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アニメ
TVアニメ『リゼロ』話題の15話・16話、脚本担当たちが語る制作秘話
TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』(以下、リゼロ)の声優陣やテーマソング担当アーティストの特別インタビューを連続で掲載していく「Re:ゼロから始める取材生活」。
アニメイトタイムズにて掲載中の本企画、第20回目にご登場いただくのは、シリーズ構成&脚本を担当する横谷昌宏さんと、同じく脚本担当の中村能子さん、梅原英司さんのお三方。ここまで作品に携わってきた感想とご自身が担当されたお話やシーンなどについて振り返っていただきました。更に今だから話せる制作秘話も明らかに!
――『リゼロ』という作品に初めて触れた時の印象とここまで関わってきたうえでの感想は?
横谷昌宏さん(以下、横谷):異世界転生ものというのはよく聞きますが、実際に読んだのは初めてで。スバルは現世界に何の未練もなく、戻りたいという希望もないまま始まるのが斬新でした。(WHITE FOXの)吉川(綱樹)さんからは「結構グロい描写とかあるんですけど大丈夫ですか?」と言われて。実際に1巻を読んでみたら「これくらいなら大丈夫かな」と思ったし、おもしろそうだったし、タイムリープものというのも聞いていて、僕もそういう作品は好きなので引き受けました。
そして3巻、4巻と読み進めていくうちに、内臓が出たりとかのグロさではなく、精神的にくるのが辛くて。先日、(MF文庫J編集の)池本(昌仁)さんにお会いした時も「よく辛い、辛いと言ってましたよね」と。特に2クール目は辛くて。そういうところをお二方に振ったわけですけど。
一同: (爆笑)
横谷:だから正直な印象は「まさか、こんなことになろうとは」ですね。
中村能子さん(以下、中村):私もライトノベル作品に呼んでいただくのが初めてだったので、大丈夫かなと。まず1巻を読んだら「パックかわいい!」って。みんなから「そこかよ!」とツッコミが入りましたけど(笑)。私が入った時は横谷さんが既に3話まで書かれていて、そこで1巻分は終わっていて、「あれ?」と(笑)。 とても情報力が多いドラマだしどうしようと思いました。いただいた構成表も長いページ数が指定されていて「こんなに入れるんだ!?」というのが第一印象です(笑)。お話がおもしろいので盛り上がることはわかっていたけど、いかにこの情報量を入れ込めるかに苦闘して、「いつまで経っても終わらない」という気分で書いてました。でも楽しかったです(笑)。
梅原英司さん(以下、梅原):僕は結構遅れての参加で、8~9話の脚本あたりで横谷さんから声をかけていただいて。僕もライトノベル作品は初めてで、1巻から読みましたが、自分が担当するであろう、後ろのほうの巻を集中して読みました。後ろの巻は、感情のドラマをエンタメの中でしっかりやっているなというのが第一印象でした。
――梅原さんには、横谷さんから声をかけられたんですよね?
横谷:最初は中村さんと2人で回していくつもりだったけど、お互いにあまり筆が早いほうじゃないし(笑)、スケジュール的にもう1人と言われて。いろいろなライターさんの名前が挙がる中、(WHITE FOX社長の)岩佐(岳)さんから「もっと若い人がいいな」と言われ、ちょっとズキッとしつつ。
一同: (爆笑)
横谷:梅原さんが、僕が知っている中で若いほうで、『カオスチャイルド』のゲームのシナリオもやっているしと思って、名前を挙げたら長月(達平)さんが最近『カオスチャイルド』をプレイしていたそうで。「じゃあ、大丈夫だ。辛いところを任せても」とお願いしました。12~13話か、14~15話をお願いしようと考えて、精神的にキツそうな14話~15話のほうをお願いしました(笑)。
梅原:でも13話(「自称騎士ナツキ・スバル」)が一番キツかったような。 横谷:自分でも書いてみたら意外にキツいなと(笑)。思い返すと16話の「豚の欲望」が一番辛かったかな。いろいろなところを回って、ひたすら拒否られるのは。18話の「ゼロから」は女性のほうがいいかなと思って。
横谷:作画も演出も素晴らしくて。3話のエルザのアクションシーンもすごいなと思ったし、細かい部分もこだわりが見えて、(TV版では修正が入っていたシーンとなりますが)特にグロ描写は、5話のスバルの目玉が転がるシーンとかすごかったです。 中村:絵や演出はもちろん、声優さんの演技も素晴らしくて、ぐっと胸に刺さりました。いつもリアルタイムで見ているんですけど、日曜の夜に見ると月曜がヤバいんだよなということが何度かありましたが(笑)、すごいなと感動したり、呆然としたり。参加させてもらって幸せだったなと思いました。
横谷:絶対、きれいに締めますね(笑)。
中村:素直な気持ちですから(笑)。私、『はたらく魔王さま!』が好きで、手がけられていたのがWHITE FOXさんと横谷さんだったので、それも今回やらせていただきたいと思った理由の1つで、今作もやっぱり素晴らしかったので「やった!」と。パックもめちゃめちゃかわいくて、私はパック好きなのでうれしかったです。
――渡邊政治監督のパック推しもあって。
横谷:謎のパック推しですよね。
中村:最初は、「中村さん、パック好きなんですか?」と笑っていらしたのに。
――キツい話なのでいつの間にかパックを求めている自分がいたとおっしゃっていました。
横谷:言ってましたね。だんだんキツくなってきたと。
