サイバーパンクなSF世界に、ファンタジー世界の魔王が蘇るワクワク感がたまらない! 秋アニメ『魔王2099』第1話を振り返り
いよいよTVアニメの放送がスタートした『魔王2099』。ファンタジア文庫で刊行中の、紫大悟先生のライトノベルを原作とした作品で、究極の発展を遂げた未来都市・新宿に蘇った、500年前に滅びたとされる伝説の魔王・ベルトールの活躍が見どころとなっています。
10月12日(土)に放送された第1話は、非常にインパクトのある物語の始まりで、本作の独特の世界観やキャラクターの虜になり、早く続きが見たくて仕方がない……という視聴者も多いと思います。ここでは、第2話に向けてのおさらいも兼ねて、筆者の感想も交えつつ、改めて第1話の内容を振り返っていきます。
なお、当然ながら本記事は『魔王2099』第1話のネタバレを含んだ内容となっておりますので、第1話をご覧になった上でご一読ください。
魔王と勇者の最終決戦から始まる第1始…!?
冒頭で描かれるのは、人間を始めとした“定命”と、魔族を中心とした“不死”、2つの勢力が争う“不死戦争”における戦い。本来ならこれがアニメの最終話にもなりそうな決戦ですが、今回放送されたのは第1話で間違いありません。
勇者・グラムと魔王・ベルトールの決戦は、まさに常人には入り込めない超人同士の領域の戦いが展開されていて、思わず息を吞みそうになります。ベルトールが使おうとした魔法なんて、背景に宇宙らしき空間が見えており、とんでもない威力になっていそうで、余波で世界が滅んでもおかしくないレベルの激しい攻防が繰り広げられていたんじゃないかと思います。
最終的にベルトールはグラムの前に敗れ、満足したかのようにこの世を去ったかに思われたのですが、ベルトールの臣下“六魔侯”の一人であるマキナ=ソレージュが《転輪の法》(メテノエル)を使ったことによって復活。……ところが、既にグラムとの決戦からは500年もの年月が経過しており、かつてベルトールたちがいた惑星・アルネスは、機械文明惑星・アースと融合したことで滅び、ベルトールが知るものとはまったく異なる世界へと変貌を遂げてしまっていました。
ベルトールが復活した旧新宿駅地下から階段を上がった先には新宿アルタっぽい建物や3Dビジョンがあったり、新宿に行ったことがあると「あの辺の場所だ」と分かって思わずテンションが上がりますね。
サイバーパンク的なSF世界観に、王道のファンタジー世界から魔王がやってくるという展開は、サイバーパンクも異世界ファンタジーも好きな身としてはこれ以上ないくらいワクワクする始まりです。
第1話のオープニングテーマはどうやら特別な演出だったようで、シユイさんが歌うオープニングテーマ「ホロウ」が流れるタイミングで、新宿の街中でシユイさんご本人が登場するMVが上映されているような演出になっていて、より没入感を高めてくれていたと思います。街中の光景の中に、何か冒頭で見覚えのある人物に似た人影がちらっと映っていたのも、どういうことなのか気になるところですよね。
“最強”の存在だったはずの魔王が、今や世界で“最弱”に!?
