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『BLAME!』櫻井孝宏さん・宮野真守さんインタビュー

櫻井さんと宮野さんが、互いの熱演を絶賛!?『BLAME!』櫻井孝宏さん・宮野真守さんインタビュー

 5月20日より劇場公開がスタートした映画『BLAME!』。人類が違法居住者として駆除されるようになった遥か未来、拡大を続ける「階層都市」を舞台に、探索者・霧亥の長く果てしない旅を描いた、『シドニアの騎士』などで知られる弐瓶勉先生によるコミックを原作とした劇場作品です。

 現在もなお世界中のクリエイターを魅了し続け、ファンからも熱狂的な支持を集め続けている『BLAME!』。今回はその主人公である霧亥を演じる櫻井孝宏さんと、霧亥が訪れることになる集落の若い衆のリーダー格・捨造を演じる宮野真守さんのお二人にインタビューを実施しました。櫻井さんによると、宮野さんの熱演に感動したようで……。

櫻井さんお気に入りのシーンは意外なものに……!?
──まず、本作に対するお二人の印象を教えてください。

櫻井孝宏さん(以下、櫻井):弐瓶先生の世界観が色濃く出ている王道的なSFで、日本人が作り上げてきたこだわりや緻密さを余すことなく詰め込んだ作品だなと。ハードSFでありながら人間同士のドラマが主題として描かれていく一方で、SF独特の肌触りの冷たさのようなものもあり、色々な魅力が詰まっていると感じました。

宮野真守さん(以下、宮野):僕はオーディションの話をいただいた時に本作を知ったんですが、独特の世界観や、オリジナリティ溢れる言葉使いに魅了されました。SF作品なので、現実とは異なる戦闘が繰り広げられていく中、集落の人々の口調が日本的だったり、SFと時代的な要素のバランスが面白く、興味を惹かれましたね。

──お二人が演じたキャラクターの魅力について教えてください。

櫻井:霧亥は非常に謎めいた存在で、集落の人たちにとってはヒーローなんだけど、同時に途轍もなく怪しいというバランスが絶妙なキャラクターです。ネット端末遺伝子を探すという明確な目的以外には興味がなさそうな印象を受けるんですが、ストーリーが進むに連れ、集落の人々との関係性がしっかりと築かれていくことを思わせる行動を取る場面もあり、誰もが思わずついて行きたくなるような魅力を持った人物だと思います。ヅルが霧亥を受け入れようとする一方で、捨造は警戒を解かなかったりと、彼の存在を通すことで集落の人間模様も垣間見えるようになっています。

宮野:捨造はこの世界の常識の中で育ち、暗黒の未来で必死に生きている若者です。若い衆の中ではリーダー的な存在で、どんどん仲間達も減っていくという厳しい状況の中、それを打開する可能性を秘めた人物である霧亥と出会うことになり、起こる事象に対して、人間として素直に反応していきます。なので、そのままの彼のキャラクター性に身を任せて演じていきましたね。

──本作は、先に声を録ってから、作画を台詞に合わせていくプレスコの形式で収録が行われていましたが、実際に完成した映像を見ていかがでしたか?

櫻井:僕らはポリゴン(ピクチュアズ)さんと何度もお仕事をさせていただいているので、素晴らしいものが完成することは分かっているのですが、今回は特にその真骨頂だなと。排斥された人間たちが細々と暮らしている集落に、何千階層も下から霧亥という人物がやって来るわけですが、その都市のスケール感が僕の想像が追いつかないくらい大きくて。とにかく広大で果てのない階層都市の大きさが伝わってくる、すごい映像表現だなと思いました。

宮野:『亜人』(瀬下監督作でポリゴン・ピクチュアズ制作)の時は、会話劇のベクトルも強かったので、お芝居の距離感など想像できる部分も多かったんです。今回はSF作品ということで、いったいどんな映像になるのか、完成した作品を見るのを僕自身も楽しみしていました。実際に映像を見させていただいた時は、そのスケール感とスピード感に圧倒され、瀬下監督の真骨頂が表現されている作品だなと感じました。

あとは、声優さんってすごいなと(一同爆笑)。映像がない状態で収録したとは思えないほどの台詞の臨場感で。改めてプレスコで出来ることの凄さに感動していました。

──プレスコでの演技について、現場で具体的な指導はありましたか?

