音楽
TVアニメ『綺麗にしてもらえますか。』EDテーマで清浦夏実が届ける“日常に寄り添う歌”

清浦夏実が盟友・北川勝利とのタッグで描く、人と人の縁が結ぶ日常の音楽――TVアニメ『綺麗にしてもらえますか。』EDテーマ「若葉のころ」インタビュー

2007年のデビュー以来、その透明感あふれる歌声で多くのアニメファンを魅了してきた清浦夏実。彼女が、自身の音楽活動の原点とも言えるレーベル・フライングドッグから、実に15年ぶりとなるニューシングル「若葉のころ」をリリースした。

表題曲は、海辺の温泉街・熱海でクリーニング店を営む女の子・金目綿花奈(CV:鈴代紗弓)と彼女を巡る人々が織りなす、ひきこもごもストーリーを描くTVアニメ『綺麗にしてもらえますか。』のエンディングテーマ。彼女のデビュー当初から長い信頼関係を築いてきた北川勝利(ROUND TABLE)とタッグを組み、作品の世界観に寄り添いながらも自身の魅力と瑞々しい感性を存分に発揮した、まさに「清浦夏実の真骨頂」と呼べる一枚が完成した。かつての古巣に戻り、新たな物語を書き始めた彼女に、今作に込めた想いと今の自分についてじっくりと語ってもらった。

 

子育てを経て変化した“働き方”と音楽観

──清浦さんがフライングドッグから新作をリリースするのは15年ぶりになります。最初にそのニュースを知った時は、正直、驚きました。

清浦夏実さん(以下、清浦):私もおったまげました(笑)。そんなことがあるんだと思って。フライングドッグ側からお声がけいただいたのですが、最初、北川(勝利)さんからその連絡があった時は、「何かのサントラの歌唱参加かしら?」と思っていたんですよね。まさか自分のシングルのお話だとは思わず。しかもこのご時世にCDまでリリースするというお話だったので、人生何が起こるかわからないな、というのが素直な実感でした。

── 一度はレーベルを離れていたわけですものね。でも、古巣に戻ることに対して特別な感情もあったのでは?

清浦:そうですね。かつて一度離れたのは、当時セールス的にうまくいかなかったのが理由としてあって。それで「これからどうしようかな」と思って始めたのが、バンド(TWEEDEES)だったんですよね。ただ、今回のことの経緯としては、お声がけくださったディレクターさんが、バンド時代にライブに足を運んでくださっていたんです。フライングドッグの中でもまだ2年目の若いディレクターさんなのですが、この10年バンドをやってきたことも無駄ではなかったし、新しい世代の方が過去の自分のキャリアも含めて理解してくれているなら、戻る理由があるなと思ってお受けしました。

──今回のシングルは、今お名前が出た北川さんが楽曲提供しています。北川さんプロデュースという形でしょうか。

清浦:プロデュースですし、私も意見を出して作詞もしているので、一緒に作ったという感覚が私の中では近いですね。北川さんがいれば私が参加してくれるかも、というフライングドッグ側の思惑もあったかもしれないですけど(笑)。北川さんとはこの20年近く、途切れずに関係性が続いていたので、北川さんありきの話ではありました。

──では、『綺麗にしてもらえますか。』のエンディング主題歌となるシングル表題曲「若葉のころ」について詳しく聞いていきたいのですが、制作はどのように進めていきましたか?

清浦:最初に北川さんが「どんどんデモを作っていこう」と言って、3曲くらいワンコーラスのデモを作りました。北川さんから曲が届いたら私がそれに歌詞を書いて返して、また次の曲ができたら返して。大体1週間くらいで3曲ほど作りました。それを製作委員会やフライングドッグチームに聴いていただいて、その中から1曲選んでいただいた形です。他の2曲もいい曲だったんですけど、今回選ばれた「若葉のころ」が一番エンディングとしての腰の据わりが良さそうだったと思います。

──選ばれなかった他の2曲はどのような雰囲気だったのかも気になります。

清浦:ボッサ的なものもありましたし、もうちょっとお気楽というか軽やかな曲もありました。それはそれですごくかわいくて良かったのですが、その中でも堂々としていて一番王道な感じだったのが「若葉のころ」でした。

──デモの歌詞を書く段階では原作やシナリオに触れていたと思いますが、作品のどのような部分に寄り添って歌詞を書きましたか?