マキナとの会話で、“不死狩り”と呼ばれる動きによって六魔侯の多くは消息不明となり、ベルトールのかつての配下はもうほとんど残っていないという厳しい現状が明かされる中、スクリーンにホロライブの常闇トワさんの姿が映し出された時は素で「トワ様!?」と声を出してビックリしました。トワ様は人間界に社会勉強にやってきた悪魔なので、ちょっとベルトールとも通じる部分があると言えるかも。
そんなトワ様の配信中に広告をハッキングするという、この世界の眷属たちがブチ切れそうなことをしでかしていたのが“高橋”という少女でした。この時点では、この世界についての知識をほぼもっていないベルトールが、高橋の周囲の霊素(エーテル)の揺れと起きた事柄から、ハッキングを行ったことを突き止めているあたり、やはり魔王に相応しい洞察力をもっていることが伺えます(真剣に話している裏でモザイク付きの映像がしばらく流れ続けていたのはシュールで面白かったですが)。
一方、その高橋からの情報で、六魔侯の一人だったマルキュスが石丸魔導重工(IHMI)という大企業の社長の座に収まっていることを知り、ベルトールは面会に向かうことに。しかしマルキュスは最初からベルトールを裏切る腹づもりだったらしく、自ら開発した最先端の魔導具“ファミリア”の力によって、これ以上ないほどにベルトールを叩きのめします。
この時ベルトールと対峙するマルキュスの表情や、声を担当している松風雅也さんの演技が、最高の憎たらしさを演出していて最高でした。これは結構“あるある”だと思うのですが、こういう気持ちいいくらい振り切れた悪役って、かえって好印象になるんですよね。ベルトールを裏切った理由が、劣等感や野心という、実に人間らしい感情が発端になっているのも高ポイントです。
これ以上ないほど打ちのめされながらも、持ち前の再生能力によってなんとか逃げ延びたベルトール。ただマルキュスもベルトールが死なないことは分かっており、最上級の恥辱を与えた上で、残りの惨めな一生を過ごさせるためにあえて見逃したんじゃないかと思います。世界最強の存在だったベルトールにとって、その辺のチンピラにすら歯が立たない、最弱と言えるレベルにまで堕ちたというのは、これ以上ないほどの屈辱でしょう。
ただ、どんなにハイスペックなパソコンやスマートフォンも、30年後には骨董品も同然の旧式になるのが世の技術進歩の常ですから、強大な魔王であっても、500年も経てば一般人以下の実力になってしまうのは、十分納得できる話です。とくに今回の場合、意図的にベルトールをその立場に追い込むため、マルキュスがずっとお膳立てをし続けてきたわけですからね。
最初からマキナがマルキュスのことを話していれば、また違う結果になっていたかもしれませんが(本人の言う通り、マルキュスの元に直談判しにいくのは変わらなかったでしょうけど)、そのことを一切責めず、あまつさえ粗末なアパート暮らしを強いられていたマキナに心から労いの言葉をかけられるベルトールは、本当に理想的な上司だなぁと。
普通だったら、ここまでの屈辱を味わった直後は周囲に当たり散らしたり、一人で塞ぎ込む状態になったりすると思うんですが、自分のことどころか配下のことを気遣える余裕をすでに取り戻しているベルトールのメンタルの強さがすごい。器がデカいというか、実に人間ができている(人間じゃなく魔王ですけど)主人公だなと、好感を持ちました。
戦闘力は一般人以下、かつての配下もマキナ以外おらず、見ず知らずの土地と時代に放り出されるという、ベルトールにとってこれ以上ないほどの逆境からスタートした第1話。ここから、どのように物語が展開されていくのか楽しみです。
作品概要
あらすじ
統合歴2099年―――
不死の王国を統べていた、伝説の魔王・ベルトールが迎えてから500年―――魔王再臨の刻、来たれり。
サイバーパンクシティ『新宿市』。天を貫く超高層ビル群、宙を錯綜する極彩色のネオン光―――
魔導工学の技術革新によって栄光ある発展を遂げた、究極の未来都市。
魔王が降り立った世界は、かつての絶対支配者を置き去りに、驚愕の進化を果たしていた―――。
巨大都市国家が手にした、華々しい繁栄。
しかし……その裏に隠されていたのは―――恐るべき“闇”だった。
輝かしくも荒んだ“新たな世界”を再び支配すべく、魔王は未来を躍動する!
キャスト
ベルトール=ベルベット・ベールシュバルト:日野聡
マキナ=ソレージュ:伊藤美来
高橋:菱川花菜
グラム:浪川大輔
マルキュス:松風雅也
木ノ原:伊藤静
放送情報
2024年10月12日(土)24:00~ ON AIR
TOKYO MX、群馬テレビ、とちぎテレビ、BS11:10月12日より毎週土曜24:00~放送
毎日放送:10月12日より毎週土曜27:08~放送
中京テレビ:10月15日より毎週火曜26:19~放送
AT-X:10月13日より毎週日曜日22:30~放送
※放送日時は編成の都合等により変更となる場合がございます。予めご了承ください。
配信情報
dアニメストア、ABEMAにて地上波同時・最速配信決定!
10月12日(土)より毎週土曜24:00~
その他サイトも順次配信予定