音楽
fripSide『infinite Resonance 3』インタビューで語られる制作秘話

「良いアルバムができました」進化と原点が織りなす音の共鳴、『infinite Resonance 3』で描かれるfripSideの無限の可能性――八木沼悟志さん×上杉真央さん×阿部寿世さんインタビュー

第3期fripSide、3枚目のニュー・アルバム『infinite Resonance 3』がリリースされた。fripSideの音楽性の原点を感じさせるようなデジタリックなナンバーを中心に、上杉真央、阿部寿世が作詞に挑戦したソロ曲、全英語詞の「Turn Night Into Day」や、「future gazer」(OVA『とある科学の超電磁砲』オープニングテーマ)を含むセルフカバー3曲も収録。ライブハウスで磨いてきたふたりのボーカリストとしての表現力は、さらにしなやかに、力強く進化を遂げている。雑談を経てリラックスした雰囲気の中で、八木沼悟志、上杉真央、阿部寿世の3人から最新アルバムの制作秘話を教えてもらった。

そして、このアルバムの発売を経て今月からはライブハウスツアー最終章への旅路がスタートする。このアルバムを聴けば、生音でのfripSideを体感したくなるはずだ。

 

 

充実したアルバムづくり

――あっという間に前回お話をうかがってから1年の月日が経ってしまって。

八木沼悟志(以下、八木沼):ね、そうですよね。

――この1年の変化をどのように感じていますか。

八木沼:1年ね……どうかな。俺ね、最近、歳をとったなと感じることが多くて、時間が過ぎるのが早いんですよ。特に45歳を越えてからが早くて、気がついたら1年が経っている。成果として見えるのはやっぱり制作物だけですね。その制作物を1年間の成果として見れば「また1年頑張ったんだな」という感じはするんですけど、ただ、実生活面や自分の成長についてはほとんど変わってない気がします。気づいたら1年が経ったという感じですね。

ただ、そんな中でボーカルの2人が確実に成長し続けてくれていて。今回のアルバム制作でも本当にそれをひしひしと感じることができました。

今回のアルバム『infinite Resonance 3』は制作していてすごく充実していて、今まで長い時間、機会をいただいて積み重ねてきた自分の音楽と、進化したボーカル2人の今の実力がうまく融合した感じがしているんです。

 

 

――それはこのメンバーになって3枚目となるアルバムだからこそなのでしょうか。

八木沼:3枚目というよりかは(この3人になって)3年目ということが大きいかな。昔の人も「3年くらいは継続して頑張りなさいよ」とはよく言ったものですが、ちょうど3年ぐらい経って、ふたりの声の特性をどう活かすか、かなり深い部分で分かったような気がするんです。

――そのあたりは感じられていましたか?

上杉真央さん(以下、上杉):そうですね。アルバムでは自分のソロ曲も作っていただいているんですが、アルバムごとに「これが私の一番いいところを引き出してくれているんだ」というのを年々感じる曲をいただいています。

それはソロ曲以外でも感じますね。その曲以外でも、きっと私の得意なところを思い浮かべて作ってくれたんだろうな、というのが感じています。「ここはもしかして、私のことを気にしながら作ってくれたのかもな」とか。

八木沼:それはもちろんです(笑)。

阿部寿世(以下、阿部):同じくですね。ボーカルに選んでもらってから約3年やってきて、たくさんいろんな曲を歌ってきて、satさんに聴いてもらって。その中で、真央ちゃんが言ったように、私たちのことを理解してくださっているのがすごく伝わってきます。その期待に私たちも応えていこうという気持ちになります。

――その中で、本作はfripSideとしては本作が15枚目のアルバムとなります。1年に1回、コンスタントにアルバムを作るのって、本当にすごいことだと思います。

八木沼:年に1枚、アルバムを作る機会を頂いているというのは、fripSideとしても大切なポイントだと思っています。この2人はまだベテランでもないし、新しい挑戦をし続けているとあっという間に時間は経ってしまうんですよね。女性のこの年代の1年ってすごく貴重なものだと思っていて。その一方で、僕らも「この1年でボーカリストとしてどれくらい成長できた?」というのを毎回問うていて。それがチームにとっても良い刺激になっていると思います。

 

死ぬまで現役で

――半年前の話にはなってしまいますが、アニバーサリーライブ「fripSide 20th Anniversary Festival 2023 -All Phases Assembled-」、すごかったですね。

八木沼:良いライブでしたよね。キャリアは長いですが、あれは僕のベスト・アクトですよ。良い1日になりました。まさにfripSideの原点から現在までを集約したライブでした。

それはまずファンの皆さんの応援、レーベルやスタッフの支え、歴代ボーカリストの頑張りなど、どれをひとつとっても成し得なかったことなのですが。何か一つでも欠けていたら、ああいうライブはできなかったと思います。本当に……僕個人にとって、ご褒美みたいなものを頂いた感じがしますね。

 

 

――さきほどfripSideの原点というお話がありましたが、今回のアルバムには少しそのテイストを感じましたがいかがでしょう?

