絵コンテをみた時の感動を映像として視聴者の方々に絶対に伝えたい――『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』キャラクターデザイン・新山恵美子 インタビュー
「もう、最初から最後まで見どころしかありません!」
──長年テーマ曲として歌い継がれている楽曲「勇気100%」についてどのように感じられていますか?
新山:こんなに長くテーマ曲が変わらないアニメは珍しいですよね。
そのおかげで今や『忍たま』のシンボルになっている曲だと思います。「勇気100%」の染み渡り方というか、歌詞にすごく力強いメッセージが込められていて、大人になってから聴くとまた違った印象を受けました。
「勇気100%」のカップリング曲「微笑みをあずけて」は「勇気100%」と同じメロディなのですが、第2シリーズから監督をされていた河内日出夫さんが「微笑みをあずけて」をすごく気に入っていて、「選ぶことのできる『勇気100%』だな」と思ったのが記憶に残っています。
私自身も昔から馬飼野康二先生の曲がすごく好きで、かなり聴いていて。それでもシリーズが変わるごとに歌い手が変わり、少しずつアレンジが加えられていたり、キーが変わっていたり。そういった違いがあるので新たな「勇気100%」がリリースされると知るたびにいつも楽しみで、ずっと変わらない曲なのに変わっている部分があって面白いと思ってます。
──話題は作品全体について。これまでの歴史ある『忍たま乱太郎』にまつわる思い出深いエピソードがありましたら教えてください。
新山:私の亜細亜堂での仕事の9割は『忍たま』と言っても過言ではないのですが、特に印象的だったのは河内日出夫監督とのやり取りです。
入社した当初、私は藤森さんのアニメーションに憧れていましたが、どうやって作るのか全く分からず。大学時代の恩師もアニメ監督をされていた方なのですが「どんどん真似していけばいずれ自分のものになるから」と言われていたので、藤森さんの真似を試みましたが、全然読み解けなくて。
その話を河内監督にしたところ、「藤森くんは藤森くんのアニメーションだから、新山さんは新山さんのアニメーションしか作れないものだよ」というお話をしてもらったんです。そこから、自分のアニメーションの「こういうのがいい」「これが綺麗だ」という自分なりの感覚をもう少し信用して、自分は自分の強みを活かしていこうと前向きになれました。
かつ、『忍たま』はずっと作らないといけないものでテイストをあまり変えずにとなると、単調になってしまうなと。なので、「忍たま」の幅の中で自分に毎回課題を作って「今回はこうしよう」と考え続けることで、メリハリのある作品づくりをしようと思うようになりましたね。
──改めて、尼子騒兵衛さんが描く作品の魅力はどのようなところだと感じられていますか?
新山:きり丸のようなシリアスな設定が存在しながらひたすらギャグで突っ走る本筋がある。この裏表が共存する世界に、個性豊かなキャラクターたちが生き生きと楽しく愉快に生活している。こういったメリハリのある世界観がとても魅力的だと感じます。
そして、室町時代の忍者や水軍についての奥深い考察ができる部分が魅力的だなと。私自身、子供の頃に原作を読んで「この絵の壁に掛けてある布は何だろう?」と興味を持ったことを覚えています。こうした疑問を読者に感じさせて興味を持たせる楽しませ方も見事です。
温度差で風邪を引いてしまいそうなくらいギャグなのに真面目に考証がしっかりとされている。緻密な絵の中に楽しむ要素が全部詰まっているなと思いますね。
──それでは、本作の見どころを教えてください。
新山:もう、最初から最後まで見どころしかありません!
アクションシーンはもちろん、キャラクターの感情の機微や忍者社会の描写など、何度も観たくなる作品に仕上がっています。作り手側としても、一度の鑑賞では絶対に足りなくなるだろうという自信があります。
今回の映画の芝居や演出には1つひとつ意味が込められていて、そういう部分は監督がすごく緻密に設計しているので、細かいこだわりまで目を凝らして見ていただきたいです。
TVシリーズでもそうですが、実は「これ、こうなってたんだ!」と発見があるようなシーンが随所にあって、気づいていただけた際には「よく気づいてくださった!!」と本当に嬉しくなるんです。ぜひぜひ、何度も何度も観ていただければと思います(笑)。
──お話しいただきありがとうございました! 最後にファンの方々へメッセージをお願いします。
新山:スタッフ全員が「いいものを世に出したい」「絶対にファンの方々、そうでない方々にも観てもらいたい」という強い想いを持って取り組みました。
制作期間のギリギリまで粘って粘って、全力で作り上げた作品です。この作品に携わった大勢の人たちの熱意がスクリーンから伝わるような仕上がりになっていたらいいなと。
公開期間中もたくさんの方々にご覧いただき、熱狂的に応援していただけたら本当に嬉しいです!
[文・笹本千尋]
作品概要
あらすじ
タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に向かった後、消息を絶ってしまった土井先生―
山田先生と六年生による土井先生の捜索が始まる中、担任不在の一年は組では、タソガレドキ忍軍の忍び組頭・雑渡昆奈門と、尊奈門が教壇に立つことに!
そんな中、きり丸は偶然、土井先生が置かれた状況を知ってしまうのだった。
一方、土井先生捜索中の六年生の前に突如現れたのは、ドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼。
その顔は、土井先生と瓜二つで―
忍たま達に立ちはだかる最強の敵を前に、今、強き「絆」が試される。
果たして乱太郎、きり丸、しんべヱたちは、土井先生を取り戻すことができるのか―??
キャスト
(C)尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会