〜『プリパラ10周年記念 大プリパラ展』に寄せて〜 森脇真琴監督×依田健プロデューサー(タツノコプロ)×大庭晋一郎プロデューサー(タカラトミーアーツ)鼎談で10年経った今だから明かせる制作陣のメイキングドラマ/インタビュー
2014年7⽉にアミューズメントゲームとTVアニメの放送がスタートしてから今年で10周年を迎える『プリパラ』。アニバーサリーを記念して、10年たっても!み~んなトモダチ、み~んなアイドル!!プリパラ10周年記念『大プリパラ展』が2024年8月9日(金)~25日(日)の期間、西武渋谷店B館イベントスペースにて開催されます。
本展覧会は主人公「らぁら」と重要キャラクター「ファルル」の友情と奇跡を中心に、『プリパラ』の10年の歴史を振り返る展覧会です。さらに、福岡・大阪・愛知での巡回も決定しています。
『プリパラ10周年記念 大プリパラ展』に向けて、森脇真琴監督、依田健プロデューサー(タツノコプロ)、大庭晋一郎プロデューサー(タカラトミーアーツ)に貴重なお話をうかがいました。『プリパラ』愛に溢れた言葉にご注目ください。
『プリパラ』は特別な作品
――『プリパラ』にまつわる思い出はたくさんあると思うのですが、この10年を振り返って、どのような思い出が蘇りますか?
一同:う〜ん……。
大庭晋一郎プロデューサー(以下、大庭):いろいろとありすぎて、何から話していいのやら(笑)。
森脇真琴監督(以下、森脇):そうですね(笑)。
依田健プロデューサー(以下、依田):ですね(笑)。
大庭:……では僕から。『プリパラ』立ち上げ当初がいちばん感慨深いです。らぁらがデビューしているのって、アニメ『プリパラ』の第1話目じゃなくて。『プリティーリズム・オールスターセレクション』(2014年4月5日〜6月14日)で、いろいろな教えをもらって、それで第1話で主人公デビューをしていて。で、さらに遡ること『劇場版 プリティーリズム・オールスターセレクション プリズムショー☆ベストテン』(2014年3月8日より公開)の最後のシーンに、らぁらが「かしこまっ!」と言って出てきます。
らぁら役の茜屋(日海夏)さんがものすごく頑張って、その一言を言ってくれたことを覚えています。その当時は、まだ皆さんはらぁらの存在を知らない状態でした。その後、映画の再上映があったんですね。その時はみんなが「かしこまっ!」と言ってくれて、「主人公として認められたんだな」というところからの、『プリパラ』の第1話なので感慨深いものがありました。
依田:僕はそうですね……2年目のクライマックスで、ファルル(CV.赤﨑千夏)、ひびき(CV.斎賀みつき)、ふわり(CV.佐藤あずさ)を巡る話の中のアフレコでの出来事ですね。
赤﨑さんがお話の展開について「これってこういうことですか?」「これだとファルルが可哀想じゃないですか?」と森脇さんのところまで聞きに来たんです。それで、赤﨑さん、佐藤さん、茜屋さんがボロ泣きして、その中でアフレコをしました。
――第86話「つかめ、春のグランプリ!」の「スプリングドリームアイドルグランプリ」のお話ですね。
大庭:あれですよね。ひびきが「ファルル(ボーカルドール)のようになりたい」という思いに対して、ふわりは「外の世界も良いものよ」と花(マーガレット)に例えて話をして。結局、クライマックスではファルルがひびきに対して拒否をするんですよね。
依田:そうそう。要するに、ファルルはプリパラの外の世界には出られない存在なのに、そんなファルルがプリパラの外にいたほうがいいよ、っていうのはあまりにも悲しすぎるんじゃないんですか、どういう気持ちなんですか?って。その時は、監督、わりと話しましたよね?
森脇:そうですね。ただ、アフレコ時は端的に話しました。でもやはりそこは、話しても納得ができなかったとは思います。ボーカルドールであるファルルが、ボーカルドールになっちゃダメ、というわけですから。
依田:ある種「自分みたいな存在にならないで」とひびきに言うことって……ファルルとしてどういうニュアンスでセリフを言うか、複雑だと思うんです。
大庭:それと確信も欲しかったんでしょうね。本当に(ファルルは)そう思っていっているのかって。
――そこで、なにか変更することっていうのはあったんですか。
依田:それはなかったです。そこに対しての意見というよりも……。
大庭:理解したい、という気持ちが大きいんでしょうね。
依田:そう。で、理解した上で、それがつらかったんでしょうね。
大庭:それはファルルのボーカルドールという特性上、すごく役者さんとシンクロしていると思うんです。悲しいことが悲しいと感じられないのが、悲しい。それがボーカルドールたちなので。
依田:そうそう。そういうすべてが重なってシンクロしたんでしょうね。完全にファルルに寄り添っている赤﨑さんとしては、完全には整理できなかったんだと思うんです。納得するまで話をして、お芝居をするわけですけど、みんな泣き出してしまう。
森脇:ふわりもね、せつなすぎて。
大庭:そういう経緯もあって、茜屋さんに関しては、ひびきとらぁらが競り合って、らぁらが「み~んなトモダチ!み~んなアイドル!」って言いながら、はじまりのチャームベルを掴むんだけど、その瞬間「み〜んなトモ……うわあああ〜ん!」と、茜屋さんが泣いてしまうっていう。
依田:あれはね。お話もクライマックスなので、キャストさんの感情が入ってくるところだとは思うんです。でも、キャストさんもいつもなら泣かずにやれてしまうんだけども、あの時はさすがに、もう感情がまさってしまったなって。長崎(行男/音響監督)さんも泣いていたかもしれない。もちろん僕も泣いていました(笑)。会場全体にもう感情が溢れていて、完全に引っ張られたものがありました。
――大庭さんも?
大庭:僕はしめしめって感じでした(笑)。「みんな泣きなさ〜い」と。
森脇:(笑)。でも……あのシーンに関しては、もしかしたら赤﨑さんは今も納得できていないかもしれない。
依田:もしかするとね。
大庭:でもね、僕、それが良いと思うんですよ。結論を出してしまえば、そこで終わりじゃないですか。今、この時点でのファルルの真の意味での本当のキモチってどっちなんだろう、って分からないところも良いと思っていて。
森脇:うんうん。
依田:そうですね。だからこそ、僕は3年目の最終話(第140話「み〜んなトモダチ!ず〜っとトモダチ!」)で、ファルルが1日だけ学校で授業を受けるというエピソードができて良かったなって思っています。「外に出られましたよ」っていう。しかもそれを最終話で出来たっていう。
──アフレコにもいろいろなドラマがあったんですね。
依田:もしかしたら、ご本人たちは話してほしくないエピソードかもしれないですけども……。
森脇:でも、今だからこそ話せる。
依田:そう思います。
やはり『プリパラ』のキャラクターたちは、作ったものではあるんですけども、一人ひとりが確立されて、そこに居るんだなと感じさせられますね。