「東谷くんも高人さんと恋仲になっていく過程で覚えていった感情がたくさんあるので、人間味に変化があったと思います」――『抱かれたい男1位に脅されています。』シリーズ累計500万部突破記念:桜日梯子先生インタビュー
アニメ化、舞台化、ノベライズもされた桜日梯子先生による大人気BLコミック『抱かれたい男1位に脅されています。』(通称『だかいち』)。現在、既刊9巻が発売されており、最新の雑誌連載(第10巻収録予定)ではファン待望の「同棲編」がスタートしています。
今回、本作の500万部突破を記念して桜日梯子先生にインタビューを実施しました!
主人公である東谷准太と西條高人について、そしてこれまでのエピソードを改めて振り返り、桜日先生が選ぶ作中のお気に入りエピソードBEST3の紹介、桜日先生のお好きなBLの設定などファン必見の内容となっています!!
10年続く『だかいち』の中で、東谷くんと高人さんそれぞれが変化・成長したこと
――改めまして、500万部突破おめでとうございます! 今年7月にアニメイト池袋本店1Fエントランス広場にて行われていた『だかいち』ジャックは圧巻でした。
桜日梯子先生(以下、桜日):すごかったですね。新しくなったアニメイトさんの広々としたエントランスにどかん!と『だかいち』を装飾いただくことは私も嬉しいですし、読者さんたちにもきっと喜んでいただけたのではないでしょうか。
『だかいち』のイラストを大きなアクリルパネルに印刷してもらうことが初めてですごく感激しました。印刷がとっても綺麗で、どんどん文明は発達していくのだなと……(笑)。(『だかいち』に限らず)やはり、みなさんも写真を撮りたいと思いますし、その気持ちを汲んでいる場所だなと思いました。
――10年以上続く『だかいち』ですが、作品が生まれた当初と現在を比べて変わらず大切にしているこだわりや、逆に作品への向き合い方で変化したことはありますか?
桜日:キャラクターは描いているうちに成長していくものですし、変化があるものだと思いますが、「これだけは変えないでいよう」と思うところは、初めに設定したキャラクターの根本的な性格の部分ですね。
みなさんが作品を読み始めた際の取っ掛かりとして、そこは印象に残っていると思いますし、個人的には人間どんなに成長したって絶対に変わらないものはあると思うので、根幹は変えずにその中で成長させていきたいと考えています。
私自身の作品への向き合い方としては、『だかいち』が長編になって変わりましたね。初期の頃はその1話1話に自分がやりたいことを全部詰め込んでいくような形をとっていて……お話としては濃いけれどページ数が限られていることもあり、そこまで深掘りはできませんでした。
ですが長編となった場合、長期的な目で先々を見越して「(物語における)この問題はここで出していこう」と考えたり、その1つ1つを丁寧に描ける余裕があるので、ストーリー構成の作り方が変わりましたね。「ここに後に出すお話の布石を置いて、これはもう後回しにしよう」みたいな。
なので、現在、みなさんが話を読んでいても「ここの問題が解決してないけど、どうなのかな?」と感じるところがまだまだあると思います。
――先ほど変わらない部分についてお話しされていましたが、東谷くんと高人さんが成長したと感じるところを教えてください。
桜日:高人さんは基本、あまり交友関係がない人なので……(笑)。自分の中で全部問題を解決していく自己完結的なところがあって、強いといえば強い人です。そんなプライベートゾーンがかなり狭い人が東谷くんと付き合い始めて、プライベートゾーンの幅が広くなってきたなって思うところがあります。
これは意図的ではないのですが、描いているうちに「あ、何かこの人、人付き合いが良くなってきた」って(笑)。丸くなったと思いますね。ですが、たまに「丸くなったままでいいのか?」と思って、ちょっと問題を提議させて、元の高人さんも思い出しつつ描いています。
――東谷くんに関してはいかがでしょうか?
桜日:東谷くんは、高人さんと深い関係になる前はあまり人間味がない人でしたね。でも高人さんと出会ってやっと人間社会と関わりを持つようになっていきます。
ただこれも、全て高人さんありきの関わり方なので、これは東谷くんの課題になってきます。高人さんが自分を通さなくても東谷くんが社会とやっていけるように仕向けようとしている節もあるので、そこで東谷くんが変わるか変わらないかは物語上、なるようにしかならないなと思っています(笑)。
けれども、東谷くんも高人さんと親しく近しい関係になり、恋仲になっていく過程で覚えていった感情がたくさんあるので、人間味に変化があったと思います。