中村:6話(「鎖の音」)で「猫パ~ンチ」とか入れたら、監督にしばらくしてから「アレ、入れておいてよかったですよ」とおっしゃってもらえたのがうれしかったです。私も少しは役に立てたのかなと(笑)。あのシーン、めちゃめちゃかわいかったです。 ――キャストさん達もあの頃は幸せだったなと遠い目をしてましたから(笑)。
横谷:本当にそうですよね。
中村:13話を見ていて、横谷さんが「キツいキツい」って言ってたけど、キツかっただろうなと思いましたもん。自分が書いた話数よりも辛く感じました。
横谷:本当に? 僕は(16話の)「豚の欲望」がキツかったけど。 中村:確かにキツいですよね。男性スタッフ陣がプリシラ好きなのには驚きましたけど。
横谷:あの本読みの現場は皆さん、すごく偏っていると思うので。
一同: (爆笑)
梅原:脚本の後ろの工程の、コンテ処理や作画さんがすごく頑張ってくださっているという気持ちが強いですね。特に15話(「狂気の外側」)は絵の力で何とかもたせてほしいという部分が脚本上であるので、期待以上に応えてくださって、ありがとうございますという感じでした。
横谷:そうですね。原作がおもしろいので、それを崩さないように。でも長いのでいかに元の原作のイメージを保ったまま、圧縮するかというお話があったくらいですね。
これは余談ですが、最初の頃、監督と飲みに行ったら「血液型は何型ですか?」とか「星座は何座ですか?」みたいなことを聞かれて、「じゃあ、相性は悪くはないですね」と言われたことは今でも強烈に覚えていて。「この人はそういうことを気にする人なんだ」と。まあ、自分もそうなんですけど(笑)。
梅原:そうなんですか?
横谷:うん。でも本当に監督と相性がいいのかは確かめてないんですけどね。
一同: (爆笑)
――横谷さんからお二人には何か説明やオーダーがあったんですか?
横谷:お任せでしたね。2クール目はひどい投げ方で、中村さんにも「4巻と5巻をお願いします」みたいな。「切りどころはこの辺で」というのはあったけど。白鯨戦も最初は2話でやる予定だったけど無理だから3話になって。
KADOKAWA・田中翔さん:実は元々、25話じゃなかったですからね。
横谷:そこはフレキシブルに対応してくれた田中さんがすごいなと。何を言っても「大丈夫ですよ」と。本当に感謝してます。
横谷:監督に言われた通り、圧縮する作業が中心になるので、いかに大切なセリフを残しつつ、イメージを変えないようにするかを気にしました。そして伏線がいっぱいあって、ループものなので、変に削るとつじつまが合わなくなったりするので、そこは大変でしたね。
中村:最初はつかめていなかったのか、私が書くと「スバルがカッコよく見える」と怒られて。
梅原:その怒られ方もすごいですね。主人公がカッコよくて何が悪いんでしょうね(笑)。
中村:でも、それが『リゼロ』ならではで。
横谷:女性が書くとこういうスバルになるんだと目からウロコでした。
中村:本当ですか? 6話(「鎖の音」)で、スバルがラムに『泣いた赤鬼』のお話をするシーンがあって、会話でずっと見せるのとかが難しくて。『泣いた赤鬼』部分のリテイクは結構ありました。吉川さんから「『泣いた赤鬼』だけ、もう一稿お願いします」と言われて。 横谷:短い尺の中でいかに『泣いた赤鬼』の話を簡潔に伝えるかというのは難しいですよね。
中村:絵を見たら監督がペンなどを使って工夫して見せてくださって。この時に監督から言われたんですよね。「ここでカッコイイのはちょっと。いきなりなんで、そこは気を付けてください」と。「そうか! スバルらしいところを抜かないといけないんだな」ってすごく勉強になりました。
――スバルはウザイとかクズとか呼ばれていますからね。
中村:でも決めゼリフではカッコイイことを言ってるので、本心ではカッコイイ人だと思っちゃうので、ついついそういう見方になっちゃうんですけど。
梅原:僕は担当したのは伏線を蒔く回ではなく、回収する回のほうが多かった気がするので、「これまでの回でこうなっていたらそこをフラッシュ(バック)してください」とよく書いていた気がします。中村さんが蒔いてくださった伏線を……。
中村:確かに私、結構蒔き回だった(笑)。
梅原:だから回収する時のドラマをうまく見せられるように。盛り上がりですね。うまく見せないと伏線がムダになってしまうので。感情の流れを意識して書かせていただいて。最初に関わらせていただいた14話(「絶望という病」)の時には、ウザさとゲスさが皆さんの間でマイブームになってましたよね。「ただゲスって言いたいだけだろう?」みたいな(笑)。その時に中村さんのようにカッコよく書いたためにリテイクというのがありました。「もっとゲスく」と。 横谷:いかにゲスく書くか自慢みたいな。
中村:ゲスの走りですよね。
梅原:ただただ全員の性格が悪くなっていくだけですけど(笑)。
横谷:第2章のまとめになる11話の「レム」は印象深いですね。レムの回想シーンは地の文が長くて、小説ではうまく構成されているけど、どうちゃんとまとめて見せられるか、悩みました。あとアニメで長老が和服を着ていたのに驚いて。村のビジュアル的な情報があまりない状況だったので、がっつり回想を書いたうえで、スバルに抱えられて走っているところに戻るところは、なるべく原作に添って書くという点では割と印象に残っています。 あと印象深いセリフは、13話で、ユリウスとの私闘で倒された後、スバルが目を覚ましたベッドでエミリアに言われた「スバルの中の、私はすごいね」ですね。あれはキツいなあと。 梅原:あれはキツいですね。
横谷:長月さんはあれをどういう想いで書いたんだろう?
