「一緒に作る人たちとの“雰囲気”は大事にしたいと思っています」――『仮面ライダーW』を手掛けた三条陸さんが語る、王道に“威力”を宿す作品づくりと決め台詞が生むドラマ性|劇場版『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』インタビュー
2024年11月8日(金)より、劇場版『風都探偵 仮面ライダースカルの肖像』が、期間限定上映開始!
2022年に配信・放送された全12話のシリーズアニメを経て、今作で描かれるのは仮面ライダーW誕生の物語「ビギンズナイト」。翔太郎の師匠である鳴海荘吉/仮面ライダースカル(CV:津田健次郎)も活躍する人気エピソードがアニメならではの表現とともに、劇場に帰ってきます。
アニメイトタイムズでは、今作の上映開始を記念して、キャスト&スタッフのインタビューをお届け! 今回は『仮面ライダーW』、『風都探偵』の原作脚本、アニメでは脚本監修を担当している三条陸さんにお話を伺いました。
『風都探偵』版「ビギンズナイト」の成り立ちから、物語における敵キャラクターや決め台詞の意義まで、三条さんの作り手としての矜持が垣間見える内容になっています。
『仮面ライダーW』『仮面ライダードライブ』『獣電戦隊キョウリュウジャー』など、三条さんの作品が大好きなあなたは……「これで決まりだ!」
漫画になることで広がった物語の自由度
ーー『風都探偵』を初めて読んだ時、『仮面ライダーW』そのままの読み味に驚いたのですが、どんなことを考えながら脚本を書いているのでしょうか?
三条陸さん(以下、三条):仰っていただいた「『仮面ライダーW』そのまま」というのが、一番気をつけているところです。『仮面ライダーW』を観た人が純粋な新作、続編のように読めることが理想だと思っています。実写のTVシリーズでは2話の前後編でひとつのお話を描いていましたが、それに近い満足感を作ることは意識しました。
全体的にコミックス派の人が多いようなので、コミックス1巻分でひとつのエピソードを収録して、コミックスの新刊を買えば『仮面ライダーW』の新作が読めるという形にしています。現在のスタイルに関しては、連載で調整を重ねていくうちに固まった感じです。コミックス第2集(「cは何処に」)までは、テストケースとして色々と試していました。
ーーTVシリーズの続編が漫画で描かれるというのは、仮面ライダーシリーズの歴史を見ても前例のないことだったと思います。
三条:週刊誌で仮面ライダーの漫画が連載されるのは、石ノ森章太郎先生の『仮面ライダーBLACK』以来らしいですね。大変名誉なことだと思うので、改めて気合いが入りました。
ーー『風都探偵』ならではの要素として、大人向けの表現や、実写では再現が難しそうな描写の数々も印象的です。
三条:もともと犯罪モノなのですが、人の生死であったり、飲酒や喫煙シーンであったり、子供番組では難しくなる描写も当然あります。そういった規制や予算の都合でやれなかったネタが結構溜まっていたんです。漫画になることで、物語の自由度が広がって、リミッターも緩くなっていると思います。
ーーそれこそ、翔太郎とフィリップが雪山の山荘に閉じ込められる「閉ざされたk」(第3集収録)は漫画でしかできないことの塊ですよね。
三条:サスペンスでは定番のシチュエーションですけど、あれを実写でやるとオールロケになりますから(笑)。「お酒」というテーマや「土曜ワイド劇場」を思わせる過激な描写も、実写ではやれなかったネタです。アルコール・ドーパントも液体が入っているようなデザインになっていて、関係者それぞれがやりたいことをやり始めた時期なのかなと。
ーープロデューサーの塚田英明さんとは、今でもシナリオの0稿(草稿)について、打ち合わせをしていると伺っています。
三条:そうですね。3エピソード分の0稿を塚田さんに見ていただいて「犯人のキャラクターをここで立てましょう」とか、色々なご意見をいただいています。塚田さんは京都で事件モノを手掛けた経験があり、高いノウハウをお持ちなので、関わっていただくこと自体が『仮面ライダーW』っぽさを出すための重要な要素です。
また、現実的な問題として、東映さんのキャラクターを扱う作品なので、絶対にチェックが必要になります。一般的にはネーム段階での確認になりますが、週刊連載のペースでは上手く回らないだろうなと。『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』を連載している時もそうだったのですが、ひとつひとつのチェックを毎週受けていると成立しないんですよ。ただ、確認の行程自体は必要なので、事前に塚田さんのOKをいただいて、東映さんのチェックをスムーズにしようという考えです。クオリティの担保、東映さんのチェック体制という両面で、塚田さんにお願いしています。最近社内でも役職が上がっているようなので、引っ張り出すのは少し申し訳ないですけどね(笑)。
ーー(笑)。ちなみに、漫画と映像作品で脚本を書くときとの違いはありますか?
三条:映像作品は台本形式なので、みんなが納得するものを作り上げる必要があります。演者も含めた全員に気を遣いつつ、トータルバランスとして良いものを作るという考え方です。
一方の漫画は関わっている人が少ないので、最終的には漫画家さんに伝われば良い。そういう意味で、映像作品とは異なるテンションの上げ方が必要になります。ある種の計算性を無くすというか、勢いを出さないと面白くならないです。漫画家さんに面白い部分が伝わらないと、読者にも伝わらないですから。