小4みたいな子供っぽさとダークヒーロー感。現代にも通ずる“誠実さ”が信頼に繋がっている|TVアニメ『逃げ上手の若君』連載第11回:風間玄蕃役・悠木 碧さんインタビュー
『魔人探偵脳噛ネウロ』『暗殺教室』を手掛けた人気作家・松井優征先生が描く歴史スペクタクル漫画『逃げ上手の若君』がTVアニメ化。2024年7月よりTOKYO MX・BS11ほか全国30局にて放送中です。
本作の主人公は、信頼していた幕臣・足利尊氏の謀反によってすべてを失った北条時行。時行は逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で仲間と出会い、訪れる困難を「逃げて」「生きて」乗り越えていきます。
アニメイトタイムズでは、本作の魅力を深掘りする連載インタビューを実施! 第11回目は、風間玄蕃を演じる悠木 碧さんです。保科軍と国司軍の戦いが幕を開けた第十一回を振り返っていただきつつ、原作や玄蕃について語っていただきました。
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小4みたいな子供っぽさと、トリックスターとしてのカッコよさ
――第十一回では保科軍と国司軍の戦いが描かれ、逃若党の一員として玄蕃も活躍していました。
風間玄蕃役・悠木 碧さん(以下、悠木):すっかり逃若党の仲間になりました。あの怪獣みたいな玄蕃を上手く扱えているのはぼん(時行)たちの作戦勝ちですね(笑)。しかも、玄蕃って上手く使われているときは文句を言わないんですよ。なんだかんだ人の役に立って評価されることに喜びを覚えるタイプだと思うので、ひとりでお金のために頑張るよりも、やりがいのある仕事を与えられて良かったねと言ってあげたいです。
アフレコ現場では玄蕃がなにかを言うたびに「かわいい」と言ってくれる人が多くて。きっと小学4年生男子を見ているような感覚なんでしょうけど(笑)、そのおかげで楽しく演じることができました。
──結構下品なことを言いますが、そこも含めて愛されているのですね。
悠木:そうなんです。アフレコ中、玄蕃の動きに合わせたアドリブを求められることがあるんですけど、やりすぎるとNGが入ってしまって。そんなときも「難しいね、玄蕃って」と話したりしています。
──難しいキャラクターでしたか?
悠木:初登場回の第五回と第六回は、特有のギャグ感であったり、カッコよさの切り替えの感覚をほかのキャストと合わせるのが大変でした。でも第十一回までくると慣れてきて。今はスタッフさんの許容範囲を少しオーバーするくらいを意識して演じています。
──玄蕃の第一印象は覚えていますか?
悠木:オーディションを受けさせていただいた際、最初に思ったのが「小4」です。鼻くそを投げたり、鉛筆の削りカスを食べちゃったり、ちゃんと掃除をやらなくて女子たちに怒られる、そんなクラスメイトがいたことを思い出しました(笑)。でも玄蕃って、同じ班になったら面倒なものの、ちゃんとやらせたら掃除だって綺麗にできるんですよ。オーディション段階ではそんなことを考えていました。
──ユニークな面が目立ちますが、ダークヒーローのようなカッコよさも秘めていますよね。
悠木:玄蕃のカッコよさって、お金を払ったらちゃんと仕事をするところなんですよ。ちゃんと報酬を払ったら、その報酬なりの仕事をしてくれるって、現代にも通ずる誠実さであり、信頼にも繋がっているんじゃないかなと思います。
──相応の対価で働こうとする姿勢は、現代のフリーランスに通ずるものがありますね。
悠木:困ったちゃんなところもありますが、なんだかんだ信用できるんですよね。実際、玄蕃にしかできないことも多いですし、逃若党に吹雪が加わったことでよりトリックスターとして活躍するようになって。変装の能力自体、めちゃめちゃ強いですよね。ちょっと耳が生えたりするものの(笑)、ほかのキャラクターが繰り広げるバトルとは方向性の違うカッコよさがあるなって。本人の飄々とした立ち振る舞いを含めて、演じていて楽しかったです。
玄蕃が埋もれてしまうほどの“ヤバさ”
──登場回の第五回を振り返った感想をお聞かせください。
悠木:アフレコ的にも難産でしたし、玄蕃がこういうキャラクターなんだとキャスト全員が認識できるほどいろいろな面が描かれていたので、印象深いです。欲望に忠実な面があれば、情に脆いところもなくはない面、ぶっ飛んでおちゃらける面もある。それらすべての面を1個1個、確認しながら収録できたことを覚えています。
──初登場時はシリアスな雰囲気をまとっていました。
悠木:最初はシリアスな表情が多かったですし、敵なのか味方なのかわかりませんでしたから。そう考えると、今は考えを読めるようになりましたし、味方でもあるので、私としても演じやすくなりました。
──本作には玄蕃に負けない強烈な個性を持ったキャラクターたちが登場していますが、掛け合いを重ねてみていかがでしたか?
悠木:玄蕃も傾奇者な印象があるんですけど、この作品、容姿がまともな人ほどぶっ飛んでいる説が私の中にはあって。中でも、ぼんが一番ぶっ飛んでいると思います(笑)。
──それはありますね(笑)。
悠木:かわいい顔して命の危険に陥るとゾクゾクしちゃうところとか、ヤバさのグレードが玄蕃より高くて。玄蕃のヤバさって、きっとみんなが小学校の頃に通ったことのあるレベルなんですよ。だけど、ぼんは常人には理解できないヤバさを秘めているから、演じ方次第では玄蕃が埋もれてしまうんですよね。それらを踏まえて、「甘口で」とオーダーをいただいたら砂糖をいっぱい入れて、「辛口で」と言われたら唐辛子をいっぱい入れる、そんな気持ちで演じています。
──たしかに、時行のツッコミ役に回っていることも多々ありますね。
悠木:ぼんがおかしくなって、かつ、弧次郎がいないときは玄蕃がツッコむしかないんですよね。女の子たちは誰もツッコんでくれないので(笑)。
──時行を演じる結川あさきさんの演技をご覧になった感想をお聞かせください。
悠木:非常にかわいい声ですよね。だからこそ、ストレートにぼんを演じるほどに、彼のヤバさが際立っていて。それでいて結川さんご自身はぼんのヤバさに気付いていないんですよ。そこはぼんと一緒ですし、横にいて「結川さん、お気付きじゃないですけど、ぼんってヤバい人なんですよ」と思っていました(笑)。
──(笑)。結川さんはアフレコ現場でどんな雰囲気でしたか?
悠木:やっぱりぼんに似ているんですよね。まっすぐで一生懸命だけど、どこか変わっているところがあって。もちろん嫌な人という意味ではないんです。人との距離感が絶妙で、気付いたら懐に入っているような、みんなに愛される人なんですよね。
また、主人公ということでセリフ量が多いので何度かトライアンドエラーされていましたが、その背中を見ていたら生き残るために知略を巡らせるぼんと被ったんですよね。アフレコを重ねる度に時行像が深くなっていたように感じます。