中村:すごいですよね。長月さんはどこであんな言葉を(笑)。本読みで毎回、横谷さんが「ああ、キツい!」っておっしゃってましたね(笑)。
横谷:第1章はグロい描写はいろいろあったけれど、第3章は精神的にくるものが多くて。
お話自体は異世界もので、アニメ的なキャラが出てくるけれど、スバルに向かう誰かのセリフだったり、スバルの置かれる状況は妙にリアルで精神をえぐられるんですよね。どういうつもりで長月さんは書いてるんだろう?
原作は普通に読めるけど、書く時はより入り込むじゃないですか? 2クール目の話は結局、苦しいところは他の2人に振っちゃいましたけど(笑)、本読みしているだけで軽く落ち込んでしまって。それを実際に演じる小林(裕介)さんは大丈夫なのかな? と。
中村:7話の「ナツキ・スバルのリスタート」は好きなセリフが多かったです。レムが呪いで死んでしまってラムから問いつめられても何も答えられないスバルをかばったエミリアが「それでもスバルを信じてみる」と言ったり、何気ない強さを感じられるセリフは好きでした。 あと7話でベアトリスがロズワールと対峙した時に言った「冗談は化粧と性癖だけにするかしら」も好きで。カットされそうだったけど、私はどうしても残したくて(笑)。ベアトリスを書いていると段々かわいくなってきて。「なのよ」、「かしら」の法則は大変でした。 横谷:きっちり守ってましたよね。
中村:長月さんのご指導のもとで。交互に順番になっているんですけど、どうしてもセリフをつまんでいくとその法則が崩れてしまうし、おかしくなってしまうところもあって。そこは長月さんがひと言セリフを付け足してくださって。
18話でスバルから一緒に逃げようと言われたレムが「未来のお話は、笑いながらじゃなきゃダメなんですよ?」と言ったセリフも深くてすごいなと。真理をついているなと。
横谷:あれは冒険でしたね。監督も、役者さんにかかっているし、演出も問われるところだしと言っていて。
中村:最初は、16~18話は2話でまとめようという話があったけど、「ゼロから」はあまり切りたくない、ちゃんと見せたいと。「じゃあ、あまり切らない方向で行きましょう」ということになって。監督も「ちゃんと見せられる」とおっしゃっていたので……。
横谷:あっ! 監督のせいにした!(笑)
中村:違いますよ! 監督のカッコイイところじゃないですか! プランがあるのがすごいなと。じゃあ私はセリフを頑張ろうと思ったけど、それでもセリフを切らないと入らないし。すごいな、長月さんはこういうふうに考えるんだと思いながら書きました。そしてレムにはとてもなれないなと。「愛しているからです」と言うのも説得力があって感動しました。私、ただの視聴者ですね(笑)。
梅原:僕はやっぱり15話が出てきちゃいますね。洞窟でのペテルギウスのシーンはすごかったですね。実は放送までペテルギウスを演じるのが松岡(禎丞)さんだって知らなくて。そしてこんな芝居でくるんだって。ペテルギウスの冷静になったり、狂気に染まったりという緩急はセリフでも付けていましたが、あそこまでやるのかと。劇伴と細田(直人)さんの絵コンテ、絵、役者さんの芝居も含めて想像以上のものを見せてくれたので。 あとは14話の終盤でエンドロールまで続くラストシーンで、スバルが村に到着して村人は全員死んでいるのに気付きながらも受け入れないというのが小説の地の文にあって。監督といろいろ話して、最初は死体を映さず、画面を暗くしてよく見ないと気付かないようにして、途中でスバルが軽く転んで、自分の手のひらに付いた血を見てから一気に感情を解放していこうと。地の文の気持ち悪さや空気感をどう表すかは演出との意思疎通ができたからうまく映像にできたかなと思っているので、とても印象深いです。 ――ちなみにご自身の担当回以外で印象的なエピソードは?
