秋アニメ『チ。-地球の運動について-』坂本真綾さん(ラファウ役)×津田健次郎さん(ノヴァク役)×速水 奨さん(フベルト役)座談会|津田さんいわく「この作品を見て、あなたの地球を動かしてください」
速水さんに強烈な印象を残した津田さんによりノヴァクの第一声。速水さんの声に坂本さんと津田さんが感じた「ビリビリ」!?
――アフレコ現場で印象的だった出来事やシーンがあれば教えてください。
速水:それはやっぱり津田くんの第一声ですね。僕らがマイク前でしゃべる演技を超えていて。「これをTVでオンエアしてもいいのかな?」と思いました。
一同:(笑)
速水:それくらい、入り方がすごかったです。
津田:ありがとうございます。でもその言葉を奨さんにそっくりお返ししたいくらいで。奨さんの声の強さがフベルトの圧倒的な強さそのままで、登場するキャラクターの中でももっとメンタルが強いのではないかと思うくらいで。奨さんが声を発することで、フベルトは強い人なんだなと再確認できました。
またラファウは序盤ではこましゃくれた感じの嫌なヤツでしたが(笑)、話が進んでいくにつれて、どんどん純粋さを増していく感じとか、元々、真綾ちゃんはすごく強い人だと思っていましたが、真綾ちゃんが持つ強さとラファウの中にあるユーモアの豊かさも真綾ちゃんからセリフが発せられることで説得力を増していって。それを現場で体験できたのはシンプルに楽しかったです。
坂本:何か言わないといけないと思って気を遣っていただいてありがとうございます(笑)。どんな現場でもそうですが、スタジオで生の声を聞くと一人で台本を読んでいた時とは違う発見があることはとても大事ですし、反応していくことがすごく楽しみでもあります。
この作品で印象に残っているのはフベルトさんとラファウが出会うシーンで、偶然かもしれないけど二人は出会って、たまたまうまくつないでいけましたが、一つの「知」が受け継がれていくお話で、人生の中で自分にとってメンターと出会えるのかはすごく大切な出来事だと思います。
今横で話されている(速水さんの)声もビリビリしますが、自分の人生で会ったことがタイプの人と出会い、話していくうちに美しさの話になっていった時にラファウの頭の中で「?」が生まれる瞬間があって。この出会いには何か運命的な意味があって、そして地球が自転すると聞いた時の「ビリビリ」を、原作を読んでいた時以上に実感できました。
あとラファウが処刑される前日にノヴァクさんと二人きりで静かに話をするシーンがありますが、考え方も立場も全然違う二人がすれ違うだけの静かなシーンでお互いに譲れないものがあって、セリフもおもしろかったので、緊張しながら楽しくできました。
アニメでは夜空と星の美しさとその行為の崇高さに注目!
――映像をご覧になった感想をお聞かせください。
津田:この時点ではティザーのPVを見たくらいで。
速水:まず読んでいた原作がカラーの映像で見られることが素晴らしくて。中世のヨーロッパの雰囲気がキラキラと……しているのかな?(笑) 特に星がきれいなんじゃないかな。
津田:星に期待ですね。夜空や星空を見上げる行為に崇高さみたいなものが全面であふれているので、ここぞという時にみんなが見上げるんですよね。それが本当に僕は好きですし、たぶんスタッフの皆さんも「星が大事だぞ」と思って作ってらっしゃると思うので、期待しています。
速水:あと瞳のアップも結構あるよね。瞳の描き方も素晴らしいはず(笑)。あとラファウがいる教室が最初は結構狭い教室のはずだったのに、アニメでは大きな部屋になっているのもおもしろいです。生徒の人数も少なくて、日本にいる典型的な悪ガキもいて。それがヨーロッパナイズされているのも注目ですね。あとラファウも顔がちょっと違うよね?
坂本:多少はそうですね。
津田:などの部分を楽しみにしてください(笑)。
「?」を見つけて、考えるきっかけを与えてくれる作品なので、一緒に考えながら発見してください
――ではアニメの見どころと皆さんへのメッセージをお願いします。
速水:『チ。』というタイトルは、「地球」の「チ」であり、「知識」の「チ」、「血(ブラッド)」の「チ」、「痴」……「痴れ者」の「チ」などいろいろな意味がありますが、その中でも真理を追究する「知」の部分を純粋に追い求める人々のお話です。そこにノヴァクという典型的な体制側のキャラクターが登場しますが、これは対立というよりも秩序を守るために、新しいものを求める人間の止められない探究心との戦いを超えたところにある、つないでいくことの純粋な美しさを感じます。ぜひそこを見てほしいなと思います。
津田:非常に狭い世界で生きてきた人間たちの中で、ラファウという少年の中で突然、地球が動き始めますが、絵面や物語的にもとてもダイナミックだけど、すごく繊細でもあって。本当に美しいものを、命を賭けて探求していくすごみもありますし、様々な要素が込められた作品で、難解ではありますが、エンタメしている素敵な作品なので、ぜひこの作品を見て、あなたの地球を動かしてください。
坂本:見出しになりますね(笑)。ヨーロッパを舞台にして、地動説を探求していく人の話とだけ聞くと、難解そうだったり、とっつきにくそうに思える人もいるかもしれませんが、このお話の延長線上に私たちの日常があるんだと、どんどんつながりを感じられます。しかもこの時代の人たちは夢中になれるものを見つけて、好奇心のままに行動していく姿は今の自分に重ねられる部分もあったりして、どんどん距離が縮まっていきます。
遠い世界の話を見ているようで、いつも自分の内側に問いかけられているので、とても身近で自分のお話として受け取れる、すごく不思議な作品です。この作品のテーマになっている、常に何かを疑う「?」、「今のはどういうこと?」と思う気持ちを大事にしながら、一緒にいろいろな「?」を見つけて、もう一歩踏み込んで考えてみるきっかけをくれるような作品なのせ、最後まで一緒に見ながら一緒に考え続けてほしいな、発見してほしいなと思います。
作品概要
あらすじ
若き天才作家魚豊(うおと)が世に放つ、地動説を証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語
15世紀のヨーロッパ某国。飛び級で大学への進学を認められた神童・ラファウ。
彼は周囲の期待に応え、当時最も重要とされていた神学を専攻すると宣言。
が、以前から熱心に打ち込んでいる天文への情熱は捨てられずにいた。
ある日、彼はフベルトという謎めいた学者と出会う。
異端思想に基づく禁忌に触れたため拷問を受け、投獄されていたというフベルト。
彼が研究していたのは、宇宙に関する衝撃的な「ある仮説」だった――。
キャスト
(C)魚豊/小学館/チ。 ―地球の運動について—製作委員会