北条時行という人物に、怖さすら感じています｜TVアニメ『逃げ上手の若君』連載第10回：亜也子役・鈴代紗弓さんインタビュー

「こら。死んだらどうする」はアピールし過ぎないから逆にゾクッとする

――主人公の時行には、どのような印象をお持ちですか？

鈴代：原作の第1話にありました「その少年は逃げる事で英雄となり、生きる事で、伝説となった」という一文がとても印象に残っています。「逃げる主人公」って何!? どういうキャラクターなんだろう、と気になって仕方なかったですね。

そこから物語を見ていくなかで、人柄も含めて可愛らしい人物だなと思いましたが、幼いながら敵を押しのけたり首をはねることもできる肝が据わっている人物だとも感じて。何より、あれだけの死地で逃げ切れるのは意味が分からないくらい、すごいです。逃げることに喜びを見出すときのあの表情なども含めて、北条時行という人物に私は、怖さすら感じています。

――確かに、常に死と隣り合わせのあの時代の戦場で、あの悦な表情をできるのは、只者じゃないです。

鈴代：敵に回したら、本当に怖い存在だと思います。何かをされるという恐ろしさというよりかは、味方じゃないことが怖い、という感じですね。

――決して腕っぷしが強い訳ではありませんが、改めて考えてみると、怖い存在です。

鈴代：そんな存在だから、どういうお芝居が合うのか想像がしづらいキャラクターでした。ただ、第一回の（結川）あさきちゃんの声を聞いたときに「なるほど」と思いました。

特に「おい」「こら。死んだらどうする」というセリフには驚きましたね。あれは、絶望しているなかで逃げることへの感情を出しながらツッコむという、どう消化したらいいか分からない感情の起伏のなかで放つセリフだと思うんです。それを絶妙な塩梅であさきちゃんは表現していました。私だったら、もっとどれかの感情を誇張していたと思います。でも、あのセリフは何かをアピールし過ぎないから逆にゾクッとするんですよね。私にはない表現の出し方で、とても勉強になりました。

――鈴代さんも衝撃を受けたんですね。

鈴代：はい。本作って、コメディとシリアスなシーンが融合していて、地続きになっている気がして。あさきちゃんは、それに上手く対応されていてすごいなと思います。例えば、第一回で頼重がボケて若様がツッコむシーンでも、絶望している気持ちは地続きのままでお芝居をしていたんです。お芝居がすごく生っぽくて、北条時行のリアル感が出ていました。

――なるほど。

鈴代：確か、初めてスタジオオーディションで受かったのが本作だと言っていた気がしますが、そんな風には見えないくらい気さくに現場で振舞っていました。私も初対面でしたけど、「あれ、地元の友達だったかな？」と思うくらいのテンションで話せたんです（笑）。懐に入るのが上手ですよね。パーソナルスペースに入ってこられても、彼女の持っている天性の雰囲気やオーラで嫌な感じが一切しない。そういうところも含めて、『逃げ若』の北条時行らしさを感じました。あさきちゃんにとって時行は、運命のキャラクターなのかもしれません。

――お話を聞いていて、アフレコ現場は先輩だけでなく、同期や後輩から学ぶことも多いんだと感じました。

鈴代：それは、本当に。自分以外の人の芝居から学べることは多々あります。そこに上下は関係ないですね。

中村悠一さんのお芝居も相まって、真面目なときの頼重様は安心感がある

――亜也子や時行以外にも個性的なキャラクターが多数登場する本作。なかでも鈴代さんがお気に入りのキャラクターは？

鈴代：すっごく迷いますが、1周まわって頼重様ですね。普段はふざけ倒していて本当に変態チックなのに、真面目なときのトーンがすごく温かい。これは演じる中村悠一さんのお芝居も相まってですが、真面目なときの頼重様は「この人に任せておけば絶対に大丈夫」という安心感があるんです。あれだけ色々なことが起きても自分を保っていられるから、メンタルも相当強いですよね。そういう意味で頼重様も怖さを感じるキャラクターです。あとは装いもいいですよね。カッコいい。また、亜也子の格好も、ふとももが見えるのがいい（笑）！

