新鋭の少年役として成長し、念願の少女役は夢のプリキュア! 村中知スペシャルインタビュー・後編「声優、村中知を知る」
2017年2月より放送中のプリキュアシリーズ最新作『キラキラ☆プリキュアアラモード』の立神あおい/キュアジェラート役で新たな魅力を見せている女性声優・村中知さん。
『オレカバトル』の俺牙ファイヤ、『ワールドトリガー』の空閑遊真など、ハスキーボイスを活かした少年役が印象的な彼女に前後編に亘ってインタビューを実施! これまでプライベートを語る機会があまりなかったという村中さんに、前回は幼少期から新人声優時代までの初公開エピソードの数々を明かしていただきました。
そして後編の今回は、『オレカバトル』『ワールドトリガー』から『プリキュア』までたっぷりとお届けします!
▲村中 知(むらなか とも)
12月15日生まれ。茨城県出身。血液型A型。主な出演作『オレカバトル』俺牙ファイヤ役、『ワールドトリガー』空閑遊真役、『アイドルマスター シンデレラガールズ』大和亜季役、『超ロボット生命体 トランスフォーマーアドベンチャー』ラッセル役、『フューチャーカード バディファイトDDD』太陽の竜バルドラゴン・超太陽竜バルソレイユ役、『キラキラ☆プリキュアアラモード』立神あおい・キュアジェラート役、劇場アニメ『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』シンドバッド役ほか。東京俳優生活協同組合所属。
【インタビュー前編はコチラ】
――前回、初主演作の『オレカバトル』で自信を持つことができたと伺いましたが、プロの声優としてやっていけるかもしれないと思えた作品は?
村中知さん(以下、村中):そう言われると、ないんですよ(笑)。最初は端役からやらせていただいたわけですが、中学生の女の子とかをやると、「もっと年齢下げて」って言われることが多かったから、毎回悔しさと課題が増えていくような感じだったんです。
『オレカバトル』の俺牙ファイヤは、まさに「ザ・主人公!」って感じの熱い男の子の役で、感情解放を極限までする術を身に着けることもできました。それまでの、1話だけの参加だったり、レギュラーでもあまり出番がなかった作品では感じられなかった、最初から最後までの流れを見せるお芝居も勉強させてもらったり、男の子役の地を固めてもらったのも『オレカバトル』だと思います。
その次といえば『ワールドトリガー』ですね。空閑遊真は淡々とした男の子で、感情を剥き出しにすることはなく、抑えた芝居が多かったんですよ。抑えるといっても棒読みになってはいけないので苦戦しました。戦闘中も感情を出すことなく、淡々と相手を倒していく。でも最初の頃は私が熱くなっちゃって、キャラから外れてしまう失敗もありました。
キャラクターとしての幅を作ることが、まだ出来ていなかった。この作品で、淡々としている男の子の喜怒哀楽とか、戦闘中の幅を身に着けて、常に解放するだけじゃない、キャラクターとして生きるための技術を得たという意味で、すごく大きい作品でした。
――ボリュームをMAXに出す方法を教えてもらったのが『オレカバトル』で、『ワールドトリガー』ではボリュームを絞った状態でもバトルの緊張感を出すという調節方法を教えてもらった感じですか?
村中:そうです。「殺意がこもっていれば、ボソっと喋る言葉でも怖くできる」と、自分なりに研究したりしましたね。殺意を込めるために、台本に物騒な言葉を書きなぐっていました(笑)。
かなり背景がしっかり構築されている作品だったので、父親を目の前で失くしているといった遊真の過去を自分の中に取り入れて、キャラクターの人格を作るという作業を緻密に出来た作品だと思います。
――ちなみに『ワールドトリガー』では、遊真が「(三3三)」みたいな口で喋るときには、村中さんもそういう口で喋っているそうですね。
村中:最初の頃は喋り難かったけれど、今ではもう習得して、この口のままなんでも喋れるんです(笑)。
田中敦子さんに藤原啓治さん、大先輩の背中から学んだこと
――田中敦子さん以降で、現場で影響を受けた先輩は? それこそ抑えた芝居での殺意といったら、速水奨さんなどは相当ですよ。
村中:速水さんの殺意のこもったお芝居は、まだ生で拝見したことがないんです。いつかまた共演させていただけるよう頑張ります。敦子さんは衝撃が大き過ぎたけれど、影響はどなたからも受けているんです。
たとえば藤原啓治さんからは、「味」と「生き様」が芝居にこんなにも出るのか、という衝撃を受けました。これは声色でどうこうできる話じゃないぞと。ご本人の茶目っ気も芝居に溢れているし、あの独特のお声も唯一無二だと思いますね。
――『ワールドトリガー』の後はどういった感じだったのでしょうか?
