確固たる悪役・モモシキは浪川さんも嫌い!? 『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』浪川さんへインタビュー
週刊少年ジャンプで連載された『NARUTO -ナルト-』の新作映画『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』が、いよいよ2015年8月7日より全国の映画館で公開される。原作者の岸本斉史先生が製作総指揮を務め、「これ以上のものはもう僕には描けません……」と本人がコメントするほどの集大成となっている。
『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』では、それまでのテレビシリーズや映画で活躍してきたキャラクターたちが大人へと成長し、主人公・うずまきナルトの息子・うずまきボルトたちの活躍がメインに描かれている。
本稿では、史上最強とも謳われる強敵・モモシキ役を務めた浪川大輔さんへ行ったインタビューの模様をお届けする。浪川さんには珍しいほどの“超”悪役に、自身はどのように向き合ったのか、ご覧いただきたい。
■モモシキはすごく悪役ですごく僕も嫌いですけど、嬉しかったです(笑)
――浪川さんは10年ほど前にテレビシリーズで『NARUTO -ナルト-』に参加されたことがあるそうですね。
モモシキ役・浪川大輔さん:オリジナルストーリーで、スマル役で出演させていただきました。その時代からナルトもだいぶ変わって「大人になった!」ってビックリしました (笑)。代替わりもして、新たに参加させていただいたという印象があります。
――今回は珍しく、超悪役ですが。
浪川さん:そうなんです。いいところが全くないですからね(笑)。「下等生物どもが」など言ったり。普通の悪役って、共感できるところもあるんですけど、今回は全くないという(笑)。ボルトという次の世代が大きなテーマになっていることもあって、モモシキは確固たる悪役としてわかりやすくはありました。自分のやりたいことや願いを思いっきりやって、邪魔者は排除するっていう感じです。そこに正義があるのかと言わると、たぶんないです(笑)。映画を観た方には共感していただけると思うんですけど、モモシキは粉々にされて当然かなって思います(笑)。あれでも死んでいるかわからないですけども。あれで死ななかったら本当にすごいですよ。
――絶対的な悪役は演じやすいですか? それとも演じにくいですか?
浪川さん:家族愛や友達との友情、そのあたりがものすごく丁寧に描かれているので、モモシキに対する感情はなくても成立しているような気がします。逆にないほうが際立つのかなとも思いました。収録中は多少なりとも見ている方に同情してもらったり、「いいよね」って思ってもらえるようにしようと考えていたんですが、全くなくてよかったんだなって気づきました(笑)。その分、メインキャラクターや新キャラクターたちを見ていて感動しました。痺れました。あと、昔ながらのキャラクターたちも出てきて、忍術を使う感じとか、コンビになるとこんな感じになるのかとか、いいところを丁寧に岸本先生が描いたんだなと感じました。先生が「これ以上のものはもう僕には描けません……」と言っていたように、これ以上肉付けしたりシンプルにできないほど素敵なバランスの映画になっています。だから、モモシキはすごく悪役で僕もすごく嫌いですけど、参加できて嬉しかったです(笑)。
――嫌いなんですね(笑)。
浪川さん:キャラクターがですよ!(笑) 演じる上でと聞かれたらまた別問題です。いち視聴者として見たら「こいつ最悪だな!」という感じのキャラクターです。映画全体は誰が見ても心に刺さるものになっていると思います。
――まさに「努力」「友情」「勝利」というジャンプ作品に相応しい感じになっていますよね。
浪川さん:そうなんです。ナルトとボルトを対比した努力の表現も面白いですよね。「今のナルトを見るな。今までのナルトを見ろ」っていう台詞は、これはもうグッときました。ナルトとボルトの関係は現代にも通じるものがあると思うんです。例えばお父さんが忙しくて説教しなかったからボルトが「俺はこうなっちまったんだ」と道具に頼るとことか……。恐らく、ナルトは自分の場合と照らし合わせて違和感を感じたんでしょうね。ナルトも大人になったんだなって。少年時代のナルトだったら「すげぇ!」って思ってたはずですから。あと、サスケがこんなに喋るのかとビックリしました。歴代のシリーズの中でも一番多いんじゃないですか? いろいろなキャラクターたちが出てきて面白いですよ。
――大人になっちゃうと悪いことにも手を伸ばしてしまう人もいますからね……。
浪川さん:そこも対比としてわかりやすく描かれていて、子供が見てもわかると思うし、本当に面白かったです。感動しました。親子で見るものオススメです。特に忙しいお父さんに見て欲しい! グッと来ますよ、ボルトの言葉に。
――当時、高校生くらいの世代がジャンプで『NARUTO -ナルト-』を読んでいて、15年たって子供ができてこの映画を見るとたまらないですよね。
浪川さん:たまらないでしょうね。ナルトやボルトという世代がテーマになっていますが、自分の世代としても見る人たちに時間の流れがいいこともあり、残酷なこともあるっていうのをしみじみ教えてくれると思いますよ。先生は天才ですね!
