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TVアニメ『ザ・ファブル』第2クール:ヒロイン演じる安済知佳が感じた“宇津帆”の魅力

ヒナコは、何かに打ち勝とうとする強さも秘めている――TVアニメ『ザ・ファブル』宇津帆編:安済知佳さん(佐羽ヒナコ役)インタビュー

 

ヒナコは、何かに打ち勝とうとする強さも秘めている

――では、原作も読んだ上で、オーディションでは、どのようなイメージで佐羽ヒナコを演じたのですか?

安済:キャラクターのプロフィールでも説明されている通り、彼女には暗い過去があるのですが、その過去が壮絶過ぎて。普通に考えてしまうと、今、生きているだけで「頑張ったね」って思うような過去を抱えているんです。

でも、オーディションでやったセリフの中には、車椅子を使っている彼女が鉄棒を掴んで、立つ練習をしているシーンのセリフも入っていました。立つ練習をするのは、ただ絶望しているだけじゃなくて、まだ希望を捨ててはいないということで、何とかして今までの自分や周りの環境を変え、人生を立て直そうとしている。そんな健気な姿の中に、何かに打ち勝とうとする強さも秘めていることを感じてもらえるようにと思って、オーディションを受けました。

 

 

――オーディションでは、ジャッカルが出ているシーンもあったと仰っていましたが、作品と同じように、振り幅の大きいシーンがセレクトされていた感じですか?

安済:はい。佐藤に振り回される感じになるシーンとか、クライマックスのシーンとか、けっこういろいろなところのセリフがありました。

それに、作品について調べたときには、(メインの)キャストさんがもう発表されていたので、錚々たるキャストさんの顔ぶれを見て「わー!」となって(笑)。どういう風にお芝居を作ろうか、試行錯誤しながら何回も録り直しました。そういう感じだったので、合格と聞いた時には、すごく嬉しかったです。

――第1クールから出演しているキャスト陣の顔ぶれを見ると、ハードボイルドな芝居を求められているのかなと思ったという先ほどのお話も納得です。

安済:皆さん、本当に声の存在感が強い印象の方々で、ハードボイルド過ぎますよね(笑)。以前、ご一緒したことのある方は、どこから響いているんだろうと思うような声の役者さんばかりだったし……。

あと、興津(和幸)さんの佐藤は、どういうお芝居になるのか、すごく楽しみでした。それまでにご一緒した現場では、佐藤みたいに淡々としたキャラクターを演じられていることは、あまり無かったので。

――アフレコもまもなく最終回ということですが、ヒナコに関しての髙橋良輔監督や浦上靖之音響監督からのディレクションで、特に印象的だったものを教えてください。

安済:それが、全然ディレクションが無いんです(笑)。

 

 

――第17話の初登場シーンでも、特に無かったのですか?

安済:はい(笑)。本当に収録が早くて。テスト、ラステス(ラストテスト)、本番と、AパートとBパートを3回ずつやっているのに、2時間とか2時間半で終わっちゃうんです。

――30分アニメだと、多くの現場で、3~4時間くらいだと思います。それだけ、ディレクションなどが少ないということですね。

安済:役者を信頼した録り方をしてくださっているんだなと感じて、自分自身にピリッと緊張感が走りました。でも、髙橋監督も、音響監督の浦上さんも、すごくにこやかで癒しのオーラしか放っていなくて。そのギャップもすごく『ザ・ファブル』ぽいなと思いました(笑)。

――ディレクションが無いときは、逆に不安になったりするものなのでしょうか?

安済:私の場合は、「ディレクションがないってことは、これで良いんだ。信じて頑張ろう」と思うタイプです。迷っているときには、先に聞いてしまって、自分の中の迷いを無くしてからテストに臨めるようにしています。

でも、やっぱり錚々たるキャスト陣の中に途中から参加するという形だったし、髙橋監督をはじめレジェンドの方も多いので、最初はプルプル震えながら現場へ行きました。でも、良い意味で拍子抜けしたというか(笑)。

本当に温かい現場で、「ここに混ざっても良いんだ。合格したのは、間違いじゃなかったんだな」って安心しました。キャストの皆さんもできあがっている雰囲気の中に新参者を温かく受け入れてくださって、すごく嬉しかったです。

 

藤さんのお芝居が宇津帆の魅力を爆発させている

 

――第17話からの「宇津帆編」では、ヒナコの他にも3人の新キャラクターが登場します。ヒナコ視点ではなく、安済さんの視点から、3人がどういうキャラクターなのかを紹介していただけますか。最初は、藤真秀さんが演じる宇津帆玲からお願いします。

安済:原作を読んだとき、宇津帆って本当に悪いやつだと思ったんです。世間のニーズに入り込んでお金を奪うだけではなく、サイコパスな一面もあって、本当に人の心が無い。悪いやつだと思っていたからこそ、ヒナコにさらに寄り添えたところもあったと思います。

でも、アフレコ現場で聴いた藤さんのお芝居がすごく色っぽくて。悪役を好きになる気持ちが芽生えさせられるお芝居というか……。宇津帆が言っていることは、何て魅力的なんだろうと思わせるような不思議な色気があったんです。

――宇津帆に騙される被害者のようになってしまったわけですね。

安済:非人道的な彼の人間性をもっと掘り下げてみたいと思わせるくらいに、藤さんのお芝居が宇津帆の魅力を爆発させていて(笑)。宇津帆は、原作を読んだ時とアフレコに行った時で一番大きく印象が変わったキャラクターでした。

