ドラマ『もやしもん』リレーインタビュー企画:スタッフ編――岩本晶シリーズ監督インタビュー「オリゼーの黄色は難関。解決の秘策は“半透明”にすること」
7月8日からフジテレビ“ノイタミナ”ほかで放送がスタートするドラマ『もやしもん』。フジテレビ“ノイタミナ”初の実写作品としてアニメ業界だけじゃなく、多方面から今注目の的になっています。その魅力を充分に掘り下げるべく、アニメイトTVではおなじみリレー企画を今回も実施しちゃいます!
第1回となる今回は、スタッフ編ということで、全体をまとめあげる重要な存在であり、ドラマの魅力を最も知っている人間でもある岩本晶シリーズ監督にインタビュー!
アニメ版との違いは? “菌”は実写でどう描かれるの? などなど、たっくさん聞いてきたので、放送を待ちきれないそこのアナタ!これを読んでまずは、はやる心を落ち着かせよう!
――まずは原作のマンガについてですが……
岩本監督(以下岩本):アニメ化の話が立ち上がった時に『もやしもん』のことを初めて知り、今までにそういった作品がなかったので着眼点がすごいと思いました。
そういった意味でも原作者の石川先生はすごい方なんだと思いました。僕はアニメの制作には全く関わっていないのですが、プロデューサーから軽く相談を受けましたよ。
――アニメの感想をおうかがいできますか?
岩本:マンガを忠実に再現しているアニメとして観ていました。実写はそういうことには絶対にならない。人間がやるので“マンガに忠実”にというわけではなく、別のベクトルに力を注いでいこうと思いました。
――実写の監督をやられてみて、大変だと感じたのはどういったところでしょうか?
岩本:僕自身も“キャラクター=菌”ということがピンとこなかったんです。やっていくうちにわかってきた部分はありますね。第1話で、日本酒を密造して “火落ち(菌)”に飲み込まれる所は、このドラマの見どころだと思います。
原作を知らない人がこのドラマを観た場合に“菌と話す”というシチュエーションが理解しがたいと思うんですよ。だから、初めに出てきたときは“ちょこちょこ”っといるかいないか分からないくらいにしておいて、日本酒の樽に群がる菌が大量発生するシーンを表現することで、視聴者へ菌のことを理解してもらおうと思いました。菌の存在の種明かしができる部分はそのシーンだと思って。
あの日本酒の樽のシーンで「コレが菌です!」という主張をしたかった。これは脚本段階から練っていた構想です。
――脚本はどのようにして作られたのでしょうか?
岩本:原作者の石川先生とシリーズ構成の高橋さんとお話させていただきました。石川先生は「どういう風に表現すればおもしろくなるのか」をわかっている方で“お話を人に伝える”ということに関しては天性的に頭の良い方だと思いました。
「実写化するにあたって、漫画とは少し変えましょう」と提案をさせていただいたときに、次々とアイディアを頂きました。
――原作と違う部分を、お話できる範囲で教えていただけませんか?
岩本:沢木が先に美里&川浜と出会っているという設定ですね。しかしこれは、元々原作の『もやしもん』のプロットだったそうです。あと、実写で男の子が“ゴスロリ”で演じるのは難しい部分があるので(笑)、蛍の設定を実写版ならではの設定に変更するのに、かなり相談させていただきましたね。
――次にキャスティングについて聞かせてください
岩本:西田さん演じる美里に関して、石川先生はかなりこだわっていましたね(笑)。うちのスタッフも「美里は西田さん以外ありえない」と言っていましたね。
他のキャストに関しては、まずスタッフと思い思いの俳優さんを挙げていき、プロデューサーと話をさせていただいてから決めました。
――沢木役の中村さんは菌が見えるという設定で、他のキャストさんに比べて演技も大変だったと思うのですが、監督から何か特別に指示をしたことはありましたか?
岩本:ありましたね。ただ、中村くんは仮面ライダーをやっていた経験もあり、見えない物に対して“見えている”演技をするのは問題ないと思っていました。
それは実際にやってみて確信しました。いちばん話をしたのは、沢木の人物像に関してですね。
――沢木の人物像ですか?