八木沼:おっしゃる通りです。今回のアルバム制作はfripSideの原点にリンクしている部分があって。(第1期fripSideボーカリストの)naoちゃんと一期の曲をやった時に「あ、そうか、この時って、こういう音楽をやってたな」とかって当時の楽しい思い出が蘇りました。それと同時に、当時の感覚を思い出したところがあって。

なので今回はそういうテイストの楽曲も取り入れつつ、fripSideとしては最新の現在地という形で、総合的なアルバムにしてみました。1期、2期、3期、アニソン、ゲーソン、ノンタイアップ、全部がどこをとっても僕としては胸を張ってfripSideですから、そこは絶対に曲げない部分でもありつつ。今出来る最高を常に追求しています。

今回の音楽を聴いてもらえたら「satさん、久しぶりにこういうのきたな」ってウチのファンの中には思う人もいるかもしれませんね。

――前作は「君」からはじまる曲が続きましたが、今回は景色からはじまり「君」や「あなた」と同じく「私」という言葉や、それを感じさせるものも多いように感じました。そこはどうでしょうか。

八木沼:確かに、よりパーソナルなところに焦点を当てているところはあるのかもしれません。ふたりで歌うデュエットソングにおいての歌詞の「私」という存在は悩みどころではあったんですよ。「私ってどっちだよ」っていう。だから、1枚目、2枚目はちょっと使い方が違っているんですよね。つまり難しく考えすぎていたんです。それは払拭できたなと。

――そして今回はふたりのソロ曲「Gratitude to You」(vocal: Hisayo Abe)、「Salvation」(vocal: Mao Uesugi)でそれぞれ作詞もされています。それはsatさんからの提案だったんですか?

八木沼:そうです。1曲ずつチャレンジしてもらいました。で、今までも実は書いてもらっていて、上杉はかなりまとまったものを書いてくるので、「やってみな。もし修正が必要であれば僕がチェックを入れるから」と。ひーちゃん(阿部寿世には「僕と一緒に書くことになるとは思うけど、まずは好きなように書いてみて」と言って。

阿部:はい。「より良い表現があれば提案するけど」と言ってくださり、調整してもらっていました。

八木沼:「これだと自分が歌いたいことから外れてない?大丈夫?」とかね。そういうやり取りも楽しかったですよ。彼女(上杉)も同じで、僕が最終的にジャッジはしてて。そうした作詞のプロセスを繰り返すことで、fripSideとしての歌詞を書く力が将来的に身についていくんじゃないですかね。

――今回、おふたりが書いた歌詞を見て、satさんはどう思われましたか?

八木沼:正直に言うと、もっと伸びるな、というところはあります。聴いているリスナーは千差万別、いろいろな方がいるので、そこにどう響かせるかという点で、もっと磨いてほしいと。自分が良いと思う歌詞はそれこそいくらでも書けるけど、100人に聴かせたときに、果たしてどれだけ多くの人が共感してもらえるのかが問題だと思うんです。それは難しくはあるんですけども。そのあたりを意識できると、もう一段上の歌詞が書けるのではないかなとは思っています。厳しい言い方ですけど、これは期待を込めての、作家としての意見です。

 

 
でも個人としては、すごく良いと思っていますし、等身大の自分としての表現が今は届くと思っています。曲作りは本当に難しいです。やめられるならやめたいと思う時もあるくらい。時にはつらいんで(笑)。それでも、彼女たちに常々言っているのは数多く書かないとダメだよって。

――それはsatさんの経験から?

八木沼:そうですね。作曲にも言えることなんですけども、変な話、5曲とか10曲とか、良い曲を書くことっていうのはできるんですよ。でも、200、300曲書いたときにどうなるかという話なんです。良い歌詞とは何か、自分が伝えたいことをテーマにしながら、どれだけ多くの人が共感してくれるか。その共感を得るためにどういう表現を選ぶのか、それが重要なんです。本当にものづくりって深いです。そういう深さや難しさ、そしてコツをどんどん吸収していってもらえれば、僕が死んでもfripSideは続いていくかもしれないですね。

――いやいや。

八木沼:でも、僕の今の最大の目標はそれなんです。僕がいなくなっても、ボーカルだけでfripSideが続いていくこと。それが理想です。夢物語かもしれませんけど、今3期まできてるわけで、4期、5期、6期……となっていって、創設者はこの世にもういないかもしれない。

そして寿世さんが90代になって、それこそVIPシートに座って「あなた下手ね」なんて言ったりして(笑)。でも続いている。それがギネスに載ったりしたら、なおさらすごいじゃないですか。せっかくね、20年以上続けてきたプロジェクトですから。

――satさんがいるからこそ、fripSideのサウンドとしての核は成り立っているんだとも思っていますけれども。

八木沼:でもfripSideとして300曲以上発表してきて、fripSideとしての概念は出来上がっていると思います。有能な若手を連れてきて、次なるプロデューサーとしてfripSideを引き継ぐかもしれません。それも一つの選択肢なのかなと思うことはありますね。だから頑張って。寿世が50代まで頑張れば、あと30年はfripSideが続けられるでしょうし。でも30年後には僕は78歳ですよ(笑)。もしかしたら譜面だけは書いてるかもしれないですけど、さすがに現役でステージに立てるかは分からないですから。

上杉&阿部:いやいや……!

――生涯現役で!

八木沼:じゃあ死ぬまで現役でがんばりますか……!(笑)

 

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