シリーズ令和2作目となる『涼宮ハルヒの劇場』が本日発売! アニメイトのベテラン書籍担当が語る、Z世代も楽しめる『涼宮ハルヒ』シリーズの魅力
シリーズ最新作『涼宮ハルヒの劇場』が、2024年11月29日(金)に発売決定! 全世界の『涼宮ハルヒ』ファンが待ち望んだこの素晴らしい日をアツく盛り上げるため、アニメイトの新人宣伝プランナー・Rに特命が下された!
……が、この新人・Rはライトノベルこそ数多く読んでいるものの、世代的に『涼宮ハルヒ』シリーズに触れる機会に恵まれなかったという。しかし、スケジュールに余裕もない……。
そんな絶体絶命のピンチに手を差し伸べる歴戦の猛者たちがいた。そう、アニメイトの最前線である店舗で、書籍の魅力をお客様に届けるべく、日夜邁進するベテラン書籍担当である。
本稿は、これから『涼宮ハルヒ』にハマっていく新人宣伝プランナー・Rと、彼を『涼宮ハルヒ』の沼に沈めるため……否! より良いPRの手助けをするために集結したベテラン書籍担当との作戦会議的座談会の模様をまとめた、熱烈な『涼宮ハルヒの劇場』発売の祝祭記事である!
ハルヒはiPhone!? 書籍担当が感じる『涼宮ハルヒ』の衝撃
――某日、アニメイト本社
新人宣伝プランナー・R(以下、新人R):Iさん、どうしましょう……。『涼宮ハルヒの劇場』の宣伝施策を任されたのですが、これまで読む機会がなくて……でもスケジュールにも余裕がなくて、相談に乗っていただけますか?
先輩宣伝プランナー・I(以下、先輩I):お困りのようだね、Rさん。そんな君のために、今日はアニメイトならではの強力な助っ人を連れてきたよ。
後輩R:強力な助っ人?
三枝:池袋本店の書籍担当、三枝です。
三浦:当時、秋葉原店で施策を実施していた三浦です。
先輩I:『涼宮ハルヒ』シリーズの販売に携わっているアニメイト書籍担当社員のみなさんに集まってもらったよ。先人の知恵を借りて『涼宮ハルヒ』の魅力を再確認して、よりお客様に楽しんでいただける宣伝施策を考えていこうじゃないか。
後輩R:ありがとうございます!(なぜかみんなキョンのお面だ……!) 当時のお話も参考に、『涼宮ハルヒ』の魅力を深堀りして、宣伝に役立てるぞ〜!
先輩I:本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは、おふたりの経歴からお聞かせください。
三浦:元々は別のコミック専門店で働いていたのですが、中途入社でアニメイトに入りました。昨年まで秋葉原店で勤務していて、アニメイト歴で言うと16年になります。現在は地方の店舗に在籍していますが、引き続き書籍を担当しています。
後輩R:本日は遠いところからお越しいただいているのですね!
三浦:『涼宮ハルヒ』のためなら! かつてPR施策を実施していた世代でもありますし、店長にもご快諾いただきました。
先輩I:本日はよろしくお願いします! 続いて三枝さん、お願いします。
三枝:蒲田店でアルバイトとして働き始めたのがスタートで、当時から書籍を担当していました。その後社員に登用していただき、川崎店へと異動して、現在は池袋本店で勤務しています。
先輩I:三枝さんも、アニメイトで長く書籍を担当されていますよね。
三枝:そうですね。アルバイトを始めたのが、ちょうど『涼宮ハルヒの憂鬱』が出版されたタイミング(2003年6月)だったので、アルバイト期間も含めると20年以上になります。
後輩R:『涼宮ハルヒ』販売員の生き字引ですね……!
先輩I:様々な作品のPRを担当されているおふたりに、今回集まっていただきました。まず基本的な質問にはなりますが、アニメイトにおける「書籍担当」とは、どのようなお仕事があるのでしょうか?