村中:『超ロボット生命体 トランスフォーマーアドベンチャー』『パワーパフガールズ』『フューチャーカード バディファイトDDD』とか、子供向けの作品に携わらせていただくことが増えた一方で、対象年齢の高い作品には全然受からなかったので、自分の道を模索していた時期だった気がします。「子供向け作品のほうが、私には合うのかしら?」とか。
――子供向けが一番大変で、責任も重いんですよ。20年後の日本に影響しますから。
村中:自分もアニメに触発されたほうなので、子供向けの作品に出演させていただくのはプレッシャーになりますね。
――その頃には、トラウマ級の失敗などはもう起こさなくなっていましたか?
村中:1作品に1度は起こしますね(笑)。自分では正しいと思って突き進んでいたんですけど、後々になって「あれはなかったよね」って言われたときは、かなりショックを受けてしばらく後悔と不安で鬱々としていました。
たいてい叱咤激励ですが、心にグッサリ来るようなことが、必ず1度はあるんですよ。私が深刻に捉えすぎて、トラウマにしているようなところもありますね。といっても、それをバネに前に進んでこられたので有難く思っています。
――主役級だと少年役が多いですが、女性役もけっこうされていますよね。女性役はいかがですか?
村中:吹き替えの現場だと女性を演じさせていただくことが多いのですが、アニメでは若い子がないんですよ。お母さんとか、せいぜい28歳くらいとか。高校生や中学生はほぼないです。
――その辺りが回ってこないことに対しては、忸怩たるものがある?
村中:2~3年くらい前は、女の子をやる自信をなくし、諦めた方が良いのかもと思っていた時期もありましたね。吹き替えでは女性もやらせていただけるし、アニメでの女の子は諦めようって。だけど、そもそも性別や種族を超えて色んな役柄になるのが好きだから声優になったわけで、だからやっぱり女の子もやりたいなと思い、実際皆さんがどういう喋り方をしているのかを研究したりもしました。
ただ、無理して真似しても、逆にらしさがなくなるというか。「それって村中じゃなくてもいいよね」ってことになるんですよ。自分に出来ないものを求めすぎても良くないのかなって。今も答えは見つかっていないんですけど、自分らしさも出しながら、「こんなのもアリだよね?」っていうところを狙ってみようかなって感じです。
――それではいま出せる最萌えボイスをどうぞ!
村中:無理無理無理無理! ほんっと無理です!! 高い女の子の声を作るには、時間を要するんですよ。すぐにパッとは出ないんです。
――自宅ではかなり練習を?
村中:いっぱいやりました(笑)。やって自分で聴いたこともあるし、マネージャーさんに「これどうですかね?」って聴いてもらったこともあるんですけど、結果的に音ばっかりに捉われてしまい自由に芝居が出来なくなってしまったので、うまくいかないなぁと。
女の子をやることを諦めてはいないんですけど、作り過ぎはよくないから、自分の幅を広げつつ、やらせていただける役をやりたいなと思っています。今のところは女の子より、「できる女性」みたいな役を振られることが多いんですけど。
――まさに田中敦子さんの路線じゃないですか。
村中:敦子さんには非常に憧れています。
――先輩たちの背中から学んだことは何かありますか? つらい時期に、このアドバイスで助かったなど。
村中:一番ヘコんでいた時期に、「村中そのままでいいんだ」って言われたことですね。自分になくて他人にあるものを羨みすぎるところがあるから、もっと自分を活かしたほうがいいって言われてからは、その言葉が常に念頭にある気がします。
自分に自信がないタイプなので、自分の土台を活かすというのは目標でもあるし、ヘコみ過ぎた自分を落ち着かせてくれた言葉にもなりましたね。
――その理想形だと、藤原啓治さんになりますね。
村中:あははっ! 実はそれを言ってくれたのが啓治さんです。
――なるほど!
