音楽
羊宮妃那&立石凛が感じたMyGO!!!!! の変化|2nd Album『跡暖空』インタビュー

〈受け取ってばかりだった〉ことは、ちゃんと受け取ったあとじゃないと絶対に気づけないもの。その一行だけでも成長が伝わってくる──2nd Album『跡暖空』高松燈役・羊宮妃那さん、千早 愛音役・立石凛さんがMyGO!!!!!の変化を語り合う【インタビュー】

叫びの強弱で見せる、新たな一面

──さきほど「端程山」の話題が上がりましたが、はライブの時に、〈遠まわりしてきた そのぶんだけ 見つけた景色を たずさえながら〉という歌詞に触れて、お話をされていましたよね。

羊宮:遠回りすることで物理的に知らない景色を見られるのも素敵だなと感じますが……「自分には才能がない」「これは向いていない」と思うことに対して、時間をかけて努力することで、最初からできてしまうこと以上の喜びや感動を味わえることがあります。それが報われた瞬間には涙が溢れることもありますよね。

 

 
「才能がない」という言葉はマイナスからのスタートのように見えてしまいますが……自分にとっては才能がないからこそ、努力をしたあとには自分にしか感じられない嬉しさがあるものだと思っています。例えば、自転車に最初から乗れる人もいれば、乗れない人もいますよね……、感覚で最初からすぐにできてしまうことは才能の一種だと思います。でも、それだけで競技に勝てるわけではないと思うんです。勝つとなれば、やはり努力が必要だと思うんです。

なので才能は、「どのジャンルが向いているか」、そして「どの立ち位置からのスタートになるか」を示す1つの指標に過ぎないと思っていて。スタート位置がみんなより後ろだと、そのぶんたくさん辛いことも多いと思うんですけど、でもだからこそ、その道にしかない経験、そしてそんな経験をした自分だからこそ、ゴールに辿り着いたときに見える景色、自分にしか手に入れることのできない、大切な宝物だと思っています。

そして、最初からできなかったことができるようになった感動ってすごく濃いんだろうなって思います。それで言うとMyGO!!!!!は、みんなバラバラで……。

映画をご覧いただいた方はわかると思いますが、みんな泣いている中でも楽奈ちゃんだけはニヤッとしていたりして。でも、ステージではつながりあえている。そこまでに至るものがあって、遠回りをしてきたからこそ、爆発的なパフォーマンスができるというのがMyGO!!!!!の魅力だと思います。この曲も「MyGO!!!!!だからこそ伝わる」ものがあると感じています。

──叫びを抑えるというお話がありましたが、逆に「霧周途」(ミスト/M-4)では爆発させている、というのもひとつポイントなのかなと思います。最近の曲では珍しいテイストと言いますか。

羊宮:そうだと思います。「霧周途」は特に世界観を大事にした曲で、私は“戦闘モード燈”と呼んでいます(笑)。普通であれば、叫ぶだけではない燈”ちゃんなんですけども、力強く歌い切るシーンがありますね。

 

 

──曲順は前後してしまいますが、 『ENJOY!!ヴァンガろうTV』 テーマソング「明弦音」(アゲイン/M-2)についてはどうでしょうか?

羊宮:1st Albumのときには想像できなかったような新しい一面が詰まった楽曲だと感じました。でも〈「まあいいか」つぶやく僕は(僕は) 諦めたわけじゃなくて(なくて)〉といった言葉は、すごくがMyGO!!!!!らしいなって。こんなにも明るい音から〈「まあいいか」つぶやく僕は〉に続いていくとは、なかなか想像できないと思うんです。明るいサウンドだからこそ、沈み込みすぎない、そのバランスが印象的な曲だなと。

それと、この曲は愛音ちゃんの気持ちや人間性が投影されている楽曲なんです。だから、愛音ちゃんのことを考えながら歌わせてもらっていました。愛音ちゃんはすごく明るいんですけども真面目で繊細なところもあって。“あっけらかん”ではない。物事に対して、ちゃんと寂しくなったり、ちゃんと傷ついたり、周りの目を気にするようなところもある。だからこそ、歌詞に込められた意味をしっかりと出せるようにと、歌わせていただきました。

──立石さんはどのような思いでコーラスを歌われたのでしょうか。

立石:愛音ちゃんの心の中をテーマにした歌詞が、本当にしっかりと納得できる内容になっているなと思いました。私たちはもちろん、ファンの皆さんも愛音ちゃんのことをよく知ってくれているので、この歌詞を読むと「愛音ちゃんのこういう部分が愛されるんだな」と感じられるんじゃないかなと思います。

メロディーは明るい雰囲気で、歌詞はマイナスな感情とまではいかないけど、極端にプラスというわけでもなく、でもMyGO!!!!!の楽曲としては少し前向きな印象があります。そういうところも愛音ちゃんっぽいなと思いましたし、愛音ちゃんはいい性格を表しているなと(笑)。

 

 
私自身も愛音ちゃんと少し似ているというか……愛音ちゃんの表向きの性格というより、心の中で考えていることは、わかるところがあるんですよね。そうした心のうちを言語化してくださっているイメージがありました。

──特に共感できた部分というと?

