大バズ超カロリーグルメ漫画はどうやって生まれた? | 『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』第1巻発売記念! まるよのかもめ先生インタビュー
松本人志さんのコントが大好きで、特にあの狂気性を含んだコントには色々と影響を受けました
──そうすると漫画を描き始めたきっかけはコロコロとの出会いになりますか?
まるよのかもめ:マンガを描き始めたのは小学校1年生ぐらいの時で、その時はコロコロコミックの先生たちのギャグ漫画を真似して描いていました。学生時代もずっとギャグマンガ一筋で描いていましたが、本当に漫画家になろうと思ったのは他の影響もありますね。
私は『ダウンタウンのごっつええ感じ(以下、ごっつ)』の松本人志さんのコントが大好きで、特にあの狂気性を含んだコントには色々と影響を受けています。あと、インターネットに入り浸っていた時期もあって、そこで当時の「面白ければ何でもいい」的な感覚のネットミームを見た瞬間に「私もこんなことをやりたい!」と思ったんです。それが漫画家を目指したきっかけだったのは鮮明に覚えています。
──ちなみに『ダウンタウンのごっつええ感じ』で特に好きだったコントは何ですか?
まるよの:「腸」というコントです。ボロボロのアパートに住んでいる老夫婦が、巨大な腸を引っ張り出してきて大喧嘩するというコントがめちゃくちゃ好きでしたね。
──先生のインタビューで「腸」の話が出てくるとは思いませんでした(笑)。『もちづきさん』に全体的に漂うドライブ感と狂気じみた雰囲気とかテンポ感は、確かにコントとも通じるものを感じます。
まるよの:それはあるかもしれないですね。
──ちなみに『もちづきさん』の狂気を代表するフレーズとして「至る」がありますが、おそらく今までグルメ漫画で「至る」という表現を使った作品はなかったかなと思います。この言葉はどこから出てきたのでしょうか?
まるよの:この漫画を連載するにあたって「キラーフレーズが欲しい」というオーダーを頂いたんです。「整う」みたいに言葉で説明するのは難しいけど、読んだ人がしっくりくるフレーズが良いかなと思って考えた時に、ご飯をドカ食いして何かに到達するような感覚を表現したくて「到達なら“至る”かな」と思いついた感じです。
担当:ネームの初稿を拝見した際に、グルメ漫画としてのフォーマットを作っていただきたいと思ったんです。例えば『ワカコ酒』でいうところの「ぷしゅー」みたいなフレーズがあると、よりキャッチーかなと思ってオーダーさせてもらいました。
料理本に載っている乱切りはまだまだ乱れていないと思う
──ヤングアニマルWebで5月9日に第1話・第2話が掲載されて以来、瞬く間にトレンド入りして月間連載化が決定、そしてついに単行本第1巻が発売となりました。この盛り上がりについて先生はどう感じていますか?
まるよの:正直なところ、ここまで多くの方々に読んでいただけるとは思っていなかったので、特に第1話公開時は天地がひっくり返ったような衝撃で、現実を受け入れるのに凄く時間がかかりました。
第1巻の発売にこぎつけられて「これでやっと漫画家になれるのかな?」という気持ちもあるんですけど、この短期間でレベル1からレベル50くらいまで一気に上がったような感じで、バグというかそんな言葉がチラつく気分です。
──昨今、ここまで一瞬で話題になる作品も珍しいですよね。
担当:僕ら編集部も驚いて、急遽第3話を雑誌より先にWebで公開しようと先生に相談させていただいた感じです。
まるよのかもめ:本当にありがたい話です。
──ヤングアニマルZEROやヤングアニマルWebとしても前代未聞な事態でしたか?
担当:そうですね。雑誌的にも会社的にもそうですし、漫画業界全体を見渡してもあまり聞いたことがないことだったので、社内が「どうしよう」とザワザワしました(笑)。
──そしてついに第1巻が発売となりましたが、カバーイラストが公開された時に「望月さんが食べているのはオムライスなのか、それとも卵の部分がマヨネーズなのか?」とSNSで話題になったのも印象に残っています。
まるよの:単行本の帯をめくった時に「マヨネーズがあるじゃん」と気付いてもらえるような仕掛けを作りたくて、このデザインにしたんです。望月さんが食べているのはどっちなのかは、読者の皆さんのご想像にお任せしたいと思います(笑)。
──第1巻に収録されている内容で、先生が一番好きなセリフやコマはどこですか?
まるよの:好きなシーンはいっぱいありますけど、第2話のソーセージを切っているシーンで「本当の乱切り」というところが好きです。料理本に載っている乱切りはまだまだ乱れていないと思うので「本当の乱切り」が描けて良かったですね。
──これは実際にやってみたんですか?
まるよの:やりました(笑)。
──(笑)。ここまで二人三脚で歩まれてきた担当さんの一番好きなページはどこですか??
担当:各話にいっぱいあるから悩ましいですね。第3話の「ふ~お腹いっぱい♡まんぞくまんぞく」とか、やっぱり良い顔が描けているコマは素晴らしいなといつも思っています。
──望月さんは同じページの中で表情がどんどん変わるので、そこがまた可愛いですよね。
──第1巻以降の展開で明かされていくのかもしれませんが、まだまだ謎の多い望月さんの細かい設定は存在するんですか?
まるよの:そのあたりは今後のエピソードをぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
──それでは最後にドカ盛りの応援をくれる『もちづきさん』ファンに向けてメッセージをお願いします。
まるよの:単行本の帯にも書いてあるんですけど、グッズやコラボカフェの企画が動き出していて、とてもありがたいお話で一生懸命やらせていただいているところです。
望月さんはこれからも止まることなく進んでいきますが、皆様に温かい目で見守っていただけるとありがたいです。あと、コミックスには描き下ろしのエピソードも収録されているので、ウェブで読んでくださっている方にもお得感のある内容になっています。ぜひ手に取ってもらえると嬉しいです。
取材・記事:岩崎航太、編集:石橋悠
作品概要
発売日:2024年10月29日
価格:759円(税込)