横谷:やっぱりペテルギウスは衝撃的でしたね。シナリオでもところどころに(指を噛む)とか書いているけど、あそこまでアクションがあるとは思ってなかったよね。
梅原:思ってなかったですね。どれか拾ってくれればいい、くらいだったので。
中村:書いている時から「ペテルギウスって何なんだろうね?」という話になって。
一同: (爆笑)
梅原:おっしゃってましたね。「この後、ペテルギウスは書けないよ」って(笑)。
中村:声が付いて更にすごくなりましたよね。
横谷:動きもあれだけのけぞったり、ブリッジまでしてたり。そこに枚数使うんだと。
中村:かわいげを感じてしまうのは私だけでしょうか?(笑)
梅原:本読みの時にあったエピソードですよね。
横谷:これは言ったもん勝ちだよね。皆さん、ツラい状況なのに、あの話になるといつまでもダラダラと話し続けた19話の「白鯨攻略戦」で、白鯨の出現を知らせる着メロですね。オンエアでは『フランダースの犬』のテーマ曲が流れたけど、決まるまで結構、長かったですよね。「関白宣言」はどうだろう? とか。 梅原:中村さんが「昴」でしたっけ? 僕がプリンセス・プリンセスの「M」で。
中村:1人だけ、カッコイイ曲言うんだもん。
梅原:「アルプスの少女ハイジ」が流れている中で白鯨が泳いできたらかわいいとか。
横谷:監督が「ヒゲのテーマ」だったり、もはや大喜利状態で、この場で何が流れたら一番おもしろいかという(笑)。
中村:最終的に決まった「よあけのみち」は結構、長く流れましたね。すごくシュールでした(笑)。
梅原:あと15話のエンドテロップは、吉川さんが最初、冗談で言ってたんですよね。精神的にだけでなく、絵的にもグロい描写が続いてしんどいからエンドテロップも全部赤字にしてドロドロみたいな感じにしましょうかと言っていて。僕が何を言ってるんですか? と笑っていたんですけど、オンエアを見たらそれよりもひどいことになってて(笑)。 横谷:そういえば吉川さんのひと言で長月さんが悔しがっていたことがあったよね。「何でそのセリフを言わせなかったんだろう」って。WEB版が本になる時に足しておこうと言ってましたね。
梅原:2つあって、1カ所が15話のラストで、スバルがレムの死体を抱えて吹雪の中、戻ってきた時、屋敷でラムが死んでいたけど、ラムが子供たちを守って死んでいたほうがいいと吉川さんが言って、僕がそうしますと言ったら長月さんがすごく悔しがってて。
21話(「絶望に抗う賭け」)のBパートで、白鯨を倒した後にレムとスバルが語り合うシーンがあって。そこは尺的にも入れるのが難しいからあっさり別れたいと思って原稿を出したら、監督や吉川さんからこれまでヒロインっぽく立たせてきたからもうちょっと尺を取って別れさせたいと。最終的に長月さんが2、3個のセリフを小説風に書き起こしてくださって、それをもらって書きました。 横谷:長月さんがセリフを書き起こしてくれたことも何度かあって。
――でも原作の方と意見交換しやすい状況というのはやりやすいですよね?
梅原:そうですね。本読みの場に来てくださって、エミリアのこともネタにしてましたからね。「ずっと出てないけど、どうしようか?」「ここでしゃべらせればいいだろ?」と軽口を言い合って(笑)。
横谷:あと、名前が付いていなかったキャラにその場で名前を付けたり。
梅原:19話でヴィルヘルムと昔から付き合いがある老兵軍団がいて、「原作の挿絵にもしいるとしたらどれですか?」と聞いたら「こいつです」と長月さんが指差して。「名前はあるんですか?」と続けて聞いたら「今決めます。コンウッドです」と。 横谷:そこからコンウッドが段々立っていったよね。
中村:ボスガルムも本読みの会議で決まったんですよね。
横谷:クズだ、クズだと言われますけど、かわいそうだし、この状況ならこうせざるを得ないよなと思いますね。16話とか。他のキャラは大人で割と真っ当じゃないですか? クルシュとかも冷静に「見返りは何か?」とか言うけど、普通のエンタメ小説や作品だったら何も言わずに助けに来てくれるのに、理詰めだったり、政治的に話してこられるのがキツいし、スバルに感情移入してしまうんですよね。理不尽な気がして「クルシュ、助けてやれよ」と(笑)。淡々と追い詰められたらきっとこうなってしまうだろうなと共感してしまうし、監督同様に僕もスバルかなと思えるから辛いのかもしれませんね。
中村:私はそれほどクズとも思えず、いい少年として描いてしまうくらい好きで。7話もすごくカッコよかったし。翻弄されながらも足掻いているところもクズと言われても主人公だなと思うんです。「男は度胸」とか言ってましたけど、愛嬌もあって好きでした。
――キャストの女性陣からもウザさは感じても、意外に好意的に受け止められていました。
中村:よかった。
横谷:男性陣はダメなんですか?
――ウザいとかクズとか言われるのは同族嫌悪みたいなところがあるのかもと小林さんは言ってました。
横谷:なるほどね。
中村:18話で「俺は俺のことが大嫌いだ」と言っているところを見ると、男性だからそう思うのかな? 別にいい人じゃん! と思うし、私もウルっときたし。
梅原:最初に担当したのが14~15話だからかもしれないけど、この子かわいそうだなという気持ちのほうが強くて。本当に頑張っていると思いますよ。
横谷:頑張っているスバルはかわいそうだけど、レムが盲目的にスバルに尽くすところがたぶんムカつくところじゃないかな。エミリアとレムの両方を持っていこうとする感はクズだと思います。
一同: (爆笑)
横谷:ユリウスあたりが両方持っていこうとするならわかるけど、「何でスバルが!?」と。俺もスバルと同じなのに、何でエミリアもレムもいないのよと。たぶん(笑)。
アニメイトタイムズにて掲載中の本企画、第20回目にご登場いただくのは、シリーズ構成&脚本を担当する横谷昌宏さんと、同じく脚本担当の中村能子さん、梅原英司さんのお三方。ここまで作品に携わってきた感想とご自身が担当されたお話やシーンなどについて振り返っていただきました。更に今だから話せる制作秘話も明らかに!
目次
- ライトノベル原作と縁がなかった脚本チーム。シリーズ構成の横谷さんは辛い回を2人に?
- 作画や演出、キャスト陣の頑張りと完成映像の素晴らしさに感動
- 監督が脚本へのオーダーよりも気にしていたことは?
- 濃密な原作ゆえに脚本化する際に苦労した点
- 自身が担当した回の印象的なシーンやセリフとは?