宮野:瀬下監督は、僕たち役者陣が作っている“間”をすごく大切にしてくれるんです。個人的にすごく嬉しかったのが、先ほど櫻井さんから「捨造がおやっさんに話しかけられた時、『ヘイ』と返事するまでの間がすごく良い」と言ってもらって。たぶんそれが僕たちのお芝居の間で、瀬下監督はそれをそのまま映像にしてくれているんですよね。

櫻井:セオリーとしては、ほとんど間を置かずに返事をするのがアニメーション的な表現なんですが、あの場面では捨造が警戒心を露わにしたまま、間を置いて答えるのがすごくカッコよかったんですね。彼らのあのやりとりは作中でも1、2位を争うくらい好きで、何度も見直しました。アニメ史に残る“ベスト・ヘイ”だと思います(笑)。

宮野:ありがとうございます。2位が何なのかも気になりますが(笑)。

櫻井:他には、『BLAME!』ではト書きの情報がすごく多いので、例えば同じ逃げるという描写一つをとっても、どのくらいの距離を走って振り向くのかとか、キャスト陣の間で理解を合わせないといけないのですが、その時には監督から「もっと慌ててください」とかレクチャーが入ったりすることもありました。集落の中では捨造がリーダー的な立場ということもあり、宮野くんがイニシアチブをとっていることも多かったのですが、その結果シーンがぴたっとハマったりするのも素敵だなと思って眺めていましたね。

あとは大前提として、登場人物の多くが飢餓状態で覇気がないということは念頭に置いてくれと、最初にキャスト全員に伝えられていました。

ヒーロー性とかわいさを併せ持つ魅力的な主人公・霧亥
──霧亥は主人公でありながら、台詞の少ないキャラクターでもあります。

櫻井:そうですね。彼はスタンドアローンというか、交流が少ないので……出番が早く終わるのもあり、僕は収録の様子は楽しんで眺めていることが多かったです(笑)。今までの声優経験から、台詞の量で戸惑ったりするということはなかったですね。


──櫻井さんは、『シドニアの騎士』の中で放送されていたショートアニメ『BLAME! 端末遺構都市』でも霧亥を演じておられますね。

櫻井:あの時はほぼリアクションくらいしか台詞がなくて、その後に劇場作品になるとは到底思っていなかったですから、「出られて得したな」くらいの感覚だったんです。でもその頃から、正確には重力子放射線射出装置ですが、あのすげぇビーム(一同笑)には、男としていくつになっても憧れるカッコ良さがあるなと思っていました。緻密に作られている作品でありながら、そういうSFの醍醐味とも言える男のロマンも詰まっていて、とにかく燃えましたね。

──口調の多いものと少ないものでは、そのキャラクターを演じる上で難しさも異なってくるのでしょうか?

櫻井:台詞の量と役を演じる難しさというのはそこまで関係がなくて、多いなら多いなり、少ないなら少ないなりのプレッシャーはあります。とくに霧亥の場合は喋ってないカットこそ意味があるんじゃないかと思わせる人物なので、台詞が少ないことへの意識はあまりなかったですね。あの世界観に合致したキャラクター性だと思いますし、収録の中で台本からさらに台詞がシェイプされ、より口数が少なくなっていったということもあったくらいでした。