 

 

――次は、子安武人さんの演じる鈴木ヒロシについて教えてください。

安済:原作を読んだ時、最初は、鈴木が何を目標にしているのか掴めなかったんです。宇津帆とも完全な主従関係があるわけではなくて、ほぼ対等か、少しだけ宇津帆が上なのかなという関係。鈴木自身は、宇津帆の指示よりも、自分の好奇心に従って生きている感じがしました。でも、ヒナコに対して人の心を持って接してくれているのは、(宇津帆一派の)3人の中では鈴木だけ。本当に不思議な魅力がある人で、子安さんが声優を務められると知った時には、「なるほど!」って、すごく楽しみになりました。

これは、私が勝手に感じているだけですが、実際にアフレコが始まると、鋭いセリフの中にちょっと温かみがあるようなお芝居もあって、完全に悪だとは思えない。すごくミステリアスなキャラクターだと思います。

――ミステリアスな宇津帆や鈴木に比べると、金光祥浩さんが演じる井崎勤は……。

安済:そこの二人と比べると、井崎はすごく面白く見えちゃうというか(笑)。強いものに付き、自分が楽をして、その場を切り抜けられれば良いと思っているような感じがあるし、すごく短絡的で抜け目がないんです。あと、この3人の中では、唯一、関西弁で話すんですね。

 

 

――大阪が舞台なので、関西弁のキャラクターも多いですね。

安済:はい。この現場は、本当にたくさんの関西弁が飛び交っているんですけど、キャラクターによって、同じ関西弁でも印象はかなり違うんですね。これは私の勝手な受け取り方なのですが、金光さんの関西弁は、めちゃくちゃ軽いんですよ(笑)。この言い方が合っているのかは分かりませんが、お笑い芸人さんのように調子のいい感じの関西弁で、井崎というキャラクターにぴったりなんです。

宇津帆一派の3人で会話しているときも、何かが一つ違ったら、井崎は、ここにはいなかったんだろうなと感じさせるキャラクター性は、見ていてすごく面白い。この3人のトライアングルは、絶妙なバランスだなと思って楽しんでいます。

――最後に、第17話から始まる「宇津帆編」の見どころを教えてください。

安済:ここからのお話では、佐藤やヒナコをはじめとするいろいろな人の過去が錯綜していって、一つの出来事に繋がっていくんですけど、その入り乱れ具合がすごく絶妙なんです。こうやって登場人物が増えていき、いろいろな設定や組織が絡み合っていくと、「これ誰だっけ?」とか、「あの問題はどうなったんだっけ?」ということも生まれてくると思うのに、この作品では、それが全然ないんですよね。

登場人物は多いのに、すごくシンプルで観やすいんです。普通に生きようとしているけど、やっぱり普通には生きられない佐藤達の姿を楽しんでいただきつつ。(悪人なのに)「それは正論なんだよな……」と考えさせられるような言葉をたくさん吐いてくる宇津帆との戦いを楽しみにして欲しいです。

そんな中でもヒナコは、自分のことだけではなく周りのことも考えながら頑張っている女の子。組織や裏社会のお話の中でも、これまでのお話で言う(清水)岬やタコ社長(田高田健二郎)みたいに、皆さんが共感できるポイントもある子だと思います。ぜひ、ヒナコへの共感ポイントを見つけて、『ザ・ファブル』の世界を一緒に覗いてもらえたら嬉しいです。

 
[取材&文・丸本大輔 / 写真・MoA]

衣装協力/VACANCY、VANNIE U
スタイリスト・津野真吾(impiger)
ヘアメイク・上田忍(S☆mode)

 

作品概要

ザ・ファブル

あらすじ

最強の天才殺し屋...でも殺してはいけない?

幼少期から殺し屋としての英才教育を受け、
どんな敵も 6 秒以内に鮮やかに葬り去る、
無敵の殺しの天才・通称“ファブル”。
ある日、組織のボスから
「1年間誰も殺してはならない」
という突然の指令を受けた彼は、
人殺しをしない全く新しい生活を送ることになる。

佐藤明と名乗り、プロとして初めて過ごす普通の生活。

しかし、平穏な日常の中に蠢く、不穏な空気が明を放っては置かない...。
果たして、この最大にして至難のミッションを遂行することはできるのか!?

寓話と呼ばれし無敵の殺し屋“ファブル”の、 カッコよく、滑稽で、
そして少し風変わりな 1 年間の殺し屋休業生活が始まる!

キャスト

佐藤明:興津和幸
佐藤洋子:沢城みゆき
清水岬:花澤香菜
海老原剛士:大塚明夫
小島賢治:津田健次郎
ボス:小村哲生
ジャッカル富岡:福島潤
浜田広志:石井康嗣
黒塩遼:岩崎諒太
高橋勝也:三野雄大
砂川宗一:髙橋耕次郎
マツ:水内清光
田高田健二郎:大西健晴
貝沼悦司:朝比奈拓見
マスター:一条和矢
河合ユウキ:梶裕貴
宇津帆玲:藤真秀
佐羽ヒナコ:安済知佳
鈴木ヒロシ:子安武人
井崎勤:金光祥浩

(C)南勝久・講談社/アニメ「ザ・ファブル」製作委員会

 

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