アニメ版の楽しさにDSの面白さが合体!ニンテンドーDS『PIPOPA×DS@ダイボウケン!!!』発売間近のTプロデューサーにインタビュー!
2008年4月からTV東京系6局ネットで放送がスタートしたアニメ『ネットゴーストPIPOPA』。現実世界とネット世界を行き交うストーリー。視覚化されたネット世界の描写と、そこに住むネットゴーストたちや、敵となるネットモンスターのスタイリングなど、どれもが観ていて楽しくなって、ワクワクしてくる、新感覚のアニメとして、子供だけでなく大人にも話題になっている。エデュケーションとエンターテインメントが高次に融合した、まさにこれからの時代のアニメーションだ。
そして、TV放送もいよいよ大きく盛り上がるなか、ゲーム版が発売されることとなった。タイトルは『PIPOPA×DS@ダイボウケン!!!』。ニンテンドーDSのなかに、『PIPOPA』ワールドを限りなく忠実に再現。まさにアニメの世界に入り込んだ感覚で楽しめるタイトルになっている。新たな敵、ノイズモンスターと戦いながら問題を解決していく、アクションRPGテイストに仕上がっており、子供から大人まで楽しめると注目の本作だが、今回、その魅力に迫るべく、開発の株式会社ディンプル、プロデューサー・T氏にお話をうかがった。
●ネットをわかりやすく映像化した『ネットゴーストPIPOPA』
――まず、今回の『PIPOPA×DS@ダイボウケン!!!』ですが、企画が立ち上がった経緯からお伺いしたいのですが……
T氏:ちょうどTV放映が始まるちょっと前ぐらいに、製作委員会さんから直接お話がありまして、08年の2月くらいだったと思います。われわれのような小さなメーカーに声をかけていただいて、非常に光栄なお話でしたし、こちらとしてもかなり前向きに検討に入りました。
――アニメをごらんになられての印象はいかがでしたか?
T氏:まずは、一般視聴者の視点で拝見させていただきました。キッズ向けということで聞いておりましたが、大人もちゃんと楽しめる作品で、観ていて自分もその世界に入り込んでしまいました。ネットやITに関する難しい言葉もたくさん出てきますが、子供にとってわかりにくい部分も上手く噛み砕いて世界観を作り上げているうえ、これは大人も観られる間口の広い作品だなと思いました。わかりにくいネットの世界を映像として見せていて、子供でも少しづつ理解していけるのが良いと思いました。
――何かについて視覚的に、体感的に説明していくという点では、ゲームもそれが得意ですよね?
T氏:楽しみながら覚えられるという点でもそうですね。特にDSはそのような用途に向いていますよね。
――最初からプラットホームはDSという話だったんでしょうか?
T氏:最初はプラットホームについては特にご指定はなくこちらで判断しても良いということでした。ただ、企画書、そしてアニメを観させていただいたところ、基本的には小さなお子さん向けのアニメであり、ハード的には一番DSが合っているかなと思い、DSでのゲーム化を前提にお話を進めさせていただきました。
――ほかのプラットフォームとDSを比べて、開発にあたっての違いはどんなところにありますか?
T氏:大きくわけてハード的なところと、対ユーザー的なところがあると思うんですが、例えばPSPだと、ちょっと高度なゲーマー向けというイメージがあるというか、マニアックな要求に応える細かな作りこみが必要だと思います。一方DSの場合は、小さなお子さんからお年寄りまで様々な方が触れるので、あまり難しくせず、感覚的にプレイできるようなものにしなくてはならないというところがあります。ハード的な部分では、DSの場合はPSPや据え置き型のハードに比べると解像度が低いので、より記号化したキャラクター作りをしていかなければならないというところと、あとタッチペンが大きな特徴なので、それを生かしたゲーム作り、というところがあげられます。
――2画面をタッチペンで操作するというのは、開発が難しそうですね
T氏:2画面の意味合いを持たせるという意味では、ほかのハードと勝手が違いますね。『PIPOPA DS』では、上でキャラクターを移動させて、下でマップを表示させるとか、あるいは戦闘シーンでは、上でピポパたちにしゃべらせて下で操作するとか、そういう形で使い分けてるんですけど、どう使い分けるかというところは、常に悩むところではあります。
●サブシナリオ的な展開で世界観を堪能できるゲーム
――制作がはじまって、まず、アニメをどうゲーム化しようとお考えになったんですか?
