
『オケカツ!』の軌跡と未来 公演プロデューサーと編曲家が語る、「アイカツ!シリーズ」音楽の魅力と最新公演の見どころ
「アイカツ!シリーズ」の楽曲を、フルオーケストラで演奏する『オケカツ!』。
その最新公演となる「アイカツ!シリーズ」オーケストラコンサート『オケカツ!』が、2026年5月4日(月・祝)、すみだトリフォニーホールで開催される。
今回は、『オケカツ!』の立ち上げ人であるAetasイベント事業部のTeTさん、バンダイナムコピクチャーズ兼バンダイナムコミュージックライブの生地俊祐さん、そしてほぼすべての楽曲のオーケストレーションを手掛ける穴沢弘慶さんに、『オケカツ!』の歴史を振り返ってもらいつつ、最新公演の見どころを語ってもらった。
企画の成り立ちから、コロナ禍での無観客収録、念願のサントリーホール公演、そして仙台公演を経て、彼らは何を思い、最新公演を作り上げようとしているのか。
始まりは「データカードダスもゲーム!」
生地俊祐さん(以下、生地):そもそも『オケカツ!』は、TeTさんが「弊社で取り組んでいるゲーム音楽のオーケストラコンサートシリーズで、「アイカツ!シリーズ」を取り上げられないか」と、ランティス(現バンダイナムコミュージックライブ、以下BNML)の一般問い合わせ窓口へ連絡してくださったのが始まりですよね。
その話が、サンライズ音楽出版(現BNML)を通じて当時「アイカツ!シリーズ」の担当でオーケストラ好きの私のところへ回ってきたため、「やりましょう!」と即決しました。
▲相沢梨紗さん(2022年「『オケカツ!』2nd Stage 10th Ver.」の際の写真。以下同様)
TeTさん(以下、TeT):当時はゲーム縛りでコンサートを企画しなきゃいけないと思い込んでいたのですが、何をやればいいのか分からなくなっていました。そのとき「そういえば「アイカツ!シリーズ」の音楽はいいよなぁ」と。
そこでランティスさんに連絡しつつ、「データカードダスもゲームじゃん! スマホ向けゲーム『フォトカツ!』だってあるし!」と強弁して社内に企画を通した記憶があります。多分、誰も気にしていなかったと思いますが。
『オケカツ!』を経た今は、ゲームもアニメもいい音楽があって、オーケストラで聴きたいと思えるなら何か企画を考えたいなぁ、ぐらいの緩い気分にはなっています。
生地:そこから打ち合わせを重ね、TeTさんが手掛けた別の企画でも編曲を担当していた縁もあり、『オケカツ!』についても穴沢さんにお願いしようとなりました。実際のところ、このお話を受けて穴沢さんはどんな印象を持たれていましたか?
穴沢:まず「曲数多っ!」と思いました(笑)。昼夜2公演あり、一部セットリストも変わる形式ですしね。2019年2月の初演(昭和女子大学人見記念講堂での公演)は歌唱がなく、すべてオーケストラのみという公演でした。
TeT:初演時は「原曲をオーケストラで再現してほしい」とお願いしたので、穴沢さんもかなり苦心されていましたね。原曲の譜面などもほぼなく、まずは耳コピで採譜してもらうところから始まりましたし。
穴沢:そうでしたね(笑)。音楽プロデューサーの皆様からは、「ドラムのフィルなどもなるべく原曲に近づけてほしい」というオファーをいただきました。
今思うと、普段「アイカツ!シリーズ」のライブに足を運んでいるお客様のなかには、初めてオーケストラを聴く方も少なくないだろうという配慮からだったんですよね。
TeT:そうですね。「アイカツ!シリーズ」の公式イベントとしては初めてのオーケストラコンサートということもあって、関係者一同、分かりやすさ重視の編曲をお願いしました。イントロを聴いた瞬間にどの曲か分かるように依頼していたので、それが穴沢さんの足かせになっていた部分はあったかと思います。
穴沢:足かせということはないんですけど、歌唱曲で歌がない状態で原曲に近づけようとすると、どうしても使える楽器や編成が決まってきてしまうんです。正直なところ、かなり難しかったですね。
その結果、初演時の編曲については、似たテイストの編曲が増えてしまった記憶があります。
生地:我々もそういった経験を踏まえて、2020年3月開催の「『オケカツ!』2nd Stage」では、もう少しオーケストラらしい編曲をお願いし、さらには歌唱も入れてみるなど、新しい試みをしようとなりました。
歌唱を入れるときって、アレンジのアプローチも変わるものですか?