一同:(笑)。
浪川さん:これでシンプルにわかりやすいですからね。普通だったら3部作になりそうな勢いですよ(笑)。
■ナルトの15年間の重みを実感しました
――10年前ほどにテレビシリーズで参加されていましたが、帰ってきた感じはありましたか?
浪川さん:僕が出演してからは一度も『NARUTO -ナルト-』の収録現場に行っていないし、劇場版なのでいつもの雰囲気とは違うと思いますが、帰ってきたという感じはありませんでした。特に僕はモモシキなので、「帰ってきたなー」とは全然思えなかったですね(笑)。
――こういった悪役を演じるときはどのような気持ちで演じるんですか?
浪川さん:気持ちとしては共感がなくても、キャラクターと似たような感覚はあるのかなと。「こいつらを倒せば力が手に入る」という感覚はわかるので、その部分に注目してみたり。自分の「これはいいな」と思ったものに関しては、誰が何と言おうと「俺はこれがいいんだ」と欲望に忠実になる感覚に近いと思います。例えば、ここに1億円の古文書があって、そんなに深い仲じゃない人に「浪川さん、そんなに欲しいなら1億円あげますよ」と言われて、それで買っちゃうのがモモシキだと思うんです。なので、役作りというか、徹底してそう考える、変に考えないようにしています。「ナルトやボルトを倒す」となったら「倒す」ことしか考えない。そこに、「こいつらも親子だしな……」とか「まだ子供じゃないか」とかは考えないんです。そういったところをはぎ取ればモモシキになれるのかなって。
――なるほど。
――先ほどお話で出てきましたが、「下等生物が」という台詞も印象的でした。
浪川さん:あの台詞はあまり力を入れずに演じるようにディレクションがあったんです。「下等生物」と言うだけあって、モモシキはその人たちのことをなんとも思っていないんです。自分の力だけを信じているキャラクターです。だけど、最後に仲間のキンシキのことも少しは思っていて欲しかったなって(笑)。ラストシーンも、すごく声を張り上げたもの、すごく声をおさえたもの、その中間の3パターンを収録して、中間のパターンが採用されました。
――アフレコでは一人だけ悪役のときは、みなさんに何か言われたりするんですか?
浪川さん:「漢字読める?」しか言われなかったですけど!
一同:(笑)。
浪川:笑いすぎですよ!(笑) でも、そういった意味では帰ってきた感じはありましたね。みんなが受け入れてくれて。その中でもナルト(竹内順子さん)がやっぱりお父さんでした。しっかりとお父さんの演技になっていてカッコいいなって思いました。でも収録後に話を聞いたら、「ここまで大きくなったのは少し抵抗あった」って仰っていました。でも、竹内さんしかいないですし。女性の方でここまでの大人を演じるのはさすがですよね。ああいうのを見ていると、僕も合体技とか使いたかったなって(笑)。
一同:(笑)。
――浪川さんのオススメのシーンなどはありますか?
浪川さん:いっぱいありすぎて困りますね……。ちょっとドキッとしたのは、ヒマワリ(ボルトの妹)の誕生日会のシーン。みんなが歌っている歌も斬新でしたが(笑)。そこでのナルトが失敗してしまったところはすごく切なかったです。ナルトも疲れているのになんでみんな気付かなかったんだろうとも思いましたし。頑張って尽くしてあげようと思っても、逆により悲しい思いをさせてしまうんですよね。あのシーンはボルトにもナルトにも感情移入できたなって思います。サスケとボルトの掛け合いも。人間が変わる瞬間や出来ないことから逃げない姿が描かれていて、あれを見ているとナルトの15年間の重みを実感しました。身近なところに接点があるような描写が多くて、自分に置き換えることができるシーンが多いのは印象的でした。
――大人のほうが感じることが多い感じはしています。
浪川さん:時間というのは嫌なことを忘れさせてくれたり、解決してくれたりするけど、芯になってくれるものを作ってくれるので、一瞬一瞬を大事に生きていかないといけないのかなと考えさせられました。
――本日はありがとうございました!
【キャスト・スタッフ】
うずまきボルト:三瓶由布子
うちはサラダ:菊池こころ
うずまきナルト:竹内順子
うちはサスケ:杉山紀彰
ミツキ:木島隆一
山中いのじん:阿部 敦
奈良シカダイ:小野賢章
うずまきヒマワリ:早見沙織
モモシキ:浪川大輔
キンシキ:安元洋貴
脚本・キャラクターデザイン・製作総指揮:岸本 斉史(「NARUTO-ナルト-」集英社ジャンプコミックス刊)
監督: 山下 宏幸
脚本協力:小太刀 右京
キャラクターデザイン: 西尾 鉄也、鈴木 博文
音楽:高梨康治・刃-yaiba-
主題歌:「ダイバー」KANA-BOON(キューンミュージック)
■2015年8月7日全国東宝系にてロードショー
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