『逃げ上手の若君』&『負けヒロインが多すぎる!』大注目の夏アニメ2作品のテーマソングを手掛けるシンガーソングライター宇宙人・ぼっちぼろまる、アニソン界に現る!
『ぼっち・ざ・ろっく!』『トラペジウム』などを手掛けるCloverWorksによるTVアニメ『逃げ上手の若君』のEDテーマ・和風ダンスロック「鎌倉STYLE」。そして、『リコリス・リコイル』『かがみの孤城』などを手掛けるA-1 PicturesによるTVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』のOPテーマ・王道アニソン「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」のデジタルシングルが配信された。ここでは、シンガーソングライター宇宙人“ぼっちぼろまる”によるアニメのテーマソング2曲について、紹介していきたい。
なお、それぞれパッケージでもリリースされ、「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」は8月14日、「鎌倉STYLE」は8月28日発売される。
シンガーソングライター宇宙人・ぼっちぼろまるとは?
音楽で地球侵略を目論む、ぼっち星からやってきた、ミュージシャン活動を行う宇宙人“ぼっちぼろまる”。
地球外生命体だが、地球の音楽に興味を持ち、その音楽を吸収しているので、いわゆる日本のロックファンは、彼が紡ぎ出すメロディやギターリフに心を動かされるし、日本らしい情緒も感じるはずだ。
筆者の趣味で申し訳ないが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやフジファブリック、RADWIMPSといった邦ロックから、ザ・ストロークスやフランツ・フェルディナンドといった、いわゆる00年代から流行った洋ロックが好きな人は、結構親近感が湧く音楽なのではないだろうか。
インディー時代のアルバム『GARAKUTA』(21年4月2日発売)は、それまでのひとつの集大成という感じがしたし、大きな可能性を感じた。発表されている楽曲を聴いても、あらゆる音楽からの影響を感じさせながら、流行も捉え、新しいサウンドを生み出し続けているので、かなり準備、そして計算をして地球侵略を進めている感じもする。
ではここで、彼のメジャーデビューからの歩みを簡単に振り返ってみたいと思う。
2016年頃から動画サイトに楽曲を投稿し続けているぼっちぼろまるは、2022年10月5日に「シン・タンタカタンタンタンタンメン」で、ソニーミュージックからメジャーデビューし、次のステージに向かう足場を固めた。
そんな彼の存在は、2022年7月「おとせサンダー」がTikTokを中心にバズったことにより、一躍世に知れ渡る(ビルボード年間TikTokチャートで1位獲得)。同じ年の11月には、PlayStation®秋冬の注目ソフトを紹介するCMの楽曲「アソボー行進曲」を配信、その人気を確かなものにした(なお、これら3曲を収録されている1st EP『ぼっちのうたI』も、11月30日にリリースしている)。
2023年には、ピカチュウが大量発生するポケモンカードのCMソングを担当。その後、TVアニメ『ポケットモンスター』のOPテーマ「ハロ」をyama × ぼっちぼろまるとしてリリースしたことで、ファミリーを中心としたポケモンファン層で話題になった。全国の幼稚園・小学校では「ハロ」が運動会などで流れているという情報もあるほどだ。
また、ネットの中だけでなく活動当初から積極的にバンド編成でのライブ活動をしているのも特徴的で、リアルでも彼の音楽を広め続けている。これは、ネット発のアーティストとしては珍しいかもしれない。
アニソン王道スカロック「つよがるガール」&古今東西の日本人の魂に刻まれた宴ソング「鎌倉STYLE」
そんなバズを司るぼっちぼろまるが、次なるステージのひとつとして選んだのはアニメの主題歌。しかも7月からスタートする2つの注目作『負けヒロインが多すぎる!』と『逃げ上手の若君』で、それぞれOPテーマとEDテーマを担当するというのだから驚きだ。ここからは、この2曲について紹介していきたい。
TVアニメ『負けヒロインが多すぎる!』は、いわゆる恋に敗れる側となる“負けヒロイン”をメインに据えたラブコメディ。
対バンなどで昔から親交があるというバンド・ネクライトーキーの女性ボーカル もっさがゲストボーカルとして参加しているOPテーマ「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」は、疾走感のあるテンション高めのポップチューン。
OPテーマは、アニメを象徴するもの、顔になるものとよく言われるが、ぼっちぼろまるが、このアニメのために全力で書き下ろした楽曲だというのは、最初の歌い出しですぐにわかった。
〈負け!負け!負け!負け!〉と、作品タイトルにある“負け”をストレートにぶち込み、〈つよがるガール!〉というパンチラインで華やかに幕が上がるのだが、ここのもっさの歌声がとてもキュートでインパクト絶大、そのあとのイントロでアニメのタイトルが出てくることまでしっかり想像できてしまった。この王道感はアニメのOPにふさわしい!
骨太でメロディアスなベースライン、陽気なビート、男性ボーカルと女性ボーカルの軽快な掛け合い、ブラスセクション、緩急のある展開とキャッチーなサビ。鳴っている楽器も賑やかでワクワク感しかない。負けて切なくなるのではなく前向きになれるところもオープニングらしかった。コメディ要素が多いアニメなのだが、その中にあるシリアスな部分も楽曲でしっかり表現しているのも素晴らしい。
アニソンファンにイメージしやすいアーティスト名をあえて上げるとするならば、ヒャダインのような、いろんな仕掛けや展開があってワチャワチャごちゃごちゃしているけど、しっかりとまとまっている上質なポップソングと言ったらわかりやすいのかもしれない。ブラスアレンジの感じは、神前 暁楽曲にも通じるものがある。
続いて、TVアニメ『逃げ上手の若君』は、『暗殺教室』の松井優征が描く『週刊少年ジャンプ』で大人気連載中の歴史スペクタクル。アニメを手掛けるのは『ぼっち・ざ・ろっく!』のCloverWorksとなる。
鎌倉幕府滅亡のあと、逃げ隠れの能力がずば抜けている北条家の生き残り・北条時行が動乱の世を駆け抜け、大切な故郷・鎌倉を取り戻すために戦いに身を投じていくという物語。
EDテーマ「鎌倉STYLE」は、王道アニソンというより、センス抜群で令和の匂いも漂うファンキーな和風ダンスロック。和楽器の取り入れ方もおしゃれだし、さりげなく挟まれるノリの良いラップが心地良い。物語がどんなにシリアスな展開でも、ちょっとハッピーな気持ちになって終われる楽曲だ。
タイトルもそうだが、〈鎌倉SHOCK!〉〈鎌倉NIGHT〉〈鎌倉DANCE〉というフレーズのキャッチーさ、ついつい言ってしまいたくなる言葉を作り出せるのは、センス以外の何ものでもない。いつの時代も、音楽やリズムに合わせて体を動かしたら楽しい!というのは変わらないのではないか……そんな時代を超越した人間の性(さが)的なものに食い込んでいるのも奥が深い。ちなみに、縄文から令和までの時代を覚えたい学生は、ぜひこの曲の歌詞を覚えて楽しく歴史を学んでほしい(笑)。試験に役立つでしょう。
グルーヴィでおしゃれな楽曲にメリハリのある構成、後半の落ちサビ前で突如暴れるギターソロは、ライブでの盛り上がりも想像できる。ボーカルをいくつも重ねたり、声色を変化させているのも実に効果的で、何度も繰り返し聴きたくなるような飽きのこない感じは見事だった。