主人公・晴明が「制服フェチ」になった理由とは……? 秋アニメ『妖怪学校の先生はじめました!』作者・田中まい先生インタビュー|アニメ化で最初に出した要望は「晴明の“キモさ”をなくさないように」!?
晴明の“キモさ”が純粋な「ボケとツッコミ」関係を成立させる大きな要素に!?
――キャスティングにあたって、先生からオーダーされたことはありますか?
田中:アニメ化する前に何度かドラマCDになっていて、そのときの声のイメージが残っている読者の方もいらっしゃると思ったので、アニメでも声の雰囲気が大きく変わらないようにお願いしました。
――アフレコ現場はご覧になられたのでしょうか?
田中:1回だけ現場におうかがいして、あとはリモートで聴かせていただきました。音響監督(藤本たかひろさん)の演技指導の熱がすごくて。キャストさんもおっしゃっていましたが、学校みたいだなって。音響監督が教師で、キャストさんたちが生徒で、ベテランの方はクラス委員で、新人の方を引っ張っていく感じがしました。
――ギャグやコメディ作品は、ギャップが大きければ大きいほどおもしろさにつながるので、テンションがトップに上がったときはかなり熱量が高そうですね。
田中:そうだと思います。しかもアドリブを入れるところがたくさんあって、「おもしろいことを言わなくてはいけない」というハードルが高い注文を受けたとき、特に晴明役の逢坂さんはいつもおもしろくしてくださるし、ムチャぶりにも上手に対応されていたので、本当にすごいなと思いました。晴明はまじめなシーンがあったと思えば、ギャグシーンがあったり、コロコロ切り替わりますが、キメるところはバッチリキメて、ふざけるところはとことんふざけるというメリハリもしっかりできているのもさすがですね。
――アニメの映像をご覧になった感想をお聞かせください。
田中:晴明はマンガでもすごく変な動きをしていますが、アニメで見た晴明は……これはほめ言葉ですが、「キモいな」と(笑)。晴明の人間離れした動きとか、「キモさ」と「キショさ」が最高でした。
――作中でも「妖怪よりも妖怪だぞ」というツッコミがあるくらいでしたからね(笑)。晴明は人間なのに赴任先が妖怪学校という、いわば被害者みたいな立場かと思ったら、制服好きが過ぎて常軌を逸した行動をするので、生徒の佐野のほうがまともに見えるという。
田中:晴明のキモさ、キショさのレベルが高すぎることで、教師イジメに見えず、純粋な「ツッコミとボケ」の関係がうまく成り立ったかなと思います。
――画面の中心以外でも何かしていたり、細かいところに遊びがあるのもいいですね。
田中:そうですね。人外の一反木綿の柳田や小さいおじさんなど、人間離れした動きを表現してくださっているので、ありがたいです。
――あと画面の密度がすごく濃くて、いい意味で暑苦しい画だなと思いました。
田中:(笑)。画面の密度が濃いだけでなく、色彩も割と派手なところも、コメディの明るさにつながっているのかなと思いました。
「作家として」「一個人として」それぞれの立場で先生が好きなキャラを発表
――ここで先生のお気に入りキャラを教えてもらえますか?
田中:「作家として」と「一個人として」、それぞれあるんですが、いいですか?(笑)
まず「作家として」は晴明で、作中の空気感を作るのにすごく大切なキャラです。もちろん話によっては晴明がまったく出てこない回もありますが、シリアスなシーンで晴明が出てこないと結構重い空気になってしまうんですよね。「大丈夫かな?」といつもドキドキしますが、晴明が出てきた瞬間、作中の雰囲気やキャラたちの雰囲気がパッと明るくなって、まさに名前通りで。作家の私にとって、すごく大きな存在です。
「一個人として」は、秦中先生が好きです。私が黒髪でメガネのキャラが好きだから、という単純な理由なんですけど(笑)。一見まじめそうなのに、頭は良くないという意外性もあって、しかも真っすぐで。「私が考えた最高キャラ」のつもりで描きましたが、今ひとつ読者の皆さんには伝わっていないようです(笑)。
――アニメで動いて、セリフを発する秦中を見たときはたまらなかったのでは?