念願の少女役をゲット! 『プリキュア』オーディション秘話
――これまで培ってきた経験から、声優を目指す人たちへ自分なりにアドバイスを贈るとしたら?
村中:人生経験を積むことと、自分で見極められるようになること。この養成所に行くのが自分に合っているかなとか、何を得意と言って売り出すかとか、自分で見極めなければいけない世界じゃないですか。自分を見つめて、最善の道を見つけてほしいなと思います。
――そして『キラキラ☆プリキュアアラモード』の立神あおい、キュアジェラート役ですが、おめでとうございます! 念願の美少女です!
村中:ありがとうございます!(笑)
――美少女のメインキャラは珍しい?
村中:ほぼ初ですね。3才の女の子のキャラクターで、「かわいさをまったく意識せずにパワー&暴力みたいな感じで演って」っていうのはあったんですけど、こういうのは初めてなので、かなりの挑戦です。
――話題性のあるキャスティングだと思いますよ。宝塚出身の森なな子さんに、初音ミクの藤田咲さんとか。
村中:逆に「あんたが一番浮いてる」みたいなことを友達に言われました(笑)。
――オーディションがあったそうですが、「男はガンダムパイロット、女はプリキュア」といわれる声優憧れの作品ですから、プリキュアのオーディションの話が来た時点ですでに昂るものもあったかなと思います。ちなみに、これ以前にもプリキュアのオーディションを受けたことはありましたか?
村中:1度受けたことがありました。プリキュアに限らず、オーディションは候補として出してもらえるだけでも大変なことなんです。女の子が得意な人がたくさんいる中で、少年役が得意と思われている私を出してもらえた時点で、本当に有り難かったですね。だから今回は「なんとしても受かって恩返しせねば!」という気持ちでした。
――受かったときと、他のメンバーはこうだと聞いたときの感想は?
村中:もちろん全身全霊で挑んだんですけど、自信はなかったので本当にびっくりしました。今までもずっと夢見てきたことだったんですね。自分が中高生の女の子の主人公とか、5人のうちのひとりとか。でも、一度も叶うことはなくて、そのたびにすごいヘコんできたから、期待し過ぎて傷つくのもイヤだなと思って、なるべく気にしないようにしていたんです。
次の日には結果が出るということだったので、何も考えないためには寝るしかないと思って速攻で寝て、翌朝のマネージャーからの電話で起きた感じでした。
――他のメンバーについてもその電話でお聞きに?
村中:いえ、もっと後でした。聞いたときは、すんなり受け入れましたね。どんなふうになるんだろう!とワクワクしました。他のメンバーを見たときに、各々個性を持っている人たちの集まりじゃないですか。「これだけ濃いメンバーだからこそ、自分のこのハスキーな声を選んでもらえたのかもしれない」と思って、キャストの皆さんにも感謝の気持ちがあるんです。
――共演経験があった方は?
村中:森なな子ちゃんとは吹き替えでよく会っていたので、唯一知っていました。なな子ちゃんも知っているのが私だけだったから、2人で「よろしく!」って(笑)。
――現場の雰囲気いかがでしょう。
村中:和気藹々としていますね。意外と精神年齢に差がないのかも(笑)。美山加恋ちゃんと福原遥ちゃんが大人っぽくて、私が未熟ってこともあるのかな(笑)。
――女性声優としてのステータスであるプリキュアになりましたが、今後の目標は?
村中:一番は、ずっと仕事をしていきたい。いろんな役ができるようになれたらいいなと思いますね。女の子をやっているイメージがないと言われてきて、プリキュアが決まったときも、それまで吹き替えで、女性でも男らしい役をやることが多かったので「今度のプリキュアは男の子なの!?」って言われたんですよ(笑)。
だから、これからはもっといろんな役をやりたいんです。自分としてどんどんレベルアップして、いろんな作品に出続けられたらいいなと思います。
――声優として今後の野望は?
村中:最近は吹き替えが多いんですけど、野望としてはナレーションもアニメも吹き替えも、全部やっていけたらいいなと思っています。アニメだと男の子の印象が強いとか、吹き替えだと黒人の印象が強いって言われるんですけど、イメージも大切にしつつ、今後はもっと多くの役柄を開拓して、いろんな作品でお目にかかれるようがんばりたいと思います!
インタビュー&文:設楽英一
撮影:相澤宏諒
ヘアメイク:小泉七穂
編集:柏村友哉
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