アルフォンはどこまでも掘り下げられる人間の感情に不慣れなキャラクター|『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第二章 赤日の出撃』アルフォン役・古川慎さん×福井晴敏総監督インタビュー【ネタバレあり】
痛ましい状況に置かれた古代。復活劇は第三章以降!?
ーーそして、アルフォンだけでなくイジドールやランベル、スカルダートといったデザリアム側のキャラクターたちも本格的に登場しました。
福井:原作での彼らは「なんちゃって未来人」だったのですが、今回はどうも本当らしい。そのリアリズムを突き詰めていくと、彼らが物凄い自己犠牲の精神を持って1000年前の地球にやってきていることが明らかになっていきます。その一方で、現代の日本と通ずる同調圧力が浮かび上がる存在という側面もあります。
例えば、誰かが「これはすごい!」と声を上げてバズると、みんなで「すごい」と言わないと社会から弾き出されてしまうという状況がある。彼らを反対側から見た時、そういう一面も見えてくるのではないかなと。そしてタチの悪いことに、デザリアムはそれを計算した上で行動しているところがある。そういった部分をこれから描いていきますので、ぜひ期待していてください。
ーー古川さんの中で、デザリアムのキャラクターで印象に残った人物はいますか?
古川:マクシムですね。彼はひとりの人間として未来を憂うという行動をデザリアム側としてやっていて、イジドールやランベルではなく、アルフォンと一番深い関わりを持つキャラクターというのが意外でした。
目的を同じくする同志として、結果として互いを容認していますが、アルフォンとマクシムのやりたいことは真逆な印象もあります。自分の国や星を思うからこそ荒事へ進むアルフォンと、穏便に子供たちの平和や幸せを願うマクシム。そのふたつが自分の中でリンクできないというか。
彼は自身が戦場に赴くタイプではなく、文官のような立ち位置なんです。子供たちの環境が今の地球に入植することでどう変わるのか、今の地球の人たちと融和した状態でいられるのかなどを考えている国士に近いと思っています。
ーーまた、本作での古代はかなり痛ましい描かれ方をしていました。周囲のキャラクターたちだけでなく、視聴者も痛ましい目で見ざるを得ないのが複雑なところです。
福井:もう本当にどん底ですよね。これまでのリメイクシリーズでも散々酷い目に遭ってきましたが、今回はそんな彼にとっても最大級の酷い目に遭っています。
古代役の小野大輔さんにも「せめて最後にサーシャを抱っこできないものか」と言われました。ただ、あそこで抱っこしてしまったら、彼はあそこから動けなくなってしまう。「彼は今ここから動けなくなってしまう自分を一番恐れている」という話をしました。
何故かというと、自分自身の現在と向き合えていないから。そのせいで上滑りの判断を重ねてしまい、結局サーシャを奪われてしまう。「すぐに追いかけよう」と提案するものの、すぐさま今の自分はヤマトの艦長ではないという現実を突きつけられてしまう。
人間はひとつボタンを掛け違えると、連鎖的に駄目な状態が続いてしまいます。そして、今の日本は毎年のように1000年に一度の災害が襲ってくるようなご時世で、誰もが全てを失うような経験に晒される可能性がある。
特にヤマトファンはアラフィフやアラ還の方も多くいらっしゃるので、そうなると健康面の不安も出てきますし、必然的に肉親を失う経験をされた方も多くなってくる。今の古代のように、人生の危機みたいなものに一番近いのが当時からのヤマトファンなのではないかと思うんです。
古代というキャラクターは、第1作からずっと若者の象徴や鏡像のような存在として、我々と一緒に成長していくタイプの主人公でした。今回は立派になって職も得てこのまま順風満帆にいくと思いきや、その矢先に思わぬ出来事で足を掬われてしまいます。
そこからもう一度、どう再起していくのか。今回で底は打ったので、後はどうやり直していくのかです。ぜひ第三章からの古代の姿をご覧になっていただければと思います。
ーーそんな中で、土門竜介が古代の席を奪うような形で力を見せていく場面も印象に残ります。今回彼を活躍させた意図はどんなところにありますか?