立石:それこそ、さきほど羊ちゃんが触れていた〈「まあいいか」つぶやく僕は(僕は)
諦めたわけじゃなくて(なくて)〉というフレーズですね。私自身も「まあいっか」とよく言ってしまうんですが、それは諦めではなくて、「これ以上考えても仕方がない」と思って、あえて手放しているだけで、諦めているわけではない。その絶妙なニュアンスが歌詞から伝わってきて、すごく共感できました。

普段、「愛音ちゃんと似ているところありますか?」と聞かれることがあるんです。私は愛音ちゃんみたいにみんなを引っ張っていくタイプではないし、あんなに明るくもないけれど、根が真面目なところは似ていると思います、と答えているのですが、その部分が言語化されているような気がしています。

──歌う時もより気持ちを込めやすいものなのでしょうか。

立石:そうですね。ただ、曲は曲として楽しみつつというか。きっと愛音ちゃんは自分をテーマにしてくれているってだけで嬉しいので(笑)。

──確かに!(笑)

立石:「なんで私の曲がないの?」くらいに思っていたと思うので、ものすごく喜んでいるんと思うんですよ。だから私自身も、自分なりに表現する楽しさを感じながら歌いました。

 

 

「夜隠染」「過惰幻」を聴き比べて欲しい

──新曲「夜隠染」(よかぜ/M-8)についてもぜひ伺いたいです。すごくエモーショナルな曲ですよね。

立石:メロディや曲調がすごく好きなんですよね。特にエンディング感があるというか。

羊宮:うんうん。どこか深夜の空気感が漂っていて。実際、夜中の3時というディレクションをいただいていたんですよね。3時あたりの夜風にあたりながら、とぼとぼというか、てくてく散歩しているようなイメージというか。夜の3時って、完全に頭が回っているわけでもない、不思議な時間帯ですよね。その足取りや空気感を歌に乗せてみた感じです。だからこそ、サビは上がりきらずに歌いました。

 

 

──そこはあえて。

羊宮:はい。例えば〈許されるのかな〉の部分は叫ばず、想いは込め、その熱量を抑えた状態で表現するというか……。ラスサビも本来なら一番盛り上がる部分なんですが、この曲ではそこまで上がらず、Ahで声も裏返さずに歌いました。逆に次の「過惰幻」(あだゆめ/M-9)のほうが感情的になる瞬間があったりします。

──ああ、なるほど。

羊宮:「過惰幻」ってしっとりしているようで、実は感情的で、苦しい気持ちがサビに乗っていて。私の中では涙が出るか出ないか、そのぎりぎりの感情で聴くのが一番合う曲だと思います。

感情が整理できない時や、気持ちがもやもやしている時には「夜隠染」の方が合っている気がします。多分、「過惰幻」は心が苦しすぎて、しんどい、つらいって時は、涙を持っていってくれる。そんな力を持った曲だと思います。状況や心境によって聴き分けていただけると、それぞれの魅力がより伝わるのではないかなと感じます。

 

 

──最近のライブでは「焚音打」(たねび/M-12)がラストを飾ることが多いですが、このAlbumのラストも「焚音打」なんですよね。おふたりにとって、「焚音打」はどんな存在の曲なのでしょうか。

立石:いろいろな曲のことを「好き」と言ってますけど、結局「焚音打」が一番好きかもと思う瞬間がありますね。

羊宮:そうなんだ!

立石:ライブでやる「焚音打」はひと味違いますし……全員が一つになれる、そんな特別な曲だと感じています。良い意味で、泣きそうになる曲なので、どんな時も熱い気持ちで演奏しています。ロッキンに出演した日もすごく熱い気持ちになって、帰り道にずっと「焚音打」を聴いていました。

自分の中で、MyGO!!!!! としてポジティブに動きたいときに「焚音打」を聴くと、前向きな気持ちになれます。いろいろな曲を聴いて、いろいろな曲をやってきたけど、結局帰る場所はここというような位置づけになっている気がしているんです。意義のある曲なので、ライブで最後にやるのが、すごく似合うなと。「焚音打」で締めることが、「また会おうね」というメッセージにつながっているんじゃないかなと思っています。

 

 
羊宮:MyGO!!!!! メンバーの名前が刻まれた曲なだけあって、ザ・MyGO!!!!! というような曲なのかなと思っています。MyGO!!!!! って拳をみんなで掲げたり、合わせたりするんですけど、それのテーマになっているのも「焚音打」なので……そして、握っているものの中には、みんなそれぞれ違ったものがあっていい、迷子でもいいっていう。いろいろな意味が込められた曲であり、そしてMyGO!!!!! としてのテーマでもあるのかなと思っています。

──曲の話からは脱線してしまいますが、ファンの皆さんの存在もライブをするたびにどんどん大きくなっていってる気がします。

立石:お客さんがどんどんMyGO!!!!!のことを好きになってくれているのが伝わってくるんですよね。その愛情の表現方法がとても温かいんです。それが私たちの支えになっているんだなと感じます。

羊宮:皆さん優しいんですよね。先日、上海に行かせていただいた時も感じたんですけど、国を超えても、人と人とが音楽を通じて作品で繋がるって本当に素敵なことだなと実感しました。生まれた場所や文化の違いって、そういう意味では関係ないんですよね。もちろん、ルール上いろいろな課題はあるかもしれませんが、そういった壁を壊す力が、ステージや音楽にはあるのかなと感じました。

──好きという気持ちは世界共通ですもんね。それこそ、今回のAlbumも世界中の皆さんが熱望されていたと思います。

羊宮:1st Albumもたくさん魅力はありましたが、2nd Albumは最初の頃とは違ったMyGO!!!!!の新しい魅力をたっぷり詰め込んだ1枚になっているんじゃないかなと思います。

 

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