清浦:主人公の金目(綿花奈)さんはクリーニング屋さんを営んでいる女性で、彼女は過去の記憶がないけれど、それでもお仕事が大好きで、1年を通して周りの人たちが喜んでもらえるような仕事をしたいと願っている。そのひたむきな姿勢にすごく共感できたし、素敵だと思ったんですよね。原作を全巻読んで作詞をしたのですが、はっとりみつる先生の描く絵の、光のキラキラした繊細な描き込みがすごく素敵で。もちろんストーリーや人物も魅力的ですが、熱海という実在する街を本当に美しく描いているので、海の輝きや木漏れ日の描写、そういった情景も落とし込むことを意識しました。その中で1年を通して日々の営みを丁寧に過ごしている金目さんの姿は取り入れたいと思っていましたね。

──本作の舞台となるクリーニング店はいろんな人の生活に馴染んでいる場所ですし、その意味で日常の何気ない風景や思いがこの曲には描写されているように感じました。

清浦:バンド時代は「夢を描く」ということをずっとやってきたんですけど、この曲はもうちょっとリアリティというか、聴いてくださる方が自分事に落とし込みやすい、日常に溶け込むようなものにしたいなと思っていましたね。今の自分もそういうものに惹かれているので。

──清浦さん自身、ステージの華やかな部分とは別に、日常の生活や積み重ねていく日々の大切さを身に染みて感じているタイミングなのでしょうか?

清浦:おっしゃる通りで、まさに今「働き方改革」中なんです(笑)。20代の頃は、バンドでツアーを回ったり、夢を描くような歌詞を書いたり、それはそれで楽しかったのですが、やっぱり子供を産んだことが大きかったです。仕事に対しても子育てに対しても1日1日を大切にしたいけど、ある時キャパオーバーしてしまって、どちらにとっても良くない状況が生まれてしまって。そこで「自分の考え方は変わっていないけれど、生活は変えなきゃいけないんだな」と思いました。音楽活動と子育て、日々の中で替えの効かない二つのことを同時進行していた葛藤があったので、それを踏まえた気持ちが最近作る楽曲にも反映されている気がします。

──なるほど。「若葉のころ」の歌詞の話に戻りますが、クリーニング店を想起させるワードも盛り込まれていますよね。

清浦:お洋服を扱う物語なので、ボタンやポケットといったモチーフは散りばめられたらと思っていました。うまく自然に落とし込めたと思っています。

──特に“取れかけたボタンひとつ そっと救ってくれた人”というフレーズは、金目さんが実際に取れかけたボタンを付け直すシーンが思い出されますし、人生においてもボタンの掛け違いを感じる瞬間があるわけで。色んな意味に解釈できるのが秀逸だなと思いました。

清浦:やったー。嬉しいです。もちろん原作をしっかり読み込んだうえで、その世界観を意識して書いたのですが、受け手に自由に解釈してもらえるよう、余白は残しておきたいなと思っていたので。『綺麗にしてもらえますか。』の世界ってすごく温かいんですよね。人生を生きていると冷たいこともあるじゃないですか(笑)。でも、金目さんは人と人との縁を大切にしていて、ひとつひとつの出来事を丁寧に扱っていて。金目さんのそういう姿には憧れます。

 

作品に寄り添いながらも“清浦夏実らしさ”を100%で表現

──そのお話の流れで『綺麗にしてもらえますか。』で他に魅力を感じる部分、特にお気に入りのエピソードがあれば聞いてみたいです。

清浦:ほんのりロマンスがあるのがいいですよね(笑)。(石持)毬祥くんと金目さんの、付かず離れずでお互いを気にし合っているような、あの空気感は最高だなって。なおかつ、それがさりげなく盛り込まれている感じがいいなと思います。それと金目さんの「仕事が好き」というところには共感します。私も音楽の仕事が好きで、ついのめり込んでしまうんです。金目さんが繁忙期に徹夜してしまうような描写も「わかるなあ」と思いながら読んでいます。

──「若葉のころ」は、そういった作品の魅力に寄り添っている一方で、清浦さんらしさが強く出ていると感じました。個人的には清浦さんが過去にフライングドッグから発表していた楽曲、例えば「風さがし」(TVアニメ『スケッチブック ~full color's~』OPテーマ)のような穏やかさが息づいていると思うのですが、ご自身ではどう感じていますか。

清浦:いわゆるアニメソングらしくない部分が私らしさの要素かもしれません。フライングドッグ時代は特にそうだったのですが、私が歌ってきたものはBPMが速いわけでもなく、何かと戦っているわけでもなく、穏やかで落ち着いた楽曲が多いんですよね。それを「私らしい」と言ってもらえるのは嬉しいですし、自分としても無理のないことなんです。私としては速いBPMのアグレッシブな曲も歌えるんですけど(笑)。ただ、他にそういう歌い手は今あまりいないんじゃないかなとも思いますし、それができる土壌があるのがフライングドッグの良さだと思っていて。今回は作品に寄せすぎて歌いにくくなることもなく、アニメを知らない方が聴いても成立する、自分のバランスとアニメ主題歌としてのバランスがどちらも100%で出せた、幸せなコラボレーションになったと思います。

──そういった穏やかな曲調は、デビュー当時からご自身が志向していた音楽性なのでしょうか。あるいは活動の中で形作られたもの?