福井:今回の土門は、古代に「もしかしたらもう自分は居なくてもいいのかもしれない」と思わせる存在として描いています。今まで後輩として見ていた存在が、自分を追い落とすような存在になってくる。向こうにそんな気はなくても、会社組織で生きていると誰もが直面する事態ですよね。
特に印象に残っている土門の台詞として、「古代さん、あんた遅いよ!」があります。実は最初のシナリオ段階では、古代との通信が切れた後に言うはずでしたが、絵の並びを見た時に「これは古代に聞かせてしまおう」と。
土門からすると思わず出た言葉ですし、上官にそんな口の利き方をするのは駄目なのですが、それでもあえて聞かせるべきだと思ったんです。そして、聞かせた時の古代の反応も敢えて見せない。
古川:うわあ……あそこで古代を曇らせるためのひと工夫があったんですね。
ーーアルフォンとついに顔を合わせるシーンもありましたが、今のお話を受けて今回の古代についてどんな印象を持ちましたか?
古川:アルフォンとしては、「雪が何よりも大切にしている人に会えて嬉しかった」という気持ちが大きいです。
雪に抱く感情が恋愛であることを自覚していないアルフォンですが、それでも雪を好ましく思っているところがある。そんなアルフォンを見て福井さんが仰ったのは、「負けたくない気持ちがどこかしらにある」ということでした。だからあの邂逅シーンは複雑な心境でしたね。
とはいえ、傍から見ていても普通に可哀想だと思いますし、中々な仕打ちをされていると思います。福井さんも仰った通り、第三章以降には古代の復活劇が待っているので、アルフォンとして復活した彼と相対する時が絶対に出てくる。その瞬間が楽しみであり、同時に怖いと思っています。
ーー原作での古代とアルフォンは会うことがなかったので、リメイクシリーズの今後が益々楽しみになりました。
福井:そうなんですよ。それがもったいないと思っていたので、今回はすぐに会わせると決めていました。とはいえ、地球と宇宙を頻繁に行き来させられないので悩んでいたところ、「そうだ! アルフォンはデザリアムだからスペアボディを活かせる」と思い至りました。
ーーそれでは最後に、第二章の公開を楽しみにしているヤマトファンへのメッセージをお願いします。
古川:このリメイクシリーズから観てくださっているみなさんも、原作から応援してくださっているみなさんも、本当に色々な方がご覧になってくださっていると感じています。
アルフォンというキャラクターは、人間から遠いところにいるはずなのに人間臭いという非常に面白い人物です。これを事前に知っておいたほうが、より楽しめるのではないかと思います。
そのうえで雪や新キャラクターとの関係性の変化、デザリアムというヤマトの敵役となる組織のことを、この第二章でより深く知っていただけると思います。第三章も見たくなる引きになっていますので、今後とも追いかけていただければ幸いです。
福井:今回もまた例によって、頭にこれまでのあらすじがついています。色々な情報が整理されているので、主人公がヒロインと引き離された状態である、謎の敵が地球に来ているという2点さえ抑えてもらえれば、これから『ヤマト』を知る方でも安心して理解できる内容になっていると思います。ヤマトファンの方は、ぜひともまだ見たことがない人を劇場に誘っていただけると嬉しいです。
また、この記事をたまたまご覧になった方は、「『ヤマト』って昔のアニメ?」と思われるかもしれません。ですが、そこで描かれているのはどんなアニメよりも今の日本を写し取った物語です。ぜひご覧になっていただければと思います。
[インタビュー/胃の上心臓]
『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第二章 赤日の出撃』作品情報
あらすじ
地球を制圧したデザリアム・聖総統スカルダートは「われわれはあなたです」と人々に1000年に及ぶ歴史を説く。
彼らは破滅へと向かう地球の未来を変えるため“イスカンダルの欠片”を探していた。
驚くべきことに、彼らは“敵”ではなかったのである!!
一方、旧ヤマト艦隊クルーは、新生・宇宙戦艦ヤマトが待つイカロス天文台へと到達していた。しかし森雪を失った古代進は、失意のあまり指揮できる状態にはない。デザリアムのアルフォン少佐の手で、愛する雪が介抱されていたとは知る由もなく……。
果たしてデザリアムとは何者なのか!? その本当の目的とは!?
全ての謎の答えを求めて、いまヤマトが発進する!!
キャスト
(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会