秋アニメ『ネガポジアングラー』第10話 上村 泰(監督)×岩中睦樹(佐々木常宏 役)振り返りインタビュー|貴明はある種、裏の主人公? お互い影響を受け合って、喧嘩ができる関係にまで成長
毎週木曜22時よりAT-X・TOKYO MXほかにて好評放送中のオリジナルTVアニメーション『ネガポジアングラー』。自身も大の釣り好きである上村泰監督が、『BLUE GIANT』・『幼女戦記』を手掛けたNUTとタッグを組んでお届けする、「釣り」を題材にしたアニメとなっています。
不幸続きな青年・佐々木常宏が「釣り」を通じて、様々な出会いや経験を積んでいく様を描く本作。アニメイトタイムズでは、上村監督と佐々木常宏役の岩中睦樹さんに各話ごとの感想や収録エピソードなど、たっぷりとお話を伺ってきました! 毎話ごとの振り返りインタビューとして、各話放送後の金曜日に毎週更新中。ネタバレ満載となっていますので、ぜひ各話を見てからご覧ください!
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思いをぶつけ合うという、お芝居の楽しさが詰まっていた10話
──9話のおだやかな話から一転、10話はシリアスな回となりました。今回、貴明の過去の話が出てきたので、彼について深堀りしていきたいと思うのですが。
岩中:貴明の「何でこんなに優しいんだろう」って理由がわかる回でしたもんね。常宏的には初めてぶつかった回ですし、アフレコでも石川さんとしっかり掛け合いをしたので、思い入れは深いですね。
──石川さんと何か事前にすり合わせとか打ち合わせといったものは行ったのでしょうか?
岩中:自分たちの持ってきたもの+その場で出たものを一番大事にしていたので、特にすり合わせをしてから臨んだとかはないですね。
──貴明というキャラクターを作っていく上で、どういうキャラクターにしたいであったり、どういう立ち位置のキャラクターにしようみたいなものは最初からあったのでしょうか?
上村:常宏は現実と向き合えないものがあってずっと逃げていて。そして裏の主人公じゃないですが、貴明も明るさの裏に何かあるだろうなというフリがずっとあって……。
明るく振る舞っている人がずっと根明なのかっていうと、実際あんまりそうでもないと思うんですよね。そういう部分をしっかり描きたいというのが特に貴明に関してはあったので、ちゃんと物語として積んでいこうというのは最初から考えていました。
結局常宏だけじゃないんですよね、影響を受けているのって。一緒に住んでいるので相互に影響を受けていて、色んなものが積み重なっていく。今回2人は喧嘩してしまいましたが、喧嘩できる関係になっているってこと自体がすごくいいなと。喧嘩しないでそのまま別れるってパターンもあり得るわけじゃないですか。すごく傷つくことではありますが、お互いの気持ちがぶつけられたのはマイナスだけじゃないなと思っています。
とは言え、これはすごく俯瞰で見た時の話なので、アフレコで役者さんはその時、その瞬間に気持ちをぶつけ合っているので大変な話数だろうなとは最初から思っていました。
岩中:こうして映像を見て改めて思ったんですけれど、優しいキャラクターが怒った時って一番怖いですよね(笑)。貴明と喧嘩すると、貴明の怒り方が尋常じゃない。まぁ怒らせるようなことを常宏が言ったんですが。でもそこで負けじと常宏も言い返すところがあって、お互い引かずにぶつかりあったのがいいですね。
上村:でもそれを差し引いてもかなり貴明はいい奴ですよね。びっくりするぐらい。
岩中:お芝居の楽しさが一番詰まっている話だったのかなって思います。やっぱり感情的なお芝居って役者はみんなやっていて楽しいと思うので。ただ、やりすぎると違う風になっちゃうので、常宏の怒り方を模索しながらやっていました。そういえばちょっと話は変わりますが、オーディションの時にこの辺りのセリフありましたよね?
上村:ありましたありました。
岩中:怒り方がすごい難しかった記憶があります。常宏は頭からバーンっていう貴明みたいな怒り方じゃないので、ちょっと子供っぽい怒り方をするというか。
上村:たぶん常宏は今までこれほど怒ったことがないと思うんですよね。だからうまく怒れない。
岩中:確かにそれが一番しっくりきますね。うまく怒れないっていうのが。
──そんな2人が喧嘩する10話ではありますが、好きなシーンはありますか?
岩中:最後、喧嘩の後に、人の家で暴れるところですね(笑)。
上村:(笑)。もはや自分の家ですからね(笑)。
岩中:めちゃめちゃ暴れていて。居候なんだよね……? って思っちゃいました(笑)。でもそこでマグカップを見て思いとどまる所も好きです。
──監督はいかがですか?
上村:喧嘩のシーンというか、常宏が帰り始めるところからのくだりですかね。常宏と貴明が目を合わせないところとか。
このシリーズ通してですが、常宏はちょっとずつ人と目を合わせるようにしてるんです。最初は人と喋る時に目を合わせないんですが、話数が進むごとにちょっとずつ目を合わせるようになっていく。そしてこの喧嘩のシーンで目を合わせる合わせないっていうのは演出さんとたくさん話をしまして。最初は目を逸らしていたんですね。ただ、このカットだけは目を合わせるんですよ。
言葉で説明しづらいんですが、ここで目を合わせられる関係値なのかなって気はしますね。
岩中:すごくいいシーンですよね。お芝居していても楽しかったです。
[文・二城利月]
作品概要
あらすじ
鬱々とした日々を過ごす常宏は、ある日借金取りに追われ海に転落したところを、釣り好きの少女ハナとその釣り仲間の貴明たちに助けられる。
ハナに勧められるまま人生初の釣りを経験し、その釣り仲間とも親交を深める常宏。
ハナや貴明の働くコンビニでバイトも始め、難解な釣り用語や生アミの匂いに苦戦しながらも、徐々に釣りにハマっていく。
手元に伝わるアタリは、生の実感――。
転落し続け世界を見上げるだけの人生は、そう簡単に変わらない。
そんな常宏が釣りを通して見つけたものとは……?
キャスト
(C)NEGAPOSI-ANGLER PROJECT