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『コードギアス』の監督が原作の『ĀTRAIL』イベントをレポート

アニメ化に期待!?『コードギアス』を手掛けた谷口悟朗監督がコミック原作を担当する『ĀTRAIL(アートレイル)』第2巻発売記念イベントをレポート

 2016年11月15日、AKIHABARAゲーマーズ本店にて、漫画『ĀTRAIL‐ニセカヰ的日常と殲滅エレメント』第2巻発売記念イベントが実施されました。

 『ĀTRAIL‐ニセカヰ的日常と殲滅エレメント』(以下、『アートレイル』)は、『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『純潔のマリア』など数々の人気アニメを生み出してきた谷口悟朗監督が初の漫画原作として手がけた作品で、『あしたのファミリア』の樋口彰彦先生が作画を担当しています。

 今回行われたイベントでは、その谷口悟朗監督と樋口彰彦先生の両氏に加えて、倉田雅世さん、私市淳さん、真田アサミさん、原田男さん、ゆきのさつきさん、千葉一伸さんらをはじめとした、谷口悟朗監督の作品でも馴染みの深い声優陣が大勢参加する「エンタメ集団 クマの湯おけ!」のメンバーによる朗読も行われました。

目の前で行われる朗読劇の迫力に、客席はすっかり釘付けに!
 今回上演されたのは第1巻の4話に相当するエピソードで日常へと帰還した主人公・四十万伊織と、伊織を取り巻くヒロイン達、その背後で蠢く陰謀といった見所満載の朗読が行われ、目の前で繰り広げられる声優陣の迫力の演技に、会場の誰もが圧倒され、その世界観へと引き込まれていた様子。上演終了時には、熱演を見せてくれた声優陣に対し、盛大な拍手喝采が送られていました。

 そんな声優陣の熱演を受けながら、開口一番「アニメ化したらいいですね!」と興奮気味のコメントと共に谷口監督と樋口先生が登壇し、『アートレイル』にまつわるトークが展開されることに。樋口先生は、日頃から谷口監督が書いた脚本にかなりアレンジを加えていることを気にしていたようで、いきなりその謝罪からスタートする始末。逆に谷口監督によると、脚本の段階では絵の部分を完璧に想定することは難しいため、絵に起こす段階で遠慮のないアレンジを加えてくれることに対して感謝の気持ちがあるのだとか。それもそのはず。これは谷口監督自身も、脚本をコンテにする時にやっていることでもあるそうです。

 なお樋口先生によると、描いていてもっとも楽しいキャラクターは主人公の「設定」上の母親である「四十万こずえ」。今まで樋口先生に手がけた作品にはいなかったタイプのキャラクターで、動かしていて非常に新鮮だったのだとか。その分こだわりも強いようで、第1話でこずえが登場する際には、パジャマ越しに胸のサイズがわかるように描くべきかという一点に、かなり真剣に悩んでいたことも明かされていました。

質疑応答のコーナーでは、会場の度肝を抜くようなぶっちゃけトークが展開
 その後には、谷口監督と樋口先生へと質疑応答のコーナーが設けられ、会場から寄せられた数々の質問に、お二人が回答していきます。

 まず作画を樋口先生が担当することになった経緯について。本作は「ロボットも登場しそうで、一見アニメにしやすそうな世界観なんだけど、そちらが主題にはならない」という谷口監督の発想からスタートしています。しかし、谷口監督は絵柄に影響されて物語を書いてしまうことがあるそうで、当初の企画の趣旨から外れてしまう恐れがあったのだとか。そこで、当初の路線を維持できるような絵柄を探していた際目に止まった樋口先生の絵。「素直な雰囲気に見えた」のが決定打になったといいます。

 一方の樋口先生は谷口監督に対して、「作品に対してのこだわりが凄まじい」という業界に伝わる噂を前々から耳にしており、「めちゃくちゃ怒られそう」という怖いイメージを抱いていたそう。実際の打ち合わせではまったく正反対の温厚な人柄で、その印象が大きく変わったのだとか。

 なおそうした噂話を聞いているのは樋口先生だけではないようで、谷口監督が初めて仕事をするアニメスタジオにいった際、そういう噂を間に受けたスタッフの何人かが、谷口監督に対して明らかにビビっていたこともあったようで、「風評被害に困っている」と、意外な(?)苦労を打ち明ける一幕も。