T氏:これは、アニメゲーム全般にいえることだと思いますが、基本、元となるアニメのストーリーがありますので、それをただ追っていくようなゲーム作りにしてしまうと、この後どうなるのかといった展開が、すべてわかってしまうのでつまらないと思うんですよ。かといって、プレイする方はアニメを観てその世界を期待している方なので、全然違うものにしてしまうわけにもいかない。アニメのキャラや世界観を壊さないようにしつつ、ゲームの世界を別に作らなければならないので、そこが難しいです。ピポパのアニメはキャラが立っているので、最初はそのキャラを活かしたミニゲーム集という案も出ましたが、アニメの世界観を大切にするのであれば、この世界を使ったストーリー性のあるものにした方がよいと思いなおしました。世界観を反映したオリジナルストーリーものを作り上げていく、アニメでいうと番外編、サブシナリオ的に仕上げれば、プレイヤーもアニメの世界を堪能しつつ、単に筋を追うだけに終わらないものになると考えました。
――では、ゲームの展開は、アニメとは異なっている部分が多いんですね?
T氏:世界観、登場人物は、基本的にアニメからそのまま持ってきていますが、戦う相手なども同じにしてしまうと、アニメと同じ展開になってしまうので、ゲームだけの新しい事件が起きて、新しい敵が現れて、新しい事件を解決していくものになっています。
――新しい敵とはどんなものでしょうか?
T氏:今回はノイズモンスターという敵が現れます。それが現れた理由なども含めて、事件を解決する話になります。アニメではピポパたちはネットモンスターと戦っていて、パットが敵の弱点を見つけて、ピットがスタンプに変身して、主人公の秋川勇太が最終的にその弱点をパーンと叩く。というお約束事があります。それをゲーム化するにあたって、さらにゲーム性を高めるため、ノイズモンスターの弱点は属性に応じて3ヵ所あると設定しました。そして、ピットもパットもポットも参加して戦うという、ゲーム性を高めるためのアレンジを加えています。
――2画面を生かした工夫などは?
T氏:マップに関してですが、お子さんは道筋などを覚えるのが苦手です。今時のRPGでは、攻略本を見ながらプレイするというのがひとつのスタイルになっていると思うんですが、今回はターゲットがお子さんということで、ズバリ、それをゲーム上で見せちゃおうということにしました。そうすれば、誰にでも優しいというか、マップ上で行き詰まることなく最後までプレイできるかなと。今回はどなたでも最後まで遊んでもらうことを目標としているので、それをゲームシステムにも反映していますね。全体のマップを見ながらプレイできるので、初心者にも優しいシステムになっています。
――アニメでは、リアルとネットを行き交う展開も魅力ですが、ゲームではどう再現されていますか?
T氏:基本的には、現実世界で起きた様々な事件を、ネット世界で解決して戻ってくるというのが、『PIPOPA』の一番の約束事だと思うんですけど、このゲームでもそれは踏襲されています。
●経験値などを採用せず多彩なプレイが楽しめるシステム
――開発にあたって一番大変だった点は?
T氏:一番大変だったのは、アニメの放映タイミングと連動して発売しなければならなかったので、じっくり時間を費やして開発していられなかったというのはあります(笑)。
――やはり開発スケジュールは厳しかったのですね?