穴沢:かなり変わります。というのも、ポップスって明確なリズムがないと歌いにくい楽曲が多いんですよ。
そこで、グランカッサやスネアなど、打楽器隊が目立ち、リズムを取りやすいアレンジを心掛けました。同時に、オーケストラが歌をかき消してはいけないので、主旋律はボーカルに譲り、それ以外の部分でどう工夫するかという点に頭を使いました。
TeT:歌唱の皆さんにイヤモニをつけていただいて、クリック音を流す方法もあるんですが、『オケカツ!』ではそれをやっていません。これは、私と生地さんで一致している思想です。
生地:歌唱していただく皆さんには申し訳ないなと思いつつ、リズムだけに支配されない生の音楽を届けたいし、それを楽しんでほしいんです。
これを支えているのが、指揮の水戸博之さんなんですよ。
TeT:初演からずっと『オケカツ!』にお付き合いいただいているので、安心してお任せできますし、要所要所で「指揮者ってすごいんだなぁ」と実感できますよね。
▲水戸博之さん
コロナ禍での決断と、念願のサントリーホール公演
TeT:初演を終えて「もう一度やりましょう」と、ミューザ川崎での開催を予定していた「2nd Stage」は、チケットを売り出していたタイミングでコロナ禍に見舞われました。
生地:世間的にあらゆるイベントが中止になり始めていたタイミングでした。当時は政府からの明確なお達しが出る直前で、各種イベンターが来場者やスタッフの健康を守るべく、自主規制をしていた時期ですね。
TeT:世の中の状況的にも中止せざるを得ないことが確定した直後、「どうにかして形にできないか」と関係者一同で話し合いましたね。
そして公演を予定していた日に、同じホール、同じオーケストラ、同じ歌唱担当で無観客収録をしよう、それをBlu-rayとして販売しよう、ということを決めました。演奏をお願いしていた東京交響楽団さんも、「ぜひ」とおっしゃってくださって、どうにか。
生地:実際、収録当日には指揮者の水戸さんが「この後、仕事の予定が全部キャンセルになった」とおっしゃっていましたし、東京交響楽団のコンサートマスターである田尻 順さんからも「今月初めて弾く」と聞き、何はともあれここで集まれて良かったな……と。
あの時期は精神的にもきつかったですけど、編曲も含めて準備を進めていたものを、なかったことにはしたくない、という一点で、関係者一同の心がつながったような気がしました。
TeT:とはいえ、しんどかったですよねぇ……。公演中止を知って悲しんでいる方々の声を知っては、申し訳ない気持ちになり。しかし、先が見えない状態なのは、我々も同じであって。
だからこそ、「意地でもお客さんを入れた形で『2nd Stage』を実現しなければ」という思いに火がつきました。そして2022年8月、ちょうど『アイカツ!』が10周年を迎えるというタイミングで、サントリーホールでの「『オケカツ!』2nd Stage 10th Ver.」を開催することになりました。
生地:無観客収録も作品として良いものにできた自負はありますけど、サントリーホールに足を運んでくださったお客さんが楽しんでいる様子を見て、何とも言えない気持ちになりましたね。
昼公演を観たお客様が、そのまま夜公演の当日券を買ってくださるなど、すごい熱を感じましたし、ありがたい思いとようやく届けられた安心感でいっぱいでした。
コンサートホールでオーケストラの生音を楽しんでもらうことで、「2nd Stage」が2年越しに完成したんだなぁ、と。































