自分の“好き”を発信できるように、誰かの背中を押せる1枚にしたい――蒼井翔太さんミニアルバム「Collage」発売記念インタビュー|まったく異なるジャンルの5曲をコラージュし、“今”の心の中を表現する
自分自身を好きになるために、強い気持ちを持つ――「Da La La」に込めた想い
――リード曲「Da La La」では、曲の冒頭から「理解されることのないこの気持ち Hey, is it wrong? 絶対 好きなものは好きでいたいの」というフレーズが、心に刺さりました。先ほどの「自分が好きなものを好きだと発信する」というお話にも繋がる歌詞だな、と感じています。
蒼井:僕自身、この歌詞のように感じてきた1人として歌っていますし、僕だけじゃなく、同じ想いを抱えた人がたくさんいると思います。
今は昔と比べて、個性あふれる人たちが多少胸を張って生きていけるようになった気がしますが、一昔前は本当の自分を出すことがとても怖かったり、息苦しさや生きづらさを感じたり……“好き”を発信することに、まだまだ時代が追いついていませんでした。
そんな経験をしてきた1人として、第一印象だけで「こういう人なんだろうな」とカテゴライズされることや、他人の決めつけ、先入観に対抗していきたい、という想いがあります。
もっと自分自身を好きになるために、もっともっと生きやすく、前向きに走っていけるように、強いマインドをこの楽曲に乗せて歌いました。
――「Da La La」のボーカルのポイントをお聞かせください。
蒼井:この曲も歌詞をノートに書き、歌い方をカスタマイズしながら臨んだので、最初からガッチリ自分の中でハマっているなと思いました。
僕自身、これまでカテゴライズされてきたと感じていましたが、そのことについてストレートにお話する機会はあまりなく、「Da La La」にそんな想いを乗せて歌で伝えるということは、すごくインパクトがあると思っています。
それを自分の中で噛み締めて、忘れないように歌いました。
――歌詞のすべてを読めば、訴えかけてくるような蒼井さんの想いが伝わってきます。この楽曲を選ぶにあたって、蒼井さんの中で決め手になったことは?
蒼井:実は、自分の想像よりも斜め上からきた楽曲だったんですよ。もともとはもっと違う感じの楽曲を歌おうとしていたのですが、これが耳から離れなくて。
まだ歌詞はできていなかったのですが、辛い時、嬉しい時、どんな時でも「Da-la-la-la-la-la-la-la~♪」のメロディラインがずーっと頭の中に残っていて。そんな楽曲はなかなかないので、「この曲はもしかしたら“出会い”かもしれない」と感じました。
ジャンルが異なる1曲1曲のストーリーを追っていく
――ロック調のナンバー「FALL」では、「もう君はEyesを逸らせない ただ惹かれるままに」「ただ君は溢れだす心を 喜んで奪われたらいい」という歌詞が、特に印象的でした。「FALL」には“落ちる”という意味がありますが、こちらの楽曲にはどのようなストーリー性があるのでしょうか?
蒼井:この楽曲の歌詞は、僕のファンでいてくださっている皆様、そしてこのミニアルバムで初めて蒼井翔太に出会ってくださった人たちとの、心を賭けたゲームを表しています。1つのゲームをしましょう、と。
この楽曲を通して、“ぜひ貴方は私に堕ちてください”という、駆け引きのようなイメージです。
作曲はロックバンド・lynch.の葉月さんで、このタイミングでこの楽曲を葉月さんからいただけたのも、本当に“出会い”だと感じています。
「FALL」という意味の楽曲を提供していただいたからには、新たに蒼井翔太に目を向けてくださる方も、堕さないと失礼になりますので……(笑)。
――「Magic Of Love」は、どことなく懐かしさもある、王道ポップスのようなラブソングですね。
蒼井:学園一の聖母マリアのような子に一目惚れをして、自分の中でいろいろと妄想を繰り広げていく、冴えない主人公の歌です。
もちろん楽曲の解釈は受け取ってくださる皆様の自由ですけれども、僕的には冴えない主人公が、どうにかしてその子に近づいて、夜のダンスホールで一緒に踊っているという妄想劇、恋物語として歌っています。
「君は僕のマリア」という歌詞は必ず入れたい、とオーダーさせていただきました。学園の中で主人公が、マリアに出会って間もなく恋に落ち、そこから彼の頭にぱぁっと思い浮かぶ、マリアとの親密だけれどもちょっとぎこちない恋物語。
授業中もずーっと妄想しているような、そんなイメージです。歌っている時は、そんな主人公を舞台で演じているような気持ちでしたね。
――インタビュー冒頭でも触れた「ハイドアンドシーク」について、もう少し詳しく教えてください。
蒼井:僕たちの日常では、一瞬ごとにいろいろなことが起きて、いろんな感情が頭の中で渦を巻き、もうめちゃくちゃになる時ってあると思うんです。
それこそ、この楽曲のスピード感のように駆け巡って、本当の自分の気持ちがどこにあるのか「ハイドアンドシーク」=かくれんぼしてしまうような。そんなグチャグチャな感じがサウンドに出ていて、迷いや混乱を表してくれています。
歌詞にはたくさんの言葉が込められていて、良い意味でブッ飛んだ世界観は、歌っていてもたまらなく気持ち良かったです。この楽曲のレコーディングでは、今までの自分のリミッターを外して自由に歌えました。
ボカロは最先端のジャンルであり、歴史があるジャンルでもあるので、蒼井翔太の名義で歌えたことは、(音楽活動をしていく中で)すごく大きなポイントになっていると思います。
――珠玉のバラード「そのままで」では、蒼井さんが作詞を手掛けています。
蒼井:この楽曲は「友達でいられるのが一番良かったね」という、結果的には失恋物語なのですが、どうしても芽生えてしまった言葉を言わずにはいられない、人間の性(さが)が込められています。
だからこそキレイに終わるというより、「苦しいよ」という言葉をしっかりと入れて、人の感情のリアリティを加えました。
――いつも歌詞を書く時は、どのようなアプローチを取っていますか?
蒼井:まず、頭の中で物語を描きます。僕は絵を描くことが好きではありますが、得意ではないので、実際に描くというよりは、頭の中で一気に情景や背景を思い浮かべます。
例えば、恋愛シミュレーションゲームでいうところの物語の一番大切なシーンで、友達エンドや恋愛エンドという、特別なスチルみたいなものを頭の中で1枚描いて、そこから歌詞を紡ぎ出します。
今回は物語のラストシーンで、雨の中で笑っているのか、泣いているのかわからないぐらいの、泣き笑いの主人公の絵が浮かんできたので、そのシーンに向けて言葉を紡いでいきました。