T氏:かなり厳しかったので、普段以上に人も投入しました。
――アニメのゲーム化作品では、最終回前に発売しなければならないので、最終回までストーリーを追えずにゲームを完結させなければならず、そこが大変だという話を聞きますが……
T氏:今回は幸いアニメの世界観を利用した別立てのストーリーだったので、そこで困ったことはありませんでした。ただし、キャラクター作りなどの面では、制作中にアニメで新キャラクターが出たりすると、それをあわててゲームに反映させたりといったことがありました。例えばプーは、最初は登場しない予定でしたが、本編に登場してから人気が出てきたということを聞いて、急遽反映させました。
あとはアニメ自体が、キッズ向けながらも完成度が非常に高い作品なので、完全な子供向けに作ってしまっていいのか?という葛藤もありまして、子供だけでなく大人がプレイしても楽しめるように、バランス取りにも苦労しました。
――ある程度広い年齢をターゲットにできるゲームに仕上げたのですね
T氏:ゲーム性の部分ですが、今回PRG風でありながら、経験値やヒットポイントといったものを表向きは採用していません。みかけはアクションゲームの感覚でプレイできるようにしています。そこは子供向けの部分です。ただそれだけだともっと大人の方にとっては、単にタッチペンをつついているだけの単調作業になってしまい、面白くないだろうと考え今回、経験値の代わりに、データクリスタルというアイテムによってキャラクターをパワーアップさせる方式をとっています。ゲーム好きな方であれば、強力なデータクリスタルを装備せずにいかにゲームをクリアするかに挑む、そういった楽しみ方もできると思います。倒す順番を工夫したり、敵の弱点を狙い続けたり、敵に応じて装備するクリスタルを変えてみたりだとか、頭を使えば経験値稼ぎのような戦いをしなくてもゲームを楽しめる。そういった要素を入れ込んでいます。
――いい意味で、何度でも多彩なプレイができるのですね
T氏:強力なクリスタルを集めれば最終的には力技で解けるのですが、「俺はこれだけしかクリスタルを使わず解いたぞ」といった自慢が出来るような、そういった幅の広さを持たせています。
――単なるアニメのゲーム化というだけではなく、新しいRPGの方向性も感じさせてくれますね
T氏:アニメが非常にいい出来なので、そういった意味ではゲームも一工夫してみました(笑)。
●なるべくアニメに忠実に再現した世界観に注目
――一方、ビジュアル的な部分でこだわった点はありますか?
T氏:今回全てのキャラクターをポリゴン化しているんです。小さな3Dキャラがネットの世界を動きまわるんですけど、これはアニメでは出来ない点ですし、DS上で何ができるかを考えた結果、アニメの舞台を自由に動き回れることを念頭に作りました。
――ユーザーの自由度は広いのですね
T氏:そうですね。多少の制限はあるのですが、一般的なRPGのように、この街をクリアしたらこの街が出現して…… といった形ではなく、比較的最初から、いろいろな場所に行けるような、ゲームの本筋とは関係ないサイトをのぞいたり、といったこともできるようにはしています。
――そのほかに今回こだわったところはありますか?
T氏:アニメの世界のなかを動き回るということを実現したかったので、3Dで作った街並なども、アニメの設定になるべく忠実に再現しています。そこにはこだわりました。勇太やひかるの家や学校、雪谷亭などもポリゴンで作成して、その配置関係などもアニメに近づけています。
――ゲームについて、アニメの制作サイドからの反応は?
T氏:良い反応をいただけたと思っています。アニメのスタッフの方におかれましては、ゲーム制作のタイトなスケジュールを理解していただき、素材提供や監修などで協力していただき、連携もとれたんじゃないかなと勝手に思っています。
――最後にゲームを買って下さる方へのメッセージをお願いします
T氏:アニメのメインストーリー以外での、ピポパたちの活躍を純粋に楽しんでいただきたいのと同時に、単純にクリアするだけではない楽しみ方もしていただきたいです。実はゲームクリア手前に、難易度が高い隠しイベントが現れますので、ぜひ挑戦していただきたいと思います。大人も満足させる作りになっていますので、よろしくお願いします。
『PIPOPA×DS@ダイボウケン!!!』
2009年2月26日発売
5,040円(税込)
発売:ディンプル