――なるほど（笑）。ちなみに、雫役の矢野妃菜喜さんは亜也子がお気に入りとおっしゃっていました。

鈴代：本当ですか！　嬉しい！

――アフレコ現場ですごく元気な声が聞こえてきたって。

鈴代：それ、『逃げ若』のラジオでも言ってくれていました！　ちなみに私が迷っていたのは雫です。後出しみたいになっているけど、本当です（笑）。アニメでより可愛さが際立ったように思います。変な子で可愛い。持って帰りたくなっちゃう。あっ、なんか亜也子と同じ様なこと言っているな（笑）。

――亜也子とシンクロしていますね（笑）。先ほど時行の印象のお話にもあったように、本作は「逃げる」がキーワードの作品です。鈴代さんは「逃げる」に対して、どういう印象をお持ちですか？

鈴代：プラスかマイナスかで言えば、マイナスなイメージのほうが強かったです。ただ、本作を通じて「別に逃げたってよくないか？」という気持ちになりました。「逃げる」って絶対に悪という訳ではないですし、ひとつの手段なんですよね。

あとは、「逃げる」って捕まる以外にもゴールが存在するんだと本作を読んでいて思いました。もしかしたら、逃げ続けることが正解という場合だってあるのかも。本作を通じて、新しい感覚をひとつもらえた気がしました。

歴史が苦手な人にこそ届いて欲しい！

――本作は史実を元にした物語ですが、鈴代さんは歴史の勉強は好きでしたか？

鈴代：今は好きですが、学生時代はほんっとうに結果が伴わなくて。どれだけ勉強しても、いくら職員室の前で頑張っても、テストの結果が5点だったんですよ。

――じゅ、10点満点中？

鈴代：いやいや、100点満点中。勉強の仕方が本当に悪かったんだと思います。でも、本作に関わるうえでそんな状態だと本当にまずいと思ったので、原作を読むことに加えて、集英社さんの「学習まんが 日本の歴史」を全巻ボックスで購入し、1から読みました。そしたら面白くて、歴史の出来事が頭にスッと入ってきたんです。

――おぉ！

　
鈴代：学生時代は、ひたすら教科書を読んで覚えていましたが、全然頭には入っていなかったんですよね。それがよくなかったんだと思います。歴史で起きた出来事や人物をひとつ、ひとつの単語としてしか捉えていませんでした。だから、テストなどで別の問いかけのされ方をしたときに、答えられなかったんです。10年越しくらいにその事実に気がつきました。気づかせてくれた『逃げ若』には本当に感謝しています。

ぜんぶが史実通りではありませんが、私と同じように歴史が苦手という方にも『逃げ若』は、歴史の面白さを知るフックになる作品だと思っています。歴史が苦手な人にこそ届いて欲しいですね！

――素敵なお話ありがとうございました。最後に、鈴代さんが思う本作の推しポイントやアニメならではの見どころを教えてください。

鈴代：ずっと戦がある世界で、緊迫しているシーンに挟まってくるコミカルな要素が最高に今作らしくて素敵で！　シリアスとコミカルが同居しているのが本作の面白いところだと感じています。アニメになって、いい意味でその雰囲気が誇張されたと思っているので、そこが特に見どころですね。あとは、一度見たら忘れられないくらいのキャラクターの濃さとカオスさも魅力だと思います！

今後は引き続き、頼重様と行動を共にするようになった若様がどうやって逃げ続けるのかにも注目していただきたいですし、物語が進むなかで変化していく逃若党の関係性も見守っていただきたいです。それぞれの心の成長や動きは見ていてグッとくるので、そういうところにも注目していただきながら、最後までアニメを楽しんでいただければと思います！

　
［取材＆文・M.TOKU］

作品概要

◆放送情報
2024 年 7 月 6 日より毎週土曜日 23:30~TOKYO MX・BS11 ほかにて放送開始!

