。
高田:浅井くんはやるってなったら120%で動けるところがすごい!撮影やショーでも本番!ってなったらすごく動く。あの爆発力はすごいなーと思って。自分が絶対出せないからすごいなと思っています。
浅井:先輩方は500%とか1000%で動いていますよ!(笑)
高田:自分は「怪我しないように」とか思ったりするんですが、浅井くんが120%で転がったり、動いているのを見ると「ここは僕も頑張らないと! 歳はこっちの方が下だから!」と思いますね。
浅井:(笑)。
──浅井さんからみた高田さんの凄いところはどうでしょう。
浅井:自分はお芝居やアクションがしたいのではなく、ただ「ライダーになりたい」とか、「レッドになりたい」とヒーローに憧れて入ったので。最初のきっかけはキャラクターショーでとにかくTVのキャラクターを真似ることばかりしていたんですよね。なりきろうとして「○○レッドはこう立ってるからこう立とう」とか、形から入っているんですよ。
なので最初は、撮影のときにお面をかぶって「役を演じる」っていうことが理解出来なくて。高田さんはそのキャラクターが好きってことではなく、役として台本を読んで演じているから、「普通にいる」っていうことがいかに凄いかって思うんですよね。「自然にいられる」ってことがどうしたらできるんだろうなってところに(自分も)来たので、最初からそれをやっている高田さんは凄いですね。
──面は付けていてもみなさん俳優としてお芝居をしていますよね!
浅井:自分が4年間のショーとTVの17年、合わせて20年ぐらい経験した中で、ようやく「役として普通に立つっていうことはこういうことかな」とわかってきました。でもやっぱり誇張はしたくなるんです。ヒーローショーの人って、普通にキャラクターを着て立っているのは不安だと思うんですよね。
「キャラクターの気持ちとして立っている」のが高田さんにはある。高田さんはスーツアクターというか「役者さん」で、僕は「スーツアクター」なんですよ! それぞれ概念があると思うんです。
──浅井さんが思うスーツアクターの概念とは?
浅井:「スーツアクター」ってファンの方々から生まれた言葉だと思っているんです。実際、僕らは撮影現場で演じているのを見ているから知っているけれども、TVで作品を見ている人は名前でテロップが出るとはいえ、役者さんの声も入るし、本当に高田さんや僕がやっているかってわからないと思うんですよね。全国のヒーローショーでスーツを着てやっている人たちもスーツアクターなんですよね。僕は面を付けて演じているからスーツアクターで、高田さんは役者さんだなと思うので凄いなと。
高田:じゃあ素顔でも出ようよ(笑)。僕が警察官役やるから、浅井くんは喫茶店のバイト役で(笑)。
浅井:役者だったり、アクションやスタントマンだったり、皆さんがいろんなプライドを持ってやって、顔が見えないけどそれに気付いてもらえたから、きっとファンの方からスーツアクターって言葉が生まれたんだなと思っています。
──いろんな考え方があってスーツアクターという言葉があると思いますが、尊敬される先輩がいらっしゃいましたら、すごいと思うところも合わせて教えてください。
高田:みなさん当たり前のようにすごいんですよね。一番近くで長くいるので、竹内康博さんはすごいなと思いますし。今年だとおぐらとしひろさんは面白くて、凄いなと思います。舞台に出ているのを見たときに、いつもの明るいおぐらさんと全然違うお芝居をしているのを見て、当たり前のように出来ちゃうんだなと思いました。
今年の敵幹部を演じていても楽しそうなんですよね。作品を見ると声は諏訪部順一さんのいい声になりますけど、現場ではいつも楽しそうにやっているんですよね。
浅井:今の土台を作って下さった諸先輩方の活躍によって「スーツアクター」って言葉があると思うから選べないですね。高岩成二さんや岡元次郎さん、いろんなキャラクターをやった先輩方は所作にもご本人が垣間見えるんですよね。
一人選ぶとなると、やっぱり『仮面ライダークウガ』がきっかけで入ったので、富永研司さんですね。伝説のクウガなのに普段はクウガじゃないんですよ(笑)。でもそれが役者だなと思うんですよね。
記念作品のときにちょっとした瞬間に「クウガだ!」ってなるのが凄い。「本当に仮面ライダーだったんだ!」って夢があるんですよね。富永さんの舞台を観に行ったとき、全然違うぶっ飛んだ役に衝撃を受けたので、いろんな表現ができることって凄いなあと思います。
──スーツアクターの推し方、応援の仕方を教えてもらえますか? ファンからの応援で嬉しいものはありますか?
浅井:それはもう、バンダイさんのおもちゃを買っていただくのが一番! あとは(自分が)ものを頂くと申し訳なくなるので、お手紙は嬉しいですね。でもやっぱり、自分が演じたキャラクターのおもちゃを買ってもらうのが一番未来に繋がるなと思います。
高田:SNSは書いてもらいたいですね。いろんな人が見るので、僕のことを知らなくても特撮ファンに届いたりするので。SNSで感想とか「今日の放送のここが良かった」とか書いてもらえると嬉しいです。個人的な感想はお手紙でもらえるのも嬉しいですが、今は書くのも大変ですからね。
──エゴサとかされるんですか?
高田:エゴサは、そこまでじゃないですけど。でも、「高田JAPAN」のYouTubeの動画とか、全然コメントが無いなあって(笑)。
──今お話に出た、「高田JAPAN」について詳しく教えていただけますか?
高田:JAE公式に認められているお笑いユニットですね。アクションとか絶対やらないお笑いユニットです! 一年ぐらい前からYouTubeのJAEチャンネルで動画もやっています。アクションするよりもおしゃべりしたり、ご飯食べたりする方が数字が伸びるので、これからもいっぱいおしゃべりしたり、ご飯食べたりします!(笑)