- 話題になった15話、18話の制作秘話
- 今だから話せる! 爆笑の制作エピソード
- 主人公・スバルについて率直に思う事とは?
- 3人のお気に入りキャラとは?
- 次回登場の小林裕介さんと松岡禎丞さんへの質問発表!
- 脚本執筆終了後も余談を許さないアニメを最後まで見届けましょう!
ライトノベル原作と縁がなかった脚本チーム。シリーズ構成の横谷さんは辛い回を2人に?
――『リゼロ』という作品に初めて触れた時の印象とここまで関わってきたうえでの感想は?
横谷昌宏さん(以下、横谷):異世界転生ものというのはよく聞きますが、実際に読んだのは初めてで。スバルは現世界に何の未練もなく、戻りたいという希望もないまま始まるのが斬新でした。(WHITE FOXの)吉川(綱樹)さんからは「結構グロい描写とかあるんですけど大丈夫ですか?」と言われて。実際に1巻を読んでみたら「これくらいなら大丈夫かな」と思ったし、おもしろそうだったし、タイムリープものというのも聞いていて、僕もそういう作品は好きなので引き受けました。
そして3巻、4巻と読み進めていくうちに、内臓が出たりとかのグロさではなく、精神的にくるのが辛くて。先日、(MF文庫J編集の)池本(昌仁)さんにお会いした時も「よく辛い、辛いと言ってましたよね」と。特に2クール目は辛くて。そういうところをお二方に振ったわけですけど。
一同: (爆笑)
横谷:だから正直な印象は「まさか、こんなことになろうとは」ですね。
中村能子さん(以下、中村):私もライトノベル作品に呼んでいただくのが初めてだったので、大丈夫かなと。まず1巻を読んだら「パックかわいい!」って。みんなから「そこかよ!」とツッコミが入りましたけど(笑)。私が入った時は横谷さんが既に3話まで書かれていて、そこで1巻分は終わっていて、「あれ?」と(笑)。 とても情報力が多いドラマだしどうしようと思いました。いただいた構成表も長いページ数が指定されていて「こんなに入れるんだ!?」というのが第一印象です(笑)。お話がおもしろいので盛り上がることはわかっていたけど、いかにこの情報量を入れ込めるかに苦闘して、「いつまで経っても終わらない」という気分で書いてました。でも楽しかったです(笑)。
梅原英司さん(以下、梅原):僕は結構遅れての参加で、8~9話の脚本あたりで横谷さんから声をかけていただいて。僕もライトノベル作品は初めてで、1巻から読みましたが、自分が担当するであろう、後ろのほうの巻を集中して読みました。後ろの巻は、感情のドラマをエンタメの中でしっかりやっているなというのが第一印象でした。
――梅原さんには、横谷さんから声をかけられたんですよね?
横谷:最初は中村さんと2人で回していくつもりだったけど、お互いにあまり筆が早いほうじゃないし(笑)、スケジュール的にもう1人と言われて。いろいろなライターさんの名前が挙がる中、(WHITE FOX社長の)岩佐(岳)さんから「もっと若い人がいいな」と言われ、ちょっとズキッとしつつ。
一同: (爆笑)
横谷:梅原さんが、僕が知っている中で若いほうで、『カオスチャイルド』のゲームのシナリオもやっているしと思って、名前を挙げたら長月(達平)さんが最近『カオスチャイルド』をプレイしていたそうで。「じゃあ、大丈夫だ。辛いところを任せても」とお願いしました。12~13話か、14~15話をお願いしようと考えて、精神的にキツそうな14話~15話のほうをお願いしました(笑)。
梅原:でも13話(「自称騎士ナツキ・スバル」)が一番キツかったような。 横谷:自分でも書いてみたら意外にキツいなと(笑)。思い返すと16話の「豚の欲望」が一番辛かったかな。いろいろなところを回って、ひたすら拒否られるのは。18話の「ゼロから」は女性のほうがいいかなと思って。
作画や演出、キャスト陣の頑張りと完成映像の素晴らしさに感動
――実際に完成したアニメをご覧になった感想は?横谷:作画も演出も素晴らしくて。3話のエルザのアクションシーンもすごいなと思ったし、細かい部分もこだわりが見えて、(TV版では修正が入っていたシーンとなりますが)特にグロ描写は、5話のスバルの目玉が転がるシーンとかすごかったです。 中村:絵や演出はもちろん、声優さんの演技も素晴らしくて、ぐっと胸に刺さりました。いつもリアルタイムで見ているんですけど、日曜の夜に見ると月曜がヤバいんだよなということが何度かありましたが(笑)、すごいなと感動したり、呆然としたり。参加させてもらって幸せだったなと思いました。
横谷:絶対、きれいに締めますね(笑)。
中村:素直な気持ちですから(笑)。私、『はたらく魔王さま!』が好きで、手がけられていたのがWHITE FOXさんと横谷さんだったので、それも今回やらせていただきたいと思った理由の1つで、今作もやっぱり素晴らしかったので「やった!」と。パックもめちゃめちゃかわいくて、私はパック好きなのでうれしかったです。
――渡邊政治監督のパック推しもあって。
横谷:謎のパック推しですよね。
中村:最初は、「中村さん、パック好きなんですか?」と笑っていらしたのに。
――キツい話なのでいつの間にかパックを求めている自分がいたとおっしゃっていました。
横谷:言ってましたね。だんだんキツくなってきたと。
中村:6話(「鎖の音」)で「猫パ~ンチ」とか入れたら、監督にしばらくしてから「アレ、入れておいてよかったですよ」とおっしゃってもらえたのがうれしかったです。私も少しは役に立てたのかなと(笑)。あのシーン、めちゃめちゃかわいかったです。 ――キャストさん達もあの頃は幸せだったなと遠い目をしてましたから(笑)。
横谷:本当にそうですよね。
中村:13話を見ていて、横谷さんが「キツいキツい」って言ってたけど、キツかっただろうなと思いましたもん。自分が書いた話数よりも辛く感じました。
横谷:本当に? 僕は(16話の)「豚の欲望」がキツかったけど。 中村:確かにキツいですよね。男性スタッフ陣がプリシラ好きなのには驚きましたけど。
横谷:あの本読みの現場は皆さん、すごく偏っていると思うので。
一同: (爆笑)
梅原:脚本の後ろの工程の、コンテ処理や作画さんがすごく頑張ってくださっているという気持ちが強いですね。特に15話(「狂気の外側」)は絵の力で何とかもたせてほしいという部分が脚本上であるので、期待以上に応えてくださって、ありがとうございますという感じでした。
監督が脚本へのオーダーよりも気にしていたことは?