【放送局】
TOKYO MX 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
とちぎテレビ 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
群馬テレビ 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
BS11 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 23:30~
MBS 7 月 6 日(土)より 毎週土曜 26:08~
RKB 毎日放送 7 月 9 日(火)より 毎週火曜 25:58~
長崎文化放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:18~
宮崎放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:26~
愛媛朝日テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:50~
HTB 北海道テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:55~
テレビ新潟 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:59~
中京テレビ 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 25:59~
北陸放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:00~
静岡放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:15~
大分放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:25~
IBC 岩手放送 7 月 10 日(水)より 毎週水曜 26:28~
テレビユー福島 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 24:59~
鹿児島放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:20~
琉球朝日放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:20~
さくらんぼテレビ 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:25~
東日本放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:31~
信越放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:42~
秋田朝日放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:50~
青森放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:54~
RSK 山陽放送 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:55~
広島テレビ 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 25:59~
テレビ山口 7 月 11 日(木)より 毎週木曜 26:00~
チューリップテレビ 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 25:53~
熊本放送 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 25:53~
テレビ山梨 7 月 12 日(金)より 毎週金曜 26:55~
アニマックス 7/27(土) 毎週土曜 20:30~
リピート：7/28(日) 毎週日曜 9:30~

【配信】
▼7 ⽉ 6 ⽇(⼟) 24:00〜 毎週⼟曜⽇ 24:00〜
Prime Video

▼7 ⽉ 9 ⽇(⽕) 12:00〜 毎週⽕曜⽇ 12:00〜
d アニメストア/d アニメストア/FOD/ABEMA/U-NEXT/アニメ放題/バンダイチャンネル/Hulu/Lemino/Netflix/TELASA
（⾒放題プラン）/J:COM STREAM（⾒放題）/au スマートパスプレミアム/milplus ⾒放題パックプライム/DMM
TV/WOWOW オンデマンド/アニメタイムズ/Disney+/
※配信⽇時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承下さい。

◆スタッフ
原作 : 松井優征(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督 : 山﨑雄太
シリーズ構成 : 冨田頼子
キャラクターデザイン・総作画監督: 西谷泰史
副監督 : 川上雄介
プロップデザイン : よごいぬ
サブキャラクターデザイン : 高橋沙妃
色彩設計 : 中島和子
美術監督 : 小島あゆみ
美術設定 : taracod/takao
建築考証 : 鴎 利一
タイポグラフィ : 濱 祐斗
特殊効果 : 入佐芽詠美
撮影監督 : 佐久間悠也
CG ディレクター : 有沢包三/宮地克明
編集 : 平木大輔
音響監督 : 藤田亜紀子
音楽 : GEMBI/立山秋航
音響効果 : 三井友和
制作 : CloverWorks

◆キャスト
北条時行 : 結川あさき
雫 : 矢野妃菜喜
弧次郎 : 日野まり
亜也子 : 鈴代紗弓
風間玄蕃 : 悠木 碧
吹雪 : 戸谷菊之介
諏訪頼重 : 中村悠一
足利尊氏 : 小西克幸

◆イントロダクション
少年は逃げて英雄となる―――
鎌倉幕府滅亡から始まる一人の少年の物語
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』の松井優征が描く、「週刊少年ジャンプ」で大人気連載中の歴史スペクタクル漫画がついにアニメ化!

鎌倉幕府滅亡の後、北条家の生き残り・北条時行が動乱の世を駆け抜ける!アニメーション制作は『ぼっち・ざ・ろっく!』などを手掛ける「CloverWorks」が担当、監督は『ワンダーエッグ・プライオリティ』で副監督を務めた山﨑雄太、シリーズ構成に『その着せ替え人形は恋をする』の冨田頼子、キャラクターデザインに『劇場版ポケットモンスター ココ』で総作画監督を務めた西谷泰史など奇才たちが集結し、美麗かつ迫力の映像で歴史の一片を紡ぐ!

◆プロローグ
時は西暦 1333 年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利尊氏の謀反によって滅亡する。
全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる
鎌倉を脱出するのだった......。逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。
時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。
英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。

◆WEB
公式サイト：https://nigewaka.run
公式 X ：@nigewaka_anime (推奨ハッシュタグ：#逃げ若)

◆原作情報
既刊1~16 巻 発売中(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)