迷いや葛藤さえも力に変えていくのがMyGO!!!!!──『劇場版「BanG Dream! It's MyGO!!!!! 後編 : うたう、僕らになれるうた & FILM LIVE」』高松燈役・羊宮妃那さん、長崎そよ役・小日向美香さんロングインタビュー
燈は「これが完全体だと思えない」
――なんて素敵な関係性。実はそよちゃんも本当に優しい部分がありますね。
小日向:そうですね。今のアニメの段階では冷たく見えるところがあるかもしれませんが、実はちゃんとメンバーのことを思っているというか。例えば、愛音ちゃんが多少鬱陶しく感じることがあっても最後は折れてあげるというか、許してあげるところもあって。まだ素直に表現できないだけで、しっかりとメンバーへの想いがあるんだろうなって、行動から感じていますね。
それこそ「ガルパ」(「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」)に「輪符雨」が追加されたイベント(「雨粒に混ざる色」)のストーリーでも、渋々ながらもメンバー全員を自宅に招いているじゃないですか。ただ素直になれないだけで、実はみんなと一緒にいるのも悪くないと思っているのだろうと感じられて、可愛らしいなと思います。
羊宮:確かに。初見の印象は立希ちゃんがツンデレ枠ですけど、そよちゃんもだいぶその要素がある気がします。
小日向:確かに(笑)。立希ちゃんは少しいじられる方向になっている感じもあって。
羊宮:ああ、そうだね! そよちゃんのほうが「しょうがないな」と流されてあげている印象があったんですけど、その立場が見事に逆転したように思うんです。
小日向:そういう変化があるのも魅力のひとつでもありますよね。キャラクターが本当に生きているように感じます。それでいうと、最近の燈ちゃんも想像もできなかったほど成長していることを感じます。ストーリーだけじゃなくて、歌い方や歌詞からも燈ちゃんの成長が伝わってきて。
羊宮:めちゃくちゃ嬉しいです……! 成長を描いていくのもMyGO!!!!!の良さだと思っているんです。特に歌に関しては、みかんちゃん(小日向さん)が今言ってくれたように、想像もつかなかった方向に成長させていくことを意識しているんです。それが音楽を通して伝わっているのはすごく嬉しいです。
小日向:燈ちゃんの歌のなにがすごいって、まだまだ成長していくと感じられるところ。これが完全体だと思えないのがすごいですね。「この子はどこまで成長していくのだろう」と思わせてくれるところが魅力だなぁとおもいます。
羊宮:(深く頷きながら)そうなの、実は! まさにそうなの! レコーディングで調整してもらっているんです。例えば節回しのディレクションひとつとっても「そこまで成長しすぎるとカッコよくなりすぎてしまうから、叫びを残しつつ、成長している部分を見せる」といったバランスを意識しているんです。だからうまく歌えてもOKではないんです。
例えばカバー楽曲では、オリジナルのアーティストさんならではの言い回しや息の量がありますが、燈ちゃんとして出てしまうとNGになることも。燈ちゃんの良さを残しつつも、カバー曲を重ねていくことで、いかにうまくなっていけるのかを表現するっていう。
小日向:成長させすぎないけど、成長はしているっていう、その絶妙な塩梅を意識してたってこと?
羊宮:そうなんです。そういうことを常にやっています。
――めちゃくちゃ難しい。
小日向:驚きました。というのも、今の話は初耳だったので、聞けて嬉しいです。
羊宮:みかんちゃんの着眼点が素晴らしすぎて、「まさにそこ!」ってつい話したくなってしまいました。
小日向:改めて大変な事をこなしている羊ちゃん、本当に尊敬ですね。
――そよのコーラスに対しては、どのようなディレクションがあるんですか?
小日向:明るい楽曲の場合は、アニメの中だと前半の時のそよちゃんの声色で、ちょっとカッコいい曲ではアニメの後半の方の素を見せはじめたそよちゃんの声色という印象が1番伝わりやすいですかね?
あとは、「明弦音」(アゲイン)は明るめの楽曲なのですが、それで明るめに歌ったら、「ちょっと子どもっぽい感じがするから、高校生感を取り戻してほしい」と。私のもともとの声が明るめなこともあって、年齢感を作るのが少し難しいところがあるんですよね。それで息の成分を若干多めにして、調整をするようにはしています。
こういう感じで声色の使い回しができるのは、そよちゃんの唯一無二のところなのかなって。そこはもし良かったら、耳を澄ませて聴いてほしいなと思うところです。
キャラクターではなく、ひとりの人間として皆さんに見てもらいたい
――おふたりから、燈、そよ、それぞれの魅力を感じる言葉がたくさんあふれていました。改めて、自身が命を吹き込む燈、そよの魅力について教えていただけますか。
羊宮: 燈ちゃんの魅力は痛みを知っていることだと思います。誰かに寄り添う時には、自分が痛みを知らないと分からない事が多いような気がしますし、その上で、5人で活動していく強い意志も持っています。聞くところによるとちょっと頑固みたいで。
初見だと内向的に見えるんですけど、意外といじけたり、頑固だったり。そよちゃんがCRYCHICの解散について「誰も悪くないんだよ」と言ったことに対して「……誰も悪くないなら……なんで解散したの?」と言って逃げる。それくらい、自分の抱えているものに対して執着のようなものがあるんですよね。より強い感情がたくさんあることが、歌詞からあふれるものや叫びにつながっているように感じています。そこが彼女の一番の魅力だと感じます。
――それこそ燈は一生という言葉にもこだわっていて。
羊宮: そうなんです。意思が強くないと一生という言葉は出てこないと思ってます。
――小日向さんはそよの魅力についてどのように分析されていますか。
小日向:そよちゃんは、幼い頃から抱えてきたものが多く、親の離婚や環境の変化、大切なものであったCRYCHICを失う経験など、さまざまな困難に直面してきました。後半になってからは感情を爆発させるシーンはありましたが、お母さんも含めて周囲に気を遣って明るく振る舞いながら、生きる事ってすごく大変な事で、弱音を吐ける場所がなかった事はとても辛かったと思うんです。それでも人にぶつける事なく生きてきたそよちゃんは本当にすごいなと思いますし、その強さが魅力だと思います。
でもMyGO!!!!!のメンバーに対して、本音が溢れ出てしまって。その時にようやく年頃の女の子らしい姿が見られた気がしてすごく嬉しかったです。そうした人間味が見える瞬間が、彼女を生きている人間として感じさせてくれるところだと思っています。
演じるうえでも、そよちゃんがキャラクターではなく、ひとりの人間として皆さんに見てもらいたいという思いが強くあるんです。私自身、彼女の人間らしい一面が見えたことで、さらに彼女を守りたい、愛したいと感じるようになりました。
それこそ、そよちゃんと同じように何かを抱えながら明るく振る舞っている子たちもいると思うんです。実際に私も何人か見てきました。そういう子たちが、そよちゃんを見ることで、居場所を見つけ、乗り越えていけるようになればと思っていました。
――そよの良き理解者でありながら、エールを送る立場でもあると言いますか。
小日向:そうですね。そよちゃんに対しても、エールを送りたいなと思っています。私が命を吹き込むことで、そよちゃん自身も成長していけるようにと思いながら、今もそばにいる感じです。