――渡邊監督からスタッフの方々に作品に寄り添ってほしいという最低限のオーダーしかしていないとお聞きしましたが……。横谷:そうですね。原作がおもしろいので、それを崩さないように。でも長いのでいかに元の原作のイメージを保ったまま、圧縮するかというお話があったくらいですね。
これは余談ですが、最初の頃、監督と飲みに行ったら「血液型は何型ですか?」とか「星座は何座ですか?」みたいなことを聞かれて、「じゃあ、相性は悪くはないですね」と言われたことは今でも強烈に覚えていて。「この人はそういうことを気にする人なんだ」と。まあ、自分もそうなんですけど(笑)。
梅原:そうなんですか?
横谷:うん。でも本当に監督と相性がいいのかは確かめてないんですけどね。
一同: (爆笑)
――横谷さんからお二人には何か説明やオーダーがあったんですか?
横谷:お任せでしたね。2クール目はひどい投げ方で、中村さんにも「4巻と5巻をお願いします」みたいな。「切りどころはこの辺で」というのはあったけど。白鯨戦も最初は2話でやる予定だったけど無理だから3話になって。
KADOKAWA・田中翔さん:実は元々、25話じゃなかったですからね。
横谷:そこはフレキシブルに対応してくれた田中さんがすごいなと。何を言っても「大丈夫ですよ」と。本当に感謝してます。
濃密な原作ゆえに脚本化する際に苦労した点
――皆さんが脚本を制作するうえで意識したことや心がけたことは?横谷:監督に言われた通り、圧縮する作業が中心になるので、いかに大切なセリフを残しつつ、イメージを変えないようにするかを気にしました。そして伏線がいっぱいあって、ループものなので、変に削るとつじつまが合わなくなったりするので、そこは大変でしたね。
中村:最初はつかめていなかったのか、私が書くと「スバルがカッコよく見える」と怒られて。
梅原:その怒られ方もすごいですね。主人公がカッコよくて何が悪いんでしょうね(笑)。
中村:でも、それが『リゼロ』ならではで。
横谷:女性が書くとこういうスバルになるんだと目からウロコでした。
中村:本当ですか? 6話(「鎖の音」)で、スバルがラムに『泣いた赤鬼』のお話をするシーンがあって、会話でずっと見せるのとかが難しくて。『泣いた赤鬼』部分のリテイクは結構ありました。吉川さんから「『泣いた赤鬼』だけ、もう一稿お願いします」と言われて。 横谷:短い尺の中でいかに『泣いた赤鬼』の話を簡潔に伝えるかというのは難しいですよね。
中村:絵を見たら監督がペンなどを使って工夫して見せてくださって。この時に監督から言われたんですよね。「ここでカッコイイのはちょっと。いきなりなんで、そこは気を付けてください」と。「そうか! スバルらしいところを抜かないといけないんだな」ってすごく勉強になりました。
――スバルはウザイとかクズとか呼ばれていますからね。
中村:でも決めゼリフではカッコイイことを言ってるので、本心ではカッコイイ人だと思っちゃうので、ついついそういう見方になっちゃうんですけど。
梅原:僕は担当したのは伏線を蒔く回ではなく、回収する回のほうが多かった気がするので、「これまでの回でこうなっていたらそこをフラッシュ(バック)してください」とよく書いていた気がします。中村さんが蒔いてくださった伏線を……。
中村:確かに私、結構蒔き回だった(笑)。
梅原:だから回収する時のドラマをうまく見せられるように。盛り上がりですね。うまく見せないと伏線がムダになってしまうので。感情の流れを意識して書かせていただいて。最初に関わらせていただいた14話(「絶望という病」)の時には、ウザさとゲスさが皆さんの間でマイブームになってましたよね。「ただゲスって言いたいだけだろう?」みたいな(笑)。その時に中村さんのようにカッコよく書いたためにリテイクというのがありました。「もっとゲスく」と。 横谷:いかにゲスく書くか自慢みたいな。
中村:ゲスの走りですよね。
梅原:ただただ全員の性格が悪くなっていくだけですけど(笑)。
自身が担当した回の印象的なシーンやセリフとは?