三枝:商品発注や、お店の売り場作りが主な業務になってきます。特に売り場作りではお客様に楽しんでいただけるような仕掛けを考えて、実際に展示・掲示物を作ったりしています。それに伴い、作家様や版元様、アニメイト本部の書籍営業とのやり取りなどのデスクワークも行っています。
先輩I:ではおふたりが『涼宮ハルヒ』シリーズに触れたタイミングはいつ頃でしょうか?
三浦:アニメイト入社前の2006年、TVアニメが始まったタイミングで知りました。当時も話題になっていたので私も見ていたのですが、アニメーションのクオリティにビックリしましたね。『ハレ晴レユカイ』のダンス然り、衝撃的なまでにヌルヌル動くアニメで(笑)。
三枝:確かに、あの衝撃はすごかった!
三浦:でもその反面、アニメ化される前までの注目度はそれほど高くはなかったと思うんです。ストーリーが重厚かつ複雑で、『涼宮ハルヒ』の持つ魅力が伝わりきらなかったのではないかと。
アニメが始まると、ストーリーの魅力もわかりやすく表現されると同時に、キャラクターの魅力にも注目されたと思うんです。そこに京都アニメーションによるハイクオリティなアニメが加わって、一大ムーブメントになったと考えています。アニメが流行って、小説を手に取る方が増えたのではないでしょうか。
後輩R:三枝さんは、先ほどおっしゃられていた通り『憂鬱』発売のタイミングでアルバイトをされていたのですよね。
三枝:そうですね。「スニーカー大賞〈大賞〉受賞作」の金色の帯が付いていたのを覚えています。版元様からの熱もすごくて、ビッグタイトルになる兆しが見えていました。さらに言うと、僕はいとうのいぢ先生のイラストにハマっていたので、ファンの間でもかなり早い段階から読み始めていたと思います。
当時のライトノベルとしては『フルメタル・パニック!』などのファンタジーが多く、学園モノと言ってもラブコメディが主流でした。そんな中で学園モノにSFの要素も取り入れられている『涼宮ハルヒ』は新鮮でしたね。
アニメになる前も文庫本の中では突出した売上を誇っていたものの、三浦さんがおっしゃった通り、爆発的にヒットをしたのはアニメ化後だと思います。もし、放送当時に現代のようなSNSがあったら特大のバズを生んでいたのではないかと(笑)。
三浦:バズどころの騒ぎではなかったかもしれませんね(笑)。当時のSNSチックなものは、動画投稿サイトや掲示板が関の山でしたから。
三枝:きっと世界を大いに盛り上げ過ぎていたと思います(笑)。
後輩R:昨今は、当時の『涼宮ハルヒ』の反響を知る人も少なくなってきました。アニメが始まってからのお話についてもお聞かせください。
三浦:アニメが始まって、一気に勢いが増した印象があります。京都アニメーションも『涼宮ハルヒ』によってその地位を一層確立させたと思いますので、感覚的に言うと『涼宮ハルヒ』はiPhoneなんです。エポックメイキング的に、業界の底上げが成されたひとつの要因でした。
三枝:革命でしたね。
三浦:まさに!『涼宮ハルヒ』が他作品にもたらした影響も大きいと思います。
三枝:ライトノベルを一般化させたのも『涼宮ハルヒ』の功績ですね。今は広く親しまれているライトノベルですが、『涼宮ハルヒ』が出始めたばかりの頃は、今よりも注目度が高いコンテンツではなかったんです。
それに加えて、当時のスニーカー文庫は、「『ガンダム』のレーベル」という印象が強かったし、今のようなポップな印象はなかったかもしれません。
三浦:確かに。ロボットに関する作品が多かったし、ロボット以外もコアなファンタジー作品を得意としているレーベルでした。『涼宮ハルヒ』は、そのイメージをポップなものに変えた作品ですね。
後輩R:そんな時代もあったんですね……。おふたりが感じる『涼宮ハルヒ』の凄さについて、もっとお伺いしたいです!
