音楽
吉武千颯×馬瀬みさき『プリキュア』音楽を通じて築いてきたキズナ

いろいろな〈キミ〉を思い出しながら歌っていました――『“えがおのおくりもの”』発売記念 吉武千颯さん×馬瀬みさきさんスペシャル対談公開 新曲レコーディング後、思いの丈を語り合う

 

お互いに感じている魅力を紐解く

──今日のレコーディングでは、馬瀬さんからディレクションする場面もあったのでしょうか?

馬瀬:特に細かく指示することはありませんでした。普段の『プリキュア』シリーズのレコーディングでは、井上さんが表現や技術の面でもしっかりディレクションしてくださるんです。井上さんには全幅の信頼を寄せているので、安心してお任せしています。

──馬瀬さんはレコーディング中、いつも優しく見守られているイメージです。

馬瀬:基本的には歌詞をいただいたら「ここのメロディーにこうハメる」というのをあらかじめ決めて、仮歌を私が録って、それを歌手の方に聴いてきてもらい録るというパターンだったんです。

 

 
今回は吉武さんが作詞をされているので、現場で「どうメロディーにはめていくか」を一緒に考えながら進めていけたらとは思っていたのですが、基本的には吉武さんの感じたままを大切にしていました。むしろ、吉武さんが感じたものをそのままメロディーに当てはめたら、良いものになるだろうと。だからディレクションというよりかは、「ここはこう歌ったら、もっと歌詞がよく聴こえるかもしれない」くらいでしたね。

──吉武さんの声や感性を大切にされたのですね。さきほど吉武さんの声を聴いて、グッとくるものがあったとおっしゃっていました。吉武さんのお声の魅力について、馬瀬さんはどのように分析されていますか。

馬瀬:ご一緒させていただくたびに、いろいろな面でどんどんレベルアップされているのを感じます。それを特に感じたのが、『ひろがるスカイ!プリキュア』の「KIZUNA◇ダイアモンド」のレコーディングだったんです。

「KIZUNA◇ダイアモンド」は歌い出し時点ではバラードなのですが、後半はアップテンポで明るい曲に変化していきます。その歌いだしのレコーディングの時、コントロールルームにいた全員が思わず「おっ」と引き込まれるような感覚がありました。

だからこそ、がっつりバラード曲である新曲をすごく楽しみにしていたんです。吉武さんはやはり、お声の表現力の豊かさがとても魅力的なんですよね。それを存分に聴いていただける楽曲になったのかなと思っています。

 

 

──逆に吉武さんは、馬瀬さんの作られる楽曲のどのような部分に魅力を感じられていますか? 曲やテーマによっても違いがあるとは思うのですが。

吉武:そうですね。でも共通していることは……明るい曲でもバラードでも、そのシーンが頭に浮かびやすいんです。例えば「ここはプリキュアたちが手を取り合っているんだろうな」とか「仲間と一緒に戦っているんだろうな」とかって、曲を聴きながらいろんな景色が思い浮かびます。

練習するときに、ガイドメロや仮歌、インストなどをいただくのですが、歌詞を文章として読みながら、オケを聴くだけでもパッと思い浮かぶし、キラキラも感じられて、そんな輝きを楽曲からいつも受け取っています。

──ところで先ほど、馬瀬さんから「“えがおのおくりもの”」について、「バラードは井上さんからの提案だった」といった話がありました。その理由についてもうかがってもいいですか。

井上:いろいろな意味があって、今回の18曲目をそういう曲調にしました。これまでの『プリキュア』シリーズの楽曲にはあまりなかった曲調なんです。新しいチャレンジでもありましたし、吉武さんにとって新しい一歩となる曲になったと思います。

実際、歌詞も〈そのさきへさぁ進もう〉と、その次のステップを感じられるものになっています。次のステップが何になるかはわかりませんが、このさきの吉武さんを意識しながらディレクションもしていました。吉武さんが次のステージに進んでいけるようにという想いを僕からも込めつつ、ディレクションもしたつもりです。

吉武:ありがとうございます。私はこうやって井上さんと一緒に音楽を作る時間が本当に大好きなんです。『スタプリ』の頃から考えると、一緒に作ってもらった楽曲は何曲になるんだろう……というくらい、たくさんの時間を過ごさせてもらってきて。毎回、なにかひとつ、ステップアップできるものをくれるんですよね。レコーディングも「あ、なるほど!」と、気づかされるようなディレクションばかりで、常に新しい発見があります。

 

 
それだけでなく、『プリキュア』シリーズの楽曲は、一度レコーディングして終わりではなく、その後も長い間歌い続けるので、その中でも新たな気づきが生まれていくんですよね。6年間もそうした経験をさせてもらえていることに、本当に感謝していますし、井上さんが良い意味で自由に自分の感じたままに歌わせてくださるのでありがたいです。

 

3人の原点である「星座のチカラ」を振り返って

──ところで、「ユメ♡pallet」のキラキラとした音の中のひとつにオルゴールっぽいアレンジもあるように感じました。それはシークレットトラックに合わせて意図的に……?

井上:ミュージックボックス(オルゴール)はトラックに入っていますね。

馬瀬:ああ、そうですね。「ユメ♡pallet」にはキラキラとした音を入れてはいます。歌詞に合わせて2番のアレンジを少し変えたんです。

吉武:2Aの中にある〈キラキラ〉という言葉のところの音がすごく好きで。自分がステージに立っている間に、みんなから感じる輝きや温かさを表現したいなと思って、この歌詞を書いたんですけど、アレンジされたものを聴いたらよりキラキラとしていて。「わ〜! 以心伝心だ!」ってすごく嬉しかった……!