――ご自身が担当された回の中で印象深いシーンやお気に入りのセリフなどを挙げてください。横谷:第2章のまとめになる11話の「レム」は印象深いですね。レムの回想シーンは地の文が長くて、小説ではうまく構成されているけど、どうちゃんとまとめて見せられるか、悩みました。あとアニメで長老が和服を着ていたのに驚いて。村のビジュアル的な情報があまりない状況だったので、がっつり回想を書いたうえで、スバルに抱えられて走っているところに戻るところは、なるべく原作に添って書くという点では割と印象に残っています。 あと印象深いセリフは、13話で、ユリウスとの私闘で倒された後、スバルが目を覚ましたベッドでエミリアに言われた「スバルの中の、私はすごいね」ですね。あれはキツいなあと。 梅原:あれはキツいですね。
横谷:長月さんはあれをどういう想いで書いたんだろう?
中村:すごいですよね。長月さんはどこであんな言葉を(笑)。本読みで毎回、横谷さんが「ああ、キツい!」っておっしゃってましたね(笑)。
横谷:第1章はグロい描写はいろいろあったけれど、第3章は精神的にくるものが多くて。
お話自体は異世界もので、アニメ的なキャラが出てくるけれど、スバルに向かう誰かのセリフだったり、スバルの置かれる状況は妙にリアルで精神をえぐられるんですよね。どういうつもりで長月さんは書いてるんだろう?
原作は普通に読めるけど、書く時はより入り込むじゃないですか? 2クール目の話は結局、苦しいところは他の2人に振っちゃいましたけど(笑)、本読みしているだけで軽く落ち込んでしまって。それを実際に演じる小林(裕介)さんは大丈夫なのかな? と。
中村:7話の「ナツキ・スバルのリスタート」は好きなセリフが多かったです。レムが呪いで死んでしまってラムから問いつめられても何も答えられないスバルをかばったエミリアが「それでもスバルを信じてみる」と言ったり、何気ない強さを感じられるセリフは好きでした。 あと7話でベアトリスがロズワールと対峙した時に言った「冗談は化粧と性癖だけにするかしら」も好きで。カットされそうだったけど、私はどうしても残したくて(笑)。ベアトリスを書いていると段々かわいくなってきて。「なのよ」、「かしら」の法則は大変でした。 横谷:きっちり守ってましたよね。
中村:長月さんのご指導のもとで。交互に順番になっているんですけど、どうしてもセリフをつまんでいくとその法則が崩れてしまうし、おかしくなってしまうところもあって。そこは長月さんがひと言セリフを付け足してくださって。
18話でスバルから一緒に逃げようと言われたレムが「未来のお話は、笑いながらじゃなきゃダメなんですよ?」と言ったセリフも深くてすごいなと。真理をついているなと。
話題になった15話、18話の制作秘話
――18話はほぼスバルとレムの会話劇で、オンエア後の反響もかなり大きかったですね。横谷:あれは冒険でしたね。監督も、役者さんにかかっているし、演出も問われるところだしと言っていて。
中村:最初は、16~18話は2話でまとめようという話があったけど、「ゼロから」はあまり切りたくない、ちゃんと見せたいと。「じゃあ、あまり切らない方向で行きましょう」ということになって。監督も「ちゃんと見せられる」とおっしゃっていたので……。
横谷:あっ! 監督のせいにした!(笑)
中村:違いますよ! 監督のカッコイイところじゃないですか! プランがあるのがすごいなと。じゃあ私はセリフを頑張ろうと思ったけど、それでもセリフを切らないと入らないし。すごいな、長月さんはこういうふうに考えるんだと思いながら書きました。そしてレムにはとてもなれないなと。「愛しているからです」と言うのも説得力があって感動しました。私、ただの視聴者ですね(笑)。
梅原:僕はやっぱり15話が出てきちゃいますね。洞窟でのペテルギウスのシーンはすごかったですね。実は放送までペテルギウスを演じるのが松岡(禎丞)さんだって知らなくて。そしてこんな芝居でくるんだって。ペテルギウスの冷静になったり、狂気に染まったりという緩急はセリフでも付けていましたが、あそこまでやるのかと。劇伴と細田(直人)さんの絵コンテ、絵、役者さんの芝居も含めて想像以上のものを見せてくれたので。 あとは14話の終盤でエンドロールまで続くラストシーンで、スバルが村に到着して村人は全員死んでいるのに気付きながらも受け入れないというのが小説の地の文にあって。監督といろいろ話して、最初は死体を映さず、画面を暗くしてよく見ないと気付かないようにして、途中でスバルが軽く転んで、自分の手のひらに付いた血を見てから一気に感情を解放していこうと。地の文の気持ち悪さや空気感をどう表すかは演出との意思疎通ができたからうまく映像にできたかなと思っているので、とても印象深いです。 ――ちなみにご自身の担当回以外で印象的なエピソードは?
