『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』山姥切国広役・前野智昭さんインタビュー|「山姥切国広は“もう1人の自分”のような感覚です」――近侍を巡る、悩める山姥切国広とへし切長谷部の距離感
山姥切国広は自身にとって「もう1人の自分」のような感覚
――今作のへし切長谷部の印象はいかがでしたか?
前野:見放さないで、なんとか山姥切を立ち直らせたい気持ちが全面に溢れていて、やはり「すげえ良い奴だな」と思いました(笑)。
――(笑)。近侍を巡るへし切長谷部と山姥切国広の掛け合いも印象的で、へし切長谷部が山姥切国広を気にするような台詞もありますが、そんな2人を見ていて感じたことを教えてください。
前野:山姥切国広としては、長谷部の方が近侍にふさわしいと思いつつも、長谷部としてはなんとかして過去の失敗で折れてしまった心を取り戻させてやりたい気持ちもあったり。だから、お互いにどうやって距離を詰めていいのか、計りかねる気まずさもすごく分かるのでとても人間らしい2人だなと。
もどかしくなる長谷部の気持ちも分かるし、長谷部の好意を正面から素直に受け止めきれない山姥切の気持ちもすごく分かる。だからこれは長引くだろうなと思っていましたが、戦いの中でお互いの答えを見つけていったと思いますし、とても良い組み合わせだなと感じました。
――お互いに少し似ているのかな?と感じたりもしました。
前野:似てると思いますね。融通が利かないわけではありませんが、ちょっと不器用なところを両者ともに持っているので、似ているからこそ素直になれない部分があるのだろうなと。マイルドに(気持ちを)言えるタイプではないと感じています。
――へし切長谷部を演じられている新垣樽助さんのお芝居についても併せてお聞かせください。
前野:新垣さんの長谷部のお芝居は厳しいだけではなく、その厳しさの中に相手を慮る優しさが端々に感じられるので、ただ怒られるだけではなく、自分のことを思って言ってくれる気持ちがすごく伝わってきます。優しく包み込んでくれるような包容力があるので、厳しくも優しく包んでいただいたなと思いますね。
――へし長谷部と新垣さんが似ているなと感じるところはありますか?
前野:新垣さんが現場にいらっしゃると安心感があって、こちらが何をしても優しくフォローしてくださるはず、という長谷部めいたところもあると言いますか……(笑)。
“長谷部めいた”という言葉が正しいかは分かりませんが、長谷部のような安心感がある方なので本当に長谷部のままだと思います。鳥海さんもそのまま三日月のような気もしますし……そう考えるとどこか変な感じがしますね。
――前野さんご自身も山姥切国広と共感する部分が多いと仰っていましたし、なんだか不思議な繋がりですね。
前野:ええ。鳥さん(鳥海さん)も指導者のような、(三日月のように)答えを自分では言わない方なんです。
――そういえば、SNSを拝見した際に、6月21日の「山姥切国広重要文化財指定記念日」で山姥切国広のグッズのお写真をポストされているのをお見かけしました。
前野:そうですね! 僕は結構、自分が担当させていただいているキャラのグッズを集めたりするのが好きで。
――山姥切国広への愛をとても感じます。2015年に原案ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』がスタートし、コンテンツ始動から9周年を迎えましたが、前野さんのキャリアにとって「山姥切国広」とはどのような存在ですか?
前野:本当にかけがえのない存在ですし、変な言い方をすると「もう1人の自分」みたいな感覚でいます。コンプレックスがあって、その中でも懸命に頑張っている姿はとても愛おしく映っていて。だからこそ「自分も頑張らなきゃ」という気持ちにさせてくれるというか。
そして、多くの方が『刀剣乱舞』や山姥切国広を応援してくださっていて、それも自分のことのように嬉しいです。
――加州清光たちと同じく始まりの五振りでもあります。
前野:はい。だから、失望させてはいけないと思う刀剣男士だと思って演じています。自分もそうですが、舞台やミュージカルでもみなさんが愛を持って作ってくださっている刀剣男士で、国の重要文化財でもある。「そんな彼に見られて恥ずかしくないような役者でいないと」と戒めにもしています。
――今、舞台やミュージカルのお話もありましたが、さまざまなメディアミックスがされる『刀剣乱舞』というコンテンツの魅力を最後にお聞かせください。
前野:まさに色々なメディアミックス展開をしていただいているおかげで、ゲームやアニメ、舞台やミュージカルと、本当にさまざまな角度から楽しんでいただけるコンテンツになっていると思います。
元々は重要文化財であったり、刀として存在しうる者たちの物語の中で共感を得られる部分もたくさんあると思いますし、日本の歴史的なところでも貢献している作品だと思います。色々な方に興味を持っていただける、とても近いところにあるキャラクターと物語なんだなと。
最初にブラウザゲームの声を当てさせていただいた時には、まさかここまでのメディアミックス展開をさせていただけるとは想像もしていなかったので、本当にみなさんの応援のおかげでここまで大きなコンテンツになりました。
そして、どのジャンルにおいてもそうですが、お互いに高めあえて行けるところが、このコンテンツの素晴らしいところだと思います。例えば、今回は舞台が脚本原案のオリジナルストーリーをアニメでやらせていただいて、僕らも舞台のみなさんに失礼のないようにしようとか。舞台のみなさんがアニメを観てくださって「やっぱりアニメもすごいな」と思っていただけるようなものを作ろうとか。
僕たちはそういうものをモチベーションにしていけますし、逆に舞台やミュージカル、歌舞伎に携わっているみなさんはゲームやアニメを越えてより面白いものにしていこうというモチベーションを持っていると思いますし、そうやってお互いを高め合えるコンテンツはそんなに多くはないはずです。ここまで大きくメディアミックス展開をして、それぞれのジャンルが良い関係性を保っていけているというのは、『刀剣乱舞』ならではだと思いますね。
――振り返ってみれば、スマートフォンアプリ「刀剣乱舞Pocket」がリリースされる前のPC版ブラウザゲームのみでプレイ可能だった時代が懐かしいです。
前野:いや、本当ですよ!(笑) 初期のブラウザゲームで「これ大丈夫かな」とドキドキしながら(ゲーム配信開始の)発表を待っていました。今も新しい刀剣男士が発表されるたびに、SNS上で話題に出してくださって。あれよあれよという間に、人気になって嬉しい限りです。今後の『刀剣乱舞』もお楽しみいただけますと幸いです。
[取材・文/笹本千尋]
『刀剣乱舞 廻 -々伝 近し侍らうものら-』作品情報
公開情報
2024年8月16日(金)より、三週間限定劇場上映
あらすじ
自身が率いる部隊を全滅させかけてしまった山姥切国広は、自らの申し出により近侍を辞すことに。
主である審神者より新たな近侍へと任命されたへし切長谷部。
ただへし切長谷部はそのことに納得できずにいる。
これは受け継がれ、繰り返される、近侍の物語―。
キャスト
へし切長谷部:新垣樽助
山姥切国広:前野智昭
鶴丸国永:斉藤壮馬
燭台切光忠:佐藤拓也
同田貫正国:櫻井トオル
大倶利伽羅:古川慎
ほか