宮野:どちらも難しさはあるのですが、口数が少ないキャラクターは、喋っていない間でもどれだけ役者がその心情を考えていられるかで、その後に出てくる言葉の説得力がまったく違ってくるんですよね。台詞が多かろうが少なかろうが、キャラクターがその世界に存在し続けていることには変わりありませんから。霧亥の場合、台詞がない間も集中を途切れさせず、いざ出番が来た時にあれだけの存在感を発揮していくのは、声優界の中でも櫻井さんにしかできない技だなと思って見ていました。

櫻井:いやいや、そんなことはないけどね(笑)。

宮野:けど、それくらい霧亥という主人公は魅力的で惹かれる存在だと思いましたし、あのすげぇビームもカッコイイいいなと(笑)。

櫻井:せっかくかっこいい作品なのに、喋れば喋るほどおかしくなっていく(笑)。その流れで言うと、霧亥って一見無愛想なんですが、シボをガンガンぶつけてみたり、結構かわいく見える部分があるんですよね。メタリックでクールなイメージが強いのですが、時折コメディチックで人間味を感じさせるシーンもあり、殺伐とした世界観の中のちょっとした癒しになっていると思います。

──収録の際、キャスト陣の方から演出を提案するということもあったのでしょうか?

宮野:提案というよりは状況確認という方が多かったかもしれないですね。SF作品なので、例えば戦闘シーンにしてもどのくらいの距離感で戦っているかの共通認識を作っていく必要があるので、そうした時にはイニシアチブをとれるようにしていたのかなと。そのような形で、より臨場感がでるようなやり方を、キャストの方から提案するということはありましたね。


──その結果生まれたのが、あの「ヘイ」だと……。

櫻井:ほんとナイスな「ヘイ」だったと思いますよ。……これだけ話して、出てきた感想が「すげぇビーム」と「ナイス・ヘイ」っていう(笑)。見出しで使われそう。

宮野:この硬派な世界観に、その見出しは絶対ダメ!(笑)

──最後に、公開を楽しみに待っているファンの方々に向けたメッセージをお願いします。

宮野:僕はこの映画で『BLAME!』という作品に出会うことができて、本当に良かったと思いました。本作は独特の世界観で、最初に資料をいただいた時は、ちょっと難しい作品なのかとも思ってしまったのですが、実際には全然そんなことはなく、事前知識が一切なくてもとても楽しく観られる作品です。物語の中心にはスーパーヒーローである霧亥がいて、スピード感や迫力に引き込まれながら、気づくとあっという間に時間が経っていますので、是非皆さんにも楽しんでいただければと思います。

櫻井:SFに対して「敷居が高い」と感じている方もいると思うのですが、本作はお膳立てをしっかりとしてくれているので、非常に理解しやすい内容になっています。ただ映画を見るだけでも、分かりにくいと感じるような部分はまったくないですし、お話自体もとてもシンプルです。

一方で、「生き延びろ」という本作のキャッチフレーズをとっても、言葉として表現されていること以外にも色々なメッセージが込められていて、見る人によって様々な捉え方のできる作品だとも感じました。2週間限定なのが凄くもったいないと思えるようなクオリティになっているので、興味のある方は友達を強引に誘ってでも映画館に行き、見終わった後に作品について語り合ってもらえれば素敵なことだなと。是非Dolby Atmosなど本作ならではの素晴らしい音響と共に、『BLAME!』の世界を楽しんでいただければと思います。


──ありがとうございました。


[取材・文/米澤崇史]

『BLAME!』作品情報

STORY
過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

キャスト
霧亥:櫻井孝宏
シボ:花澤香菜
づる:雨宮天
おやっさん:山路和弘
捨造:宮野真守
タエ:洲崎綾
フサタ:島﨑信長
アツジ:梶裕貴
統治局:豊崎愛生
サナカン:早見沙織

<STAFF>
原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
製作:東亜重工動画制作局

>>劇場アニメ『BLAME!』公式サイト
>>劇場アニメ『BLAME!』公式ツイッター(@BLAME_anime)

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
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