横谷:やっぱりペテルギウスは衝撃的でしたね。シナリオでもところどころに(指を噛む)とか書いているけど、あそこまでアクションがあるとは思ってなかったよね。
梅原:思ってなかったですね。どれか拾ってくれればいい、くらいだったので。
中村:書いている時から「ペテルギウスって何なんだろうね?」という話になって。
一同: (爆笑)
梅原:おっしゃってましたね。「この後、ペテルギウスは書けないよ」って(笑)。
中村:声が付いて更にすごくなりましたよね。
横谷:動きもあれだけのけぞったり、ブリッジまでしてたり。そこに枚数使うんだと。
中村:かわいげを感じてしまうのは私だけでしょうか?(笑)
今だから話せる! 爆笑の制作エピソード
――本作制作にまつわる、今だから話せるエピソードがあれば教えてください。梅原:本読みの時にあったエピソードですよね。
横谷:これは言ったもん勝ちだよね。皆さん、ツラい状況なのに、あの話になるといつまでもダラダラと話し続けた19話の「白鯨攻略戦」で、白鯨の出現を知らせる着メロですね。オンエアでは『フランダースの犬』のテーマ曲が流れたけど、決まるまで結構、長かったですよね。「関白宣言」はどうだろう? とか。 梅原:中村さんが「昴」でしたっけ? 僕がプリンセス・プリンセスの「M」で。
中村:1人だけ、カッコイイ曲言うんだもん。
梅原:「アルプスの少女ハイジ」が流れている中で白鯨が泳いできたらかわいいとか。
横谷:監督が「ヒゲのテーマ」だったり、もはや大喜利状態で、この場で何が流れたら一番おもしろいかという(笑)。
中村:最終的に決まった「よあけのみち」は結構、長く流れましたね。すごくシュールでした(笑)。
梅原:あと15話のエンドテロップは、吉川さんが最初、冗談で言ってたんですよね。精神的にだけでなく、絵的にもグロい描写が続いてしんどいからエンドテロップも全部赤字にしてドロドロみたいな感じにしましょうかと言っていて。僕が何を言ってるんですか? と笑っていたんですけど、オンエアを見たらそれよりもひどいことになってて(笑)。 横谷:そういえば吉川さんのひと言で長月さんが悔しがっていたことがあったよね。「何でそのセリフを言わせなかったんだろう」って。WEB版が本になる時に足しておこうと言ってましたね。
梅原:2つあって、1カ所が15話のラストで、スバルがレムの死体を抱えて吹雪の中、戻ってきた時、屋敷でラムが死んでいたけど、ラムが子供たちを守って死んでいたほうがいいと吉川さんが言って、僕がそうしますと言ったら長月さんがすごく悔しがってて。
21話(「絶望に抗う賭け」)のBパートで、白鯨を倒した後にレムとスバルが語り合うシーンがあって。そこは尺的にも入れるのが難しいからあっさり別れたいと思って原稿を出したら、監督や吉川さんからこれまでヒロインっぽく立たせてきたからもうちょっと尺を取って別れさせたいと。最終的に長月さんが2、3個のセリフを小説風に書き起こしてくださって、それをもらって書きました。 横谷:長月さんがセリフを書き起こしてくれたことも何度かあって。
――でも原作の方と意見交換しやすい状況というのはやりやすいですよね?
梅原:そうですね。本読みの場に来てくださって、エミリアのこともネタにしてましたからね。「ずっと出てないけど、どうしようか?」「ここでしゃべらせればいいだろ?」と軽口を言い合って(笑)。
横谷:あと、名前が付いていなかったキャラにその場で名前を付けたり。
梅原:19話でヴィルヘルムと昔から付き合いがある老兵軍団がいて、「原作の挿絵にもしいるとしたらどれですか?」と聞いたら「こいつです」と長月さんが指差して。「名前はあるんですか?」と続けて聞いたら「今決めます。コンウッドです」と。 横谷:そこからコンウッドが段々立っていったよね。
中村:ボスガルムも本読みの会議で決まったんですよね。
主人公・スバルについて率直に思う事とは?
――スバルというキャラについての印象は?横谷:クズだ、クズだと言われますけど、かわいそうだし、この状況ならこうせざるを得ないよなと思いますね。16話とか。他のキャラは大人で割と真っ当じゃないですか? クルシュとかも冷静に「見返りは何か?」とか言うけど、普通のエンタメ小説や作品だったら何も言わずに助けに来てくれるのに、理詰めだったり、政治的に話してこられるのがキツいし、スバルに感情移入してしまうんですよね。理不尽な気がして「クルシュ、助けてやれよ」と(笑)。淡々と追い詰められたらきっとこうなってしまうだろうなと共感してしまうし、監督同様に僕もスバルかなと思えるから辛いのかもしれませんね。
中村:私はそれほどクズとも思えず、いい少年として描いてしまうくらい好きで。7話もすごくカッコよかったし。翻弄されながらも足掻いているところもクズと言われても主人公だなと思うんです。「男は度胸」とか言ってましたけど、愛嬌もあって好きでした。
――キャストの女性陣からもウザさは感じても、意外に好意的に受け止められていました。
中村:よかった。
横谷:男性陣はダメなんですか?
――ウザいとかクズとか言われるのは同族嫌悪みたいなところがあるのかもと小林さんは言ってました。
横谷:なるほどね。
中村:18話で「俺は俺のことが大嫌いだ」と言っているところを見ると、男性だからそう思うのかな? 別にいい人じゃん! と思うし、私もウルっときたし。
梅原:最初に担当したのが14~15話だからかもしれないけど、この子かわいそうだなという気持ちのほうが強くて。本当に頑張っていると思いますよ。
横谷:頑張っているスバルはかわいそうだけど、レムが盲目的にスバルに尽くすところがたぶんムカつくところじゃないかな。エミリアとレムの両方を持っていこうとする感はクズだと思います。
一同: (爆笑)
横谷:ユリウスあたりが両方持っていこうとするならわかるけど、「何でスバルが!?」と。俺もスバルと同じなのに、何でエミリアもレムもいないのよと。たぶん(笑)。
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(C) 長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会