清浦:初期のフライングドッグ時代は、当時のディレクターさんの意向もかなり強かったと思います。彼が私に思い描いていたビジョンもあったと思いますし、私自身はまだ10代の女の子でしたから。とはいえ、その頃から映画音楽やサントラは大好きでしたし、管弦楽部でフルートを吹いていたので、物語の中にある音楽というものには無理なく入れました。ただ、タイアップの性質上、作品に寄せた楽曲になるので、自分の音楽性がどこにあるかは毎回模索していましたし、アニメが人気になるとそれが代表作になり、良くも悪くもイメージが固定されて振り回される危険も感じていて、当時は「どうなっちゃうんだろう?」と毎回思っていました。

──そんななかで、今はそうした穏やかな雰囲気が、自分らしさとして板についてきた感覚はありますか?

清浦:これだけ求められるということは、得意ではあるんだと思います。でも10代の頃は戦隊もののロボットアニメの曲とかもやりたいなと思っていました(笑)。なんでもやりたいんですよ。「穏やかな歌を歌える人」だけに収まりたくはないですし、新しい自分に出会えるものにはどんどん挑戦したい。

──実際、2024年にリリースしたミニアルバム『Breakfast』には打ち込みの曲も収録されていましたし、昨年もハウスのコンピレーションアルバム『GIRLS HOUSE NATION』に参加していましたものね。

清浦:そうそう。Glitterというユニットの楽曲(「Shuffle Theory feat. 清浦夏実」)にフィーチャリングボーカリストで参加しました。そういういろんな面を出していきたい気持ちもありつつ、今は活動の「第三章」が始まったような感覚なので、ここからさらにアルバムを作って、もう一度自分らしさを提示できたらいいなと思っています。

 

──その意味で、「若葉のころ」は改めて清浦夏実らしさの軸になりそうです。

清浦:そうですね、15年前の作品を知らない人の方が増えてきていると思うので、ここで改めて「清浦夏実です」ということを言いたい。20周年間近にして新人気分、デビュー気分です(笑)。

──そんなタイミングで、清浦さんのことを活動初期からよく知っている北川さんとご一緒できたのは良かったですよね。意外にも楽曲提供は初めてになりますが。

清浦:北川さんからも「なんで今までなかったんだ、今更すぎるだろ」と言われました(笑)。以前に編曲は一度だけあって(「花火」)、楽曲提供を一緒にする機会もありましたが、ここで満を持してというのは個人的にも胸アツな展開です。でも作業は逆に自然すぎて、特に相談もなかったですね。北川さんは私のライブサポートも長く担当してくださっているので、私の美味しいところを理解した上で曲を書いてくれましたし、レコーディングもいつもの安心できるメンバーを呼んでくださって。オケから歌まで1日で順調に録り終えて、最高でした。

──アコギやストリングス、木管楽器が入った耳馴染みの良いアレンジもそうですし、清浦さんの優しい歌い口がとても心地良いです。

清浦:今のアニメ主題歌としては派手さはないかもしれませんが、長く大事に聴いてもらえる曲に仕上がったと思います。歌う時は、原作を読んで仮歌も自分で録り、作詞もしているので、インストールは完全にできた状態でした。あとは何も考えずに素直にアウトプットできる「空っぽな状態」で臨んで。テイクも3、4回くらいしか歌っていません。北川さんの作るメロディは1オクターブの中に収まるようになっていて、すごく歌いやすいんですよね。ポップスは口ずさめるものだという巧みの技を感じました。

──サビの歌詞“見守っていて”というフレーズの印象もあってか、個人的にこの曲を聴いていると、清浦さんが優しく見守ってくれているような感じを受けるんですよね。

清浦:見守ってますよ(笑)。でも“見守っていて”という歌詞を拾っていただいたのはすごく嬉しくて。そばにいなくても自分の心を灯してくれるような存在がいれば、温かな気持ちで日々を過ごせると思うんですよね。金目さんは自分の過去を忘れていますが、人に対して優しくできるのは、きっと優しくされてきたからだと思うんです。私にもそういう人がたくさんいたし、フライングドッグ時代に作った作品たちも含めて、過去が積み重なったからこそ書けた一言です。私もいつか見守る側になっていくでしょうし、老若男女、聴いてくださる方の心がじんわりと灯ってくれたら、すごく嬉しいです。

 

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