田中:最高でした。秦中は実は、昔描いていた作品の主人公のキャラを持ってきたので、喜びもひとしおでした。
――「90年代アニメに影響を受けた」というお話がありましたが、特に好きなジャンルや作品を教えてください。
田中:私はデジタルアニメになる直前のセル画アニメが好きなんです。コメディ作品を描いているからか、明るい作品が好きだと思われがちですが、90年代特有の世紀末感がある、ちょっと大人で鬱々とした雰囲気の作品が好きでよく見てしまいます。
ひとつ例を挙げるとすれば『天地無用!』で、TVシリーズではすごく明るかったのに、劇場版の『天地無用! in Love』などはすごくシリアスになって。私が小学校低学年だった頃は、明るかったTVシリーズから劇場版でシリアスになったり、鬱展開になる作品が多くて、それがとても好きでした。そんなギャップ萌えが今の私の作風にも表れているのかもしれません(笑)。
――アニメの魅力や期待していることは?
田中:コンプライアンスの関係で、マンガではできても、アニメではできないことがたくさんあると思いますが、この作品では、アニメのスタッフさんたちがギリギリのラインまで攻めてくださって、マンガ以上にパワーアップしているシーンもあります。
なので、マンガを読んでくださった方は「あのシーン、描かれるのかな?」とドキドキしながら観てくださると楽しめると思いますし、アニメで初めて作品に触れる方も、マンガとアニメを並行して楽しんでいただくことをオススメします。
『妖はじ』は「自由」な作品。いろいろな楽しみ方をしてほしい
――序盤はコメディシーン満載ですが、徐々にほっこり感動するシーンやシリアスなシーンも見られるのも見どころかなと。
田中:そうですね。でも自由な作品なので、視聴者の皆さんにはいろいろな楽しみ方をしていただけたらと思います。コメディをやっている中にも、会話劇の合間合間にシリアスな場面があったりするので、各キャラの過去や関係性を考察するのもいいですし、純粋なコメディとして楽しむのもよし、お気に入りのキャラを見つけて愛でるのもよし、といろいろな楽しみ方ができるのが、この作品のいいところなのかなと思います。
――生徒たちの恋愛模様にも注目ですね。
田中:学園ものといえば、恋バナですから。
恋愛含め、このキャラとこのキャラが昔知り合いだったとか、因縁があるとか、それぞれのキャラの関係性にも注目していただきたいですね。私は関係性オタクなので(笑)。
――パワフルなコメディなので、お父さんは懐かしく、お子さんたちは一周回って新鮮に楽しめるので、ぜひご家族で、と言いたかったんですが、制服フェチの部分は大丈夫かなという心配も(笑)。
田中:でも「晴明は犯罪をしない」「制服の中身に興味がない」ということを徹底して言ってきたおかげか(笑)、クレームがきたことはほとんどなく、逆に「親子で楽しんでいます」というメッセージをいただくことも多いくらいで。世代を問わず、誰でも楽しめるアニメになっていると思うので、ご家族で視聴していただけたら嬉しいです。
――最後に、原作ファンの方やアニメで初めて作品に触れる方へメッセージをお願いします。
田中:まず原作ファンの方には、10年も続く連載をずっと支えてくださって、ありがとうございます。ここ数年、「アニメ化してほしい」という要望をたくさんいただいていたので、実現できてよかったです。皆さんに満足してもらえるように、私もしっかり監修していますし、アニメのスタッフの方々もリスペクトの気持ちで作ってくださっているので、安心して、マンガと変わらず楽しんでいただければと思います。
アニメで初めましての方には、『妖はじ』は自由な作品です。コメディ作品として楽しむのもいいし、ストーリーを歴史と絡めて考察するもよし、キャラ萌えするもよし、と入口が広くて、様々なニーズに応えられるアニメになっていると思うので、まずは一度アニメをご覧になってみてください。そしてアニメをご覧になっていただいた方は、ぜひSNSで感想をつぶやいたり、お友達にも薦めてみてください。私もリアルタイムで視聴するつもりなので、一緒に楽しみましょう!
作品概要
あらすじ
憧れの教師になり、喜んでいたのもつかの間! 赴任先の百鬼学園は、なんと妖怪たちの妖怪たちによる妖怪たちだけの学校だった!気弱でヘタレ、しかも人間である晴明を、学園長が雇った理由とは一体……!?
クセ強人間教師・晴明と、個性が大渋滞の妖怪生徒&先生たちの、奇妙でにぎやかな日常を描く、愉快☆痛快☆妖怪☆学園コメディ!授業開始!
キャスト
(C)田中まい/SQUARE ENIX・妖はじ製作委員会