「これまでの自分を信じて、仲間を信じて、今まで見えなかった道が開ける」――屋比久知奈さんが『モアナと伝説の海2』で紡いだモアナの成長と温かな気持ち【インタビュー】
新曲「ビヨンド ~越えてゆこう~」が映し出す、成長したモアナの複雑な心情
ーー今作の鍵を握る新曲「ビヨンド ~越えてゆこう~」には、失うことへの不安や恐れなど、成長したモアナの複雑な感情が込められていると感じました。
屋比久:仰っていただいた通り、「どこまでも 〜How Far I’ll Go〜」とは状況こそ似ているものの、モアナの抱えるものが全く違っていて。人って背負うものが多くなると、新しい挑戦に対して不安や恐怖心が生まれるじゃないですか。
ーーすごく分かります。
屋比久:そうですよね……! ただ外の世界を夢見るキラキラした気持ちと、大切なものや経験が増えているからこそ「行きたいけど行けない」という気持ち。成長したモアナには子供だったあの頃とは違う、葛藤や迷いが生まれています。それと同時に「外の世界に行きたい」という心の方向性も彼女の中に残っていて、そういうジリジリした気持ちが表現された楽曲です。曲の盛り上がり方も何かに引っ張られながら進んでいくようなイメージで、前作とは異なる魅力があるなと。
ーー先ほどお話されていた作りすぎないことは、歌においても意識されたのでしょうか?
屋比久:かなり意識しました。前作の自分の声を改めて聞いた時、率直に「今の自分には出せない声だな」と感じたんです。それが悔しくもありつつ、でも成長ってそういうことなんですよね。やっぱりこの作品には、作りすぎないことで生まれる“何か”の方が合っていると思います。今の私はドスの効いた声も出そうと思えば出せますが……(笑)。
ーードス(笑)。
屋比久:それが良いときもあるんですけどね。歌に関しては前作を思い出しつつ、純粋な気持ちで表現したかったんです。具体的には節回しや声の出し方とか。7年前はとにかく一生懸命でしたが、今回は余計なものを削ぎ落として、真っ直ぐ真っ直ぐ歌うことで作品のメッセージを伝えられたらと思っています。
ーーでは最後に、屋比久さんが今作から受け取ったメッセージについてお伺いできればと思います。
屋比久:仲間や家族……大切な人がいるからこそ、自分も頑張れる。誰もが悩みや恐れを抱えていて、完璧な人なんていないからこそ、それを乗り越えることができる。「迷いながら踏み出す一歩が大事だよ」って背中を押してくれる、温かくて優しいメッセージが込められていると思います。
今作の中で、モアナが「道は一つじゃない」と言葉を掛けられる場面は特に印象的でした。人は経験を重ねると「こうあるべき」という思い込みも強くなりがちですが、3年間で経験を重ねたモアナ自身もそうだったのかなと。そんな時にこの言葉が入ってきて、「確かにそうかもしれない」と新しい道に気づかされるんです。引いた目で見た時に色々な可能性があって、その中に何ひとつ間違いはなくて。これまでの自分を信じて、仲間を信じて、今まで見えなかった道が開ける。私自身もその言葉に勇気づけられましたし、表現の面でも「モアナはこうじゃなきゃ」という思い込みが消えて、世界が広がっていく感覚がありました。
今回も前作に続いて、世代を問わず勇気がもらえる作品になっています。この作品を観た方に繋がりや温かい気持ちを感じていただけたら嬉しいです。
[インタビュー/小川いなり]
『モアナと伝説の海2』作品情報
12月6日(金)全国劇場公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン