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桜日梯子が『だかいち』で大事にしている“即堕ち2コマ”的な要素|シリーズ累計500万部突破記念インタビュー

「東谷くんも高人さんと恋仲になっていく過程で覚えていった感情がたくさんあるので、人間味に変化があったと思います」――『抱かれたい男1位に脅されています。』シリーズ累計500万部突破記念:桜日梯子先生インタビュー

桜日先生のお気に入りエピソードBEST3! 栄えある1位は……!?

――これまでに発売されているコミックスの中で、桜日先生のお気に入りエピソードBEST3を教えてください。

桜日:まず、3位は第3巻から0章「出会い編」です。0章を描いたことで、ようやく本格的にシリーズとして長編に突入した感覚がありました。1話で完結の予定だった『だかいち』の続きを描くことになって、続編も1話で終わるように描いていました。ですが、0章という物語の本当のスタート地点を描いたことで、「1話完結」のスタイルをやめて、先々を見据えて描くようになりましたね。
 

本当に1巻目の時は、こんなにシリーズが続くと思っていなくて、『だかいち』は1話でちゃんと起承転結があって完結しているのが芸風だったので(笑)。そんな芸風がある中で、世界観がぐっと広がる0章を描くといきなり感が出てしまうかなとも思いました。
 
ですが、2巻で綾木(千広)が登場した際、東谷くんと高人さんの2人がどういう関係性から始まったのかというファーストコンタクトを描いて解決してから、改めて2人の今後を描かなければならないと思いました。0章のストーリーは2巻の途中ぐらいから考えていました。
 
0章が始まるまでは東谷くんをそこまで深堀りしていませんでした。でも2人が恋愛をしていく中で、より問題を抱えているのは東谷くんの方でして。私自身はどちらも主人公だと思って描いているので、0章で初めて東谷くんにモノローグが付いて東谷くん視点の話を描いたことで、ようやく2人の主人公感のバランスが取れた感覚がありました。今、振り返ってみても、キャラクターの内面を深く描いたのは0章が最初だったと思います。

▼0章「出会い編」収録コミックス第3巻

 
続く2位は第6巻からの「スペイン編」ですね。描いていても楽しかったですし、漫画家として描くにあたって「取材って大事だな」って痛感させられた章でした。
 


 
ストーリーの設定として、(東谷の)祖父がミハスという場所でバルを営んでいるところから物語が始まっていることもあって、実際にスペインのミハス周りを見ました。本当に取材が実現するとは思っていませんでしたが、行ってみるとやっぱり住んでいる人の雰囲気や建物とかの空気感、文化、あとは食事にしても出てくる感じが日本と全然違っていました。
 
そういうものに触れてみると、「日本にいるだけじゃこの空気感は描けなかったな」と感じた部分がすごくありましたね。なので、その土地を舞台としたお話を描くことになったのなら、可能な限り現地に行った方がいいんだなって。その方が引き出しが増えて、ここでキャラクターに何をさせるという具体性と解像度が上がると思います。

▲スペイン取材で撮影された写真

▲スペイン取材で撮影された写真

――スペインにはどれくらいの期間、滞在されたのですか?

桜日:8日間のツアーでミハス周辺へ行き、その後バルセロナのサグラダ・ファミリアを見に行ったりしました。ツアー以外にも現地を案内してくれる人にお願いして、ツアーで行くような場所ではなく地元の人が行くような場所を教えてもらったり、普通だったら夜に歩けない場所に連れて行ってもらったり。たくさん得られるものがあった取材だったなって思います。
 
そんな経験から、今だと高人さんたちが住んでいるのが中目黒なので、現地にわりと足を運んでいたり、風景の写真を撮ったりしています。

▼「スペイン編」収録コミックス第6巻

 
そして1位は(第8巻収録の)「血の婚礼」の舞台です。『だかいち』はBLというジャンルで恋愛をメインにしているのですが、作品的にはやはり「役者」という仕事をしている人間たちをきちんと描きたくて、私がやりたかったことの1つなんです。
 


 
1話まるっと舞台の物語を描いて、できれば読みながら舞台を観ている感覚になったらいいな、なんて。それを1話まるっと描かせていただいて、本当に1つ描きたいものを描き終えた達成感がありました。達成感でちょっと灰になりました(笑)。だから、すごく大事な話です。
 

――先生ご自身も学生の頃に演劇に携わっていたと伺いました。先ほど、「まるっと舞台を見せる」とお話しされた時に、このお話に関してはどちらかというと脚本家みたいな感覚だったのかな?と感じたりもしました。

桜日:そうですね。高校の時に演劇部に入っていて、その時も脚本を書いたりしていました。
 
もちろん、プロの脚本家さんがいらっしゃるので、脚本家みたいなというのは変かもしれませんが、気分としてはこの2人の役者を使って、この2人に何をやらせて、この2人のどんな場面をお客さんに見せてもらおうか、とか。あと、自分がこの舞台を実際に観ていたらどんな場面になってるのかな?とか、そういう部分はすごく考えて作り込みましたね。
 
BLは恋愛を描くことが中心で、本来ならどんな話数でも少しは恋愛要素を入れるところを、「血の婚礼」では一切考えないようにして、このお話だけは2人が成功させようとしている舞台をお客さんとして見てほしいなって思っていました。
 
実はコマもお客さん視点で描いていて、普通だったら登場人物の心象風景みたいな視点から描くところ、この章は、お客さんが観ているだろう舞台上の景色を表現するという意識で描きました。

▼「血の婚礼」収録コミックス第8巻

 

(C)Hashigo Sakurabi/libre
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