北条時行という人物に、怖さすら感じています|TVアニメ『逃げ上手の若君』連載第10回:亜也子役・鈴代紗弓さんインタビュー
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』を手掛けた人気作家・松井優征先生が描く歴史スペクタクル漫画『逃げ上手の若君』がTVアニメ化。2024年7月よりTOKYO MX・BS11ほかにて放送中です。
本作の主人公は、信頼していた幕臣・足利尊氏の謀反によってすべてを失った北条時行。時行は逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で仲間と出会い、訪れる困難を「逃げて」「生きて」乗り越えていきます。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力を深掘りする連載インタビューを実施! 第10回目は亜也子役・鈴代紗弓さんにお話を聞きました。時行と出会ったとき「可愛かった~。持ち運びしたーい」と言っていた亜也子。その可愛いという気持ちは変わらずとも、物語が進むなかで「お姉さんのような立ち振る舞いもするようになっている」と、鈴代さんは関係性の変化について語ってくれました。
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能天気な感じの芝居がアホになりすぎないように
――ここまでの物語を振り返ってみて、印象に残っているシーンを教えてください。
亜也子役・鈴代紗弓さん(以下、鈴代):意外かもしれませんが、アフレコのときに身構えたのが、第二回で亜也子が「逃げ上手……!」と言うところです。あのときはまだ、亜也子からは若様(時行)がどういう人物なのかよく分かっていない状態です。そんな状態で若様の天性の才能を見た瞬間に自然とあのセリフが亜也子から出る。あそこで、逃若党の物語が始まったと個人的には感じたので、かなり印象的でしたね。それ以降はもう本当に登場する武将たちのパンチが強すぎて(笑)。
――クセの強い武将がどんどん登場してきました。
鈴代:クセも強ければアクも強いというキャラクターばかりです(笑)。
――そんな個性的なキャラクターが多数登場する本作。鈴代さんが演じる亜也子は腕っぷしが強く豪快でありながらも、女の子らしい一面があるキャラクターだと思います。鈴代さんは彼女をどういう人物だと捉えていますか?
鈴代:亜也子は元気で明るく、素直でちゃんと人のことを思いやれる、すごくいい子です。おおらかで、懐が深いですよね。考えるよりも先に行動に移すタイプですし、怪力を活かした戦い方をしますが、アホではないんですよ。敵をちゃんと見定めていることが分かるモノローグもありました。
もちろん、考えるより先に動いちゃってるときもありますが、相手の本質を本能的に見抜ける子だと私は思っています。アフレコでも「能天気な感じの芝居がアホになりすぎないように」というディレクションがありました。
――その他、演じるうえではどのようなディレクションがありましたか?
鈴代:よく頂いたディレクションは「ちょっと知能が低すぎるから、もうちょっと芯があってもいいよ」ということ。あとは若様に対する距離感ですね。亜也子は最初「可愛かった~。持ち運びしたーい」と小動物などに向けるような感情を出していましたが、物語が進むにつれて、お姉さんが弟に向けるような感情も出しているような気がしていて。
――可愛いという感覚は変わっていなくても、ニュアンスがちょっと違うというか。
鈴代:もちろん仕える主への敬いもあり、同世代というある種友達的な関係もありますが、ちょっとお姉さんぽい立場でもあるのかなと。そういう関係性の変化に合わせて「若様とはもうちょっと柔らかい感じで接してください」というディレクションもありました。
――本連載インタビューでは、1行、1行くらいのレベルで細かくディレクションしてもらったという話をよく聞きます。
鈴代:そうですね。「はい」や「若様」という短いセリフでも何度もテイクを重ねました。放送前に出た各キャラクターのPVも台本は2、3行程度でしたが、1文、1文でディレクションがあったんです。今回、ディレクションしてくださったのが、別作品でもお世話になっていた音響監督の藤田さんだったこともあり、大きな信頼のもと、安心してお芝居をさせていただきました。
藤田さんは、役に対しても作品に対しても、すごく考えてディレクションをしてくださる方で、とても信頼をしています。山﨑監督をはじめとした制作陣の皆様が意図すること、そしてや藤田さんがおっしゃったことを、どれくらいかみ砕けるかと思いながら、毎回アフレコに臨んでいました。
――細かいディレクションは、藤田さんイズムみたいなところがあるんでしょうか?
鈴代:監督やプロデューサーの方などが考えている作品像もあり、それによってディレクションの仕方も変わると思いますが、ひとつ、ひとつのシーンやセリフに本当に真摯に向き合ってくださる方だと感じています。
ただ、制作陣の皆さんだけのこだわりですべてを進めているわけじゃなくて。私たち役者から出た芝居でいいものがあったら採用もしてくださるんです。いい塩梅で役者に任せてもらえるんですよね。「みんなでいいものを作ろう」という気持ちが、全員から溢れているように感じましたし、熱量の高いアフレコ現場から気概も感じていました。