馬瀬:伝わってた(笑)。

吉武:キラキラ感増し増しで歌えていたら良いなって思いながら、今日のレコーディングをしていました。

──そもそもシークレットトラックはどのような経緯で作ることになったんですか?

吉武:確かに! 知りたい!

 

 
井上:僕の中でのシークレットトラックは、大切なタイミングで使うカードのひとつなんです。とはいえ、入れるかどうかは悩むことがあって、全体のバランスなどを見て、そのカードを切らないこともあります。今回はファンの皆さんに向けてのサプライズとして入れたいという思いがあって、それを馬瀬さんに相談しました。

馬瀬:選曲は私がさせてもらったんです。やっぱり「星座のチカラ」ですかね、と。個人的な想いをかねてなんですけども。

吉武:「星座のチカラ」はファンの方が「好き!」と言ってくれる機会もとても多いんです。ライブでも絶対盛り上がる曲で。私にとってもまさにシークレットトラックでした(笑)。本当に特別なおくりものをいただきました。

井上:「星座のチカラ」について、吉武さん、馬瀬さんが最初に一緒に作った曲といった説明をさせていただきましたが、僕たち3人がはじめて一緒に作った楽曲でもあるんですよね。初ということもあって、当時、馬瀬さんとは相当数のやりとりを重ねていたんです。そこで僕たちの阿吽の呼吸ができあがったと思います。

以来、とても特異な関係性を築けていると僕は思っています。いわゆる「オーダー」のことを僕は「オーダー」とは呼んでおらず、「理想」だと思っているんです。その理想通り、いや、それ以上の曲を作ってくれる方という印象です。

馬瀬:井上さんの期待に応えられるようにと、毎回チャレンジしています。さっき吉武さんがおっしゃったように、私自身も自分がレベルアップできるところを探りながら楽曲を制作しています。それができる現場にいられるのは本当にありがたいことですし、なかなかできることじゃないと思うんです。もっともっと頑張らなきゃなって思いますね。

 

 

──せっかくこの3人が揃っているので、当時のお話についてもう少しおうかがいさせてください。「星座のチカラ」を作る際には、井上さんと馬瀬さんの間でどのようなやりとりがあったのでしょうか? 

馬瀬:「星座のチカラ」が、私にとって作家としてのキャリアのスタートだったんです。大学では劇伴やサウンドトラックの勉強をしていたので、歌モノは初。しかも当時は21〜22歳だったので、なにもかもがはじめてで、正直、必死に食らいつくような気持ちで取り組んでいました。井上さんから、その「理想」が届くたびにすぐに修正を出していました。

吉武:へえ!

馬瀬:その頃はまだ大阪にいたんです。大学に通いながら、夜行バスで関西から東京に来て、レコーディングして、またバスで関西に帰るというような生活でした(笑)。

吉武:そうだったんだ!

馬瀬:そう(笑)。すごく大きな仕事をさせてもらっているんだという実感と、「なぜ自分がここにいるんだ」という緊張感とで、覚えていないことも多いんです(苦笑)。今思えば、あの経験があったからこそ、今も頑張れているんだと思います。吉武さんは、すごく大人に見えて。現場をこなす姿勢や周囲への気遣い、礼儀正しさが際立っていて、まさにプロフェッショナルだと思っていました。「すごい……」と。

吉武:いやいやいや!

馬瀬:まさかこんなにもね、仲良くさせてもらえるようになるとは思わなかったです。井上さんはその頃から見てくださっているので、まさに特異な関係性だと思っております。今回の新曲に関しても言えることなのですが、井上さんは作家の意見を大切にしてくださるんですよね。おかげで、私も自由に作曲ができて、とても感謝しています。

井上:そんなに褒められると照れますね(笑)。新曲に関して言えば、ふたりの感性が各々響き合って生まれた楽曲という印象があります。僕の役割としては、各々に喋りかけて曲作りの土台となるようなものを提供するくらいで、あとは彼女たちに任せていました。

吉武&馬瀬:ありがたいです。

馬瀬:このような曲作りができるのも、『プリキュア』シリーズならではだと感じています。作家から出てくるものをまず大切にしてくださる。私自身も、シリーズを通じてたくさんの楽曲に携わらせていただき、日々学びながら成長しています。レベルアップし続けていきたいなという気持ちにもなれるので、とてもありがたいですね。

──特異な関係性というか、本当に良いトライアングルが「星座のチカラ」をきっかけに生まれたんですね。

吉武:本当に。昨日の夜に数えたのですが、馬瀬さんとご一緒した曲が今回の新曲含めて、全部で10曲になるんです。

馬瀬:えっ! ……あ、確かに!

吉武:「Try Try Try 」、「Daybreak song」とアレンジ曲を含めると全部で12曲。馬瀬さんとの楽曲だけでもアルバムが1枚出来てしまうくらいの曲数なんですよね。「星座のチカラ」から始まり、さまざまな楽曲を作っていただいて、私のいろいろな姿を見てきてくださったおふたりと、こうしてアルバムを通じて一緒に楽曲を作ることができたのは、私のなかですごく大きな出来事でした。新曲を作っているなかでも、たくさん発見があって。改めて、馬瀬さん、井上さんをはじめ、携わってくださった方たちに感謝の気持ちでいっぱいです。

 

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