 『アートレイル』といえば、自身の考えた予定を狂わされることを何よりも嫌う、個性的なキャラクターである主人公の四十万伊織の存在も、大きな人気の要因の一つ。今回のトークの中でもそんな伊織に関する話題は何度も登場しており、中でも盛り上がりを見せたのが、「伊織と友達になれると思うか」という話題。当初は谷口監督・樋口先生共に「待ち合わせなどの予定をきっちり守ってくれるだろうから、友達としては付き合いやすいのでは」と肯定的な立場をとっていました。ところが、それが異性としてはどうか、という話になると「ディズニーランドのアトラクションの時間を完全に管理されそう」「バーベキューとかで焼く順番に徹底してこだわりそう」とマイナス面の意見が次々と噴出。最終的には「友達としてもめんどくさそう」という、当初の意見とは正反対の結論が導き出されることに。

 質問の中でも谷口監督と樋口先生を驚かせたのは、「(谷口監督自身が)作中に登場する予定はありますか?」という予想外の方向性。谷口監督は「そういうのは作画する側が遊び心として入れるものなので」と説明し、脚本としてはメタ的な要素を盛り込む予定は一切ないと否定。しかし、実は谷口監督自身、過去に関わったアニメ作品などに何度もキャラクターとして登場させられており(『ARIEL』、『ガサラキ』、『BAMBOO BLADE』など)、もし樋口先生が遊び心として登場させたいのなら、それに対する抵抗はない様子。

 また「アニメ化した際には、逆に樋口先生のほうが登場することも?」とも尋ねられると、「もし必要となったら、“ヒグチくん”なる人物が登場することもあるかもしれない」と、その可能性を含ませるコメントも披露しつつ、最終的には、「もしどちらかが出てくることがあったら、きっとあなたのせいだと思います」と質問者をイジリ、笑いを誘っていました。

 谷口監督が手がけた作品といえば、『コードギアス 反逆のルルーシュ』や『無限のリヴァイアス』など、主要人物達が過酷な境遇に置かれる作品が多いということで「でも、重い展開が待ち受けているのでは?」という今後の展開に関係する質問も。ところがこれには谷口監督の口から「もしそういう(容赦のない)展開にするのなら、最初の一話でヒロインたちを全員死なせていると思います」と、客席の度肝を抜く回答を披露。

 実際に本作の企画当初では、ヒロインを序盤で死なせるという驚きの展開も検討されていたそうなのですが、同時期に谷口監督が手がけた『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』にて、長年の付き合いであるアニメーターの西田亜沙子さんから「アンタはすぐにキャラを殺そうとするから、今回は殺さないように」という忠告を受け、現在の路線に落ち着いたという裏話が明かされると、客席からは大爆笑が沸き起こります。

 さらにトークは『アートレイル』に関係したものだけに留まらず、樋口先生が谷口監督作品の中でも、『コードギアス 反逆のルルーシュ』で、主人公のルルーシュが、文化祭のエピソードで息を切らしているシーンが印象的だったという話題を挙げます。谷口監督の口から「初期の脚本段階では、ルルーシュはなんでもこなせる万能超人だったけど、あのシーンで絵コンテを起こしてみると、自然に息を切らせてああなった」という驚きの事実が明かされます。こうした、絵に起こした際に改めてキャラクターへの理解が深まり、設定を変更するという経験は樋口先生も思い当たる節があったらしく、クリエイター同士ならではの深い共感を呼んでいたようです。

 などなど、聞かれた質問に対してはなんでも答える、ユーモア満載のぶっちゃけトークを展開してくれた谷口監督と樋口先生。この質疑応答の時間は約一時間にも及び、来場者から寄せられるバリエーション豊かな質問の一つ一つに、非常に丁寧に回答されている姿が印象的でした。

 そしてイベントの最後には、谷口監督と樋口先生による直筆サイン入り特典プロマイドのお渡し会を実施。来場者は憧れの存在であるお二人と、時に言葉、時に握手を交わして大喜びしながら、『アートレイル』の今後の展開に向け期待を膨らませていた様子でした。

[取材・文/米澤崇史]

【書誌情報】
『ĀTRAIL ‐ニセカヰ的日常と殲滅エレメント 』
脚本:谷口悟朗 漫画:樋口彰彦
定価:各本体580円+税 1・2巻好評発売中!!

【連載情報】
下記のコミックサイトにて好評連載中!!
>>コミックNewtype
>>ニコニコ静画(マンガ)
>>コミックウォーカー
>>Pixivコミック

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