三枝:アニメが始まった直後は、どれだけ原作小説を入荷しても売れてしまう勢いでした。追加分を入荷しても売れて、その次も同じ……人気すぎて、売り場に『涼宮ハルヒ』がいなかったこともありました(笑)。
三浦:あの勢いはすごかったですね。最近の大ヒット少年漫画のブームと同等かそれ以上だったと思います。ただ、商材として見ると、コミックスに比べてノベルの方が売れにくいはずなんです。時代は違いますが、『涼宮ハルヒ』の凄みを感じるエピソードとしては十分かなと思います。
三枝:追加分が入荷しても「この量では足りないだろう……」と思いながら陳列をしていました。
三浦:案の定、すぐに売り切れていましたね……(笑)。
三枝:どこの店舗でも同じような現象が起きていたと思います。あとは『涼宮ハルヒ』の付録が付いている雑誌も同様でした。ハルヒが表紙の「コミックNewtype」とか、一瞬でなくなったなぁ……。
三浦:書籍に加えて、グッズやCDも売れていました。それこそ『God knows』は、映像も音楽も売上もすごかったですから(笑)。
三枝:あのシーンのハルヒの表情がいいんですよね! シャウトしているシーンは、言ってしまえば既存作品のヒロインにはさせないような表情ですが、そこから伝わる必死さが心に響くんですよ。
三浦:細かい演出のすべてが、我々を虜にさせるんです。『涼宮ハルヒ』の凄さは、その細やかさが連発されるところなのかも。
三枝:当時はSNSが現代ほど発達していませんでしたが、職場などで「今週の『涼宮ハルヒ』見た?」「すごかったよね!」と、話が尽きませんでした。コミュニケーションツールとしての役割も『涼宮ハルヒ』にはありましたね。
後輩R:そう言えば、中学校の図書室に『涼宮ハルヒ』シリーズが置いてあった気が……。
三枝:良い時代ですね! 当たり前だけど、僕の頃はなかったから……。
三浦:今は角川つばさ文庫で児童向けとしても出版されていますし、名著として扱われているのだと思います。
三枝:総じて、地力のある作品がアニメ化でより爆発した、という形だと思っています。……これだけ話した後だけど、Rさんは『涼宮ハルヒ』にどのようなイメージを持っていますか?
後輩R:ライトノベルにおけるクラシックスタイルというイメージがあります。「ラノベっぽいラノベ」は何かと言われると、『涼宮ハルヒ』が浮かんできますね。ストレートなライトノベルだと思っていたのですが、今のお話を聞いていると、当時の『涼宮ハルヒ』は変化球だし……。ライトノベルを一般化させた『涼宮ハルヒ』の革命は凄まじいものだったんだろうなと思いました。
先輩I:そんな凄まじい『涼宮ハルヒ』の隆盛にお仕事として関わってきたおふたりだからね。『涼宮ハルヒ』を押し出すために行った施策について、思い出はありますか?
三枝:やっぱり、『驚愕』の深夜販売かなぁ。
三浦:私もそうですね。4年ぶりの新刊ということもあり、待ち望んだお客様が楽しそうに並んでいる姿が印象的でした。買ったあとは終電がないから、みんなでファミレスで読んでいらっしゃるのかな、なんて想像して。幸せな空間でしたね。
後輩R:そもそも書籍の深夜販売って、あまり聞いたことがないような気がします。どうしてもゲームのイメージがあって。
三浦:そうですよね。でも『涼宮ハルヒ』なら深夜販売も大盛り上がりなんです。
後輩R:前準備も大変だったんじゃないですか?
三浦:掲示物は、様々な素材を引き伸ばして作っていました。A3サイズの紙を張り合わせたりして……。それをいくつも作っていたので、結構な労力でしたね。全部手作りですから。
三枝:こういう時は、店員としてもお祭り状態なんです。大変なのは変わらないのですが、ウキウキしながら準備をしています。その代わり、終わった時の喪失感もすごいのですが……(笑)。
三浦:片付けが大変ですし、次の日も普通に営業がありますから、スピード勝負です。
先輩I:大変でも成し遂げたい施策、ということですよね。
三枝:お客様も一緒になって盛り上がってくださいますし、楽しいイベントでした。
三浦:お客様と店員が一丸となって盛り上げる瞬間も多くはないですから、今後も何かできたらいいなとは思ってはいます。