岩本:今回、原作にあった沢木の“小柄”という設定をなくしました。キャスティングの際に当てはまる俳優さんが少なくなってしまうので、早期の段階でなくしました。
――言われて見ればそうですね(笑)
岩本:そうなんです、背の低い俳優さんを探すのは少し困難なので。マンガの中でも“ヘタレ”というキーワードを良く目にしていたので、中村くんと「沢木はヘタレなのか?」ということを話し合いましたね(笑)。
農大の中で濃いキャラクター性を持っている人たちがいるなかで、極端に情けないわけじゃなく「草食系男子だよね」っていう結果になりました。
――いつもボンテージの長谷川遙を演じる加藤さんについては、いかがでしょうか?
岩本:長谷川の格好は絵だと違和感が少ないと思います。うちの子供にマンガやアニメ版を見せても普通に観ていましたし。でも、これを実写にすると一変して生々しくなる。
ここは、このドラマならではの“売り”でもあるんですが(笑)。だからこそ外せなかったのもありますし……っていうのがありましたね(笑)。
――“深夜枠ならでは”って感じですよね(笑)
岩本:僕自身、子供向けの作品に関わっていたので、今回は子供向け作品では表現できない部分をやりたいと強く思っていました。ドラマ『もやしもん』が初めての大人向け作品なので、今までに溜まっていたモノが表現されていますよ(笑)。
――“菌”についてですが、実写映像に織り込むための苦労などをおうがかいしたいのですが?
岩本:そうですね。オリゼーの黄色がかなり難しかったです。実写の環境の中で、黄色を黄色として見せるのはかなり困難なことで、汚くなりやすい色なんです。
でもやっぱり黄色じゃないとオリゼーではない。グレーやメタリックシルバーの球を置いてライティング環境の参考にしながら撮影していました。
――それは撮影現場の、実際にキャストが演技されているところにも置いているんですか?
岩本:そうです。その球に実際に映った影をCG合成の際に使用しました。あと、中村くんの肩に菌が乗るシーンでは、CGで菌を乗せるために中村くんの服にマーカーで印を書いて、CG合成の際の目印にしていました。
その球を参考にしながらライティングを組むと周りの色にも反応した影ができるんですね。例えば、黄色いTシャツを着ている人の近くに菌が寄れば、どういう色の影が出来るかというのが、その球を見れば分かるということです。
けれど、オリゼーだけはやっぱり黄色だから見せるのが難しかったです。あとは少し透ける設定をしています。光を若干通すことによってキレイにみせられるんですよ。
――最後にTVドラマ『もやしもん』の観どころを教えてください
岩本:アニメになり菌が動くということが実現されたので、ドラマ化では“菌が実在するのでは?”と思わせるような存在感を出しています。実写ならではの躍動感や存在感を発展させましたので、そこに注目していただきたいです。
また、ドラマにする段階で原作を一度バラバラにして組み直してストーリーを作りました。全話を観てもらってやっと、キャラクターのつながりが分かるようにドラマを作っているので、思うところを感じ取ってほしいです。
<聞き手:だーくまたお>
<取材・文:岡有希>
ドラマ『もやしもん』
7月8日より毎週木曜24:45~フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送。
(※初回放送は25:00~予定)
<STORY>
沢木惣右衛門直保は、肉眼で菌が見える特殊な体質。もやし(種麹=たねこうじ:日本酒の原料のひとつ)屋の息子である彼は、幼なじみで造り酒屋の息子・結城蛍とともに農業大学に進学。入学当日に、祖父の古い知り合いだという樹という人物に会いにいく沢木。樹は菌について語りだすと止まらないちょっと変わった老教授だった。沢木は樹研究室に出入りするようになり、農大の少し変わった人たちとの出会いによって、様々な騒動に巻き込まれていくことになる。
<STAFF>
原作 :石川雅之(講談社刊「イブニング」連載中)
シリーズ監督: 岩本晶
各話監督:森田淳也、梨木友徳
シリーズ構成 :高橋ナツコ
脚本:石川雅之、高橋ナツコ ほか
音楽:鴨宮諒
制作:白組
製作:ドラマ『もやしもん』製作委員会
OPテーマ:たむらぱん「SOS」(コロムビアミュージックエンタテインメント)
EDテーマ:SEAMO「海へいこう」(アリオラジャパン)
沢木惣右衛門直保:中村優一(D-BOYS)
武藤葵:ちすん
及川葉月:はねゆり
美里薫:西田幸治(笑い飯)
川浜拓馬:木村明浩(バッファロー吾郎)
結城蛍:岡本あずさ
長谷川遥:加藤夏希
樹慶蔵:黒沢年雄
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